Side:ブラン


『ヌ…!』
甲殻拳士カニメデス:ATK2500

『グルルルル…!』
GHカオス・リベリオン・F・シデン:ATK2500



わたしとエクシーズの女神のノワールがお互いに健闘を称えあって別れようとした時、異様な気配と共にカオス・リベリオンを連れたネプテューヌが襲撃してきやがった。
ついさっきレオ・コーポレーションで会った時は何もなかったのに、まるで別人のような殺気を感じる。
その眼は親の仇を見るようなものでノワールを捕えていた。
どうやら、言動からここにやってきたノワールを潰しにやってきたのだろう…本能的に。
だけど、今彼女を倒させるわけにはいかない。
カニメデスを召喚して迎撃させているが、流石にモンスターとしての格が違うからか押され気味だ。


「なんでわたしを庇うように…?」

「どきなさい、ブラン!そいつ殺せない!」

「どこのヤンデレ妹の台詞だ!
 彼女は立場上敵だが、デュエルを通じて信じてみようって思えた!
 エクシーズへの憎しみをむき出しにしたお前にやらせるわけにいかない!
 お互いに憎しみばかりぶつけていたら、この血を吐き続けるだけの次元戦争は終わらないんだ!」

「スタンダードの分際で…わたしの何がわかるというの!」
 
「わたしはあなたじゃないし、何がわかるわけでもない。」


やっぱりネプテューヌは人が変わったように憎しみに囚われているようだ。
分かり合えたというのは結局のところ思い上がりだったのかもしれない。
気持ちはわからなくもない…カオス・リベリオンを持っていた時、憎しみの衝動を抑えるのが難しかったから。
だけど、こんな事をしただけじゃ憎しみの連鎖でキリがないだけだ。
それじゃ本当に戦うべき敵の思う壺だし、食い止める!


「ノワール、早く行って!」

「でも、彼女はもしかしたら…!」

「かもしれない…だけど、ここで消耗したら俺の知り合いやLDSの連中に狙われて終わりだ!
 それにお前までちょっかいを出すとここにいる3人とも取り返しのつかない事になりかねない!
 ちょっとこいつは荷が重いけど、お前には別の次元でやる事があるはずだ!早く行け!!」

「っ…わかったわ。」

「早く行け!わたしたちが正気を失わない内に!」


彼女の言いたい事もわかる。
だけど、ここでノワールまで手を出していたらやばい事になるかもしれない。
ノワールもそれは承知のようで、苦汁を飲んだような表情で渋々頷いてくれたようだ。


――ポチポチ…!


「今回はあなたに免じて引くとするわ。
 だけど、感謝なんてしないんだから!」

待ちなさい!


――ピシュンッ!!


とりあえず、ノワールは無事にこの場を去ったようだ。
だけど、ネプテューヌが変身してカオス・リベリオンを使って襲っている状況は依然として変わらない。


「なんで、エクシーズの奴らを助けるような真似を…エクシーズの手先だったのね、ブラン!」

「なんでそうなる!現状は敵だと認識しているよ!
 ただ、敵だからといっていつまでも憎しみあってちゃ話がこじれるだろうが!
 それに我々の立場を考えろ、女神が自分を見失うことになったら話にならないだろ!」


現状、それぞれ酷似した顔の女神が集って何かすると拙いのは確定的に明らか。
だからそれを避けるために「帰らせる」のがいいと思ったんだ。
それに何が正しくて何が正しいかわからないまま、感情の赴くままに動いたら取り返しのつかない事をしかねないからな。
女神の立場なら猶更だ。

何より争わずに済むならそれに越した事はないはずなのに。


「エクシーズ次元の人を倒すのを目的にしたら本末転倒だろ!それはあくまで手段だ!
 融合次元に平和と笑顔を取り戻す、それがお前のやるべき事じゃないのか?」

「そんな事はどうでもいいの!憎きエクシーズの奴らを助けるような真似をした!
 だから、あなたにはここで消えてもらう!」

てめぇ!本気で言ってんのか?いずれにしても正気じゃねぇな…くっ!


ちくしょう、やっぱり話が通用しないようだ…どう考えても正気を無くしている。
しかも…去って行ったノワールの言っていた事が本当だとすると、嫌な予感がぬぐえない。
ここに来る前に誰かに何かされたのかもしれない。

だけど…それ以前にこのままじゃカニメデスがもたない。
だからといってエースのオッドシェルやルーンシェルをぶつけるわけには…!
なんとかして、一先ずこいつを黙らせないといけないのに!


『グオォォォォ!!』

「カニメデス!?」


そう思っていた矢先にカニメデスが耐え切れずにやられてしまった。
良く持った方だと思うけど、ここまでなのか…!
そして、カオス・リベリオンの顎の牙の矛先が…!


「こんなところにいたのかネプテューヌ…!
 おい、ここで何をしている!?それにその姿は…?」

雲雀…!?


わたしへ向けられた矢先に聞いた事ある男の声が…!
ネプテューヌが驚いているところを見ると雲雀の様だ。
よし…隙あり!


悪く思うな!!


――ドゴッ!!


「ぐはっ…!」

「貴様…ネプテューヌに何を!」


動揺した一瞬の隙に距離を詰めてボディブローを腹に決めて暴走したネプテューヌを卒倒させられた。
その衝撃でカオス・リベリオンがディスクから外れ、地面に落ちる。


「悪い、変身しているけどブランだ!
 それで詳しい話はさておき、何故か正気を無くしてたもんだから気絶させといたんだ。」

「正気を失っていただと?どういうことだ?」

「それはこっちが知りたい!
 どういうわけか問答無用で襲い掛かってきて大変だったんだ!」

「ちっ、何がどうなっている…!」


正確な事実は伏せて伝える。
彼にエクシーズの関係者と話をしていた事実を伝えるとややこしい事になりそうだからな。
クソメガネにはバレているだろうから釈明はできないが。

まぁ、問答無用で襲い掛かって来たのは事実だから問題はないだろう。


「それより問題はここからだ…『ダーク・フュージョン』の話、覚えているよな?」

「貴様の言う黒幕から俺たちの仲間に植え付けられたというアレの事か?」

「そう、もしかしたらそいつを配っている連中と接触した可能性も無きに非ずかもしれない。」

「何?貴様、何を言っている?」


突飛な話で悪かったな。
ノワールの事は彼には伏せておくけど、彼女は何か違和感を感じていたようだった。
もしかしたら、『ダーク・フュージョン』などの闇のカードがデッキに紛れ込んでいるのかもしれない。
ネプテューヌが外へ出て行った時にな。
これはわたしたちの短慮が招いたかもしれない。


「あくまで可能性の話だ、だけど本当なら確実に放置しておけない。
 気を失っている今のうちにデッキを調べよう、一応手袋はあるからそれを着けてな。」

「貴様…出鱈目だったら承知しないぞ!貸せ!」

「いや、かもしれないって前置きしただろ…」


――シュゥゥゥ…


「本当にブランだったのか、貴様…」

「ネプテューヌも似たような変身していたけどな。」


そして変身を解いて、ネプテューヌのデッキに闇のカードが紛れ込んでいないかどうか探してみる事になった。










超次元ゲイム ARC-V 第69話
『闇のカードは劇物』










「うーん、なかなか見つからない…っ、これはッ!?

「どうした、何があった?」


デッキの中を探ってから数分後、1枚1枚丁寧に確認していたら…!
『ダーク・フュージョン』こそは見つからなかったけど、それらしい怪しげなカードを見つけた。
何だこのカードは…ちょっと触れただけで吐き気がする。


「ああ…『ダーク・フュージョン』じゃないけど、いかにもそれっぽいカードを見つけた。
 紫吹、このカードを見てどう思う?」

「何だこのカードは?聞いた事も見た事もないぞ!?
 それに普段のネプテューヌの奴がこんな恐ろしいカードを入れるとは思えんが…!」

「となるとビンゴだな…このカードからやけに邪悪な気配を感じた。
 間違いない、これは俗に言う『闇のカード』って奴だ。」


そのカードは紫吹も知らなかったカードのようだった。
案の定、俗に言う闇のカードがネプテューヌのデッキに紛れ込んでいた。
そのカードの名は…『超融合』

物々しい名前からしても如何にも曰くつきのシロモノだろう。
内容の方も速攻魔法かつ相手フィールドのモンスターも融合素材に使用できる非常に凶悪なもの。
だけど、ネプテューヌが扱えるとは思えない。
というのもカオス・リベリオンを始めネプテューヌの持つ融合体はカードカテゴリ指定かカオス・リベリオンのように元々の持ち主が自分の必要があるからだ。
これだけならネプテューヌが使える要素はない。

だけど、問題は『超融合』の力で融合モンスターを生成する可能性がある事。
これだけの邪気を感じるのだから、そんな力があってもおかしくない。
もっとも、エクストラデッキにもそれらしいモンスターがない事から使った痕跡はないらしいのが幸いか。
使ってしまえば取り返しのつかない事になっていたかもしれないからな。
それこそ、カードに封印しなければならない程の。

ハンティングゲームという名目で融合次元を襲撃した理由にこれがあるのは間違いない。


「おのれ、貴様の言う真の敵の件はあながち出鱈目でもなかったか…!」

「うぷ…兎にも角にも、このカードは責任をもって没収するぞ。
 こんな香ばしい匂いの恐ろしげなカード、とてもじゃないが融合次元の人には持たせられねぇよ。」

「ああ、構わん…どの道こいつにそんな怪しいカードを使わせるわけにはいかん。」

「ところで顔色が悪いが大丈夫か?」

「このカードのせいで気分は最悪だよクソ。」


そんなわけでこのカードは責任を持って処分する。
スタンダードのわたしが持っているだけでも気が狂いそうになりそうになる程だ…実際かなり気持ち悪くなってきた。
だから、特に関連が強いはずの融合次元の人への影響は深刻だろうからな。

それと…!


「落ちているこのカオス・リベリオン…お前が預かるべきだと思う。」

「馬鹿を言うな…そのモンスターは俺の手に負える代物じゃない。
 何故お前が使えていたは知らんが、ネプテューヌにしか使いこなせん。」

「でもなぁ…正直これを持っていない時のネプテューヌはあまり棘が感じられなかった。
 わたしも持っていた時はこいつに怒りや憎しみを植え付けられていたような感じがしてだな…!」


カオス・リベリオンを持っていた時の『オレ』ははっきりいってどうかしていた。
あの時は本当にブチキレやすかった事を自覚している。
不安定だったとはいえ、女神化の後で暴走しだしてしまったからな。
もっとも、それはオッドシェルと同時に持っていた事からの相互作用もあるのだろうが。
それは兎も角、ネプテューヌにこいつを返した時…どうしてか心がとても落ち着いたんだ。
この事からカオス・リベリオンには、所有者に怒りや憎しみといった負の感情を植え付け増幅させるんじゃないかと推測している。
関連のあるオッドシェルにはそんな事はないだけに、より異様な印象を感じるよこのカードは。


「確かにこのカードを持っていた時の貴様は異様な殺気のようなものを感じた。
 だが、やはりカオス・リベリオンは元々の持ち主のネプテューヌが持っているしかないはずだ。
 貴様は奴以上に影響を受けているように感じた上、俺には手に負えんからな。」

「結局そうなるか…わかった、カオス・リベリオンは今まで通りにしよう。
 ただし、彼女の動向には気を付けて。
 一時的とはいえ闇のカードを持っていた影響がないとも限らないから。」

「ネプテューヌに限ってそんな事は…ありえなくはないな。」

「だろ?心の闇は思ったより根深そうだし。」


どうも彼女の妹がカードに封印されたのを目撃したらしい事は聞いているからな。
心の奥底には強い復讐心があっても不思議じゃない。
今の彼女はいわば爆弾を抱えた状態…そこに一時的に劇物が混じり込んでいるから感情が爆発したら大惨事になりかねない。
それに、その真の敵こと魔女『マジェコンヌ』って奴から煽られても不思議じゃないはず。
決して彼女の動向に関して予断を許さないって訳だ。


「話は変わるけど、ネプテューヌとはもう少し話し合いたかった。
 でも、今の状態じゃ無理そうだな。」

「ああ、貴様はもう下手に干渉しない方がいい。」


そうなると、ネプテューヌとの話はここで打ちきりか。
今は気絶してしまってるし、下手な話して没収した超融合が狙われたらまずいしな。


「それと、赤馬零児から呼び出しだ…一度戻って来い、と。」

「あのクソメガネから呼び出しか…わかった。」


っと、ここで赤馬社長からの呼び出しを喰らった。
もしかしなくても、デニスとノワールに会った件だよな?
はぁ…どう説明したものか。
このまま逃亡してもいいかもしれないが、そうしてしまうと後が面倒そうだ。
ここは仕方ない、体調はかなり悪いけど。



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さてと、体調が悪い中で再び赤馬社長と対面してしまったわけだが…!


「おえっぷ……再びわたしを呼び出して何用ですか?」

「随分と顔色が悪そうだが、話を始めるぞ。
 まず1つ、君に渡し忘れていたものがあってな…これを受け取るがいい。」


――ぱすっ。


どうやらわたしに渡し忘れたものがあったらしい。
そうして渡されたのは…デュエルディスク用のメモリーカードと3枚の意味不明なカードだった。


「これは…」

「デュエルディスクをアップデートするためのパッチとシンクロ次元へ行くためのカードだ。」

「だからシンクロ次元へはまだ行くつもりは…」

「だが、気が変わるかもしれないと思ってな。
 ありがたく受け取るがいい。」

「あ、はい。」


なんと、デュエルディスクをアップデートするパッチプログラムとシンクロ次元へ行く用のカードの様だ。
融合次元の次はエクシーズ次元へ行くつもりだったんだがなぁ。
だが、シンクロ次元へ行かざるを得ない状況もあり得るかもしれない。
だから、ここは彼の言う通り有難く受け取っておこう。


「それで、このプログラムは何?」

「我々、スタンダード次元の人々の強みとして『アクションデュエル』がある。
 それを他の次元でも行えるようにするパッチプログラムだ。」

「あはは…これをインストールすればアクションデュエルを行えるようにするわけか。」


とんでもないものを開発したなぁ。
今までは大規模な投影装置がないとアクションデュエルができなかった。
なのに、デュエルディスクの方を弄って、その装置なしでもアクションデュエルが可能になるようにしたらしい。
これだからレオ・コーポレーションの開発技術は侮れない。
流石に我々教会も技術力じゃ後手に回るもんだ。


「う〜ん、だけどそれで有利に立ち回れるかというと疑問が残るな。
 アクショントラップも増えたし、そう思い通りになる展開は難しいだろ。」

「安心しろ、ディスクから展開するアクションカードにはトラップのデータは入れていない。」

「成程な、競技じゃないし流石にそこは調整していたか。」


スタンダード次元内での競技としてはアクショントラップも必要だ。
そこで生まれる駆け引きがあってこそ面白いのだからな。
だけど、ここからは遊びでも競技でもない争いだ。
バトルロイヤルの時は競技に偽装する必要があったわけだが、今回はそうする必要はないもんな。


「当然だ、拾ったカードがデメリットカードばかりでは意味がないからな。」

「だけど、それが通用するのは最初の内だけだ。
 慣れてしまえば、基礎的な身体能力の差でこちらが不利になると思うが?


もっとも、情報を筒抜けされれば身体能力の差の分、相手に分がある困ったものと化す困ったものだ。
こっちはあくまでも競技であっちは実戦という意識の差もあるが。
だから最初の内は使わずに温存しておくのがベターだと思うが…?


「敵に知られればかもしれんな…だが、我々が向かうのはシンクロ次元。
 同盟を組むためゆえ、彼らにも慣れてもらいたいところだ。」

「はぁ…まずは味方になりえるかどうかを判断しておかないと後悔するぞ。」


シンクロ次元の奴は通り魔ことベールしか見た事ないが、正直ノワールより信用できない。
それに柚子がいるとはいえ、現状は行く気はない。
敵ではあるが信用はできるノワールがエクシーズ次元へ連れ出すだろうからね。
もっともノワールがベールにやられでもしたら話は別だが。
そして、敵がシンクロ次元に深く絡んでいた場合は最終的な討伐目標になりえる。


「とりあえず、使うかどうかは兎も角有難く頂戴する。
 用が以上ならそろそろ帰らせてもらおうかな…見ての通り気分は悪いし。」


――タッタッ…


「待て。」

「…チッ。」


まぁ、話がそれだけなら帰ろうと思ったけど呼び止められたか。
完全にばれているなこりゃ。
ここからは攻守逆転…わたしが問い詰められる立場となるわけだ。


「私が君に問う事は…わかっているな?」

「ははは…何のことかしら?」

「とぼけても無駄だ。
 君がエクシーズ次元の者と接触した事はわかっている。」


駄目もとでとぼけてはみたけど、流石に筒抜けであった。


「確か召喚反応を調べられるんだったか?」

「そういう事だ…召喚反応の強さからどこでどの次元のものとデュエルしたかなどお見通しなのでな。
 無論、君の召喚反応もな。」

「わかった、この件はわたしの負けだ。
 確かにわたしはつい先ほどエクシーズ次元の者と接触した。」


召喚反応を特定されたんじゃ言い逃れはできない。
だから、エクシーズ次元の人と接触した事は白状しておく。
だが、詳しい内容を喋りたくはない。
そんな事をすれば彼らから見たわたしへの信用がなくなってしまう。
何より、エクシーズモンスターを1枚口封じとして受け取っている借りがあるからな。


「だけど、それ以上の事は明言するわけにはいかない。
 口封じされているのだけど、そいつらとは適当なところでお茶を濁したとだけは言っておく。
 それに…誰と接触したのかは既に分かっているだろ?こっちからは言わないけどな。」

「君が接触したのはデニス・マックフィールドと君に酷似した顔の少女…だろう?」

「そう思うならそうなんだろう?お前の中ではな。」


とはいっておくが正解だ。
で、やっぱりデニスがスパイだったって事わかってたんじゃないか。
これで確定だけど、最初から泳がせているんだろうね。


「で、仮にデニスがスパイだとしたらそれをわざと泳がせているアンタが恐ろしいよ。」

「はて?褒め言葉として受け取っておこう。」

「褒めてねぇよ…呆れてるんだよ。」


しかし、向こうがここの情報を探っていながら何のために泳がせてるのやら。
彼なりにエクシーズ次元の人たちの実態をつかもうとしているのかもしれない。
まぁ、多分違うだろうけど。
とりあえず、これでデニスを泳がせてどうするという注意はできた。
あくまで仮にという事で明言していないのがミソだ。


「そういうわけだ、後は勝手に察してくれ。
 ただ、これだけは言っておく…融合次元で得た情報と場合によっては敵として牙をむく可能性があるとな。」

「よかろう…その場合は我々も全力をもって君を叩き潰す。」

「肝に銘じておくよ…それじゃ今度こそ帰らせてもらうぜ。」


とりあえず、場合によってはエクシーズ次元の人たちと協力する羽目になる可能性もあり得る。
やり方は気に喰わないにしろ、少なくとも女神の方は真剣に取り組んでいるように見えたからな。
その目的の重要性次第ではそっちにつく事もありえるかもしれないってわけだ。
なにせ、紫吹の妹も恐らくそれをわかった上で向こうの立場についた形だろう。
融合次元で真相を確かめたいのもそうする必要があるかどうかだ。
もっとも、エクシーズ次元の方も迂闊に魔女には手を出せないようだが。

まぁ、敵対するにしても大っぴらに戦うわけには行くまい。
今回のはいわば牽制かつ釘差しだ。
そっちがシンクロ次元という、現状一番よく分かっていない上にキナ臭い場所へいくというのなら猶更だ。
そことはエクシーズ次元以上に決戦の場になる可能性もある。
仮にシンクロ次元が例の魔女と繋がっているにも拘わらず同盟という事になったらぶつからざるを得ないわけだ。

そういうわけで今度こそ面会はここまでだ。
あまり長話をするわけじゃないし、本当に立ち去る事にしよう。


――タッ…タッ


「どうした?帰らないのか?」


いや、ちょっと待て?やっぱり、あの問題を話すべきか?
ネプテューヌを抱えている事を考えると話した方がいいとは思う。
だけど悪用されたら嫌だしなぁ…う〜ん。


「何を唸っている?」

「いや、ちょっと話さなきゃならない…と思う事があってだな。
 実は融合次元の女神のネプテューヌにさっき襲われたんだ。」

「それはエクシーズの者と接触したからでは?」

「それもあるけど、明らかに正気を無くしていた。
 紫吹の介入のおかげで彼女を気絶させられたのだけど、その場でデッキを調べたらとんでもないカードが見つかった。
 わたしが体調に変調をきたすほどの邪念を感じるカードが…これだ。」

「ほう?超融合…とな?」


とはいえ、これについては正直に話すべきだと思い…抜き取ったカードを見せる。
当たり前だが、これを触らせるわけには行かない。
問題はこれを見てどう思うかだ。


「ふむ…確かに普通のカードではないようだな。」

「はぁはぁ…だろ?スタンダードのわたしでさえ持っているだけでも体調不良を引き起こす程のシロモノだ。
 超融合は融合召喚を行うカードだから、融合次元の人への影響はさらに強いものだろう。
 まだ使った痕跡はないようだからまだしも、もし使っていたらとんでもない事態になっていたかもな。」

「何が言いたい?」

「多分、このような吐き気を催す程の『闇のカード』が融合次元が襲撃された原因の1つだろう事は言っておく。
 もし、これを解析して融合コースに配布しようなどと馬鹿なこと考えているようなら…今すぐ潰すぞ?
 というより自分が曰くつきの立場だから立ちくらみでなんとかなってるが、触れようと思うならやめておけ。」


普通のカードではない曰くつきのカードだという事は理解してくれたらしい。
だけど、彼らの手に渡らないように警告しておく。
これが融合次元を襲撃した理由の1つだとすれば猶更駄目だ。


「大口を…とはあながち言えんな。
 そのカードを我々に渡す気はないようだな。
 もっとも、忠告は聞いておこう…事実、ここにきてから君もだいぶ辛そうだからな。」

「当たり前だ、こんな危険な力を持つカードを渡せるわけねぇだろ…おえっぷ。
 このカードは我々教会が責任を持って処分させてもらうぞ。」

「…いいだろう。」


実際、このカードを手に取って持っているだけでも想像以上に堪える。
あまり長い時間は持っていられないのが現状だ…現在進行形で気持ち悪いのがもうね。
このカードは実際早く処分しないと拙い。
あまりにも危険なカードだという事は伝わったようで何よりだ。
そんな危ないカードのせいで何か起こって責任問題になれば…困るだろうしな。


「ネプテューヌから没収したとはいえ、彼女の扱いは十分気を付けてくれないだろうか。
 金輪際はっきり言わせてもらうが、彼女の心の闇は紫吹より深そうだからな。」

「ああ、その事は既に承知している。」

「なら話は早い…わたしの時以上に暴走する可能性があるから気を付けて。
 それと、名前だけしか知らないけど闇のカードは少なくとももう1種あるらしい。
 その名は『ダーク・フュージョン』…そのカードにも気を付けて欲しい。
 わたしからは以上だけど、まだ何かある?」

「いや、もう結構だ。」

「なら、今度こそ帰らさせてもらうよ。
 精々シンクロの奴らに足元掬われないようにな。」

「君もな。」


わたしの場合は融合やエクシーズの者達に対してではあるがな。
そういうわけで今度こそこの部屋を後にした。
あぁ…次は栗音の件を済ませよう。
融合次元のゲートはまだ開かれないだろうしな。



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その後、体調が悪い中でわたしは桜小路家へ赴いた。
スポンサーの件を締結させるためだ。

そこで桜小路家の領主とも対面させていただいたわけだが…まぁ厳格な人だったなぁと。
だけど、わたしの顔色からかもしれないけど現状の危機感は認知しているようで話はとんとん拍子で進んでいった。

その結果、LDSの総合コースとエクシーズコースの大半がルウィー教会へ移り、大幅な資金提供をしてくれる形となった。
我々としても現状は人手と資金不足だから非常に助かる。
その総合コースの者には沢渡の取り巻き達もいるようだ。
沢渡が行方不明という事もたっていてもいられなくなったんだろう…慕われてたんだなと感動を覚える。
そして、エクシーズコースにはわたしにエクシーズを渡してくれた北斗の姿もあった。
…これから彼らには厳しい環境で修行してもらう事になるけど、大丈夫だろうか?
でも、心身ともに強くなってもらわないと困るのよね。
ただでさえ、わたしたち3人が抜ける上、残った者もロムが本調子じゃないからここを守れるか不安だから。

だけど、LDSに残るという選択肢も一応は与えている。
あまりに過酷で寒い環境で、命の保証はないからね…わたしも女神じゃなければ死んでたし。
正直言って、彼らが付いていけるかどうかは疑問が残る。
だけど…!


「あなたに栗音様が完敗し、わたしも目が覚めました。
 このまま埋もれていたらいけないんだって…!」

「それに侵略者に対して沢渡さんが命を張ったんだ…!」

「今度は俺たちががんばらないでどうする!」

「そうだそうだ!」

「なにー!お前らのような沢渡の取り巻き風情がでしゃばんな!」

「この野郎、やんのか?」

「僕も混ぜてもらおうかな?」


なんかみんなやる気がある気がする。
あー、張り合うのはいいけど場所を考えろよ…!
とりあえず…!


「…はぁっ!


――ピカァァァァ!!


「っ…!」

「くっ、だが…!」


女神に変身して威圧をかける…一時的だけど体調不良も和らいでいるかのような錯覚を覚える。
ここからは遊びや競技じゃない…戦争に首を突っ込む形となる。
ここで気を引き締めてもらわないと非常に困るから。

だけど、意外と怖気づいてないようだな。
こっちが甘かったのか、それとも想像以上に肝が据わっているのか。
いずれにしても、見込みは十分ありそうだ。
成長次第では彼らなら守りを任せられるかもしれない。
ま、わたしはその成果を知る機会は殆どないだろうけどな!

で、念のため問う事にする。


「この威圧に晒されても怖気づかないとは大したものだ。
 ここから先ははっきり言って命の保証はできない。
 ついでに目的地はグリーンランドだから環境も厳しい。
 それでも、強くなり着いていく覚悟はあるか?」


「「「「「「「当然!!」」」」」」」

「わかった!」


この場にいる元LDS生徒はみんな覚悟が決まったようだ。
ここまで警告されてほぼ全員が諦めると思いきや、思わぬ嬉しい誤算だ。

だけど、ざっと50人くらいはいる。
さて、教会側に受け入れられるキャパシティがあるかどうか…?


「だけど、ちょっとタンマ…待ってください。」


――pipi…


『どうかしましたか?ブランお姉ちゃん。』

「急にごめんなさい。
 まず報告から…桜小路財閥がスポンサーに入ったわ。」

『あなたにそんな役目がこなせるとは意外でしたね…!
 ですが、それ程の財閥を味方に付けられればこれで資金面は解決です。』



とりあえず、教会のトップであるロムに連絡しておく。
確かに交渉役は向いていない自覚はあるけど、その言い草はひどい。


「ただし、それに伴って教会で学びたい者が50名ほどいるらしい。
 キャパシティ的に厳しいんじゃないかと思うのだけどどうしようか?」

『それは困りましたね…本部だけならですがね。
 10名だけ連れてきて、後は他の支部にでも詰め込んでおきましょう。
 本部は基本的に少数精鋭ですからね…選抜をお願いします。』


「ああ、一応あるのね…OK。」

『ではいったん切ります。』


――ツーツー。


どうやら10名だけ選抜して連れてこいとの事だ。
流石に50名も一気に受け入れる余裕はないから残当だろう。


「…先に行っておくけど、ごめんなさい。
 教会本部の容量的に受け入れられるのは10名だけ。
 後は他の支部に行ってもらう事になるけど、構わないかしら?」

「あちゃ…流石に受け入れには制限があるか。」

「となると、上位10名が行く事になるわけか?」

「面白れぇ、誰が行けるか競争だな?」

「そうなるわね…でも、栗音には1度本部に来てもらいたいからそこはよろしく。」

「わかりましたわ…」


財閥の人には来てもらわないと話にならないからね…彼女は別枠だ。
とりあえず、栗音含めて10〜11名を選抜する事になった。



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そして、いわゆるスイスドロー方式で選抜を行った。
わたしはその間、嘔吐したり寝込んでいたけど。
どうして体調を悪くしたかは今は隠しておく…ここで動揺させてもアレだし。

結果を言うと、元々エクシーズコーストップだった栗音は当然1位通過。
次いで北斗、沢渡の取り巻き3名と他6名という形で上位10名が決定した。
まぁ、活躍できる面子としては妥当か…頼むから生き残ってくれよ。
残りの者はLDSに帰るか教会の支部行きとなるわけだ。

そうして、わたしと選ばれた10名で教会本部へ向かうわけだが…?


「まさかとは思うけど、桜小路財閥ともあろう者が自家用航空機を持っていないなんてことはないわよね?」

「それを今聞きますの?当然持っておりますわよ…見くびらないでくださいませ。
 目的地はグリーンランドにあるルウィー教会の本部で間違いないわよね?」

「そうか、なら問題はなさそうだ…」


――pipi…


「おっと、電話だ。」


それじゃ準備でき次第行こう…と思った矢先にディスクから着信が入る。
差出人はロム…何かあったのかしら?


「何かあったの?」

『至急こちらに戻ってください、融合次元へ行く事ができるようになりました。』

「は…はぁ?」

『そこまで驚いてどうするんですか?』

「思ったより早くて驚くわよ。
 というより、まだ桜小路家から資金提供を受けようとするところなんだけど?」


資金が厳しい中でよくゲートがよく開いたなおい。
ここからさらに時間がかかるものだと思っていたのに。
とんだ骨折り損じゃないだろうか?わたしのやってきたことは…!
まぁ、人員が確保できた事と紫吹やノワールとデュエルできたから無駄ではないが。


『厳しいと思ってはいたのですが、何とかしてみました。
 できればすぐに戻ってくださると早く向かえるのですが…?』


「その事なんだけど、実はちょっとばかり爆弾を抱えてしまった身なんだ。
 いつもなら女神化してから飛行して戻った方が早いとは思うけど、桜小路家の飛行機で選抜した10名と向かうわ。」

『爆弾ですか?それなら猶更…』

「比喩だからあまり生真面目に受け取らず軽い冗談として受け止めて?」

『むぅ、冗談は嫌いです…ぷんぷん。』


怒られました。
まぁ、冗談じゃ済まされないとんでもない代物なのは確かだけどね。


「爆弾は冗談として…体調に変調をきたすものを抱えているのは事実。
 実際現在進行形で気持ち悪いけど。
 というのも、エクシーズ次元の者が融合次元を襲った理由と思われる曰くつきのカードをネプテューヌから没収したからね。」

『それは本当ですか…!?融合次元の女神ともあろう者が、どうしてそんな…!
 あなたも、体調が悪くなっているにもかからわず無茶をして!もう少し女神としての自覚を…』


「それは面目ない。」

『そうなるとできる限り、安全かつ早めにこちらに戻ってきてください。
 実物を見てみない事にはボクとしては何とも言えませんから…』


「元よりそのつもりよ、無理のない程度の方法で帰還させてもらうわ。」

『ではそのつもりでお願いします。』


――ツーツー…


とりあえず、無理のない範囲で急いで戻る事になった。
実際、空を飛んで帰れる程体調は良くはないからね。


「おーっほっほ!通話は終わったようですわね。
 飛行機の準備を済み次第向かいますわよ!」

「ええ…他の皆もいいわね?」

「当然さ!」

「沢渡さんがいない今、俺たちができる事を精一杯やるだけだ!」


そう言っていただけると心強いわね…期待できるわ。

その後、約2時間後に飛行機の準備が完了しそれを使って教会本部へ向かう事になる。
わたし含め11名と機長が乗り込むと、発進し離陸していった。
場所の座標は教えておいたし、到着までは時間がかかる。
何より、ノワールやネプテューヌの件のゴタゴタで疲労が半端ない。
そしてなにより例のブツのせいで気持ち悪い。

そういうわけで到着まで眠るとするわ……。



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「……きなさい。」

「……うぅ…。」

「到着しましたわ!いい加減起きなさいな!」


――パシィッ!!


「ぐえっぷ!!」

「仮にも女神であろうお方がこんな醜態を晒すなんて恥を知りなさい!」

「うぅ…面目ないわ。
 でも、理由はまだ言えないけど体調不良だから勘弁して。」

「そういうことにしておきましょう。」


気付いたら栗音に頬を叩かれ、その痛みで飛び起きる羽目になった。
どうやら深い眠りについているうちに目的地の教会へ到着したようで。
本当にだらしないところを見せたわね…女神の立場だから特に反省しておかないと。
でも、今も吐き気がすごいんだよなぁ…ここからはチキンレースだ。


「しかし本当に寒いなおい…あばばばばば。」

「うぅ…わたしたち、本当に大丈夫かな?」

「始まる前から弱気になっていたら僕たちは決して強くなれない。
 他の次元からの侵略が現実味を帯びた以上…強くなれる時に強くならないとね!」

「ええ、決してここで立ち止まってはいけませんわ!」


で…想像以上の厳しい環境にここから先、不安な声も出てくるのは仕方がない。
だけど、北斗や栗音が諌めてくれたようだ。
そう、実際他次元勢力の進行が現実のものとなった。
この世界を守り、生き抜いてもらうためにも強くなってほしいからね。
だけど、まずはここで待っててもらわないと。


「厳しい環境だけど、栗音の言うとおり立ち止まってはいけないわ。
 だけど、先にロムの方に話があるからここで待っててくれないかしら?」

「あ、はい。」

「仕方ありませんわね。」


ロムの方に急を要する話があるからね。
彼らへの案内はそれからとなる。



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「遅れてごめんなさい、ロム。」

「だいぶ遅かったですね…ですがここからでも闇の気配を感じ取れる辺り相当ですね。
 いいでしょう、早速例のものを拝見させてください。」


教会内部に入ると、早速ロム直々に出迎えてくれた。
すぐさま闇のカードの気配を感じ取れる辺りは流石だと言わざるを得ない。
見せるなら躊躇う理由もないので例のブツを早速見せる事にする。


「ええ、これよ…」

「なっ…!?っ…なんという恐ろしいカードですか…!
 さっきより禍々しい気配が直に感じ取れます。
 正直、見ているだけのボクも気が狂いそうです…本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫なわけがない…こうして話している今も非常に気分が悪いんだ…うぷ。
 だから、女神化含む生身で直接向かうのは避けたんだ。
 いっておくけど、直に触るのは危険よ。」

「それはあなたを見ればわかります。
 で、これを見た今となっては納得ですね…この手のものは即座に封印しなければなりません。
 ここはボクにお任せを。」

「大丈夫?わたし以上に悪化するわよ?」

「それは承知の上です…放置するわけには行きませんから。」


ロムでさえ驚愕を隠せないのだから、この『超融合』はとんでもない恐ろしいカードだよ。
後、吐き気は…ってもう駄目だ。


「そこまで言うなら任せるわ…で、もう限界…おぶぇぇぇ……」


――オロロロロ…



「ふぇぇぇ…こんなところで吐かないでください。
 しかし、本当に体調が悪いようですね。
 参りましたね、こんな状態では次元へ渡るのは無茶です。
 このカードの処分はボクが、連れてきた方の案内はファント…げふん、遊矢たちにやらせますからあなたは治るまで安静にしてください。」

「うぅ…本当に面目ない、面目ない。
 それに折角、融合次元へのゲートを開けてくれたというのに…」

「いくら無茶できる身とはいってもこの状態で行かせるわけにはいきません。
 まずは体調を戻すのを最優先にしてください。」


うーん、これは闇のカードに冒されての体調不良だからなぁ。
絶対許さん…名前だけしか知らないけど魔女とやら!
スタンダードの女神のわたしでさえ持っているだけでこのザマだ。
融合次元のネプテューヌが持ったままだったら確実に大変な事になっていたはずだ。

色々あったとはいえ、不用意な事をして迷惑をかけてるのが実に不甲斐ない。
だけど、その行動に後悔はしていない。
そうしなきゃ、余計に大変な事になっていたのかもしれないから。
むしろ、暴走せず体調不良で済んでよかったと思う。
まずは体調を整えるのを最優先にしておかなきゃね。

そんなわけで、ロムに『超融合』の処分を任せ、遊矢たちに連れてきた元LDS生徒の案内や世話役を任せ寝室で横になる事にする。
治り次第、少し体を慣らしてからは…ここからは次元戦争に本格的に首を突っ込む事になる。
今までのような生ぬるいようなものじゃない本格的の戦争にだ。
体調を整えている間に…改めて腹をくくらなくちゃね。











 続く