No Side


かつては繁栄していたものの、侵略により破壊され廃墟同然と化した融合次元の『タウン』。
ブランが多人数戦に乱入して挑んでいる最中、少し離れた所では2人の少女がこの街を急いで駆けまわっていた。


「はぁ、はぁ…少し待ってほしいですぅ、はるはる先輩!」

「コンパ…辛くても、こんなところでもたもたしてたらいけません!
 エクシーズの手の者に捕まってしまうかもしれませんし、何よりいなくなったミミちゃんを早く見つけて合流しないと…!」

「うぅ、はるはる先輩が速すぎるですぅ〜!」


どうやら、2人とも多数のエクシーズ次元の者に囲まれているミシェルの仲間らしい。
急いで彼女を探しているようであるが、身体能力には差があるようで『ですぅ』が口癖のコンパと呼ばれた少女はやや置いていかれ気味である。

一方、はるはる先輩と呼ばれている方の銀髪の少女はどこか心に余裕が無い様子であった。
度重なるエクシーズ次元からの者による襲撃で心が疲弊しているものと思われる。
だからこそ、見失った同胞のミシェルを見つけようと必死な様子だ。


「うぅ、ここにねぷねぷや紫吹先輩がいてくれたら…」

「あなたが前にいた『プラネテューヌ』にいた方たちの名ですか。
 でも、今はここにいない誰かに縋るわけにはいきません。
 弱音を吐きたくなる気持ちはわかりますが、彼らの帰る場所を守るためにも今はわたしたちでなんとかしなきゃ!」

「はいですぅ…」


そのコンパはねぷねぷ…ネプテューヌのいたところに住んでいたようである。
やはり2人がスタンダードへ行った事より厳しい戦いを強いられてしまっているようである。

が、今はいない人に縋るわけにはいかないのも事実。
生き残っている者で侵攻を耐え抜くしかない辛い現状である。

しかし、次の瞬間…!


――ゴゴゴゴゴ…!


「ひっ…!?いきなり巨大な街が出現したですぅ…!」

「いいえ、あれはフィールド魔法のソリッドビジョンのはずです。
 つまり、あそこで誰かがデュエルしている!?」

「まさか、あそこにむみむみが…!」

「そうかもしれませんね…手掛かりがこれしかない今、あそこへ向かいます!」


突如、2人のいる位置から巨大な街が出現したようである。
そして、いきなり街が出現するなど考えられるとしたらだいたいがフィールド魔法の影響である。
そこで誰かがデュエルしている真っ最中である事を察したようである。
いずれにしても、2人はその場所へ向かって駆け出した。


「待っていて、ミミちゃん…今駆けつけますから!」










超次元ゲイム ARC-V 第72話
『情け無用のサブデッキ』










ブラン:LP2000
ターン・フェーダー:DEF0

少女(ミシェル):LP1000
デストーイ・チェーン・シープ:DEF2000


社員A:LP4000
発条機竜ゼンマイドラン:ATK2800 ORU1
発条機甲ゼンマイスター:ATK2500 ORU2
発条空母ゼンマイティ:ATK1500 ORU1

社員B:LP4000
発条機竜ゼンマイドラン:ATK2800 ORU1
発条機甲ゼンマイスター:ATK2500 ORU2
発条空母ゼンマイティ:ATK1500 ORU1

社員C:LP1500
発条空母ゼンマイティ:ATK1500 ORU1
ゼンマイマジシャン:DEF1800(×2)
ゼンマイナイト:DEF1200
ゼンマイシャーク:ATK1700



Side:ブラン


ここ融合次元の住民と思われる少女1人にエクシーズ次元のスーツの男が3人がかりで襲っていたので見ていられず乱入。
3人目の社員のターンでの大量展開を逆手にとって手札を大量に確保した上でターン・フェーダーでターンを強制終了させたわけだ。
そして、今から新デッキの強大なパワーをこいつらに思い知らせてやる算段だ。


「わたしのターン、ドロー!
 それじゃ、まずはこれで楽しい舞台を整えるとしようか。
 フィールド魔法『KYOUTOUウォーターフロント』をフィールドゾーンに発動!」


――ゴゴゴゴゴ…!!


むみっ!?なにこれ…!?」

「いきなり海に面した巨大都市が出現したぞ?」

「こいつ…何をする気だ?」

「あー、ブランめ…やっぱりそのデッキか。」


このデッキはまずはこのカードで戦いの舞台を用意するところから始まる。
ちなみにフィールド魔法カードはアクションデュエルだとかなりリスキーなカードだ。
実はアクションフィールドはフィールド魔法の効果で使用できるだけ。
フィールド魔法はお互いに1枚ずつ発動できるけど、発動したそのプレイヤーはその瞬間から原則としてアクションカードを使用できなくなるからな。
当たり前だ、アクションフィールドというフィールド魔法を別のフィールド魔法で上書きするんだから。
もっとも、通常のデュエルには全く関係ない事だけど。

兎に角、話の脱線はここまでとして…!


「まず、このカードの第一の効果を説明しておくぞ。
 フィールドのカードが墓地へ送られる度に1枚につきこのカードに壊獣カウンターを1つ置く…最大で5個までな。」

「カウンターだと?」

「つまりカウンターがなければ何もできないって訳か。」


ま、そうなるな。
逆に言えば子の緩い条件なら置く手段なんていくらでもあるわけだがな。


「それでだ、創作作品においてこのような都市に現れる災害のような恐ろしい存在を…知っているか?

「は?」

「創作作品だと?」

「貴様、何が言いたい?」


この問いは抽象的過ぎてこいつらにはわからなかったか。


「都市…災害……っ!?


一方で彼女の場合は…わかったのか勘違いしてるのかわからないけどゾッとしているようだな。
まさか怪獣映画にトラウマが?
いや、単にこいつらによる侵略の事を思い出したのかもしれないけど…だとしたら現在進行形で無神経な事してるわよね。
でも、今は心を鬼にしてだな…!


「つまり、こういう事さ…お前たち3人のフィールドからゼンマイナイトとゼンマイドラン2体の計3体のモンスターをリリース!」

「何!?俺たちのモンスターをリリースするだと!?」

「むみっ!?エクシーズの奴らのモンスターが…消えた!?」

「世界を揺るがす大怪獣たちよ!大都市に君臨し、破壊の限りを尽くせ!
 手札から『多次元壊獣ラディアン』『壊星壊獣ジズキエル』『雷撃壊獣サンダー・ザ・キング』をわたしからみて左から順に1体ずつ各々の相手フィールドに特殊召喚する!」

『フォフォフォ…!』
多次元壊獣ラディアン:ATK2800

『ギュイィィィィィンッ!!』
壊星壊獣ジズキエル:ATK3300

『グォォォォォォォォォ!!』
雷撃壊獣サンダー・ザ・キング:ATK3300



「俺たちのフィールドに妙なバケモンが召喚されたぞ!?」

「しかも見た所、送りつけられたモンスターには大したデメリットがないじゃないか!?

「ははははは!俺たちに塩を送るとはなんと愚かな…!」

「むみ、何を考えてやってるのかわからないよ…。
 敵に強力なモンスターを送りつけちゃってさ…」


相手フィールドのモンスターを喰らい、相手フィールドに降臨するのが『壊獣』の基本。
確かに3000前後のモンスターが手に入ったとなれば塩を送られたと勘違いするのも然りか。
まぁ、何も考えるにやったというならそういう事だが…生憎そうじゃない。


「だけど、これで厄介なゼンマイドランはフィールドから消え去った事に変わりはない…」

「そういやそうだったぜ…これでは相手に強力モンスターがきても裏守備にできやしねぇ…!」

「だが、それを考えても自殺行為とは思わんかね?」

「いずれにしろフィールドからカードが墓地へ送られた事に変わりはない。
 よってウォーターフロントの効果により、墓地へ送られた数…つまり3つ『壊獣カウンター』を置くぞ。」
KYOUTOUウォーターフロント:壊獣カウンター0→1→2→3


だから自殺行為だっつってんだよ!
 俺たちに渡した壊獣どもはみんなそのカウンターを使って発動できる効果があるじゃないか!」

「特にジズキエルの効果はカードを対象にする効果を発動してくれりゃこのターンでも発動できるんだからな!」

「ま、そうなるな…」


壊獣は基本的にフィールドの壊獣カウンターを消費して固有の効果を発揮できる。
ラディアンとサンダー・ザ・キングはコントローラーのターンにならないと効果は使えない。
が、ジズキエルはカードを対象を取ればこちらのターンだろうと発動できる効果がある。
何も知らなければ一見自殺行為ととられても仕方ないか。

まぁ、実際はそんな事はないけど。

でも、融合次元の少女からも冷たい目で蔑まれていた。


「それで…敵に強力なモンスターを送ってまで何したいの?

「流石に、そこまで蔑まれるとちょっと凹むわね。
 だけど、これでいいんだ…壊獣カウンターが3つ置かれた事により、ウォーターフロントの更なる効果を発動!
 1ターンに1度だけ、デッキから『壊獣』モンスター1体を手札に加える事が可能になる。
 この効果により手札に加えるのは…『怒炎壊獣ドゴラン』!」


そしてこの怒炎壊獣ドゴランこそが…このデッキの切り札だ。
正確にはこのカードだけじゃ駄目だけど。


「『壊獣』をまた手札に!?」

「だが、もう俺たちのフィールドに送りつけられないはず…」

「待て、確か俺たちのフィールドにある『壊獣』のテキストには…!?」


流石にこれ以上送りつける事もしないしそもそもできない。
それで、ここからわたしがしようとしている事は『壊獣』のテキストを見ればわかるからな。
それじゃ、ここからがこのデュエルのクライマックスだ!


「お楽しみはこれからだ。
 そう…『壊獣』が相手フィールドに存在する場合に『壊獣』モンスターは手札から自分フィールドに特殊召喚できる!
 眠りを妨げられし壊獣の王者よ、巨大都市に上陸し怒りの炎で寄せくる敵を薙ぎ払え!いでよ、レベル8!壊獣王こと『怒炎壊獣ドゴラン』!!」

『ギャオォォォォォォォンンッ!!』
怒炎壊獣ドゴラン:ATK3000



「そうだ…この『壊獣』をただ同然で特殊召喚できる…!」

「自作自演の大怪獣バトルじゃねぇか…!」

「だが、そいつの攻撃力は3000…3300の奴を出すのが普通じゃないのか!?」


確かに普通は攻撃力の低い、あるいは妨害効果のない『壊獣』を渡してより攻撃力の高い『壊獣』をだすのがセオリーだ。
が、こいつが壊獣王たる所以は攻撃力じゃない。
それは固有の超絶効果にこそある…それを今見せてやる。


「普通はな…だが、より強力な壊獣を与えてそれを壊獣王で薙ぎ払う。
 それにこそこのデッキのロマンがあるんじゃないか…わかってないなぁ。
 ここで壊獣カウンターを3つ取り除き、怒炎壊獣ドゴランのモンスター効果を発動!」
KYOUTOUウォーターフロント:壊獣カウンター3→0


「この効果により、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!」

「何っ!?俺たちのフィールドのモンスターを全て破壊するだと!?」

「だから攻撃力高いモンスターを構わず渡せたわけか…!?おのれ!」

「対象を取る効果じゃないドゴランの効果には対応できないからね。」


ちなみに相手フィールドに伏せカードはあるけど発動する気配はないようだ。
恐らくは融合をメタってるカードだからなのだろうけど。


「そんなわけで寄せ来る者を全て薙ぎ払え!喰らいやがれ『狂怒炎熱線』!!」


――ボォォォォォォォ…ドゴォォォォォォォォォォォォォォ!!


「うわぁぁぁぁ!!」

「俺たちのモンスターが…!」

「ぜんめつめつめつ…!」

「わけがわからない、こんなのひどいよ…」


放射熱線で一掃完了!!やっぱりドゴランの効果は決まると気持ちいいね。
だけど、この効果を使ったドゴランは攻撃できなくなる。
このままじゃ相手を打倒する事はできないけど、だったらここからさらに動くだけだ。
あの子には悪い事をするけど、最悪の事態よりはマシだと思う…多分。


「ちなみにこの効果を使ったターンにはドゴランは攻撃はできない。
 が!ドゴランの効果でモンスターが破壊された場合に、速攻魔法『壊獣大災害』を発動!
 効果によってモンスターが破壊された時に発動でき、全てのプレイヤーは破壊されたモンスターの数×500のダメージを受ける!」

「でも、チェーン・シープは…むみっ!?

「全てのプレイヤーだと!?」

「馬鹿な、そんな事をすれば貴様もただでは済まんぞ!?」

「確かに普通ならわたしもそのダメージを受けるが…」


だけど、これを使うにあたって何もせずただ自爆するわけないだろう。
そこでこれを使う。


「その効果にチェーンし、手札から『シェルクリッター』を捨ててモンスター効果を発動!
 このターン、自分が受ける効果ダメージを1度だけ0にする!」

「自分へのダメージを無くしただと…!?」

「という事は…まさか!」

「ミミも!?」

「あ、うん…ごめん、そういう事になる。
 破壊したモンスターは12体…よってそれぞれ6000のダメージを喰らいやがれ!」


――ズドォォォォォォォォォ!!


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
社員A:LP4000→0

「あばぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
社員B:LP4000→0

「げふぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

社員C:LP4000→0

「むみぃぃぃぃぃぃぃ!!」
少女(ミシェル):LP1000→0


そんなわけで撃破完了。
1人誰か巻き込んだけど…ここは喧嘩両成敗って事で。


――タッタッタ…!


「こうなるだろうとは思ってたけど、やり過ぎだバーロー!」


――パシィーッ!


よくなかった。
決着が着いて飛び出してきた遊矢にハリセンで頭を叩かれる。
こうなる事がわかって送り出したのそっちじゃないか…。
いくらなんでも多人数戦は一気に決着をつけないとどうなるかわかったもんじゃないし。


「あうっ!?いや、だってねぇ…このデッキじゃこうなるって。
 それにこれは多人数戦で戦争だ…一気に決着を付けないとどうなるかわかったものじゃないし最悪の状況になるよりはましのはず…」

「にしてももう少しやりようあっただろ…完全にこっちが悪だ。
 状況が状況だから仕方ないが、あれじゃ無暗に敵を作る一方だ!

「うっ、ごめんなさい。」

「はぁ…こんな事なら釘を刺してから俺も乱入すべきだった。」


いずれにしろやりたい放題だったからなぁ…叱られるのも然りか。
争いを止めるにも申し越し上手くやらないといけないよなぁ。
それは兎も角、あのスーツの男たちのデュエルディスクが作動する様子がないようだ。


「おっと…それはさておき、このスーツの男を捕えるぞ。
 話を聞きたいし、少なくとも厄介な装置の付いたディスクは没収しないと。」

「そうだな。」


あの少女の救護もしたいところだけど、その前にエクシーズ次元の男たちの捕獲が先だ。
逃がしたら後で面倒な事になりかねないからな。

そんなわけで手荷物から捕縛用の紐を取って彼らの手足を縛って動けなくする。


――シュッ…!


「よし、一人目一丁上がり。」

「く…俺たちを縛り上げてどうするつもりだ…!」

「現状は敵だからな…妙な事をされたくないだけさ。」

「それに、あなたたちから聞きたい事は山ほどあるからね。
 後、ディスクは没収させてもらうよ…カード化する手段を持たせるわけにいかないからな。」

「ここまでか…くっ、俺たちもあいつのようにカード化される運命なのか。」

「あいつって誰だよ…そんなことしないし、やだよ!
 なに俗に言うくっころみたいな感覚で言ってんのさ。
 つーか、人の話聞けよ。」


負けたらカード化される風潮も大概にしろオラ。
デュエルの勝敗って本来そんな殺伐としたもんじゃないだろ、常識的に考えて…!
こいつらの常識や価値観はどう考えても違うから下手な事は言わないでおくけど。
向こうも結構大変な境遇を生きてきたのだろうしな。


「ただ、この次元を何故襲う必要があったのとかそういう事を聞きたいんだ。」

「は?貴様、何を言っている?わけのわからん事を?」

「答えになってないし…こりゃ時間を置いて落ち着いてから聞かないとダメか。
 というわけで面倒だから今は眠ってて…」


――ゴスッ!


「「ぐえっ…」」


ディスクを没収してから時間経過で強情な態度を改めてくれるのを待つしかないか。
とりあえず今暴れられると鬱陶しいので気絶させておく。


「遊矢、そっちはどうだ?」

「う〜ん、こっちも中々強情だなぁ。
 まぁ、どこの馬の骨とも知らない奴には言いたくないだろうしまだ仕方ないか。
 って、あれ…もう1人いたはずなのにいなくなってる。」

「まじかよ!このどさくさに紛れて逃げたな。」


で、この隙に1人この場から逃げ出したみたいだ…よく逃げ出せたなぁ。


「だが、手負いのみでそう遠くへは行けるとは思えない…!」

「ここは俺が追う!ブランはこの2人とあっちで倒れてる子の救護を任せた!」

「わかった!」


――タッタッタ…!



だけど、あれだけ派手にやられてた以上はそう遠くへは行っていないはず。
というわけで遊矢が追撃に当たってくれるようだ。

とりあえず、残ったわたしはそろそろあの子の手当てをしてやるとしますかな。
デッキに変なものが紛れ込んでいないか気になるところではあるしね。
あのデストーイ・チェーン・シープ…妙にえぐい見た目のモンスターだったからな。
もしかしたら、何かある気がする。

そう思って近づいていたら…!


――タッタッタッタ!!


「ミミちゃん、しっかりして!コンパ、早く手当を!」

「むみむみ、今手当てしてあげるですぅ!」


現地の住民か?恐らくそんな雰囲気の2人の少女がわたしより先にミミと呼ばれた少女に駆けつけてた。
真っ先にその少女に駆けつけた方は銀髪のおさげが特徴的な高校生くらいの少女。
コンパと呼ばれた方はストロベリーブロンドみたいな髪色のほんわか系の印象を受ける看護師っぽい少女だ。
とりあえず、見ただけで2人ともわたしなんかとは比べ物にならないほどの巨乳って事がわかる。
コンパがミミと呼ばれた少女の手当てを始めると、もう片方のおさげの方はこっちへ向いて強い形相で睨んでくる。


「あなたですか?ミミちゃんをこんな目に遭わせたのは…!」

「いや、あの……それは…ごめん。」


実際に彼女を巻き込んだのはわたしだから言い逃れできないんだけど?
う〜ん、まいったな…どうしたものか。
すると、彼女はわたしの後ろにいるスーツの男2人の目を向ける。


「それで、その縛られてる男たちとの関係は何ですか?」

「なら、現状は敵だとは言っておく。
 ただ、こいつらから戦力を削いだ上で話を聞こうと思ってこうしただけだ…いったん気絶させてるけど。」


ここは嘘をついた所で仕方ないので本当の事を言っておく。
何で融合次元を襲っているのか、エクシーズ次元への行き方はどうしているのかなど聞きたい事は山ほどあるしな。
もっとも、簡単に口を割ってもらえるとは思っちゃいないけどな。


「それで…そんな事をして一体何になるというのですか?
 こちらを一方的に襲ってきたエクシーズの侵略者なんかに聞く事なんて何も有りませんよ?

「は?」


しかし、そう言った後…蔑んだような冷たい瞳でこちらを見て強い口調でこう言い放つ。
その威圧感に圧されてこちらが呆然としている隙に、彼女はスーツの男に近づこうとしていた。


「待って、そいつらに何をする気!」

「彼らの手により、この場所は戦場と化してしまいました。
 ここで狩らなければ、逆に狩り返されてしまいます…だから!」


そしてデュエルディスクを操作しようとしている事から、何をするのか察した。
誰だろうと目の前でカードにされるわけにはいかない!


「やめて!」


――ドゴッ!!


きゃあっ!何をするんですかあなたは!」

「それはこっちの台詞だよ!今、こいつらをカードにしようとしたでしょ!」


なので、ここはタックルをかまして力づくでも止める…もちろん、ある程度加減をしている。
こっちとしては、憎しみの連鎖を続けさせるわけには行かないからな。
何より、話を聞けなくなるというのは非常に困る。


「それのどこがいけないというのですか…!
 彼らは…エクシーズの者達はこの世界にやってきて色々なものを滅茶苦茶にした!
 それに、大切な人たちまで……なのに見過ごせと言うのですか!

「気持ちは十分わかるけど、それは多分向こうだって同じ!
 こんな争いは原因を見つけて断ち切らないと、いつまでもこんな状況が続く一方だ!
 それにこいつらは末端だ、カードにしても仕方ないだろ!そんなのは八つ当たりだ!」

「あなたのようなどこの誰とも知らない方が知ったような事を言わないでください!
 そんなことを言って、彼らの片棒を担ぐというのなら…仕方ありません。
 どこの誰かは存じ上げませんが、あなたからカードになっていただきます!」


…どうやら紫吹やノワールの言う通り、現地の人は一筋縄ではいかないらしいな。
仕方ない、ここはデュエルで…!


「はるはる先輩、ちょっと待って欲しいですぅ!その人、ねぷねぷに…」

「え?まさか、この子が…!?

「ねぷねぷ…?コンパと言ったか、まさかネプテューヌの知り合いか?」

「へ?ねぷねぷじゃない…ですか?

「ええ、わたしはブランよ…よく間違われるけど、違うわ。」


と、ここでコンパと呼ばれた子が止めに入る。
どうやら彼女はネプテューヌと知り合いらしい。
確かに顔は酷似しているけど、わたしは彼女本人じゃないから否定はしておく。
止めてくれた事はありがたいのだけどね。
これではるはる先輩と呼ばれたおさげの子がどんな反応をしてくるかだけど。


「自分から否定してくれるなら話が早いわ。
 でも、あなたがここの女神なら彼らを庇い立てするはずがありませんから。」

「っ…あいつは一見ふざけた態度でいるように見えて根の感情としてはエクシーズへの憎しみで塗りつぶされているようだからな。

「いずれにしても、今のであなたが他次元からの侵入者である事は察知できました。
 どんな目的であれ、ここに土足で踏み込んだからにはあなたを容赦いたしません!

「ちっ、結局こうなるのか…わかった、とりあえずデュエルだ。」

「いいでしょう。」


どうやらデュエルで勝たない事には耳を傾けるつもりはなさそうだ。
次元戦争を止める…という事が最終的な目的ではあるとはいえ融合次元に土足で踏み込んだ事実に変わりはないしな。
デュエルの前にデッキをいつもの愛用デッキに戻しておく。
こっちの方が自分らしいし、流石に多人数戦でもないのにリスペクトの欠片もない『壊獣』デッキは相手に失礼だからね。


「デッキを変えた…?」

「ああ、こっちがいつも使っている自分のデッキだ…それじゃ始めようか。」

「わかりました、どんなデッキで来ようと簡単に負けるつもりはありません。
 深海遥香、いきます。」


「「デュエル!!」」


ブラン:LP4000
遥香:LP4000



「まずはあなたのお手並み、拝見させていただきます。」

「OK、わたしのターン。」


まず手札…初手はあまり動けないものの、ここでエクシーズ召喚はしておきたい。
だけど、相手はエクシーズ召喚そのものを憎んでいるはず…どうしたものか。


「う〜ん、これはどうしたものか。」

「何を唸っているのですか?早くお願いします。」

「そう急かさないで、やっていいのか迷っててね…でも、わかった。
 まずは手札から『コロソマ・ソルジャー』を召喚!」
コロソマ・ソルジャー:ATK1300


あなたも水属性の使い手…のようですね。」

「『も』ってことはそっちもか…なら、無様なプレイはできないわね。
 コロソマ・ソルジャーのモンスター効果!
 このカードが召喚した時、手札の水族か魚族のモンスター1体を捨てる事で1ドロー!
 そして水属性のコストとして墓地へ送られた『エビカブト』の効果!
 この効果でデッキからレベル3の『カニカブト』を特殊召喚する!」
カニカブト:DEF900


どうやら口ぶりからして彼女も水属性使いであるようだ。
だったら、エクシーズ召喚をしないといった手抜きは許されないな。
勝ち負けや面倒事を考えるより…実直に駆け引きを楽しむとするか。


「ここでカニカブト…ですか。
 あの人以外に使う方がいるなんて思いもよりませんでしたが。」

「紫吹月子を…知っているみたいね。」

「勿論です、あなたが知っているなんて思いもよりませんでしたが。
 彼女はこの次元では最強クラスのデュエリストだった話を聞いた事があります。
 ただ、彼らの侵略前には既に消息を絶ってしまったようですが。」

「色々貴重な事を教えてくれてありがとう。」


それにしてもカニカブトに反応してきたか。
そして、月子は融合次元では最強クラスのデュエリストだったらしい。
雲雀の方の紫吹が聞いたら泡吹いて倒れそうな話だ。
この次元では最強クラス…一部でも同じカードを使うデッキを愛用するわたしとしては余計に会ってみたくなった。


「って、今はデュエルに集中してください…余計な事を言わせないでください。」

「ごめん。」


おっと、デュエルを続けよう。
彼女は間違いなく融合召喚を使ってくるだろうから…!
ここはいつも使っていたハードシェルじゃなく…デニスからもらったあいつを呼び出してみよう。
彼女を前にできればあの召喚法は使いたくはなかったけど、手抜きはできないからね。


「わたしはレベル3のコロソマ・ソルジャーとカニカブトでオーバーレイ!」

「なっ!?」

「オーバーレイですか!?」


「渦潮の奥に待ち構え、流されし者を深淵に誘え!エクシーズ召喚!いでよ、ランク3『渦潮のアントリオン』!!」

『キシャァァァァァ!!』
渦潮のアントリオン:ATK1900 ORU2



「エクシーズ…!結局、あなたはエクシーズの手先なのですね…

そんな扱いを受けるのが嫌だから迷ってたんだよ!
 それに、エクシーズ次元の人しかエクシーズ召喚を使えないわけじゃないからな!
 ちなみにさっき墓地へ送ったエビカブトはチューナーだからシンクロ召喚もできるとは言っておく。」


エクシーズ召喚をした途端、強く睨まれた。
やはりというかエクシーズモンスターそのものに対して強い敵意を持ってしまっているようである。
エクシーズ次元の手先と誤解されたままでいるわけにはいかないのでシンクロ召喚も使える事を先に言っておく。


「シンクロ召喚も…だとすると、あなたは一体…!

「少なくともエクシーズ次元へ行った事ないとだけは言っておくわ。」

「それにしても、あのエクシーズモンスターあまり大きくないみたいですぅ。」

「いわば水棲のアリジゴクのようなモンスターよ。
 アリジゴクは本来ウスバカゲロウの幼虫だしね。」


ちなみに、ハードシェル・クラブより一回り小さいくらいである。
だけど、効果の方は大して強くはないが決して弱いわけではない。
相手は十中八九融合召喚で来る…と思っている。
エクストラからモンスターを出した瞬間、素材を1つ使ってそのモンスターの表示形式を変更した上で効果を無効にできる。
エクストラデッキからの特殊召喚を主とする相手を牽制をするのには頼もしいはず。
まずはこいつで出鼻を挫いてやる。


「それじゃ、デュエルに戻るとするわ。
 わたしはカードを1枚伏せてターンエンド。
 今度はそちらのお手並みを見せてもらうとするわ。」


初手はこんなところでターンを終えておく。
さて、相手の出方は如何なものか。


「いずれにしても、ミミちゃんを巻き添えにしたあなたを許してはおけません。
 わたしのターン、ドロー…わたしは手札から『海洋の騎士』を召喚!」
海洋の騎士:ATK1200


相手がまず出してきたのはタツノオトシゴを彷彿とさせる蒼き鎧の騎士。
成程…こっちが水族主体だとすれば、彼女は恐らく…!


「このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、手札からレベル4以下の海竜族モンスター1体を特殊召喚できます。」

海竜族…!


海竜族使いか…!
水族やドラゴン族の影に隠れがちだけど、それに負けない程の有用なモンスターを有している少数精鋭の種族。
だけど、特殊召喚効果という事は…牽制や少しでもデッキを回すためにも今使っておくか。


「待った、この発動に対し手札から『増殖するG』を捨て効果発動!
 このターン、あなたが特殊召喚するたびにわたしはデッキから1枚ドローする!」

「特殊召喚の牽制…この効果で1枚のドローは止められないようですが、構いません。
 この効果により、手札から『コダロス』を特殊召喚!」
コダロス:ATK1400


ここで手札から呼び出したのは『コダロス』なる幼生の海竜族モンスター。
この2体ではアントリオンの攻撃力には及ばないが…?


「とりあえず、Gの効果で1ドロー。」

「そしてフィールド魔法『伝説の都 アトランティス』を発動!」


――ゴゴゴゴゴ…!


そして、ここでフィールド魔法を展開してきた。
海底から幻の大陸にある都市が浮上してきた…そんな感じだ。
ん?待てよ…この『伝説の都 アトランティス』って確か…!


「このカードはルール上『海』として扱われるフィールド魔法です。
 この効果によりフィールドの水属性の攻撃力・守備力は200アップし、お互いの手札・フィールドの水属性モンスターのレベルは1つ下がります。」
海洋の騎士:ATK1200→1400 Lv3→2(DEF1100→1300)
コダロス:ATK1400→1600 Lv4→3(DEF1200→1400)

渦潮のアントリオン:ATK1900→2100(DEF1600→1800)



そう、ルール上『海』として扱われるカード…しまった!
お互いに影響するから、水属性同士である以上は戦闘サポートにはならないも同然。
ちなみにアントリオンはエクシーズモンスターだからレベルを持たない。
だけど、問題はそこじゃない…コダロスと『海』の両方が揃ってしまった事だ。
コダロスの効果は確か…!


「でも、2人とも水属性デッキだから強化が意味をなしていないですぅ…!」

「確かにそうですが、今はその効果は関係ありません。
 むしろ『海』と扱われるカードである事が重要です。

「っ、狙いはそれか…!

「どうやら融合召喚を警戒していたみたいですが、残念でしたね。
 そしてこの『海』と扱われているカードを墓地へ送り、コダロスのモンスター効果を発動!
 あなたのフィールドのカードを2枚まで対象にして墓地へ送ります!」


そう、特定のカードをコストにする必要があるとはいえ破格の複数枚除去だ。
割と軽視されがちな下級モンスターの中では有数なほどに強烈な効果だ。
見通しが甘かった…融合次元の住民だからといって必ずしも融合召喚にばかり頼っているとは限らなかったわけだ…!
融合召喚せずにアントリオンを処理しにいくとは、出鼻を挫かれた。
こいつ、できる!


「対象はあなたのアントリオンとセットカードです!
 沈んでください!『タイダル・ウェイブ』!!」
海洋の騎士:ATK1400→1200 Lv2→3(DEF1300→1100)
コダロス:ATK1600→1400 Lv3→4(DEF1400→1200)

渦潮のアントリオン:ATK2100→1900(DEF1800→1600)



その合図と同時にアトランティスが沈み出し、激流がこちらに押し寄せてきた…!
仕方ない、この伏せカードを使うなら今しかないか…!








――――――








Side:遊矢


「はぁはぁ…くっ、あいつはどこへ…!」


ブランが無茶苦茶なパワーデュエルで倒したあの3人の内、1人に逃げられたわけだが中々捕捉できない。
増援を持ってこられたら数の暴力で流石に厳しい。
だから、なんとしてもここで逃げられるわけには行かないが…!

逃げたと思われる方向へ走りまわっているのだが、中々見つからない。
しまったな、これ以上闇雲に探しても見つからないか?
そう思った時のことであった。


――ドゴォォォォォオ!!


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「!?」


爆風と共にあの逃げた男のものと思われる悲鳴がここに木霊していった。
誰かにやられたのか?
いずれにしても、ここまで響いたという事は近くにいるはず。
そう思って、悲鳴が聞こえた方向へ向かうと…開けた場所にいきつく。

そこでまず目にしたのは…!


これは…!


逃げた男の姿が映し出されたカードが空中を舞っているところだった。
そしてその奥には…!


「見ない顔だが、お前は何者だ?
 もしも、先ほどの野郎の仲間だというのならここで倒す!」


骨の眷属のようなモンスターを従えた角刈りの髪形をした学ラン姿の男が佇んでいた。
ここに姿を見せた俺を険しい顔つきで睨み付けているな…穏便に済みそうな雰囲気じゃなさそうだ。
そして見ただけで分かる…こいつ、間違いなく只者じゃない。
とりあえず、あの男の仲間じゃないって事は伝えておかないといけなそうだが…話を聞いてもらえるかどうか。










 続く 






登場カード補足






渦潮のアントリオン
エクシーズ・効果モンスター
ランク3/水属性/昆虫族/攻1900/守1600
水属性レベル3モンスター×2
(1):相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
そのエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの表示形式を変更し、その効果を無効化する。



シェルクリッター
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻1000/守 600
「シェルクリッター」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン自分が受ける効果ダメージを1度だけ0にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):墓地のこのカードを除外し、除外されている自分の「シェルクリッター」以外の水族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを墓地に戻す。



海洋の騎士
効果モンスター
星3/水属性/海竜族/攻1200/守1100
「海洋の騎士」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
手札からレベル4以下の海竜族モンスター1体を特殊召喚する。
(2):このカードが手札・フィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキ・墓地から「海」1枚を選んで発動する。



壊獣大災害
速攻魔法
(1):カードの効果によってフィールドのカードが破壊された場合に発動できる。
その効果で破壊されたカードの数×500ダメージをお互いに受ける。
(2):墓地のこのカードを除外し、以下の効果から1つ選んで発動できる。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
●自分の墓地の「壊獣」モンスター1体を対象として発動できる。
そのカードを手札に加える。
●自分フィールドのカード1枚を選び、そのカードの上に壊獣カウンターを1つ置く。