Side:???


俺がけしかけた奴らを簡単に蹴散らしたガキをつけさせてもらったが、また面白いものが見れたよ。
末端とはいえアヴニールの連中を『壊獣』なるモンスターで3人纏めて撃破したところを見せてもらったよ。
こいつには流石の俺もちょっとは警戒しておかないとならなそうだな。
そうでなくては面白くもなんともないがな。

また、現地の住民ごと蹴散らしたというのも興味深い。
どうやら奴らはどっちの味方でもない…そんなスタンスの様だね。
ま、そう言った事が現地の住民の心の闇を生み出すから俺としちゃ都合はいいんだがな。

で、今は駆けつけた銀髪の女とデュエルをおっぱじめているってわけだ。
今、俺も詳しくは知らない『ペンデュラム』って奴を『壊獣』を使っていた方のガキが使ったな。
オッドシェル・P・ロブスター…そしてノワールの奴に似た顔立ち。
やはりあのガキはどこかの女神さまって奴だ。
ふはははは!実にいいものが見れた。
どうやら、このガキが俺たちのターゲットで間違いなさそうだぜ。

それじゃ、奴らがデュエルしてる真っ最中に俺はとんずらするとするかな…くくくくく!
よからぬ事を始める準備をしようではないか!!


――シュッ…









超次元ゲイム ARC-V 第74話
『海竜神の怒り』










ブラン:LP4000
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200

遥香:LP3800
海竜−ダイダロス:ATK2600



Side:ブラン


コダロス、チュウダロスと来て、今度はダイダロスの登場となった。
彼女は下級モンスターの効果での除去や相手ターンでの融合召喚などこちらの出鼻を挫いてきた。
そして、今度は何を狙ってくる?


「では、覚悟願います…わたしのターン、ドロー!」


…どうやら、このターンで決めに行く心算の様であった。


「まずは魔法カード『シー・サルベージ』を発動します。
 このカードの効果で墓地の『海』と攻撃力1500以下の海竜族1体を手札に加えます。
 この効果で加えるのはルール上『海』として扱われる『伝説の都 アトランティス』と『海洋の騎士』です。」


まずは『海』を手札に加えてくる立ち上がり。
という事はやはりダイダロスの効果を狙っているのか?


「そして、自身とレベル5以上の海竜族のチュウダロスを除外し、『大海洋』のもう1つの効果を発動します。
 この効果でデッキからレベル7か8の海竜族1体を手札に加えます。」


ここでレベル7か8の海竜族を手札に…?


「この効果で手札に加えるのは…レベル8の『海竜神−ネオダイダロス』です。」

「ネオダイダロス…!」


今手札に加えたのは、ダイダロスの上位種の特殊召喚モンスター…!


「そして、このネオダイダロスは自分フィールドの『海竜−ダイダロス』1体をリリースした場合のみ特殊召喚できるモンスターです。
 ダイダロスをリリース!大海原の遥か彼方より降臨せよ!レベル8『海竜神−ネオダイダロス』!!」

『グオォォォォォォォォォォ!!』
海竜神−ネオダイダロス:ATK2900



そして、順当に来やがった…このネオダイダロスが…!
こいつの効果は…コダロスなどと同じ発動条件だけどかなりやばい部類に入る。
そして彼女は、先ほど『海』に準ずるカードを手札に加えている以上…!


「はるはる先輩の切り札の1体が来たです…」

「ダロス系の最上位種が、とうとうお出ましか…!
 くっ、罠カード『貪欲な瓶』を発動!
 墓地の『渦潮のアントリオン』『ガリデス・ギルマン』『イージス・キャンサー』『浮上』『シンキング・レガシー』の5枚をデッキに戻しシャッフル!
 そして、デッキから1枚ドローする!くっ…!」


ドローしたカードは…くっ、ここで『シンキング・レガシー』をまた引いてしまったか。
手札には一応あれはあるが…ここは、流れに身を任せるしかない。


「ここで手札を増やした所で無駄です。
 そしてフィールド魔法『伝説の都 アトランティス』を発動し…」
海竜神−ネオダイダロス:ATK2900→3100 Lv8→7(DEF1600→1800)

甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200→2400 Lv6→5(DEF1700→1900)



そして彼女は『海』扱いのカードをフィールドゾーンに置いてから…!


「海として扱われるアトランティスを墓地へ送り、ネオダイダロスのモンスター効果を発動!」
海竜神−ネオダイダロス:ATK3100→2900 Lv7→8(DEF1800→1600)

甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2400→2200 Lv5→6(DEF1900→1700)



「っ…!」


即座にそれを墓地へ送って効果を発動してくるわけだ。
今、これを防ぐ手段は…ない。


「この効果により、このカード以外のお互いの全ての手札・フィールドのカードを墓地へ送ります!」

「フィールドどころか、手札ごとか…!」


そう、こいつの効果は…フィールドどころか手札まで全て墓地送りするというとんでもないもの。
この効果が決まれば、相手は成す術もなく敗北の道を突き進む事になる…並大抵ならな。
手札ごと一掃するからな。


「そういうことです。
 これで…あなたの反撃の眼を断ち切らせていただきます。
 海竜神の怒りにより、周囲のものを全て海に沈めよ!『レイジング・メイルストローム』!!」


――ザッバァァァァァッ…バッシャァァッァァ!!


「っ…だけど、ロブスター・カノンはオッドシェルと同様にペンデュラムモンスター…!
 フィールドから墓地へ送られる場合、代わりにエクストラデッキに送られる!」


実はこいつが出るかもと警戒して出していたロブスター・カノンはエクストラデッキに送られたけど、それ以外のカードは成す術なく墓地へ流されてしまった。
これでこの場に残ったのはネオダイダロスだけとなった


「ですが、そのペンデュラム召喚がどういうものなのかを知る機会はなくなりそうですね。
 そして、今しがた手札から墓地へ送られた『海洋の騎士』の効果を覚えてますよね?」

「ええ、それでまた『海』を貼るようね…!」

「そうです…この効果により再び墓地から『伝説の都 アトランティス』を直接発動します!
 この効果により、ネオダイダロスは攻撃力3100となり、レベルも7となります。」
海竜神−ネオダイダロス:ATK2900→3100 Lv8→7(DEF1600→1800)


「攻撃力を挙げただけでなく、シンクロやエクシーズをしにくくしてきやがったか…!」


そして、海用の騎士の効果で海を墓地から発動された事でこれで再びこの効果を発動できるようになってしまったわけだ。
相手ターンには使えないとはいえ、プレッシャーとしては十分威力を発揮する。
さらに手札・フィールドの水属性モンスターのレベルを下げる効果が地味にこちらに効いてくる。
レベル5のモンスターならリリースなしで召喚できるという点では恩恵はなくはない。
が、わたしのデッキの場合はレベル6と比べてレベル5の割合はそこまで多くはない。
それ以上にレベルの足し算であるシンクロ召喚や同じレベルのモンスターを並べ、そのレベルと同じ数のランクのモンスターをと呼び出すエクシーズ召喚は非常にやりにくくなる。
シンクロやエクシーズを披露してしまった事がここで仇となった形だ。


「さらに効果によって墓地へ送られた『海皇の救護兵』の効果で1枚ドロー。
 保険ではありますが、このターンで決めにいきます。
 墓地から『海竜神の咆哮』を除外し、ネオダイダロスを対象に効果を発動します。
 このターン、ネオダイダロスは2回攻撃が可能となります。」
海竜神−ネイダイダロス:ATK3100(2回攻撃)


「2回攻撃を付与した…!」

「これが決まればはるはる先輩の勝ちです。」


そして、2回攻撃を付与した以上はこのターンで決めるつもりってわけか…!


「バトル!ネオダイダロスで1回目の攻撃!『タイダル・バースト』!!」


――ドッバァァァァァァァ!!


「うわぁぁぁぁっ…!!」
ブラン:LP4000→900


「通った…ネオダイダロスで2回目の攻撃!これで終わりです!」


だけど、この攻撃を防ぐ手段がないわけじゃない!


「そうはいかない!この直接攻撃宣言時に墓地から『ウェーブ・ガードナー』を除外し、デッキから水族・魚族のモンスター1体を墓地へ送って効果発動!
 その直接攻撃を無効にする!波のバリアがわたしを守る!」

「っ…躱された!?」

「ネオダイダロスの効果が逆に裏目に出たですか!?」


危ない…墓地へ送られた手札にたまたまこいつがあったから助かった。
ダイダロスのまま効果を使われていたらそれこそ一巻の終わりだったかもしれない。
そう考えると、コンパって子の言う通り皮肉ながら手札全て墓地送りにある意味救われたのかもしれない。


「さて、手札はさっきドローした1枚しかないようだけどターンを続けるかしら?」

「いいえ…でも、あなたの手札はありませんしフィールドもがら空きです。
 一方のわたしのフィールドにはネオダイダロスとこの手札…そしてあなたの水属性のレベルを下げるアトランティスがあります。」

「確かに絶体絶命ね…でも、勝負は最後まで分からないわ。」

「これをひっくり返せるというのであれば、やってみせてください。
 その時は観念してあなたを認めましょう。
 わたしはカードを1枚伏せてターンエンドです。」


確かに彼女の言う通り、わたしには手札にもフィールドにもカードはない。
しかも残りライフは1桁…割と絶望的だ。
だが、希望は最後まで捨てるつもりはないわ…この状況こそ女神の運命力が試されるもの。


「それに、希望はまだ残されているからね。
 ここからひっくり返して見せようじゃない。
 さあ、奇蹟のカーニバル…開幕だ!わたしのターン、ドロー!」


ドローカードは…よし、希望は残っている。


「…その1枚ドローでなにができますか?」

「動く分には問題ないと言っておくわ。
 その前に墓地のレベル3以下の水族のエビカブトを除外し、『ゾエア・シュリンプ』の効果を発動!
 これによりこのカード自身を攻撃表示で特殊召喚する!
 レベル1だからレベルはこれ以上下がらない。」
ゾエア・シュリンプ:ATK100→300 (DEF500→700)


「いつの間にか墓地へ…!
 攻撃力100のモンスターを蘇生ですか。」

「最初のシンキング・レガシーの効果の時に落としていたわ。
 続いて今ドローした『ウォーター・ペインター』を召喚!」
ウォーター・ペインター:ATK900→1100 Lv3→2(DEF1400→1600)


「自身とゾエア・シュリンプをリリースし、ウォーター・ペインターのモンスター効果を発動!
 自身を含む水属性2体をリリースする事で、デッキから2枚ドロー!」


ここでドローしたカードは…よし、これだ。


「さて、今まで搭載しているとだけは教えていたけど…見せてあげるわ、ペンデュラム召喚を!」

「ペンデュラムですか…!?」

「ついに来ますか…!」

「っと、その前に墓地の『ペレット・シュリンプ』を除外し、墓地の攻撃力800以下の通常モンスター『ブライン・ロブスター』を対象に効果発動!
 ペンデュラムでありながら通常モンスターのこのカードを手札に加えるわ。」

「モンスターとしての効果が無ければ、通常モンスター扱いになるわけですか。」

「例え、魔法扱いとしてのペンデュラム効果があってもね。」


こいつはウェーブ・ガードナーのコストでデッキから墓地へ送っておいたモンスターだ。
墓地にペレット・シュリンプが落ちていたから、間接的にサーチさせてもらった事になるわ。


「そして、ここからがペンデュラムの本番だ。
 わたしはスケール2の『ロブスター・シャーク』にスケール8の『ブライン・ロブスター』をセッティング!」
ロブスター・シャーク:Pスケール2
ブライン・ロブスター:Pスケール8



「2枚のペンデュラムが揃ったです…」

「スケールの値は俗にいう振れ幅。
 ペンデュラム召喚によって、1ターンに1度、この値の間のレベルのモンスターを同時に特殊召喚可能!」

「同時召喚ですか!?」

「スケール2と8…という事は3から7!?
 つまり、最上級のモンスターをいとも簡単に!?」

「そういう事…この場合はアトランティスがあるから『手札からは』元々のレベルが4から8のモンスターが出せるわけだけど。」

「手札からは…?
 そういえばエクストラに送られたモンスターがいましたね…まさか!?」


やはり彼女は察しがいい。
すぐにペンデュラムの一番凄まじい部分を見抜いたようだ。


「そのまさかだ!百聞は一見に如かず、とくと括目しやがれ!ペンデュラム召喚!来て、わたしのモンスターたち!
 手札からはレベル5扱いの『甲殻掃兵ノズル・スィーパー』
 エクストラデッキからレベル6の『甲殻砲士ロブスター・カノン』
 そして、わたしのエース!レベル7の『甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター』!!」

『ヘウゥ…!』
甲殻掃兵ノズル・スィーパー:ATK1900→2100 Lv5(DEF1500→1700)

『ヌンッ…!』
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200→2400 Lv6→5(DEF1700→1900) forEX

『ウオォォォォォォォォォ!!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500→2700 Lv7→6(DEF2000→2200) forEX


「手札からだけじゃなくて、エクストラに送られたあの2体もでてきたですぅ!?」

「召喚するレベルに適合したスケールを2枚揃える必要はありますが、これは…!
 上級クラスを含む複数体同時召喚に加え、事前にエクストラに送られたモンスターまで再度展開するなんて…!
 ペンデュラム召喚…これはとんでもない召喚法です…!
 何かの間違いと言いたいところですがここまでディスクがエラーを起こしていないって事は、これが現実というわけですか…!」

「融合召喚やエクシーズ召喚などは切り札級を出す縦とするなら、これは複数同時召喚ゆえに横だからベクトルは違うけどな。
 いずれにしろ、弱点を突かれない限り展開力と持久力で相まみえるものを圧倒する。
 これがスタンダードならではの召喚法…ペンデュラム召喚だ!
 新しい召喚法故に使えるのはまだ一握りだけど、この次元にいる使用者はわたしだけじゃないわよ。」


そして、ペンデュラム召喚を披露したところ…やっぱり驚くわよね。
従来の知られた召喚法とは違うベクトルだけど、それでも強力な事に変わりはない。
もっとも、ただ並べただけで終わらせる気はないけど。


「そんなわけでこの3体で反撃だ!
 手札から特殊召喚されたノズル・スィーパーのモンスター効果を発動!
 このカードが手札から召喚・特殊召喚された時、相手の魔法・罠カード1枚を対象にしデッキに戻す!」

「しかも、ここで魔法・罠のデッキバウンスですか…!」


ロブスター・カノンも手札からの展開で発動できる効果はあるけどね。
あれが充実していればここで伏せカードを戻したいところだけど、生憎アトランティスの効果でレベルを下げられている。
実のところ、今までのわたしのデッキならここは全員守備にしておくが…!


「対象は…フィールド魔法のアトランティス!『スィープ・ストリーム』!!」

「えっ、そっち…!?わかりました、アトランティスはデッキに戻されます。」

「これでフィールドの水属性の攻守とレベルは元に戻る。」
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2700→2500 Lv6→7(DEF2200→2000)
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2400→2200 Lv5→6(DEF1900→1700)
甲殻掃兵ノズル・スィーパー:ATK2100→1900 Lv5→6(DEF1700→1500)

海竜神−ネオダイダロス:ATK3100→2900 Lv7→8(DEF1800→1600)



これで攻守は兎も角、レベルが元に戻った。
ようやく栗音から貰ったアレを使わせてもらう時が来たようだ…運は絡むが頼むぜ。


「アトランティスを除去してレベルを変動させたという事は…まさか!」

「そのまさかだ!わたしはレベル6に戻ったロブスター・カノンとノズル・スィーパーでオーバーレイ!
 強欲な力の根源を背負いし者よ!逆境に立ち向かう者に希望を託せ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク6!強欲な瓶に潜みし狩人『強欲なタガメ』!!」

『ぐふぐふぐふ…!』
強欲なタガメ:ATK2300 ORU2



「ランク6のエクシーズまで……って、これはわたしを馬鹿にしているのですか?」

「強欲な瓶から虫みたいな手足が生えてかっこ悪いですぅ…」

「思った以上に微妙な反応ね…自分でもそう思うけど。」


ここで初の上級ランクのエクシーズ召喚を決められた。
…のはいいのだけど、それが強欲な瓶を背負った…あるいはコンパの言うように瓶から手足の生えたような姿のタガメとしか言いようがない微妙な姿。
インパクトこそはあるけど、なんとも反応に困るシュールな姿のモンスターで場を白けさせてしまった。
思わずシャレかよ!ってなる姿と名前だけど、強欲なウツボをよく使っているわたしは突っ込めないのよね。

ただ、見た目の微妙さと強さは…切り離して考えてもらわないと困るけどな。
こいつは栗音がわたしに託したエクシーズだ、そしてこの局面を制するカギとなりえる切り札だ。


「うぅ…生きてる?何がどうなってるの?あれは…エクシーズっ…!」

「むみむみ、まだ動いちゃ駄目ですぅ!それに邪魔しちゃ駄目です!」

「巻き添えにしたのはごめん、それにエクシーズ使ってるからって敵意剥き出しにするの止めて…」


どうやらさっき巻き添えにした子が今起きたようだ。
その途端敵意剥き出しになるけど、やってしまった事を考えると仕方ない部分ある。
如何せんタイミング悪いけど、とりあえず終わらせるか。


「そういうわけで、デュエル終わるまでそのままあの子を抑えてくれると助かるわ。
 これはライバルの一人から託されたエクシーズ。
 元々の攻撃力は低めだけど、性能は折り紙付きだ。
 強欲なタガメのモンスター効果を発動!
 1ターンに1度、素材を1つ使い、相手の攻撃表示モンスターの攻撃力を1000ダウンし、1枚ドローする!」
強欲なタガメ:ATK2300 ORU2→1


「攻撃力1000ダウンに加えてドローまで!?
 ってオーバーレイなんちゃらじゃないのですか?」

「あくまでテキスト表記上はX素材だからね。
 でも、エクシーズ次元の人の前でそれ言うと怒るけど理解に苦しむわ。」

「そうですか…」


ちなみに誘発即時で相手ターンでも使えるからコンバッドトリックも可能だ。
だけど、ドローという要素があるからここで使うわけだ。


「まずはこの効果でネオダイダロスの攻撃力を1000ダウンする!『ドレイン・オブ・フォーチュン』!!」

『グオォォォ…』
海竜神−ネオダイダロス:ATK2900→1900



「むみっ、遥香センパイのネオダイダロスの攻撃力が…!」

「そして、1ドロー!」


そして、ここでドローしたカードは…成程。
ここで決着を付けられるかどうかは、相手の出方次第かな。
何はともあれ、攻撃してみない事には何も始まらないわけよ。


「とりあえずバトル!まずはオッドシェルでネオダイダロスを攻撃!『螺旋のシュトロム・シュラーク』!!」


――ドゴォォォォォォ!!


「っ…!」
遥香:LP3800→3200


「そして、オッドシェルのモンスター効果を発動!
 このカードが戦闘で破壊したモンスターをデッキに戻し、1000のダメージを与える!喰らえ!」


――ザッバァァァァァァ!!


「きゃぁぁっ!!」
遥香:LP3200→2200


さて、これでタガメの直接攻撃で削り切れるところまで持ち込んだ。
後は伏せカード次第…ここが勝負だ。


「そして、これで決める!強欲なタガメで攻撃!」

「惜しいですが、まだやられるわけにはいきません!永続罠『忘却の海底宮殿』を発動!
 このカードは表側表示で存在する限り『海』として扱われ、直接攻撃による自分へのダメージを半分にします!」

「しかも、この表側表示のカードがフィールドから墓地へ送られると墓地の海竜族1体を蘇生する効果があったはずだよ。」


成程、直接攻撃を半減する上にサイクロンを発動したところでダイダロスを蘇生させられるわけか。
だけど…今回はこの勝負、もらった!


「この発動に対し、速攻魔法『ウェーブ・ツイスター』を発動!
 自分フィールドに水族が存在する場合、相手の表側の魔法・罠1枚をデッキに戻す!
 デッキへ戻す除去なら蘇生効果は使えない!
 海底宮殿よ、波の嵐に飲まれぶっ飛べ!!」

「そんな…あのドローでそんなカードを引いていた…!?」


――ビュゥゥゥゥゥ!!


「ごめんなさい…ここまでです。」

「これでもうはるはる先輩には防ぐ手立てがもうないですぅ…」

「遥香センパイが…こんな奴に負ける?」

「これで直接攻撃のダメージはそのまま通る!『デザイア・ファルクス』!!」


――ズシャァァァァ!!


「きゃぁぁぁぁっぁぁぁ!!」
遥香:LP2200→0


そんなわけで彼女になんとか勝利。
彼女は今までこの荒廃した次元を生き抜いてきただけの事はあって、思わぬ大苦戦を強いられたわね。


「うっ…っ。」

「ごめんなさい、だけど勝ちは勝ちよ…こっちのお願いを聞いてもらう事にするわ。
 でも、表立って敵対するつもりはないから安心して。」

「わかりました…ここで意固地になっても仕方ありませんね。
 性格は少し悪いようですが、あなたの事を信用します。」

「っ…酷い事言ってくれるわね…ま、いいわ。」


まぁ、最近性格悪くなったのは自覚してるけどね。
さっきの『壊獣』の件と言い、栗音の実家に無理やりスポンサー契約させた事といいね。


「それで、どうするつもりですか?」

「どうもこうも…と言いたいところだけど、ちょっと気になる事があるわ。
 まずはあなたたちの拠点みたいなのがそこで話がしたい…後、そこでぐったりとしてる2人も連れてね。」

「このエクシーズの手先をですか?本音を言えば嫌ですが…」


まぁ…敵対している人たちを自分たちのアジトに連れていくのは嫌よね。
もし逃げられたりしたら、ここが襲撃されるのは目に見えているもの。


「ごめんなさい…確かに敵対勢力を拠点に運ぶのは拙かったわね、失言申し訳ないわ。
 拠点じゃないにしろとりあえず落ち着いて話せるところで運んで話したいわね。」

「ミミはそんなの認めないよ!こいつらから聞く事なんて何もない!
 遥香センパイ、こんな奴のいう事に耳を傾ける必要ないよ!
 ミミたちの大切な人たちを奪ったこいつらなんてカードに…」

「それはやめてくれ。」

「むみむみ、落ち着くです!
 わたし、もう誰かが目の前でカードにされるなんて嫌です…」

「…あなたたちが本当に望むのはこんなふざけた戦争を終わらせる事のはず。
 それに、敵だからってカードにしていたらそれこそ向こうと変わらない。
 この戦争が起きている原因を突き止めて、その原因をどうにかしないとね。
 だから、彼らからも話を聞く必要があるのよ。」

「確かに……仕方ありませんね。
 はぁ…そろそろ何か食べたいですね。」

「むみ…」


やや納得はしていない…という表情ながらも理解は示してくれたようね。
さっきデュエルした遥香って子には後で腹が膨れるものを食べさそう。
だけど、ミミって子は特に煮え切らない表情をしてるわね…何か深い闇を抱えている気がする。
まさか、闇のカードを持ってるんじゃないわよね?
吹き飛ばした手前、申し訳ないけど…一応、警戒するに越した事はなさそうね。

そういえば、遊矢が中々戻ってこないけど何か巻き込まれたのかしら?








――――――








遊矢:LP4000
EMカバーリー・ヒッポ:ATK2000

ヒロト:LP4000
死霊騎士ワイトロード:ATK2000



Side:遊矢


ヒロトという角刈りの男とのデュエルの真っ只中。
ワイトシリーズを使用し、デッキ融合を決めたのは度肝を抜かれたけどこっちも負けてられない。
まずは前のターンのマジカルシルクハットを利用して呼び出したヒッポを使っての融合召喚を決めたぜ。


「ちなみに融合召喚に使用されたドクロバット・ハートはペンデュラムモンスター。
 この種類のカードはフィールドから墓地へ送られる場合、代わりにエクストラデッキへ表側表示で送られるのさ。」

「エクストラデッキへ送られるモンスターだと?まるで意味が分からんぞ?」


まぁ、最初は意味が分からないだろうね。
俺も最初の内はペンデュラムカードの使い方が中々分からなくて苦労したものだよ。
ブランとストロング石島のデュエルを研究している内にロムと共に自ずと理解したけどさ。
ちなみに融合召喚の場合は効果による墓地送りだからOKだけど、コストによる墓地送りは駄目なんだよなぁ。


「今は意味が分からなくても、後でわかるよ。」

「まぁいい…だが、そいつの攻撃力はワイトロードと同じ2000。
 まだ何かする心算だというのか?」

「そりゃそうさ、なんたって盛り上げるのはここからだからさ!
 手札のモンスター1体を捨て、カバーリー・ヒッポのモンスター効果を発動!
 捨てたモンスターと同じレベルを持つ『EM』1体をデッキから特殊召喚できる。
 捨てたモンスターのレベルは5…カバーリー・ヒッポに誘われしはレベル5の『EMベイベース』を特殊召喚!」
EMベイベース:DEF2200


「今度は貝に手足の生えたようなモンスターだと?ふざけているのか?」

「まぁまぁ、むしろここからが見せ所だよ。」


融合召喚でカバーリー・ヒッポを出したばかりだけど、まだまだ展開していくよ!
というかこのターンでモンスターゾーンを埋めてみせる!
今度は前のターンで手札に加えたアレを行くぞ!


「今度はこいつだ!ここで手札から儀式魔法『EMアドベント・フェスティバル』を発動!
 これにより、手札・フィールドから儀式召喚するモンスターのレベルと同じになるように『EM』のペンデュラムをリリースし、手札・墓地から『EM』の儀式モンスター1体を儀式召喚できる。」

「今度は儀式召喚だと?」

「俺はフィールドのベイベースをリリースし、墓地から『EMパレードラゴン』の儀式召喚を行うよ!
 降臨の祭典にて甦れ、エンタメの仲間を率いる竜!儀式召喚!降臨せよ、レベル5『EMパレードラゴン』!!」

『グオォォォォォ!!』
EMパレードラゴン:ATK2000



今度はカバーリー・ヒッポのコストで墓地へ送ったパレードラゴンを儀式召喚!
墓地の儀式モンスターを儀式召喚する事こそ教会流さ。
エースはオッドアイズだから攻撃力は2000程度だけど、こいつの効果も中々優秀だ。


「どいつもこいつも、攻撃力2000のモンスターばかりじゃねぇか…」

「ま、見てろって…パレードラゴンのモンスター効果を発動!
 このカードが儀式召喚に成功した時、デッキからレベル4以下でペンデュラムモンスター以外の『EM』1体を特殊召喚できる!
 この効果で呼び出すのは『EMサーベルタイガー』!!」
EMサーベルタイガー:ATK1700


パレードラゴンの効果でペンデュラム以外の下級エンタメイトが増える。
もっとも、これ以降はこのターンエクストラからの特殊召喚は封じられるが問題ない。
融合召喚も事前に済ませた事だしな。


「ついでに、リリースされた事により『EMベイベース』の効果を発動!
 手札からペンデュラムモンスター以外の『EM』1体を特殊召喚できる!
 この効果により呼び出すのはレベル3の『EMドローパー』!!」
EMドローパー:ATK1000


「一気にモンスターを4体も並べた…!?」


もっとも、ペンデュラム召喚を使えばもっと手順短く並ぶけどね。
でも、それじゃあまりにも芸がないし、手札が枯渇しやすいからね。
こういったモンスター効果の連鎖で次々と展開してこそショーってものだ。


「そして、ドローパーのモンスター効果を発動!
 このカードが手札からの特殊召喚に成功した場合、デッキから1枚ドローできる!」

「展開に飽き足らず手札を補強してくるか…。
 まさか、まだ展開してくるというのか?」

「そのまさかだよ…だって、まだ俺のエースは出ていないしな。
 それじゃ、役者がだいぶ揃ったところで今度は舞台の幕をあげていくよ!
 フィールド魔法『EMドラマチックシアター』を発動!
 まずはこの効果により、俺のモンスターの攻撃力は自分モンスターの種族の種類1つにつき200アップするよ!
 俺のフィールドにいるモンスターの種族はヒッポの獣族、パレードラゴンのドラゴン族、サーベルタイガーの獣戦士族、ドローパーの水族の4種類!
 よって俺のモンスターの攻撃力はそれぞれ800アップだ!」
EMカバーリー・ヒッポ:ATK2000→2800
EMパレードラゴン:ATK2000→2800
EMサーベルタイガー:ATK1700→2500
EMドローパー:ATK1000→1800



「一気にモンスターの攻撃力を底上げしてきただと?
 流石にワイトロードの攻撃力は軽く超えてくるか…しかも3体も!」

「おっと、ドラマチックシアターの効果はこれだけじゃないさ。
 自分フィールドの『EM』の種族が4種類なら、1ターンに1度だけデッキ・手札・墓地から『オッドアイズ』1体を特殊召喚できる!」

「何…!」

「この効果により出でよ、俺のエース!幻視の力を双色の眼に宿す竜、レベル7『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』!!」

『ガァァァァァァァァァァ!!』
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン:ATK2500→3300



エースとは言ってもペンデュラム召喚で呼び出したわけじゃないし効果のないバニラ同然だけどね。
が、サポートも多いのが特徴の基本形態だ。


「攻撃力3300…!」

「こいつはドラゴン族だから、パレードラゴンと種族被りしているから上昇量は変わらないけどな。
 だけど、まだまだこんなものじゃない。
 ここでオッドアイズを対象にパレードラゴンのもう1つの効果を発動!
 このターンそのモンスターの攻撃力は自分フィールドの『EM』カード1枚につき300アップする!
 俺のフィールドには合計5枚ある…よって、オッドアイズの攻撃力は1500アップだ!『インセンティブ・パレード』!!」
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン:ATK3300→4800


パレードラゴンもまた、オッドアイズのサポートカードとしての一面がある。
これで攻撃力は4800の大台となったわけだ。


「モンスターゾーンを埋め尽くした上に攻撃力4800だと…!
 ふざけた見た目に反してこの集団、中々やるな。」


ちなみにただ闇雲に並べて打点を上げただけではない。
サーベルタイガーの効果でバトル中にカウンター罠以外の魔法・罠・モンスター効果を1ターンに1度だけ無効にできるようにしてある。
並大抵の相手ならこのまま殴られて終わりだが、この戦地を生き抜いたはずの彼はそんな小物じゃないはず。
さて、どうくるか?


「バトルだ!オッドアイズ・ファントム・ドラゴンでワイトロードに攻撃!『夢幻のスパイラル・フレイム』!!」


――ボォォォォォォ!!


ぐおぉぉぉ!!
ヒロト:LP4000→1200


この攻撃は通したか。
相手の残りライフを1200まで削ったが…!


「肉は切らせてやるが、骨を断たれるわけにはいかん!
 戦闘ダメージを受けた瞬間、カウンター罠『弱者のうめき声』を発動!
 この効果により受けたダメージの半分の数値だけ俺のライフを回復し、墓地からレベル1の通常モンスターを3体まで選んで特殊召喚する!
 この効果により甦らせるのは『ワイト』3体だ!」
ワイト:DEF200(×3)
ヒロト:LP1200→2600



「ここでワイトを蘇生してきた…?」


サーベルタイガーの効果はカウンター罠には対応できない…!
それで、ここでワイトを蘇生してきただと?しかも3体も。
このタイミングでこいつを蘇生させて一体、何を狙っているのか?


「さらに、このバトルフェイズは…強制終了となる!」

「しかも、バトルフェイズスキップ…!」


本命は付属していたバトルフェイズスキップの方だったか。
ライフを回復されたし、流石にそう易々とは勝たせてくれないか。
こうなった以上はこのターンやる事はもう少ない。


「バトルをスキップされちゃ、これ以上は攻撃できないか。
 なら、メイン2に入り、墓地の『EMトランプ・ソード』を除外し効果を発動!
 墓地から『融合』1枚を手札に加えるよ!
 といってもルール上『融合』の『置換融合』だけどね。」


精々、墓地の融合カードを回収しておくことくらいなものだ。


「とりあえず、俺はこれでターンエンド!」
オッドアイズ・ファントム・ドラゴン:ATK4800→3300



「このエンドフェイズに『死霊騎士ワイトロード』の更なる効果を発動させてもらう!
 デッキから『ワイト夫人』を墓地へ送り、このカードを自己再生する!ワイトはそう簡単に倒れん!」

『ヌオォォォォォ…!!』
死霊騎士ワイトロード:ATK1000→1600



「お前の融合と儀式を交えた展開は見事だったが、惜しかったな。
 ならば、今度はこちらの全力を思い知らせてやろう…覚悟するがいい!」


さて、問題は次のターン以降だ…その前にワイトロードが自己再生してしまったがな。
それと、ちょっとばかり飛ばし過ぎたか。
俺の残りの手札は1枚…有利そうに見えて割と後がない状況に追い込まれたわけだ。
だけど、迎え撃つには少し忍びないとはいえ、まだ余力はある。
ここが正念場だな。










 続く 






登場カード補足






強欲なタガメ
エクシーズ・効果モンスター
ランク6/水属性/昆虫族/攻2300/守2600
レベル6モンスター×2
「強欲なタガメ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を1000ダウンし、自分はデッキから1枚ドローする。
この効果は相手ターンでも発動できる。



EM(エンタメイト)カバーリー・ヒッポ
融合・効果モンスター
星5/地属性/獣族/攻2000/守2000
「EMディスカバー・ヒッポ」+「EM」モンスター
このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚でのみ特殊召喚できる。
(1):1ターンに1度、手札のモンスター1体を捨てて発動できる。
そのモンスターとレベルが同じ「EM」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。
(2):このカードが戦闘及び相手の効果で破壊された場合に発動できる。
自分のデッキの上からカードを3枚確認する。
その中に「EM」モンスターがあった場合、その1枚を相手に見せて手札に加える事ができる。
残りのカードは好きな順番でデッキの上に戻す。



EM(エンタメイト)ベイベース
ペンデュラム・効果モンスター
星5/水属性/水族/攻 500/守2200
Pスケール「3:3」
(1):相手ターンに1度、自分フィールドの「EM」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの表示形式を変更する。
『モンスター効果』
「EMベイベース」の(1)(2)のモンスター効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがリリースされた場合に発動できる。
手札からPモンスター以外の「EM」モンスター1体を特殊召喚する。
(2):自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時にエクストラデッキの表側表示のこのカードを墓地へ送って発動できる。
その自分のモンスターの表示形式を変更する。



EM(エンタメイト)ドローパー
効果モンスター
星3/地属性/水族/攻1000/守 600
「EMドローパー」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが手札からの特殊召喚に成功した場合に発動する。
自分はデッキから1枚ドローする。
(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。
自分はデッキから1枚ドローする。



海皇の救護兵
効果モンスター
星2/水属性/海竜族/攻 100/守1000
(1):手札・フィールドのこのカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。
(2):このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた場合、自分の墓地の「海皇の救護兵」以外の「海皇」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。



弱者のうめき声
カウンター罠
(1):自分が戦闘ダメージを受けた場合に発動できる。
受けたダメージの数値の半分だけ自分LPを回復し、
自分の墓地からレベル1の通常モンスターを3体まで選んで特殊召喚する。
その後、このバトルフェイズを終了する。



忘却の海底宮殿
永続罠
(1):このカードは魔法&罠ゾーンに存在する限り、カード名を「海」として扱う。
(2):相手モンスターの直接攻撃によって受ける自分への戦闘ダメージは半分になる。
(3):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、
自分の墓地の海竜族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は海竜族モンスターしか特殊召喚できない。