Side:遊矢
逃げたエクシーズの男が目の前の置鮎ボイスの角刈りの男にカードにされた…多分な。
そしてその男は今度は俺を標的としたようだ…知らない顔という理由でだ。
「まぁまぁ、そんなに睨み付けないでくれ…一先ず落ち着いてほしいな。
確かにお前は俺の事を知らないし、俺もお前の事を知らない。
ただ、さっきの奴の仲間じゃないって事は言っておくよ。」
「だが、お前自身がわかっているようにお前は俺からしたら得体の知れん奴だ。
改めて問おう、お前は何者だ?どこの手の者だ?」
「やれやれ、自己紹介をする時は自分からって言うのにな。
ま、いいか…わかった。
俺は榊遊矢…俺たちの住んでいた次元はスタンダードって呼ばれているね。」
とりあえず、警戒心を解きほぐしてもらうためにも自分の素性は明かしておく。
問題は出身のスタンダード次元がどんなところかを相手は多分知らない事なんだよな。
嘘をついても仕方ないとはいえね。
「スタンダードだと…紫吹の奴が単身向かった次元か?」
「…紫吹雲雀の知り合いか?」
「その様子だと奴の事を知っているようだな。」
「そうなんだが、俺はあいつと碌に話す機会なかったけどな。」
実際、あいつとはほとんど接点がないしな。
ブランを通じて話してみたかったところだけど、闇のカードの件の騒動があったしな。
もっとも、会話やデュエルのやり取りは聞いていたけどね。
彼らの抱える憎しみの感情は相当強いものだったように思える。
一方で彼を追ってスタンダードに来た融合次元の女神のネプテューヌからは融合召喚を教わった。
彼女は明るく振舞おうとしていたけど、実はその内に心の闇を抱えていたようだ。
それでも、彼女が闇のカードに手を出したらしい事をブランから聞いた時はショックだった。
彼女でさえあんな精神状態なんだ、他の住民の精神も疲弊しているはずだ。
見ず知らずの俺に敵意を向けるのも仕方のない事だ。
「だが、それとお前が敵か味方かどうかは別の話だ。
奴らハートランドやアヴニールの連中は俺たちを欺いたりもしてきた。
まずは敵か味方か…デュエルで確かめさせてもらうぞ。」
「まぁ、デュエルは人の心がありのままに現れるというしな。
わかった、俺たちの事を認めてもらうためにも…お前とのデュエル、受けて立つ!」
「いい心構えだ…だが、俺も自己紹介しておこう。
俺はヒロト…榊遊矢といったな、ここでお前が敵かどうか確かめさせてもらう!」
まぁ、そんなわけでなし崩し的にデュエルに入る。
まずは俺の事を認めてもらわなきゃならないわけだしな…試してくる以上は。
それに、これ以上相手をカードにする暴挙を止めなきゃいけないからな。
このデュエル、負けるわけには行かない。
「「デュエル!!」」
遊矢:LP4000
ヒロト:LP4000
超次元ゲイム ARC-V 第73話
『融合次元の生き残り』
ブラン:LP4000
渦潮のアントリオン:ATK1900 ORU2
遥香:LP4000
コダロス:ATK1400
海洋の騎士:ATK1200
Side:ブラン
融合召喚を狙うと踏んで渦潮のアントリオンを展開したわけだけど、なんと相手は下級モンスターで除去しにかかった。
コダロスを展開した時点で嫌な予感はしていたが…出鼻を挫かれた形となった。
その効果を発動され、このままだと激流の前にやられてしまう。
だったら、使うなら今しかない。
「こいつはやってくれたけど、みすみすやられるくらいなら…!
この瞬間、エクストラデッキから特殊召喚された水属性のアントリオンをリリースし速攻魔法『シンキング・レガシー』を発動!
この効果でデッキの上からカードを3枚確認し、その内1枚を手札に加えて残りを墓地へ送る!」
「リリースエスケープですか…!」
これはペンデュラムがエクストラデッキから特殊召喚できるため相性のいいカード。
3枚から必要なカードを手札に加えつつ、残りを墓地へ送る。
キーカードを手にする確立を上げつつ、墓地利用も捗るカードだ。
デッキの上の3枚のカードは…流石に攻撃を防げるカードはないか。
だけど、墓地へ落したいカードはあった。
なら…!
「そして、デッキの上から確認した3枚の内この1枚を手札に加え、残りを墓地へ。」
「いずれにしてもこれであなたのフィールドはがら空きです。
バトル!まずは海洋の騎士で攻撃します!」
「この直接攻撃宣言時に、手札から『イージス・キャンサー』の効果を発動!
その直接攻撃に反応し、このカードを特殊召喚する!」
イージス・キャンサー:DEF1600
「手札誘発…しかもわたしの2体の攻撃力ではその守備力には届かないようですね。」
そして、この攻撃を防げない手札ではなかったと言っておく。
信頼と安心の盾となるモンスターイージス・キャンサーで防がせてもらった。
まぁ、こいつはコロソマ・ソルジャーの効果でドローしたんだけどな。
そして、この守備力1600はこのような下級の攻勢には意外と頼りになる。
とはいえ、下級でも1800とかそこらの奴は普通にいるので過信はできないけど。
「さて、ここからどうするのかしら?」
「そうですね、巻き戻しの発生によりここでバトルを終了します。
わたしはカードを2枚伏せてターン終了です。」
どうやら、本当に突破できないのかここでターンを終了してきた。
だけど、まだまだこれからといった感じで表情に大きな変化ない。
あの伏せカード次第とはいえ、ここからどう転ぶか。
嫌な予感はぬぐえないけど、ターンを進めるとしよう。
「わたしのターン、ドロー。
まずは魔法カード『浮上』を発動。
この効果で自分の墓地からレベル3以下の水族・魚族・海竜族のどれか1体を守備表示で特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚するのはチューナーモンスターの『エビカブト』!」
エビカブト:DEF1000
「ここでチューナーモンスター…!」
「そして、エビカブトのモンスター効果を発動!
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、墓地から『カニカブト』1体を特殊召喚する!」
カニカブト:DEF900
これでレベル6と9のシンクロ召喚を行えるようになったわけだ。
もっとも、レベル9のシンクロモンスターなんて持ってないから1体のみとはいえレベル6しか選択肢がないけど。
ついでにエクシーズ召喚もできるが、コダロスを見るにハードシェルはすぐ突破されそうだ。
なら、ここからすべきは…本当に見せていいのかは兎も角、わたしのデュエルを知ってもらうかな。
「そして、わたしはスケール4の『甲殻神騎オッドシェル
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:Pスケール4
「2色のカードを魔法のように発動した…!?」
「スケールやペンデュラムゾーンなんて知らないですぅ…!」
「ああ、説明すると長くなるけど…これはペンデュラム召喚をする際に必要となるモンスターと魔法の両方の性質を持つカード。
今は永続魔法の亜種みたいなものと思ってくれていいわ。」
「ペンデュラム召喚…?そんな召喚法があったなんて知りません。」
「スタンダード発祥の召喚法だけど、現地でも使える人少ないから知らなくても不思議じゃないわね。
詳しい事は後で説明させてもらうわ。」
流石にペンデュラムは他の次元じゃ聞く機会なんて殆どないだろうしね。
他の召喚法とは一線を画するだけの事はあって不思議がられても仕方のない事なのよね。
「兎に角、ペンデュラム召喚はペンデュラムカードが2枚無いとできないけどね。」
「そのペンデュラム召喚とやらにはそのモンスターと魔法が合わさったカードが2枚必要ですか。
とはいえ、単体でも永続魔法的な性質もあるみたいですね。
なら、ここでリバースカードの速攻魔法『瞬間融合』を発動しておきます!
この効果により、自分フィールドのモンスターを素材に融合召喚を行います!」
「っ…どこかで融合召喚してくるだろうと思ってたけど、このタイミングでか…!」
伏せカード2枚だから何かあるとは思ってたけど、この意表を突くタイミングで融合カード…!
フィールド融合だから、コダロス単体で出さずに海洋の騎士を経由したわけか。
一体、何が出てくる…!
「この効果でわたしはフィールドのコダロスと海洋の騎士を融合!
海竜神の幼生よ!海洋に佇む騎士を取り込み、新たな波を巻き起こせ!融合召喚!来て、レベル6『
『グオォォォォォォ!!』
海竜−チュウダロス:ATK2000
小の次は中かよ。
ここまで来たら大ダロスなんてのもいそうだ。
あれ?何か大事な事を忘れているような。
「ここで、フィールドから墓地へ送られた海洋の騎士のもう1つの効果を発動します。
デッキまたは墓地から『海』1枚を選んで発動します。
この効果により、デッキからルール上『海』として扱われる『大海洋』を発動!」
「さっきのとは別の海…!?」
「この効果によりフィールドの水属性モンスターの攻撃力は200アップします!」
海竜−チュウダロス:ATK2000→2200
カニカブト:DEF900(ATK650→850)
エビカブト:DEF1000(ATK550→750)
このカード、他の『海』と違い守備力までは増加しないのか。
そしてアトランティスとは違い、レベルも下がる事はない。
いや、事前に使用可能と教えたシンクロ召喚を対策するなら墓地のアトランティスを発動すべきだと思うが…?
そうだ、チュウダロスの効果は…そういう事かよ。
「……」
「どうかしましたか?」
ここでは何もしてこないとなると、このタイミングでは融合召喚して『海』を発動させただけの様だ。
という事は、ここは動かないとダメか。
「わたしはレベル3のカニカブトにレベル3のエビカブトをチューニング!
シンクロ召喚!いでよ、レベル6!命を操る水の槍術師『ガリデス・ギルマン』!!」
『ヌンッ!!』
ガリデス・ギルマン:ATK1600→1800
「本当にシンクロ召喚までしてきたですぅ…」
「シンクロ召喚したモンスターが、大海洋の効果を加味しても攻撃力1800ですか。
問題はこれで何を狙っているかですが…!」
そりゃ、効果を使わざるを得ない状況へ追い込む事。
だから、そのためにも…!
「デッキから水族・魚族のモンスター1体を墓地へ送り、ガリデス・ギルマンのモンスター効果を発動!
そして、それにチェーンする形でオッドシェルのペンデュラム効果を発動!」
「ペンデュラム効果…」
「ガリデス・ギルマンはシンクロ召喚した時にデッキから水族・魚族1体を墓地へ送る事でそのレベル×100だけターンの終わりまで攻撃力をアップする!
そして、オッドシェルのペンデュラム効果でエクストラデッキから水族が特殊召喚された場合にこのカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下の水属性ペンデュラム1体を手札に加える!」
「そのペンデュラムカードの効果は自らを自壊させるとはいえ、強力なサーチ効果ですか。
ですが、そのカードはいわば永続魔法みたいなもののはず…なら、使い時はここです!
ルール上『海』となっている『大海洋』を墓地へ送り、チュウダロスのモンスター効果発動!
相手フィールドのカード2枚を対象にし、そのカードを墓地へ送ります!」
海竜−チュウダロス:ATK2200→2000
「なっ、ここで…!?」
オッドシェルのペンデュラム効果に合わせて撃って来た…!?
ガリデス・ギルマンの効果で墓地へ送ったカードを使って効果を使わざるを得ない状況にしようかと思っていたら、ちょっと早いこのタイミングで使ってくるなんて…!
成程、相手はこのサーチ効果でより強力なカードをわたしが手に入れると踏んで今撃ったわけか。
完全に想定外だった…というほどじゃないけど、これは効く。
「対象のカードは、あなたのガリデス・ギルマンと今発動したオッドシェルです。
その2枚を墓地へ送らせていただきます…『オーシャニック・ブロウ』!!」
――ザッバッシャァァァァァア!!
ここでガリデス・ギリマンとペンデュラムゾーンのオッドシェルがチュウダロスの発した荒波に飲まれる。
オッドシェルはチェーンされ除去されてしまったら効果を適用できない。
これではペンデュラム召喚は行えないか…!
「くっ…だけど、オッドシェルはペンデュラムカードの特性として墓地へ送られずエクストラデッキに表側表示で送られる。」
「エクストラデッキへ行く性質のあるモンスター…?
どういうことですか?今までまったく見た事のない動きをするカードですね。」
「いったい、何をするのです…?」
まぁ、その性質はペンデュラム召喚で活かされるので後のお楽しみって事でね。
「それはまずは置いておいて、ガリデス・ギルマンのコストで墓地へ送られた『ジェット・トッピー』の効果を発動!
相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象に発動し、そのモンスターを持ち主の手札に戻す!
この効果の対象はもちろんチュウダロス!手札の代わりにエクストラに戻りやがれ!」
「ここで除去ですか!?
先ほど除去したガリデス・ギルマンは器用な動きを持ち味としているみたいですね。
ですが、対象を取るモンスター効果ならこれで防がせていただきます。
罠カード『海竜神の咆哮』を発動!
この効果によりこのターンの間、自分フィールドの海竜族モンスターを対象とする相手のモンスターの効果を無効にします!」
「対象を取る効果を防ぐカード…中々できるわね。」
そして、本命のジェット・トッピーでチュウダロスを除去しようと思っていたらもう1枚の罠に阻まれた。
しかも、スキル・プリズナーなどと同様にこのターンの間は対象を取るモンスター効果を発動したところで無効にされてしまう厄介なタイプだ。
まいったわね、これでは戦闘前に除去する事は叶わない。
オッドシェルのペンデュラム効果が阻止されなければ、ペンデュラム召喚も行えた。
だけど、結果としてこうなった以上はそれに沿ってプレイしていくしかないか。
「はぁはぁ…そう簡単に相手の思惑通りにさせていたら、今日まで生き残れませんでしたから。」
「成程ね、そりゃ自ずと強くならざるを得なかったわけね。」
そりゃそうだ、デュエルでも強くならないと今日までの侵略から生き延びる事なんてできやしないはずだ。
そして、常に警戒心と敵意剥き出しにもなる…チュウダロスによる相手ターンでの除去もエクシーズへの対策にもなるはずだ。
だけど、もう正直かなりぎりぎりの所だったんだろうとは思う。
対処したとはいえ、ガリデス・ギルマンからのジェット・トッピーの効果に驚いていた所からもな。
「だけど、そんな調子じゃ身体や脳の方が悲鳴をあげそうなものだけどな。
…見る限りそろそろ限界じゃないか?」
「どういう事ですか…?」
――ぐぅぅ…
「あっ。」
「あっ、じゃねーよ!腹減ってんじゃないかよ思い切り。」
呆れた…思い切り空腹じゃねぇかよ。
その状態で相当無理してたって事はわかるね。
「食べ物にも困ってるんだな…相当。
敵を憎む気持ちは仕方ない…だけど、憎しみに囚われてばかりじゃいつまでもこんな戦いは終わらないぞ!」
「っ…余所者のあなたにわたしたちの何がわかるというのですか!
あのエクシーズの人たちの手にかかり家族や友達が次々とカードにされ…みきも……!」
まるで恋人が殺された彼女のような悲壮と憎悪が混じった表情でそう語っているのがわかる。
…やっぱりエクシーズの者への憎しみは想像以上に強いみたいだ。
そのみきって人はわたしにとっての柚子に相当するのだろうか?
だとしたら、その気持ちもわからなくはない。
「確かにわたしは余所者だ…だけど、その気持ちはわからなくもない。
だって、わたしも大切な人を失っている…一時は憎悪の感情に支配されたよ。」
「あなたも…?」
失ったというより攫われた…という方が正しいだろうけど。
それに憎悪の感情は一時的にカオス・リベリオンを持っていたのが大きな原因ではあったはず。
共感してもらうためには多少の誇張はね。
「だけど、憎しみの感情のままで戦っていてはこの争いは終わらないと気付いた。
エクシーズの人だって人間だ…仲間がやられれば憎しみの感情をもって襲ってくるかもしれない。
そうなった場合、憎しみの連鎖が続いてキリがない。」
「それで…だからどうしろというのですか?」
まぁ、そうだよな…彼女からしたら向こうが問答無用で襲ってきたようにしか見えないだろうしなぁ。
だけど、争いの発端には色々な原因があるはず。
それをどうにかして、お互いに鉾を収めないと多分この争いは終わらないだろうな。
「こんな説教垂れるのは趣味じゃないけど、何のために戦うのか考え直してほしいって事だ。」
「何のために…?わたしたちは仕方なく…!」
「そう、否が応にも戦わざるを得なくなったはず。
だから、こんな戦い…早く終わらせたいって思わないか?」
「戦いを終わらせる…そんな事、相手を全滅させない事には…!」
「だから憎しみの連鎖が続いていつまでも終わらないのよ…どっちも折れない事にはね。」
「っ…それじゃ、どうしたらいいというのですか!成すすべなくやられてしまえというのですか!」
こいつ、頭紫吹か?こんな状況が続いたせいで正気を無くしてそうな感もあるけど。
とりあえず落ち着かせるためにもまずはこのデュエルを制さないとね。
「それは違うわ…でも、まずはこのデュエルを終わらせないとね。
話はそれからだ。」
「あなたのサーチは潰しましたし、モンスター効果で対象を取る事もできなくしました。
このターン何ができるというのですか?」
「まぁ、確かに碌な事はできなかったりするけど…やれる事はやっておくわ。
イージス・キャンサーをリリースし、レベル6の『甲殻砲士ロブスター・カノン』をアドバンス召喚!」
『ヌゥンッ!!』
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200
効果は罠のせいで無意味だけど、とりあえず打点でチュウダロスを超えておく。
フィールドから墓地へ送られればペンデュラム召喚で復活できるからね。
「成程、チュウダロスの攻撃力を超えてきましたね。」
「この時発動できる効果があるけど、あなたの罠の効果でこのターン中は無意味なので発動しない。
バトル!ロブスター・カノンでチュウダロスを攻撃!『バレル・シュラーク』!!」
――ドッゴォォォォォ!!
「きゃあっ…!」
遥香:LP4000→3800
「はるはる先輩の融合モンスターがやられちゃったです…でも。」
流石にこの攻撃は通ったか…だけどたった200ダメージな上に、問題は次のターン。
コダロス、チュウダロスと来れば…間違いなく、あのモンスターが来るはず。
ここから先は相手の出方次第か。
「バトルは終了し、わたしはカードを1枚伏せてエンドフェイズ。」
「ですが、チュウダロスが破壊され墓地へ送られた事でこのエンドフェイズに効果を発動!
デッキから海竜族・レベル7のモンスター1体を特殊召喚します!」
「やっぱり来るか…!」
そう、このチュウダロスの被破壊ターンの終了時の効果だ。
相手はこいつで最上級モンスターを呼び出すのが本当の狙いだったわけだ。
じゃあ、戦闘破壊しなければいいって思うだろ?でもな…。
「その言い分だとチュウダロスの効果を確認したようですね。」
「へ?それにもかかわらず、どうして戦闘破壊したですか?意味が分からないです。」
「と思うだろ?だけど、そうしたところで無駄。
瞬間融合のデメリットでどの道、融合召喚したチュウダロスは破壊される…だろ?」
「そこまで見ているとは…流石です。」
瞬間融合は使いにくいだろうけどこういう破壊される事が前提の融合モンスターを呼び出せると強いのよね。
こうなるくらいなら、ギルマンでガントレット・カメノテを落して壊獣のエビルスを手札に確保しておくべきだったか…墓地にはアレがあるし。
女神になりたてとはいえ、まだまだわたしも詰めが甘い事を痛感せざるを得ない。
「この効果によりデッキからレベル7の『
『グオォォォォォォォォ!!』
海竜−ダイダロス:ATK2600
コダロス、チュウダロスと来れば…デッキから呼び出されたのはやはりダイダロスか。
中位種のチュウダロスだけ融合モンスターなのは、ここが融合次元だからだろう。
こいつは『海』を墓地へ送る事での自身以外のフィールドのモンスターを破壊する能力があったはずだが…?
――――――
遊矢:LP4000
ヒロト:LP4000
Side:遊矢
「まずはお前の実力を拝見させてもらうぞ。」
「おう、それじゃお言葉に甘えて…俺のターン!
まずは手始めに『
EMトランプ・ソード:ATK1400
彼はまずは俺の力量を図る算段らしい。
それじゃ、俺が使える召喚法の1つを見せておくか。
「トランプ・ソードのモンスター効果!
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから『融合』とルール上同名扱いの『置換融合』を手札に加えさせてもらうよ。」
「融合カードだと?どういう事だ、何故お前のような余所者が…」
まぁ、見ない顔の奴が融合を持っているのは驚かれるよな。
これに関してはネプテューヌからもらったものだけどさ。
「おっと、細かい事を聞くのは野暮ってものだろ?
ここ融合次元の偉い人から譲ってもらったとだけは言っておくけどな。」
「偉い人だと?何を訳の分からない事を。」
嘘はついていないけどな、要はここの女神だったはずのネプテューヌの事だし。
「そして、俺はカードを1枚伏せてターンエンドするよ。
それじゃ、今度はそちらの手並みを見せてもらおうかな。」
「ふん、攻撃表示のモンスター1体と伏せカードを出しただけか…見くびられたものだな?」
「そう捉えられちゃったら悪いね…でも、俺は真剣だよ。」
ガチだけど、エンタメ精神は忘れないけどな。
ただ、攻撃のできない先攻1ターン目から動き回るわけにもいかないからな。
だけど、ショーの準備はさせてもらったつもりだよ。
さて、相手はどう動いてくるか。
「そうか、なら構わないが。
俺のターン、ドロー!俺は『合成ゾンビ』を召喚!」
合成ゾンビ:ATK600
「うっ…」
うげ…人や動物の死体が合体したような気持ち悪いモンスターが出てきた。
骨のモンスターを使っていたところからもアンデット使いで間違いなさそうだ。
俺もアンデット族は入れてないわけじゃないけど、ベクトルが違うしな。
「どうやら、こういうアンデットモンスターは苦手のようだな。」
「あまり人のモンスターにケチは付けたくないけどな、ごめん。」
「構わん、俺だって始めから好き好んでこいつらを使っているわけではない。
だが、ここのこの惨状を見れば…自ずと理由がわかるはずだ。」
さしずめ、カードにされた者の怒りを代弁している…とでも言いたげだな。
相当、エクシーズの者達への憎しみが強いのが感じられる。
「そして、相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない事で合成ゾンビ自身をリリースしモンスター効果を発動!
手札またはデッキのモンスターを素材にレベル5以下のアンデット族モンスターの融合召喚を行う!」
「デッキから素材を送っての融合召喚…!」
つまり、合成ゾンビ1体の消費だけで墓地肥やしと融合召喚が同時に行われるわけだ。
融合モンスターの性能は兎も角、この動きが弱いわけがない。
「俺はこの効果でデッキの『ワイト』2体を融合する!」
「何っ、ワイトだって!?」
ワイトと言えばこっちでも割と有名な弱小通常モンスターだ。
だけど、何故かサポートカードも多く、専用デッキは中々強力ではあるらしい。
そんなモンスターを使ってくるとは、目の付け所が違う。
「戦場に倒れし死の眷属たちよ!群れて混じり合い、復讐の死霊と化し甦れ!融合召喚!出でよ、レベル2『死霊騎士ワイトロード』!!」
『ヌウゥゥゥ…!!』
死霊騎士ワイトロード:ATK1000
彼が呼び出したのはなんとレベル2の融合モンスター。
このままじゃトランプ・ソードの攻撃力にも及ばないが…確実に何かあるだろうな。
「レベル2の融合モンスター…!?」
「まずはこいつからいかせてもらう…ワイトロードの攻撃力は墓地のワイト1体につき200アップする!」
死霊騎士ワイトロード:ATK1000→1400
「早速トランプ・ソードの攻撃力に並んだわけか…だけどこれだけじゃないだろ?」
「当然だ、ワイトロードが融合召喚に成功した時、手札・デッキからレベル1のアンデット族モンスター1体を墓地へ送る。
この効果により墓地へ送るのはデッキの『ワイトプリンス』。
こいつは墓地に存在する場合、『ワイト』として扱われる事により、ワイトロードの攻撃力はさらにアップする!」
死霊騎士ワイトロード:ATK1400→1600
こいつは墓地肥やしをしつつ、墓地のワイトの数だけ攻撃力を上げていくモンスターか。
『ワイト』関連のモンスターは墓地で『ワイト』扱いになる存在が多いのは知っている。
ワイトのフレーバーテキストにある集まると大変というのはまさにこの事だろう。
「さらに『ワイトプリンス』が墓地へ送られた事により効果を発動。
手札・デッキから『ワイト』と『ワイト夫人』を1体ずつ墓地へ送る。
この効果により手札から『ワイト』を…デッキから『ワイト夫人』を墓地へ送らせてもらう。
ワイト夫人もまた墓地で『ワイト』として扱われるモンスターだ。」
死霊騎士ワイトロード:ATK1600→2000
「流石に全てがデッキの中にある…なんて事はなかったか。」
流石に3枚も入れていたら1枚は手札に来てもおかしくはないわけだ。
とはいえ、このターンだけで墓地に5体もワイトが貯められたか。
「だが、そうなる事は端から承知の上と言わせてもらおう。
バトル!ワイトロードでトランプ・ソードを攻撃!」
「おっと、ただではやらせないよ。
ここで、君にはちょっとしたゲームに付き合ってもらおうかな。
この攻撃宣言時に罠カード『マジカルシルクハット』を発動!」
「む?流石にそう簡単に通させないか…」
「この効果によりフィールドに3つのシルクハットを呼び出し、攻撃対象となったトランプ・ソードとデッキから選んだ囮となる魔法・罠2枚をシルクハットに隠す!
このシルクハットで隠したカードは裏側守備のモンスターとして扱い、バトルフェイズ終了時にシルクハットは消える。
本物を当てられなかったら、攻撃対象となったモンスターは破壊できないわけさ。」
EMトランプ・ソード:ATK1400
↓
シルクハット×3(裏側守備表示)
「不確定な防御カードを使ってくるとは、回りくどい事をしてくれる…本物はどれか1つか。」
「一先ずはそういうこと。」
まぁ、一見不確定な防御カードに見えるだろうね。
でも、この効果は意外と役に立つんだよなこれが。
「さて、本物がどこにいるか当てられるかな?」
「貴様が何を考えているのはわからんが…!
ワイトロードよ、俺から見て右のシルクハットを切り裂け!『グラッジ・スラッシュ』!!」
シルクハットC
↓
EMトランプ・ソード:DEF800
――ザシャッ!!
「ふん、どうやら当たりを引けた様だな。」
「お、ここで本物を引き当てるとは中々勘がいいね。」
いきなり、トランプ・ソードの入ったシルクハットを引き当てられちゃったか。
まぁ、これくらいの勘の良さはあるだろうとは思ってた。
それに、想定の範囲内だから問題はないけどね。
「これでこのバトルの終了時、そのシルクハットの2枚は存在できず破壊されるわけだな。
このターンはここでバトルは終了させてもらう。」
「この瞬間、残りのシルクハットに入っていたカード2枚が破壊されるよ。
だけど、狙いはこれさ。
ここで墓地へ送られた魔法カード『カバーライド』の効果を発動!
このカードがフィールドから墓地へ送られた事で手札・デッキ・墓地のいずれかから『
『ヒッポ!』
EMディスカバー・ヒッポ:DEF800
「なんだこのふざけた見た目のカバは?舐めているのか?」
「いくらなんでもその言い草はひどいな…舐めているつもりは全くないよ。」
確かにこの場所の鬱々とした雰囲気にはそぐわない賑やかな見た目ではある。
だけど、逆に言えば俺はそんなじめじめした嫌な空気でデュエルしたくないって事なんだけどね。
この辺もデュエルに対するスタンスの違いが出ちゃっているって事なんだけどね。
もっともこいつ自身は大した効果は持っていないけどね。
魔法カードの効果で簡単に呼び出せるのが最大の利点だ。
こいつを呼び出せる速攻魔法として『超カバーカーニバル』なんてのもあるしね。
それと、もう1枚の魔法・罠も墓地で機能するタイプとだけは言っておこうかな。
「まぁいい…俺はカードを2枚伏せてターンエンド。
さあ、お前の全力をもってかかってくるがいい。」
「そうだね…ここから本格的に俺のデュエルの幕開けと行こうか。
お楽しみはこれからだ!ドロー!」
さて、最初のターンはいわばお膳立て。
ここからが俺のショータイムの幕開けだ!
「それじゃ、まずは『
EMドクロバット・ハート:ATK1600
「このカードが召喚に成功した時、デッキから『
この効果で手札に加えるのは『
「儀式魔法…?」
「何に使うのかって?じきにわかるさ。」
流石にスタンダード以外じゃ儀式魔法の存在はあまり知られていないだろうからね。
それじゃ、お待ちかねのアレといきますか!
「さあ、いくよ!俺は魔法カード『置換融合』を発動!」
「ここで融合か…!」
「通常の融合とは違って、フィールドのモンスターしか素材にできないけどね。
この効果で俺が融合するのはディスカバー・ヒッポとドクロバット・ハート!
フィールドを駆ける俺の友達よ!宙を舞う可憐なヒロインの声援を受け、新たな姿を披露せよ!融合召喚!さあ、入場です!レベル5『
『ヒッポ!!』
EMカバーリー・ヒッポ:ATK2000
「なっ…まさか、本当に他所者が融合召喚してくるとは…!」
「ここの偉い人直伝ではあるけどね。」
そして、こいつを起点としてデュエルを盛り上げていこうか!
憎しみをぶつけるデュエルに負けるつもりはないよ!
続く
登場カード補足
死霊騎士ワイトロード
融合・効果モンスター
星2/闇属性/アンデット族/攻1000/守 300
「ワイト」+「ワイト」
(1):このカードが上記カードを素材にして融合召喚に成功した場合に発動できる。
手札・デッキからアンデット族・レベル1のモンスター1体を墓地へ送る。
(2):このカードの攻撃力は自分の墓地の「ワイト」の数×200アップする。
(3):融合召喚したこのカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。
デッキから「ワイト」または「ワイト夫人」1体を墓地へ送り、墓地のこのカードを特殊召喚する。
合成ゾンビ
効果モンスター
星2/闇属性/アンデット族/攻 600/守 0
「合成ゾンビ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在しない場合、このカードをリリースして発動できる。
自分の手札・デッキから、アンデット族・レベル5以下の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
融合・効果モンスター
星6/水属性/海竜族/攻2000/守1400
「コダロス」+レベル3以下の海竜族モンスター
このカードの融合召喚は上記カードでしか行えない。
(1):1ターンに1度、自分フィールドの「海」1枚を墓地へ送り、相手フィールドのカード2枚を対象として発動できる。
そのカードを墓地へ送る。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):融合召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズに発動できる。
デッキから海竜族・レベル7モンスター1体を特殊召喚する。
大海洋
フィールド魔法
このカードのカード名はルール上「海」として扱う。
(1):フィールドの水属性モンスターの攻撃力は200アップする。
(2):墓地のこのカードと海竜族・レベル5以上のモンスター1体を除外して発動できる。
デッキからレベル7・8の海竜族のモンスター1体を手札に加える。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
カバーライド
装備魔法
「EM」モンスターにのみ装備可能。
「カバーライド」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):装備モンスターの攻撃力は800アップする。
(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
自分の手札・デッキ・墓地から「EMディスカバー・ヒッポ」1体を特殊召喚する。
海竜神の咆哮
通常罠
(1):このターン自分フィールドの海竜族モンスターを対象として発動した相手のモンスター効果を無効にする。
(2):墓地のこのカードを除外し、自分フィールドの海竜族・レベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。
このターンそのモンスターは1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できず、この効果を発動するターン、対象のモンスター以外の自分フィールドのモンスターは攻撃できない。