Side:遊矢


時間は少し遡り、ブランがデュエル終盤に乱入してきたガナッシュにやられた時の事。
俺はモニターで状況を確認しつつ必死で地下通路を駆けていた。


「はぁ、はぁ…くっ、ブランがやられた…!
 いくら女神とはいえ、ブラン一人にやらせるのは無茶だった…!
 まずった、もう少し相手の乱入を警戒すべきだった…!」


あの野郎、バトルロイヤルの時は俺が駆けつけなきゃ殺されていたというのにまだ懲りていなかったか…!
エクシーズの2人を見張っていたとはいえ、もう少し地上への出口付近で見張っておくべきだった。
相手の乱入の警戒が足りなかった結果がこれだ。
このままじゃブランがカードに封印されてしまうのも時間の問題…そうなったら最悪だ…!

彼女は俺が伝えたようにしぶとく抵抗しようとするも虚しく、銃弾のようなもので気絶させられてしまう。
あの銃弾、女神を気絶させられるなんて一体どういうことだ?
闇のカードに近い何かがあるような気がするが…!

それは兎も角、ようやくマンホールの下までたどり着いたが…!
既にデッキを抜き取られ、ディスクを向けられた…という事は…!


「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」


はしごを使って昇って地上へ出ないといけないというのに…!
無情にもディスクから光が放たれて…!


「くっ…こんな時に俺はなんて無力なんだ…!……ん?


ブランはカードに…封印されていなかった。
ディスクの故障か、あるいは女神にはカードへの封印が通用しないのか…?
いずれにしても、最悪の事態は免れたみたいだ。
頭が中々回らないが、立ち止まっている場合じゃないな。

今のうちに地上へ出てあいつらを懲らしめてブランを助け出さないとな!
向こうのミシェルたちの事は今は考えてる余裕はなさそうだ。










超次元ゲイム ARC-V 第78話
『エース奪われる』









さて、マンホールから地上へ出てきたわけだが…ブランがこっぴどくやられる。
女神の体質でカードに封印はさせられなかったが、奪われたデッキがガナッシュの野郎の手元にある。
だったら、ここでデュエルを挑んで取り返しておこうか。
ブランの二の舞になる危険もなくはないが、そこにいるブランが倒した男はディスクも壊されてるし戦闘不能のはず。
だから、勝機は十分ある。


「おいおい、お前のような誰とも知らない奴が…」

「っ…!?これはいかん。
 いいだろう、こいつとデッキは返してやる……!」

「は?」

「え?」


と思ったけど、あいつが撤退するらしい事に思わず呆然とする。
一体何が起きて…!


「ただし、今回は私の勝ちだ…戦利品としてこのカードだけは頂いていく!
 それで今回はこれで見逃してやる…ベクター!撤退するぞ!」

「ま……このままじゃ分が悪いし、俺の場合はディスクもやられこのザマじゃ仕方ねぇか…あばよ!」

「お、おい…!」


――バッ!パララ…


その隙にブランのデッキから1枚のデッキを抜き取られ残りはばら撒かれ…!
ばら撒かれたカードに気を取られている内にそれに乗じて…!


――タタタ…!


待て!くっ、これじゃ下手に追っても意味はないか…!」


この場から足早に逃げていった。
いや、正確には急いで追えば間に合わない事もない。
しかし、そうは言ってもばら撒かれたブランのデッキを放置するわけには行かないからな。
この場に気絶している彼女の味方が俺だけという事を突かれたわけだ。
やってくれたな、あいつら…!


――ピカァァァァ!!


そしていなくなったと思った次の瞬間、少し離れた場所のところが光った…!
案の定、次元移動して逃げられたっぽいな。
こうなっては仕方ない…とりあえず、散らばったカードを拾わないと。


――タッ、タッ…!


そう思っていたら…足音からも誰かが近づいてきたようだ。


「奇遇だな、こんな所でまた会うとは…」

「なんだ、ヒロトか…思ったより再会早かったな。」

「なんだとはなんだ…ったく。
 ところで、何をやっているんだ?」

「見ればわかるだろ…散らばったカードを丁寧に拾ってんだ。
 そこで敵にやられて気絶してる俺の連れのカードをね。」

「成程、この子がお前の…折角だ、俺も拾うのを手伝おう。」

「助かるよ。」


ここでやってきたのはたまたま通りかかったと思われるヒロトだった。
もう少し早く彼がここに来てくれたらと思うとね…いや、俺やブランが迂闊だったわけだが。
本来エンタメの布教も見込んでみたはずなのにそんな余裕がない。
かなり見通しが甘かったと思う…とブランがやられたのを見て感じた。
相手は手段を選ばない様な連中もいる…その事を考えて動かないといけなかった。

辺りに散らばってしまったために拾うのに時間がかかったが、彼が手伝ってくれるとなると非常に助かる。


「このモンスターと魔法の枠が一体となったカード…これがお前も使ったペンデュラムカードって奴か。

「ああ…ペンデュラムは元々は俺たちの故郷にもなかった召喚法だけどな。
 彼女がペンデュラム召喚を発現してから何故か俺のカードも書き換わったんだ。」

「そんな事が…いや、ありえないとは言えないな。」


この次元が召喚法ごとに4つに分かれている事といい、ペンデュラムの事といいわからないが多すぎる。
ペンデュラムに関しては封じられていたのが女神であるブランの使用により解禁された…というのが現状の見解だ。
でなければディスクがエラーを起こすだろうしな。
そうじゃないって事はそういうことなんだろう…あまり深く考えると頭痛いしな。


「それは兎も角、これで全部…かな。」

「ああ…これで拾い終わったようだな。」


とりあえず拾い終わったようなのでまとめてブランのディスクへしまう。
俺がみても何のカードが足りないかわからないからな…重要そうなカードは兎も角。


「ところでこの子は大丈夫なのか…昏睡している様だが?」

「わからないけど…何か変なもの撃ち込まれてたのが原因かも。
 とにかく、安全な場所を探して暫く様子を見るつもりだ。」


で、少なくとも死んではいないようだ。
というか女神がそう易々と死なれても困る。
とりあえず、気を失ったブランをどこかで安静にさせないと。


「それで悪い、マンホールの下までこの子を運ぶの手伝ってくれないか。
 流石に1人じゃ無理だ…少し高低あるからな。」

「仕方ない…そこまでなら付き合ってやろう。
 ただし、この子を降ろすところまでだ。」

「ありがとう。」


そんなわけで一旦下へ戻る事になった。


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「この子、異様に軽いな…相当無理しているように見えるな。
 俺ができるのはここまでだ…暫く一人にしてくれ。
 縁が会ったらまた会おう。」

「すまない、恩に着るよ…このブランがソースだが、一人で無茶はするなよ。」

「ソース?何のことだ?が、肝に銘じておく。」


気絶したブランをマンホールの下まで降ろしてもらい、ヒロトと再び別れる。
俺とのデュエルからそこまで時間は経っていないし、まだ考え込みたいのだろう。
でも、あまり無茶はしないでほしいとは思う。

とりあえず、ここからはブランをおぶってあの3人が待っているところへ戻らないと。
エクシーズの2人を放置したまんまだから心配だ。








――――――








No Side


時間は少しさかのぼり、ブランのピンチを察して遊矢がミシェルにエクシーズ次元の男の2人の見張りを頼んでから外へ向かった直後の事。
遊矢に2人をカードに封印しないように厳命されたはずの彼女ではあったが…?


「はぁ…あの2人わけがわからないよ。
 どうして、カードにしちゃいけないのかわからないよ。
 いくらディスクとデッキを没収したと言っても、もしここから逃げられたりしたら応援呼ばれちゃうよ。
 それに、話を聞くって言ったってどうせ適当な事をでっちあげるだけだもん…無駄だよ。
 何より、あのブランって人の話なんて聞けないよ…ミミを巻き込んだもん。


彼女はブランや彼の言う事を碌に効くつもりはなかったようだ。
特にブランに関しては彼女が乱入したバトルロイヤルで自分を巻き添えにした事での反感が強い様子だ。
ブランが彼女を巻き添えにするという冷酷な判断を下した事が糸を引いてしまっている。
そう、彼女のあの判断は明らかに悪手だったのだ。

そして、見張りをミシェルに任せた遊矢の判断も拙かった。
彼女の良心は既に壊れてしまっているのだから。


「この状態ままカードにしてもいいけど…どうせなら悔しがらせてやりたいよね。
 で、いつまで狸寝入りしてるの…かな!


――ゲシ、ゲシッ!


「ぐっ…!」

「がっ…!」


そして、彼女は気を失っていた2人に蹴りを入れて無理やり叩き起こす。


「どこだここは…何がどうなっている?」

「俺たちは…カードにされたんじゃないのか?」

「気が付いたのかな?どこだっていいよね、別に。
 で、まだカードになってなくてよかったと思った?

「は?」

「そりゃ、そうだが…今回に限って何故だ?」


2人起こされて早々、頭の処理が追いつかないようだ。
そして、カードに封印されていないのを不思議に思っているようである。
彼らにとっても敗北はカード化に直結しかけない事態のようである事が伺える。


「なんで君達がカード化されてないって?
 ミミはすぐにでも君達をカードにしたいんだけどね、君達を倒した子がカードにするなって煩くてね。」

「貴様ごと俺たちを倒したあのガキか…」

「うっ…あいつめ、俺たちを生かして何をする心算だ?」

「そんなのミミは知らないよ。
 それにね、今は表へ出てしまってるからね。
 どうもピンチみたいでミミにしてみればいい気味だよ…むみむみぃ〜♪」


ブランたちは本来、憎しみの連鎖を断ちたいのと情報を得るために彼らを拘束したわけである。
だが、そんな事などミシェルにとっては知った事ではない。
自分の大切なものを次々と奪ったエクシーズ次元の侵入者は皆排除したいと考えているためだ。


「成程、俺たちを倒したそいつはいないわけだな?」

「ククク、貴様しかいないならしめたもの…」

「なんてことはないんだよ?君達は拘束されているし、ディスクもないよね?」

「ディスクだと?あっ!」

「奪われたという事は既に壊れているか…ぐっ、これでは抵抗しても無駄か。」


そして、彼らは拘束されている上にディスクもなく彼女に抵抗する手段はない。
ディスクの自壊機能を知っているためか既に壊されてしまっている事を察したようだ。
逃げる手段は絶たれた…2人ともその現実を前に打ちひしがれ、観念した様子だ。


「そして、ミミに君達をカードにするなと言ったその人はこの場にいない。
 これがどういう事かは…わからないほど馬鹿じゃないよね?

「貴様、何を言って…」

「なっ…おい!」

「ミミを邪魔する人がいないって事だよ。
 君達を倒した子は結局ヨソモノみたいだからね…とやかく言われる筋合いはないんだよ。
 君達エクシーズの人たちはミミたちの大切なものを次々と奪っていった。
 だからね…例え君達2人が大した事してなかったとしても、君達の存在がここにあること自体が許されざる罪なんだよ。


彼女からすれば余所者であるブランたちの言う事を聞く気はさらさらないようであった。
そして彼女の憎しみはエクシーズ次元の人たち全体を対象に及んでしまっていた。
背後に誰があるかは関係ない…彼女からすればエクシーズ次元の人がこの融合次元にいる。
それだけで許されざる罪と言う事の様だ。
彼らが現状取り返しのつかない事をした以上、彼らを許すという選択肢は彼女には存在しない。
もっとも…彼女は気付いてはいないものの、やろうとしていることは彼らのやっている事と大差はないが。
先にやったか後にやったか…言葉は悪いが所詮それだけの違いである。


「それにね…勘違いしないでほしいな。
 別にあの子が乱入しなくたって君たち3人をやっつける事はできていたんだよ。
 この場には1人いなくなっちゃったけどね。」

「何…?」

「貴様、あの状況をひっくり返せたというのか…!」

「手札にはダイレクトアタックを防げるカードも握っていたしね。
 何よりあの状況をひっくり返せるカードが…実はあったんだよ?

「あの状況をひっくり返せるカードだと…?」


ブランの乱入で彼女は傷つきながらも辛うじて命拾いしたと思いきや、どうやらそうではなかったらしい。
あのまま展開が続けば恐らくは最後の1人も他の2人と同じ盤面になっていただろう。
あろうことか、彼女はその攻勢をしのいた上で勝てたというのだ。


「そのカードはね…!」


そして彼女はデッキから1枚のカードを取り出し、それを彼らに見せつける…!


「このカードだよ。」


――ゴゴゴゴゴ…!


「何だと…おい、このカードは…!?

「要注意対象とは言われていたが…な、なんてことだ…!


すると、そのカードを見た2人はぞっとした表情で冷や汗をかきつつ慌てふためく。
それも無理はない…彼女が2人に見せたカードの名は『ダーク・コーリング』
ブランや遊矢が警戒している『ダーク・フュージョン』や『超融合』以外にも闇のカードはなくはない。
このカードもまたその闇のカードなのだ。
その証拠に…そのカードを持ったミシェルは現在進行形でどす黒い瘴気を纏っているのだ。


「このカードを見ただけでどうしてそこまで怯えるのかな?」

「当たり前だバカヤロー!貴様、そのカードが何かわかっているのか!?」

「何って…見ての通り、君達を葬る力を生み出すカードだけど?
 それがどうかしたのかな?」

それは俗に言う闇のカード!融合次元の魔女とかいう俺たちの敵が生み出したという!
 集えば、世界を滅茶苦茶にしかねないほどの力を秘めた恐ろしいカードだ!
 詳しくは知らんが、多分そのために貴様らをカードに封印するように指示を出されたんだ!」


その闇のカードがどんなに危険かを教えられているエクシーズ次元の2人は口調が荒くなり、鬼気迫る表情になる。
4つの次元への深刻な事態を回避しようとこのような侵略に至ったようだ。


「むみぃ…そんなすごい力があるカードなんだ。
 それで、世界を滅茶苦茶に…ミミたちはもう大切なものを奪われているから関係ないよね。
 でもさ、君達がいけないんだよ…君達が侵略なんかしなければ、ミミがこの力に手を出す必要もなかったのにね!


しかし、彼女にとってそれでやめさせようとしても逆効果であった。
彼女はこの一連の侵略に大切なものが奪われ、激しく疲弊し、ひどく傷ついており…深い心の闇を抱えた身だ。
良心は既にぶっ壊れており、世界の滅亡をむしろ望むようになってしまっているのだ。


――メキッ!


「ぐおおっ!!…ひっ…!

「がっ…そ、それは…こんなはずでは……!


ここでその闇のカードが発する波動が2人を襲う。
ミシェルが2人に触れていないのにもかかわらず…前後の壁が抉れていった。


「辛い?苦しい?ミミみたいな女の子にこんな事されて屈辱?
 でも、君達のような人たちにカードにされた人たちや残された人たちの苦しみは…こんなものじゃないんだよ。
 大切な人を奪われ、あの頃の日常はもう戻ってこない……僕はこんな世界なんていらない。
 そう考えると、もっともっと君達を苦しませたいって思ってる。
 だけど、もう君達の相手をしているのも疲れるから…」

「楽に…だと?」

「という事は……闇のカードの持ち主が目の前だというのに、最早ここまでか…!」


そして、闇のカードの力で2人を苦しませる事に飽きたようで…!
彼女は闇のカードをデッキにしまうとディスクを操作し始め…!


「それじゃあね、2人ともそろそろオネンネの時間だよ…おやすみ♪」


――ピカァァァァァァァ!!


「「ウボァー!」」


――パラッ…!


ディスクから光を発し、それに2人を包み…ミシェルは容赦なく2人をカードに封印してしまった。
ブランや遊矢の頼みを…無視した形で。


――サッ…!


「ごめん、遥香センパイにコンパセンパイ…もう一緒にはいられないや。
 さっきのカードを問い詰められるわけにはいかないからね。」


――タッ、タッ…


「それにしても、真月君は何を思ってこのカードをミミに渡したんだろう?
 あんなカードを持っていたのにも関わらず、エクシーズも使っていたし。
 むみ……嫌な予感がするけど…ま、いいや。
 いずれにしても、ただのエクシーズ次元の人じゃ…なさそうだけどさ。」


そして、落ちた2枚のカードを拾って彼女はよろよろとしながらこの場を立ち去って行った。
遥香とコンパをこの場に残して…!


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「うぅ…なにやら騒がしいですぅ……」

「休んでいる場合ではないようですね…ミミちゃん?
 ミミちゃんがいなくなった…起きてしまったのでしょうか?捜してみましょう。」


一方…休んでいた遥香とコンパがこの一連の騒ぎに目を覚ますも、一緒に休んでいたのミシェルの姿がない。
そのため、もしかしたら起きているのではと思い…エクシーズの2人が捕えられていたはずの所へ向かうも…!


――ドタドタ…!



「むみむみだけじゃなくて、他の方々もいないですぅ…!」

「それに、よくみたら壁も抉れています…争いの痕跡がみえますね。
 一体、何があったというのでしょう…?」


そこはもぬけの殻であった。
ブランも遊矢もエクシーズの2人もミシェルも誰もいない。
あるのは争いの痕跡である壁の抉れ、凹みであった。


「もしかして、誰かに入られてしまったのでしょうか?」

「わかりません…ですが、ここの空気から嫌なものを感じますね。
 いずれにしても、誰もいなくなってしまった…穏やかではありませんね。
 ブランさんは外を見張っていたとは聞いていましたが…!
 暫く戻ってこないようでしたら、探しに行きましょう。」

「みんな無事でいてほしいですぅ…」


そして遥香が嫌な空気を感じたようであるが…それが闇のカードによるものだとは知る由もない。
闇雲に捜し回るわけにもいかず、ここは暫く待ってみる事にした…その矢先。


「はぁはぁ…みんな、無事か!

「榊さん、無事だったのですね…って、そのおぶさっている子はブラン?
 何か、外で大変な事が起きていたようでしょうか?」


ここで傷ついたブランを背負った遊矢がマンホールの方向から帰還した。
遥香たちはまだ知らないが、ベクターやガナッシュの襲撃から戻ってきたのだ。


「ああ、外に妙な連中が現れてな。
 俺が駆けつけたところでその連中は撤退したんだが、ブランが危うくカードにされかけた。」

「なんとかカードにされずに済んだようですが、間一髪のようですね。
 ですが、いつ誰が消えてもおかしくないのがこの戦争です。」

「ああ…次元戦争の恐ろしさを経験したよ。
 彼女や俺の慢心もあるが…変なタイミングで乱入した奴のせいで…!
 それで傷ついたブランを休ませてやりたいところなんだが…」

「そうですね、わたしとコンパは医者のたまごでしたので診てみますが…」

「けほっ、けほっ…!」

「ブランさん、大丈夫ですか!?」

「ここに来た途端、咳き込むなんて…!」


実際にはブランはカードに封印するビームを受けているのだが…女神故にカードにされなかった。
とはいえ、混乱を避けるためにあえてここは嘘をついている。

それは兎も角、闇の瘴気に中てられたのか気を失っている中でも咳き込む彼女。
ここに置いておくのはよろしくないようだ。


「いろいろ気になる事はあるけど、まずはブランを安静にさせないと。
 かといって、ここはちょっと拙い…場所を変えよう。」

「そうですね…」


その彼女の様子を見て、一同は場所を変える事にする。


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「ここで横にさせてと…それじゃあ、看病を頼む。」

「はいです…未熟ですが、やってみるです!」


遊矢はブランを横にさせてコンパに看病を任せる事にした。
コンパがブランを診ている内に、遥香は遊矢に話を振る。


「とりあえず、2人がここへ戻ってきて何よりです。
 遠い次元からわざわざやってきてくれたあなたたちが頑張って下さっている中、わたしたちだけが休んでいて情けなく思います。」

「まぁまぁ、いろいろ気負いすぎてもそれはそれで問題だしな。
 君たちが限界に近く、俺らが余力があった…それだけの話さ。
 とはいっても、今回ばかりは結構ヤバかった。
 彼女…ブランのあの状態を見ればわかると思うけど…」

「ぐ……あ…」

「うぅ…どうも、麻酔弾のようなものが撃ち込まれていたみたいです。
 早く取り除いてと…これでしばらく経てば目覚めると思いますが時間がかかりそう。
 あ、遊矢さんはこっち見ちゃ駄目です。」

「お、おう…」


その傍らコンパがブランの上半身の服を脱がして診察すると、いわば麻酔のようなもので昏睡している事がわかった。
コンパはガナッシュが撃ち込んだ麻酔弾を確認し迅速に取り除くなど意外と手際よく処置している事が伺える。


「しかし女神に効く麻酔弾って事は…俺たちの戦うべき敵は本格的に女神を潰そうとしてるわけだな。
 しかも、ブランを執拗に狙っている感じだ。」

「敵…?それってエクシーズの連中ですよね?」

「いや、今のは元々は同じだが今は離反した奴らだ…多分な。
 というのも俺たちの次元でエクシーズの連中と思わしき奴らが同士討ちを始めたんだ。

「同士討ち…?」

「どういう事なのです?」


その間に遊矢は自分たちが追っている敵について語る。
エクシーズ次元の人たちが同士討ちをしていた事に衝撃を隠せない2人である。
彼らが敵対していたのはいわゆる理想のために動いている者達である。
しかし、エクシーズ次元の者たちが皆そういうわけではない。
ついていけなくなった者や、裏でこそこそ独自の動きを見せる反乱分子もいるのだ。


「そもそも俺たちの次元に来たエクシーズ次元の連中はだいたい2通りに分かれていた。
 1つ目は俺たちの次元に逃げ込んだ重要人物の確保と反乱勢力の排除を主な目的としていた連中…君たちが知っているのは彼らだろう。
 もう1つは混乱に乗じてか明らかに意向に沿わないと思われる勝手な動きを見せた連中…俗に言う反乱勢力だ。」

「反乱勢力…あの連中は一枚岩ではなかったのですね。」

「ちなみに反乱勢力を排除する連中は『邪魔さえしなければ』自発的に俺たちを襲う事はなかった。
 勿論、彼らの目的の邪魔をした場合はその限りではないけどな…俺たちの知り合いも何人かカードにされたよ。
 俺たちへの警告を兼ねての見せしめだろうがな。」

「そうだったのですか…」

「それで、何が言いたいのです?」


ここまで反乱勢力がいる事とスタンダードで何をされたかについて話したが、コンパが疑問に思う。
それは、これで何が言いたいのかという事である。


「融合次元の住民に対しては問答無用にしろ俺たちスタンダード相手の場合は邪魔にならないなら問題ない…という印象を受けた。
 つまり、君たちを排除しなければならない理由があるという事だろう。」

「わたし達を消す…理由ですか?」

「ああ…俺の推測だが反乱勢力の背後にいる黒幕の力を少しでも削ぐのが目的なんじゃないかと思ってる。」

「あなたは何を言ってるのです?」

「…仰る意味が分かりません。」


ここで遊矢がこう述べる。
侵略されるのには理由がある…と。
そして、黒幕の力を削ぐ…これもまた彼女たちにとっては意味の分からない事である。
何故、その力を削ぐのに自分たちが犠牲にならないといけないのか…と。
静かながら、2人の言葉にはそんな怒りが見え隠れしていた。


「まぁまぁ…怖い顔せず落ち着いてって。
 で、闇のカードの存在を知っているか?これはそれが関わってくる話だ。」

「闇のカードですか?」

「そういえばさっき合流したところでも嫌な気配が…!
 そうだ、ミミちゃんが…気が付いた時にはいなくなってしまいました!」

「話を振る暇もなかったがあいつ、やはりいなくなってしまったのか…!
 エクシーズの2人もいなくなっているようだし。
 もしかしたら、彼女がその闇のカードを持っていたのかもな。
 闇のカードというのは…持つ者の精神や体調に異常をきたすほどの悪質な力を秘めた恐ろしいカードだ。
 恐らく、その黒幕…ブランから聞いた名はマザコング?が生み出したカードだ。」

「マザコング…?」

「はへ?マジェコンヌの事ではないですか?話に聞いた事あったようななかったような?」

それだ!そいつがこの次元戦争を掻きまわしている俺たちの敵らしいんだ。」

「でも、名前だけしか聞いた事がないのです…力になれなくてごめんなさいです。」


ここでようやくミシェルたちの失踪について触れる事となった。
そして並行して闇のカードについて触れる。
遊矢やブランが打倒すべき黒幕の名前もでてくる。


「その曰くつきのカードを使うと使用者を蝕むだけでなくこの世界全体もやばい事になりかねないらしい。
 実際には本当にそうなるかは兎も角、闇のカードの実物を見た事はある。
 前にそこのブランがこの次元の女神から奪い取ったその闇のカードで体調を酷く崩したのを見た。
 実は俺たちはルウィー教会という女神信仰の団体所属なのだけど、そのリーダーがその闇のカードを消し去り力を使い果たして眠りについた。
 勘だけど…君達融合次元の住民以外は扱えない。
 そして、その黒幕が利用するためにここの住民の何割かにばら撒いたらしい。
 恐らく、その力を危険視されたがためにここは狙われたんじゃないかと思う…無差別に。」

「そんな出鱈目な…!」

「待ってほしいです、そのカードの名前って…!」

「…俺たちが実際に見たのは『超融合』。
 そして、名前だけ知っているのは…『ダーク・フュージョン』だ。」

「「ダーク・フュージョン!?」ですか!?」


闇のカード云々がここが襲われた原因という話を聞いてデタラメだと一蹴するも…!
『ダーク・フュージョン』の名を聞いた所、表情が一変した。
どうやら、心当たりがあるらしい。


「そんな…それはエクシーズ次元の連中が侵攻してくる前から一部の間で問題視されていたらしいカードと聞いた事があります。
 当時はわたしもコンパも…ミミちゃんもデュエルのデュの字さえも聞いた事なかったので詳しくはわかりませんが…!
 そういえば…思いの外、何か息苦しかったような覚えがあります。」

「やはりその頃から蔓延してたのか…!
 ちなみに今はうちでこき使っているエクシーズ次元出身の知り合いから次元戦争の引き金を引いたのはこの次元の人たちと聞いている。
 この次元に調査に来たらしいエクシーズからの調査員がほぼ全員、融合次元の者に手をかけられたという事件があったらしい。
 元々は穏便に済ませたかったんだろうけど、これが切欠となって危機感を抱いて侵攻に踏み切った…というのが見解だ。」

「ここの人たちが引き金を…信じろと言うのですか?

「残念ながら…さっきの嫌な空気と闇のカードの存在からも事実で間違いないと思う。」

「そんなの嘘だと言ってほしいです…」


そして、遊矢から無慈悲にも暗に『戦争を引き起こしたのはここの住民だ。』と告げられ、2人はショックを受ける。
一方的な被害者だと思っていたのだが、ここの人たちが大変な事をしでかしたがために侵略されてしまったのだ。
エクシーズの人たちが侵略する大義名分を…自分たちが知らぬ間に手に入れてしまったのである。


「もっとも、次元戦争を間接的に引き起こしたのはその闇のカードを配布した連中だ。
 そして、エクシーズの連中も最終的にはその黒幕の打倒を目論んでいるはずだ。
 本来ならなんとか手を取り合えればいいんだが…」

「どんな事情であれエクシーズの連中のしてきた事を許しておく事はできません。
 この街を壊し、大勢の人たちを消し去り、わたしたちの大切なものを奪ってきた…その事実は変えようがありませんから。」

「わたしも同意見です。」

「だろうとは思っていたよ。
 スタンダードで人がカードに封印される様を見ている俺もあいつらの所業は許せないとは思う。
 でも、その感情のまま戦っていては黒幕の思う壺だと思う。


本当に倒すべき敵は共通しているはずとはいえ、流石にこの状態で手を取り合うのは困難なのは明白であった。
とはいえ、このまま争っていても黒幕の思う壺であるのは確か。


「なら、どうしろというのですか?」

そこが難しいんだよね…できればヘイト対象を黒幕連中に持っていければいいのだけど…!
 次元戦争がそうなるように仕向けたマジェコンヌを中心とするの連中の所業はもっと許せないと思うけどな。
 あいつらが何を考えているのかはわからないけど、碌でもないのは確かだ。」

「目先の事より根本的な原因を叩く…結局はそういう事ですね。」

「ああ、その認識でいい…目先にばかりとらわれてはいいようにされるだけだからな。
 相手を蹂躙するというような後ろ向きではなく、平和と笑顔を取り戻す…その方向の方がいい。

「納得は難しいですが…そうですね、わかりました。」


目先に囚われては相手の思う壺…ならば、根本的な原因を取り除くしかないわけだ。
結局のところ争う理由をなくせばそれに越したことはないのだ…感情面は兎も角。


「この話は一先ずこの辺にしておこう…ところで、ブランの様子は?」

「うぅ…」

「あっ、丁度目を開け始めたです!」

「ここはどこ?オレは誰かしら?」


ここでブランがようやく目を覚ましだした。
寝ぼけているのかはたまた記憶をなくしているのかあるいは…?
とにかく、かつての一人称でこんな事を言い出す始末であったが…?


「気が付いたな…何もかも忘れてるなんて冗談はやめてくれ?
 俺が駆けつけて何とか事なきを得たけど、こっぴどくやられてたぞ。」

「うん、それは冗談だ。
 でも、わたしはここにいる…本当に今回ばかりは駄目かと思ったよ。
 それと、迂闊に単独行動するもんじゃないって思い知らされたよ。
 後、体があまり…」

「まだあまり動けないです…強い麻酔を撃ち込まれたみたいですから。」

「あの卑怯者め…次会ったらあいつは絶対ぶっ飛ばしてやるからな。」


流石に冗談らしく、ちゃんと前後の事は覚えていた。
対女神用の麻酔のせいで思うように体が動けないようだが。
それもあって、ガナッシュのやった事に相当ご立腹の様子であった。

一方、遊矢はブランにカード化する光線を受けてもカード化されなかった事は話していない。
それを聞けば、ブランが余計に無茶をする事は明白だからだ。


「そうだ、わたしのデッキは…!」

「あいつが逃げる時に落としていったから無事だ…1枚を除いてはな。」

「1枚を除いて…まさか!


――パラパラ…!


そして、彼女は身体が言う事を聞かない中…危機感を感じて自らのデッキを確認していく。


「ああっ…やっぱりオッドシェルが奪われたみたいだ…!」

「くそ…奴らの狙いはオッドシェルだったか…!どっちだ?」

「…ペンデュラムの方だ。
 儀式の方じゃなかっただけまだマシだけど、それでもキツイ。」


そして…奪われたのは彼女の一応のエースモンスターである『オッドシェル・P・ロブスター』であった。
エースでありながらサーチカードの役目を担っているこのカードの損失の影響は…決して小さくない。


「早く取り戻したいが…このザマじゃなぁ。」

「それに、他の次元へ逃げたみたいだ…闇雲に探しても駄目だろうしなぁ。」

「あなたのそのカードは絶対的なエース…とまでは行かない印象でした。
 まさか、そのカードがないだけで自信がなくなりましたか?」

「大丈夫だ、それはない。
 それにあいつらは知らないだろうけど…あのカードは言葉は悪いけどいわば、抜け殻のようなものだ。
 ちょっと動きが悪くはなるけど、他のエース級は健在だからな。
 それにいずれまたこれを奪いにやってくるだろうから、その時に奪い返してやるつもりよ。」

「抜け殻?どういう事かは置いといて、それを聞いて安心しました。


どうも、他のカードは儀式の方のオッドシェルを含め健在であった。
力の大部分は一部を儀式の方に受け継がれたようである。


「あっちはカードとしては機能するけど、抜け殻となっているから普通のペンデュラムカード同然になっている。」

「特別なカードではなく普通のカードと…だから、抜け殻なのですね。」

「でも、ペンデュラムカードという時点で普通のカードの範疇から外れている気がするですが?

「それは言わないで…」


つまり、ネプテューヌのカオス・リベリオンやベールのミラージュウィングのような特別な力は儀式の方のオッドシェルに移されたという事だ。
抜け殻という表現を使ったのは何の変哲もないペンデュラムカードになった事の表れである。
もっとも、ペンデュラムカードという時点で普通のカードではないという指摘も確かではあるが。


「むしろ問題は相手側がペンデュラムカードを量産しやすくなった可能性が高いって事だ。
 わたしをこんな目に遭わせたガナッシュの野郎がただでさえペンデュラムのプロトらしきものを使ってペンデュラム召喚していた。
 ただでさえ養殖ものからペンデュラムカードを開発できる中で、自然発生した天然もののペンデュラムカードが奴らの手に渡った。」


ブランが懸念しているのはガナッシュらアヴニールがペンデュラムを量産しやすくなったという事だ。
抜け殻とはいえ本物のペンデュラムなのだ。


「天然?養殖?どういうことです?」

「召喚エネルギーってものがあって、人工的に開発したものより何らかの拍子で発生・変異したペンデュラムカードを使った方がエネルギーが大きいはずなんだ。
 それを前者は養殖、後者は天然って呼んでいて、俺たち2人が使っているのは基本的に後者の方だ。」

「まるで魚の養殖みたいな言い方ですね…じゅるり。」

「やめろォ!あくまで例えで天然だからって食べてもおいしくないからな!」


なお、あくまで例えであって、食べ物でも何でもない。
それは兎も角…!


「それはさておき、あいつらがペンデュラムカードを量産してペンデュラム召喚を頻繁に行ってくる時期が来るだろうな…!」

「ああ、それが懸念とも言えるはず。
 あなたたちはペンデュラムの恐ろしさをわたしのデュエルで目に焼き付けたはず。
 それが今後、敵として立ちはだかるという事よ。」

「ですが…逆に言えば対策さえしていればあまり怖くはないように思えます。」

「…確かにペンデュラムは対策されると厳しいわね。
 とはいえ、流石に一辺倒というわけにはいかないし従来通りの戦術でも襲ってくるでしょうね。」


今後敵が頻繁にペンデュラム召喚を使ってくるという懸念があるのだ。
もっとも、敵が馬鹿の一つ覚えのようにペンデュラムを使ってくるようなら対策はしやすいといえるが。
流石にそう来るほど甘くはないだろうが。


「ま、それはそれとして…いつまでも取られっぱなしも嫌なものだからな。
 いずれ取り返したいものだが…とりあえず課題としては…」

「敵の乱入だな…遊びじゃないけど本来1on1想定の対戦ゲームだからなぁ。
 流石に数の暴力で攻められると厳しいところはある。」

「乱入ペナルティを弄れればいいんだがなぁ…駄目もとでこれを使ってみるか。」

「アクションデュエル導入のパッチか…入ってるとは思えないけど…!」

「アクションデュエル…?」


流石にアクションデュエルとかにはチンプンカンプンな様子の2人である。


「アクションデュエルって何です?」

「専用のアクションフィールドをデュエル開始時に発動し、フィールド内にカードが散らばるからそれを拾いながらデュエルする感じよ。
 詳しい事は実践する事になったら話すわ…ただ、モンスターを乗りこなしたりとか基礎の身体能力が重要となるわ。」

「そんなデュエルがあるのですね…1ターンに何枚も拾って遅延とかおきたりしないのかしら?」

「普通に考えたらそう思うが違うんだなこれが。」

「拾えるのは1ターンに1枚だけ…しかも相手が取った場合は取れないわけよ。
 それにプレイせずに拾う事ばかりにかまけて1分経ったら失格するからね。」

「デュエルとしては成り立っているわけなのですね。」


なのでここでアクションデュエルに関して大雑把な説明をしておく。
本当にやるのかは兎も角、今後一緒行動する事になるだろうこの2人には覚えておいた方がいいだろうという判断だ。


「まぁ、こっちのデュエルの話はここまでにして…」

「ここからどう動くべきか…よね。
 あのミシェルって子もいなくなってしまったようだし…」

「ようやくそこに触れるか。
 エクシーズの2人もいなくなってしまったしな。」

「はぁ…拙い事になったわね。」


そしてため息をつきつつも今後の事について話し合う事になった。
ミシェルらが…行方知らずになった事などを。








――――――








その一方、とある場所では…!


――コンコン!


「ふむ…ガナッシュか、入れ。」

「失礼します、こちらアヴニールのガナッシュ…只今戻りました。
 申し訳ありません…スタンダード女神の抹殺には失敗しましたが、指定されたカードを奪い取る事には成功しました。」

「構わん、覚醒してしまっていた以上は貴様にはそれは荷が重いだろうからな。
 兎に角、そのカードを渡してもらおうか。」

「了解しました、こちらです。」


ガナッシュが依頼主のローブを纏った女…コンベルサシオンに経過の報告に現れた。
そして、要求通りにブランのデッキから抜き出した『甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター』を彼女に渡す。


「ふむ…何だと?

「どうかされましたか?コンベルサシオン。」

「これは確かにこちらの要求通りのカードなのは間違いない。
 だが、どういうわけかこのカードからは大して力が感じられん…何事だ?」


しかし、そのカードからはあまり力が感じられなかった。
それもそのはずだ…そのカードのデュエル外での力は既に儀式の方のオッドシェルに移されてしまっているのだから。
もっとも、彼女はそれを知る由もないが。


「おのれ、このカードには何の価値もなくなってしまっていたわけか!
 ちっ、このカードは貴様に返してやる!報酬はそれで我慢しろ!


――パッ、パシッ!


「そんな殺生な…何か気に障る事でも!?」

「この馬鹿が!何故デッキごと奪わなかった!
 そのカードはもはやただの抜け殻になっているではないか!」

「ひいっ…申し訳ありません!


デッキごと奪わず、力のなくなったカードだけを持って帰ってきた事で彼女はおっかない表情で激怒してしまった。
もっとも、本来要求されたカードではあるので理不尽な仕打ちではあったが。


「まぁいい、こちらの指示も悪かった。
 ならば再びチャンスを与えてやるまでだ…精々喜ぶがいい。
 そのカードを餌にするなりし、今度はスタンダードの女神のデッキを奪って来い…いいな?」

「…了解しました、感謝いたします。」

「なら、さっさと行って来い!」

「…はっ。」


今度はブランのデッキをきちんと奪ってくるように要求する。


「それと…言い忘れていたが、1つ確認しておきたい事がある。
 奴のデッキの中に『星読みの魔術師』や『時読みの魔術師』なるカードはなかったか?」

「時読みに星読み…?」


ここで2枚のカードの存在があったかどうかを確認しておく。
この2枚のカードと言えばブランが最初に使用したペンデュラムカードである。
もっとも、そのカードの現在の持ち主はカードに封印されているのだが…?


「残念ながら、そのような名前のカードは入っておりませんでした。
 違う名前の『魔術師』なら見受けられましたが…?」

「ふむ、まぁいい…これはスタンダードにいるマジックに確認せねばな。

「?」


彼女はマジックなるスタンダードにいる何者かに直々に確認する事をボソリとつぶやいているが、ガナッシュには聞こえていないようだ。
コンベルサシオンは改めて面と向かい、話を切り出す。


「話は以上だが、出発する前に例の場所にいるアレも連れて行くがよい。
 アレは性格面では問題はあるが実力面では役に立つはずだ。」

「アレというと…成程。
 連れていけるかは兎も角、感謝いたします…では。」


そして、彼に『アレ』なる存在を連れていく事を勧めるコンベルサシオン。
『アレ』という言い方からして普通じゃなさそうだが…?
どうやらここにはいないようで、ガナッシュは礼を言いつつここを立ち去った。










 続く