Side:トーマ


管理局に保護された俺は、先ずはリリィとのリアクトオフをする事に挑んでいた。
俺の暴走はリリィが止めてくれたけど、何時までもリアクトしたままってのは、俺にもリリィにも負担が大きくて、百害あって一利なしって事だからな。


「数値正常、トーマ君のメディカルパターンもグリーンレベルだから、此れならいける筈。
 トーマ君、リアクトオフを命令してみてくれるかしら?」

「はい。――リアクトオフ……」

正直な事を言うと、如何すれば俺と融合したリリィを引き剥がす事が出来るか方法なんてマルで分かっちゃいない。
だけど、分からないけど分かるんだ、如何すれば俺の中からリリィを引きだす事が出来るのかってさ――戻って来てリリィ!俺は、此処に居る!!


――バシュン!!



リリィ!!……良かった、無事みたいだな。


「リアクトオフ完了ね。
 トーマ君のエクリプス感染進行状況も約7.5%だから、第2発症レベルには至って居ない……技術部と医療班の研究成果は間違ってないわ。
 リリィちゃんも疲労と消耗で眠ってるだけみたいだし、数時間もすれば目を覚ますわよ。」


眠ってるだけか……良かった。


「だけどゼロ因子とシュトロゼック――二人が居てくれればエクリプスの謎の中枢に迫る事が出来るかも知れない。」


かもしれませんね。
だけど、そう言う事なら、俺もリリィも自分の出来る範囲で管理局に協力しますよ!てか此処で逃げ帰ったら俺は絶対後悔すると思うんで!!













魔法戦記リリカルなのは〜月の祝福と白夜の聖王〜 Force15
再誓〜Re:Engage〜』











『敵性戦力確認……此れより殲滅します。』


止めろ銀十字、今のこの世界に生きる人々を問答無用で巻き込むな!
この世界はお前が思っているよりも、ずっと優しさに溢れた世界なんだ、少しばかり面倒な事はあるかも知れないけどさ。


『…………了解。』

「よし、良い子だ。」

「その子、銀十字の書も出来るだけ早く治してあげないといけないわね。
 其れで何だけどトーマ君、改めてこれから協力をお願いできるかしら?
 2人を助ける為――そしてエクリプスウィルスの謎を解いて、悲しい事件が起きない様にするためにも……」


是非もありません。
シャマル先生やマリーさんの事、其れに嘗ての機動六課の皆さんの事はスゥちゃんやノーヴェ姉からよく聞いてました。

寧ろ俺の方からお願いします、俺で良ければ協力させてください。
多分、リリィも同じように言うと思うから。


「えぇ、お願いするわ♪」


ありがとうございます!
えっと、それからアイシスにも面倒序に、もう少しだけ付き合って貰っても良いかな?
助けてもらったお礼も出来てない状態で図々しいかもしれないけど、アイシスが居てくれると俺もリリィも心強いしさ。

「なにより、こんな途中で放り出されたら、アイシスの性格的に落ち着かないだろ?」

「ま、まぁ、もう片足どころか全身どっぷり浸かっちゃったからね……今更無関係でした何て言う心算は毛頭ないんだけどさ。
 だけどだからって如何すりゃいいの?一応アタシは『重要参考人』程度だから、取り調べが終われば局に居る理由はなくなっちゃうんだけど…。」


あ……其れは確かにそうだよな?
俺とリリィは『保護対象』って事だけど、アイシスの場合は一時保護されても事件の取り調べが終われば、其処でお終いなんだ……


「いや、お前も特務六課での預かりになるぞ?
 既に我等の司令――はやてがご実家に連絡して、ご家族からも了承済みだ。」

「はい!?如何言う事ですか、アインスさん?」

「お前もフッケバインに顔と武装を見られているのだろう?再度の接触の可能性を考えて、此方で保護すると連絡したんだが……
 ――『家出中の不始末は本人に責任を取らせたいので、好きなように使ってくれ』と、お父上様と兄上様が仰ってな?」

「そんな訳で、イーグレット・セキュリティ・サービス代表取締役一家の末っ子で長女――アイシス・イーグレットちゃん。
 貴女は本日付で、時空管理局エクリプス特別対策武装捜査隊――通称『特務六課』での身柄預かりとなります♪」


え?イーグレット・セキュリティ・サービスって、要人警護とかをやってるセキュリティ業界大手の所だよね?
何度かテレビの特番とかで見た事有るけど……


「そうなんだけど!
 素性知られたくないから名字秘密にしてたんだけどなぁ〜〜〜!!ぶっちゃけ、あの仕事は肌に合わないから家出までしたのに〜〜〜!!」


成程、何て言うかご愁傷様……つーか、如何考えても俺と関わったせいだよな此れ………?(汗)
何が出来るって訳じゃないけど――取り敢えず色々とゴメン、アイシス!!


「う〜〜〜……良いよ謝んなくて。
 アタシが自分から首突っ込んだ訳だし、こうなったらトコトンまで付き合いますっての!!」


そっか、ありがとうアイシス。


「其れじゃあアイシスちゃんは此れで良いとして……トーマ君とリリィちゃんは保護対象なんだけど……」

「いえ、俺もリリィを保護して貰えるなら――見習いでも何でも、指示された範囲で出来る事をします!」

「良い返事だトーマ。」


ルナさん……はい、頑張ります!
あ、それと何時ぞやのバス代なんですけど、色々落ち着いたら必ず返しますからもう少しだけ待ってて下さい!!


「別に気にしなくてもいいんだが……大体あの程度なら返さなくても別に構わないんだぞ?」

「いえ、借りた物をちゃんと返さないとなったら、本気で冗談抜きでノーヴェ姉に半殺しにされますんで………」

「成程な……」


そんな訳で、必ず返しますから!
って、あれ?扉の方に誰か……スゥちゃん?


「………」


ゴメン、心配かけちゃったよね……俺は大丈夫だよスゥちゃん。


「♪」(ふにゃ)


良かった……笑ってくれた。
あとでスゥちゃんやノーヴェ姉にも心配かけちゃった事を謝っとかないとな。


「リリィも早く目を覚ますと良いね?」

「あぁ…うん。」

数時間で目を覚ますって事だけど、確かに出来るだけ早く目を覚ましてほしいって言うのが本心だよな。


「エクリプス因子保有者とリアクターの関係は、ジェイルであってもいまだ解明には至って居ない。
 ただ、ジェイルが言うにはなるべく距離を置かないでいた方が良いのは確からしい――だから、トーマは出来るだけリリィと一緒に居てやれ。」

「勿論その心算です。」

「アタシも一緒に居て良いんですよね?
 こう見えても荒事には慣れっこですから、アタシが必ずトーマとリリィの事を護って見せます!!」

「其れについては大丈夫よ?ウチのエースが、アイシスちゃんをそう言う立場に配置してくれるようにお願いしてくれているから。」

「エースって、ルナさんと一緒に戦ってた眼鏡をかけた剣士の女の人ですか?」

「そっちじゃなくて『スゥちゃん』の方だ。
 『アイシスちゃんはトーマの事を真剣に友達として思ってくれているから一緒に居させてあげてほしい』ってな。」

「そんな……だったら其れに応えない訳には行きませんね?
 ならトコトン頑張りますよ!えぇ、公僕見習いだろうと下っ端だろうと上等です!!どんな事でも何でもやってやりますって!!!」


アハハ……何か気合入ってるなアイシス。
もっとこう、窮屈な生活になるかも知れないって思ったんだけど、アイシスが居ればそんな事にはなりそうにないや。


此れから色々と面倒な事が起こるのは間違いないだろうけど、俺自身に直接関係して来る事だからな――取り敢えず精一杯頑張らないとだよな。








――――――








Side:ルナ


と、言う訳でトーマ達は当面特務六課預かりになった訳なんだが、先刻の戦闘データから何か分かった事はあるかジェイル?


「ん〜〜〜〜……正直言うと其れほどわかった事は多くないねぇ?
 精々分かった事と言えば『ゼロ・ドライバーは生命活動すら強制的に停止させるほどの分断能力を有している』って言う事くらいかな?
 件の少年が『ゼロ・エクリプス』とやらを放った直後に、六課のメンバー数人が心停止状態に陥った事を考えると、此れは間違いないと思うよ。
 あの攻撃の本質は『あらゆる生物の生命活動を肉体と分断する』って言うのが適当だろうしね。
 それこそ、彼にその気があれば単体で世界中の命を刈り取る事だって難しくはないだろうさ……ルナ君となのは君が居なければの話だが。
 まぁ、今の彼ならばそんな馬鹿な考えは起こさないだろうが、フッケバインの連中は些か面倒な一団かもしれないねぇ?」


フッケバインが?
確かに総合的な戦闘力は中々に高めだろうが、所詮は私となのはの敵ではないぞ?

と言うかだな、トーマが暴走していなかったらトーマ達を保護した後で船ごと殴り飛ばして、絶刀で細切れにして海の藻屑にしていたからな?


「まぁ、如何に何でも食べる鮫であっても、あのゲテモノを食したかどうかは分かりませんが……」

「ゲテモノって……冷静に毒吐くわよね、星奈って………」


言ってやるなドゥーエ、其れが星奈なんだ。
それで、フッケバインが面倒とは如何言う事だジェイル?


「うん、彼等はルナ君達と違って『エクリプスと完全に馴染んだ』訳ではないが、其れでも可成り高いレベルの感染者である事は間違いないだろう。
 どんな方法を使ったかは分からないが、破壊と殺戮の衝動も其れなりに抑えているようだからね。
 だからこそ面倒なのだよ。
 確かに彼等の戦闘力はルナ君やなのはくん或はサイファー君が出張れば速攻でかたが付くだろうが、問題は其処じゃない。
 戦力よりも、彼等は組織としては相当に完成された存在であると言うのが問題なんだ。
 完成された組織と言うのは、兎に角行動に統率が取れていて無駄がない……逃げ果せた彼等が此れから何をしてくるかは分からないからね?」


成程な、確かに完成された組織と言うものは厄介極まりないからな?
だが、特務六課と、私達『ホワイトナイツリベリオン』もまた完成された組織であると言う事を忘れるなよジェイル?

如何に魔導殺しのエクリプスが相手とは言え、お前と技術部で六課メンバーのデバイスに対エクリプス機構を組み込む研究は進んでいるんだろ?
其れに何より『白夜の主従』と『夜天の主従』が揃っていて、負ける事などは万に一つ――いや、兆に一つも有り得んさ。



「ククク………そうだったねぇ?
 完成された組織であるとは言え、此れはフッケバインに同情した方が良いかな?……如何やら彼等は、触れてはいけないモノに触れたらしい。」


あぁ、奴等には『触らぬ神に祟りなし』と言う言葉の意味を嫌と言うほど教えてやるさ。
何よりも私達ホワイトナイツリベリオン――白夜の反逆者は、仲間には厚情だが敵対する者には一切の容赦も情けもないからな?

「この先、連中が立ち塞がると言うなら、現れた先から斬り捨てて月影の錆にしてやるだけだ。
 何よりも、簡単に人殺しをするくせに、最悪の場合には自分の命を差し出す覚悟のない奴等に私達は負けんからな。」

そんな訳だから、引き続きエクリプスの解析を進めてくれジェイル。
荒事は私達と特務六課で引き受けるからな。






とは言え、エクリプスが脅威なのは間違いないか……エクリプスは現状の武装態勢を揺るがしかねない『魔導殺し』だからな。
其れこそ切っ掛けさえあれば、世界レベルの争乱や崩壊が起きる可能性も有る、極めて危険な代物だ……早急の対応は必須だろうな――


だが、少なくともフッケバインの頭は其れを分かっているだろう。
その上で、一体何をしようとしているんだフッケバインは?………連中は、一体何を目的として活動しているのだろうか?……流石に想像出来んな。








――――――








Side:カレン


「あ、そう言えば……」


ん?どったのアル?


「ペッタン胸のバッグと一緒に拾った物があったんだよ、すっかり忘れてたけど。
 んと…え〜〜〜〜〜と………あった、コイツだ!!」

『やっと思い出していただけましたか、最早このままバッテリー切れになるモノかと――』


あら?其れって確かトーマ君の持ち物のデバイスだったわよねぇ?


『そうなります。写真撮影や、情報通信などには便利な、非戦闘端末です。あ、因みに私はスティードと言います。
 出来れば窓からでも捨てて頂ければ、勝手に主人の下に帰るのですが――あぁ、目隠しを取って頂きありがとうございます素敵なお嬢さん。』


OK、目隠しを取ってあげたのは良い判断よステラ。
だけどスティードちゃんを直ぐに返してあげるのはちょっと難しいかなぁ?

トーマ君には嫌われたくないから、直ぐにでも返してあげたいのは山々なんだけどね……ま、次の仕事が終わったら解放してあげるから。


『次の仕事ですか?』


此れは漏れても問題ない事だから教えてあげる。



次の私達の仕事の舞台は、第16管理世界『リベルタ』の兵器開発メーカー『ヴァンデイン・コーポレーション』。
トーマ君が持ってる『9型ディバイダー』発祥の地で、『シュトロゼック』生誕の地だよ――

















 To Be Continued…