Side:ルナ
「つまり、野良感染者には特定のワードに反応して起動する超小型爆弾が脳内に埋め込まれてると…
そうなると、適当な野良感染者をとっ捕まえたところで、黒幕の情報は一切得る事は出来んちゅう訳か……ったく、悪知恵は働くモンやな!!」
マッタク持ってな。
まぁ、悪知恵が働く奴ほど世に憚るとも言えなくないが、エクリプスに関する件についていうならば、徹底具合がハンパじゃなく凄まじすぎるだろう。
所詮は野良感染者と斬り捨てているとしても、己の身元が割れないように所謂『自壊装置』を脳内に埋め込むなど、正気の沙汰とは思えんよ。
或は、既にエクリプスの持つ魔性の力に魅入られて、邪悪なる魔道に堕ちてしまったのか……何れにしても、黒幕は碌な奴ではないだろうさ。
まぁ、そっちの方はオイオイ調査を進めるとして――はやて嬢、私達が連れて来た彼女はどうなるのだろうか?
「リアクトプラグ6th……ロサ・シュトロゼックかぁ…
ナンバー的にはリリィの妹になる訳やし、その子自体は悪い子やないみたいやから、リリィと一緒に六課で保護の方向でえぇんとちゃう?
リリィ的にも、自分の妹が居るって言うのは安心できることかも知れへんし、トーマにとってもえぇ刺激になるし、アイシスだってきっとな。」
つまりは拘束とかそう言う事にはならない訳だな?……其れが聞ければ充分だ。
ロサ、此処が君が今日から過ごす場所の一角だ……良く覚えておくと良い。
「うん……此処は凄く温かい感じがする………あそことは違う……」
そうか?……温かい感じを分かってくれたならば僥倖だ……時空管理局・特務六課には、どんな次元世界でも味わえない独特の空気がある故な。
しかし、貴重なリアクトプラグを野良感染者風情が持っていた事には疑問が残るな?
奴等は上からの命令で『選定』とやらを行っていたらしいが、若しかして、その選定そのものが黒幕が仕込んだ事なのだろうか?…きな臭いな…
魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force19
『Next Door――新たなる扉』
Side:トーマ
見習いくらいは……って思ってたけど、派手さはなくても此れは結構ハードな仕事かも知れないな。
データの管理や、各部署へのデータ送受信に、お茶汲みにデスクやロッカーの清掃等々雑用沢山!!……下っ端ってのは思った以上に厳しい!
しかもだ……
「うお〜〜い、とーま、リリッち、あいしす〜〜〜!出っ掛けるぞ〜〜〜〜♪」
「はいぃぃぃぃ!!!」
外出のお供もこなさなきゃならないから、正直って身一つじゃ間に合わない感じだ……リリィとアイシスが居なかったら、其れこそぶっ倒れてるな。
まぁ、今回お供をするのは雷華さんだって言うのは緊張しなくて済むけどさ。
「そうだ、雷華さん、リアクト中の反応時間をまた縮められました。アベレージ0.07秒です♪」
「おぉ?凄いじゃないかリリっち!
そのまま頑張れ〜〜〜!目標はナノハとルナの0.0001秒に追いつけ追い越せ!君達ならきっとできる!!僕が保証する!!」
何の根拠があってって思うとところだけど、雷華さんが言うと不思議と出来そうな気がするんだよな〜〜。
なのはさん曰く、雷華さんは『力は凄いけど頭脳はからっきしの、愛すべきアホの子』って事だけど、この人の天真爛漫さってある意味で最強だろ。
それで、此れから何処に行くんですか俺達は?
「ん〜〜?あいんす秘書官と、つあい秘書官のところだよ〜〜〜。
確か現場で一度会ってると思うんだけど、覚えてる?ってかあいしす以外は覚えてる筈ないか〜〜♪とーまは暴走してたらしいからね〜〜〜♪」
その時の人じゃ覚えてねぇッス流石に!!
けど、きっと俺達を助けようとしてくれた人なんだよな?……だったら、一度はちゃんと挨拶しとかないとダメだよな。
「んじゃ、行ってらっしゃい!」
「アレ?アイシスは行かないの?」
「アタシは司令殿から、『定例会議に出席せよ』って言われてるからお留守番です。」
そっか……見習いにも会議の空気を学ばせるって事かな?
まぁ良いか、其れじゃあ俺達は行ってくるから、会議の方頑張ってな!
――――――
Side:なのは
ルナとサイファーが野良感染者を滅したのと時を同じくして、フッケバインの動向は不気味なくらいに大人しくなってるみたい。
まぁ、大人しくしててくれるなら別に良いんだけど、この大人しさが『嵐の前の静けさ』であるのは、此れはもう間違いないと見て良いと思う。
その辺への対応を考えての定例会議なんだけど、こうして安穏とした定例会議を出来てるって言うのが、ある意味では不気味極まりない事だよ。
「ホンマになのはの言う通りやね。
せやけど、こうして落ち着いた会議が出来る言うんは有り難い事やけど……奴さんが何処で何しとるかはマッタク持って不明やしね。」
「えぇ、ハーディス・ヴァンデイン氏が示したフッケバインや野良感染者の出現予測地域の一つでの襲撃を最後に、目立った動きもなく……」
フッケバインの動きを掴む事は出来ず、『魔導殺し』が関与したと思われる事件も起きて居ない、と。
過去に何度かあった『雲隠れ』の時期に入ったのかもしれないけど、ウーノさん、ジェイルさんは其れに関しては何か言ってない?
「完全に雲隠れされては、流石のドクターでも難しいらしく彼等の動向は掴めて居ませんね。
ヴァンデイン・コーポレーションに関しても、私とクアットロでハッキングを行っていますが、中々にセキュリティが厳重で情報を引きだすまでには…」
「逆に言うと、其処まで厳重なセキュリティを掛けてるって事は、途轍もなく重要かつ漏れたらヤバイ情報って事っすよね?
ったく、あのマユゲマンもおもっくそ怪しいから、拘留するなりなんなり出来ると楽なんすけどね〜〜〜〜……」
「拘留許可は相変わらず下りる気配がありません。
別件や調査協力の体で聴取の依頼はしているのですが……」
「ハーディス氏の拘留については、引き続き本局の方からも働きかけてみる。今月中には必ず出頭して貰う。」
流石は執務官……そう言う事になると違うねフェイトは。
まぁ、ハーディスの方は、姉さんも何度か接触してるからいざと言う時は如何とでもなると思う――問題はフッケバインだよ。
「せやな……接触の可能性があるんは見習い3人組だけ。」
「はい!アタシとトーマとリリィです。」
現状で最も接触の可能性があるのがトーマ達なのは間違いない。
って、言ってるそばから会議室に展開して光学モニターに、移動中のトーマ達にフッケバインからのメッセージが届いた映像が映し出されてるしね。
『直接メッセージとかコイツ等馬鹿?こんな事したら、メッセージ解析されて色々ばれるの確定じゃん。てか僕にバカって言われたらお終いだぞ?
其れよりも、とーまとリリッちはくれぐれもコイツ等に、え〜〜〜と……そうそう、ほだされたりしちゃダメだぞ〜〜?
罪の意識や、悪意のゆーわくは何時でも笑顔で近付いて来るって王様が言ってたし。
其れに、アイツ等がとーまとリリッちを助けたのだって、最終的に自分達の戦力として取り込むためだったんだから恩義なんて感じる事ない!
寧ろ恩義を感じるのは、本当の意味で君達を助けてくれたルナとナノハとミユキとあいしすにだ!ふっけばいんは完全ムシ!わかった?』
『『はい!!』』
ら、雷華が物凄く真面な事言ってる?……まぁ、100%右脳人間の雷華だから、直感的に思った事なんだろうけどね。
雷華がアレだけ言ってくれたから大丈夫だとは思うけど、トーマへの勧誘がこうもあからさまになって来てるって言うのは無視できないよ、はやて?
「そやな……幸いなのは、トーマが彼等に恩義を感じる事が無いようになっとる事か……
来ないな事お願いして悪い思うし、友達を監視する言うのは辛いかも知れへんけど、引き続き……」
「大丈夫です、八神司令殿!
其れに監視じゃなくて保護と警備!実家暮らしの頃から慣れ親しんだ、不本意ながらもアタシの本業ですから!」
その真っ直ぐさは良い事だよアイシス……16年前の自分を見てるみたい。
でも、此れだけ露骨に勧誘して来るって事は、フッケバインはやっぱりトーマを必要としてると見て間違いなさそうだね?
「十中八九間違いなくな……拉致予告に無視を決め込む訳にも行かんし――六課としての方針も決めなアカンね。」
難しく考えなくても良いと思うよはやて?
来たら叩き潰せば良いだけ――白夜の聖王と、夜天の冥王と、その最強の仲間達に盾突く愚かさを教えてあげればいいだけだからね。
そもそも、お父さんが基礎理論を確立したエクリプスを悪用する奴等に手加減なんて必要ないでしょ?……完全に叩きのめす、其れだけだよ。
――――――
Side:アインス
一応大事を取って、はやてから検査を受けるように言われたが、マッタク持ってどこも問題なかったな?我ながら呆れた頑丈さだよ。
「治癒魔法とかを置いて行ったとは言え、お腹ぶっ刺されて背骨と内臓まで貫通しておきながら後遺症が一切ないって、有り得ないです。
今更ながら、本気で規格外ですよねお姉ちゃんて……」
「元封印指定ロストロギアの名は伊達ではないと言う事さ。
しかしだなツヴァイ、規格外と言うならルナの方が遥かに上だぞ?アイツならあの状況であっても、敵を撃滅してトーマ達を助けただろうからね。」
「敢えて言います、この弩チート共がです!!」
だが、そのお蔭でアレだけのダメージを負ったにも拘らず、後遺症が一切ないんだ、なら弩チートもまたアリだろうさ。
「お〜〜い、元気か〜、あいんす、つあい〜〜〜?」
「雷華か。……其れと君達はあの時の……」
覚えてはいないだろうが久しいね。
アレからずっと気になってたんだが、無事だと聞いて安心したよ。――しかし、今日は如何したのかな?
「あ、アインス秘書官とツヴァイ秘書官のお迎えに同行しろって雷華さんが……」
「そうなんです。」
その為に態々すまなかったね……所詮は検査故に其れほど面倒な事は無いのだけれどね。
とは言え、此れで私もようやく現場復帰だな。
「無理はダメですよお姉ちゃん?」
「無理はしないし、シャマルが許可する範囲内で魔導を行使する分には構わないだろう?
何よりも、有事の際に動けないのでは秘書官の名も泣くからね……」
「凄いですね、アインス秘書官。」
「真面目でいらっしゃる。」
そうでもないさ。
元より事件で失われる命や財産は、後で悔いても取り返しが付かないし――現に君達を危険から救う事は出来なかったからね。
「いえ…そんな!」
あぁ、そう言えば君達は六課のフォワード見習いだったね?不慣れながらも、其れなりに頑張っていると聞いているよ。
「はい、なのはさんやヴィータ教官に鍛えて貰っています!」
うん、其れも聞いている。
だから、戻ったら少しばかり付き合ってもらえるかな?――なに、難しい事ではないさ。
――――――
Side:トーマ
で、管理局に戻った訳だけど、何だよ此れ!?
「ちょっと〜〜〜!此れって一体如何言う状況!?」
「俺も分からん!!」
「なんだか、行き成り模擬戦に……」
アインスさんが言ってた『付き合って貰う』ってこう言う事かよ!!如何言う事かを確認しなかった俺も悪いだろうけど、、如何してこうなった!!!
「え〜〜と、星奈さん、俺達どうすれば……」
「形式は3on3なので、やりたいようにやってしまうのが良いでしょう。
ですが、分断効果の調整と、えげつない爆薬の使用は禁止の方向で……それ以外なら、何をしても構いませんがね。」
つまりは、俺達がドレだけ動けるかで勝敗が変わってくるって事か……良いぜ、精々思いっきりやってやる!!
見習いトリオ、セットアップ!!――此処は勝ちに行くぜ!!
To Be Continued… 
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