Side:デニス
ちょっと気になる事があって、レオ・コーポレーションで聞き耳していたら…!
えーっ、柊柚子がシンクロ次元にいる!?
ノワールがエクシーズ次元に連れて行ったんじゃないの!?
あちゃ、こりゃ面倒な事になっちゃったね。
彼女は確実に必要となってくるのに…!
それに、ブランちゃんが融合次元へ!?
なんだか真実を探しにいくというのだけど、まいったね。
事の真相に勘づいていたみたいだからもしかしたらそうするんじゃないかとは思っていたけどね。
その君の探そうとする真の敵…融合次元の魔女は僕たちやノワールでさえそうそう手を出せない危険な奴だというのに…!
ブランちゃんがそいつに挑むとしたら、だとしたら自殺行為だ。
融合次元に赴いた僕やステラの友人・同胞が奴の手にかかって亡き者にされた。
いや、正確にはあいつの息にかかった融合次元の者達によって…!
その時ステラは向かっておらず、僕は命からがら逃げだした。
それがエクシーズ次元が融合次元への侵略を行う切欠となった事件だ。
融合次元の住民全てが奴の息にかかっているかもしれない。
少しでも奴の力を削ごうとして始めたその侵略。
だが、住民らの抵抗が激しく、どさくさに紛れて奴は消息を消した。
今も融合次元の侵略は続いているけど、いつ奴が戻るか。
その魔女の脅威に怯えながら細々と残党狩りは続いているのが現状だろうね。
もっとも、既に敵に寝返ったのもいるけどさ…本当にまいった事にね。
ハートランドもいつまでもつか。
まぁ、目の前の紫吹を倒せるくらいにはならないと…その魔女を追うには話にならないだろうね。
あれから、急速に成長したようだけど…まずはそれを見せてもらおうかな。
どうやら、エンタメデュエリストじゃなくなったっぽいけどさ。
いずれにしても、一度彼女に接触した方がよさそうだね。
場合によっては…ね。
超次元ゲイム ARC-V 第66話
『逆襲の嵐』
ブラン:LP2900
雲雀:LP4000
S・R−アサルト・ラーク:ATK2000
Side:ブラン
奇蹟のカーニバル開幕とは言ったか、改めて状況を確認しておこう。
此方のフィールドはがら空き。
もっとも手札は潤ってはいるがな。
一方で紫吹には攻撃力2000の融合モンスターがいて、伏せカードが1枚。
だけど手札は使い切っている。
伏せカードと墓地…そしてアサルト・ラーク次第だがカードアドバンテージではこちらの方が優勢のはず。
この優位を生かせるかが勝敗を分けるだろうな。
「貴様には手札が多く残されているが、その内の手札の1枚は先ほど自ら戻した儀式モンスター。
再召喚の難しいとされる儀式モンスターを自ら手札に戻すとは片腹痛い。」
「普通はそう見えるだろうね…が、果たしてそれはどうかな?
が、その前にスケール4の『ロブスター・クワガタ』をセッティング。」
ロブスター・クワガタ:Pスケール4
「ロブスター・クワガタのペンデュラム効果により、1度だけデッキから『カニカブト』を手札に加える。
そして魔法カード『シーフード・カーニバル』を発動!
カニカブトを墓地へ送り、デッキから2枚ドロー!」
まずはカニカブトを確保し2枚ドローから入る。
来てほしいカードは…よし。
「そして、同じくスケール4の『甲殻神騎オッドシェル
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:Pスケール4
「オッドシェル・ペンデュラムが…っ!」
「どうした、ネプテューヌ!」
「くっ…体が、熱い…!」
「あのカードのせいか!?このままじゃわたしも…!」
オッドシェルをペンデュラムゾーンに出した瞬間、ネプテューヌの様子がおかしくなる。
やはりカオス・リベリオンと共鳴しているせいなのか?
しかし、ネプテューヌがデュエルしていないにもかかわらずこれとは…!
こいつはわたしのエクストラデッキで腐っているオッドシェル・リベリオンも影響しているのかもしれないがそこまではわからない。
「…悪いけど、ネプテューヌはこの部屋から出て行ってくれないか?」
「どういう事だ?」
「…このままだと雲雀との真剣勝負を邪魔しそうだしね。」
わたしがネプテューヌに出ていけと言ったところで紫吹は噛みついてきたけど、ネプテューヌ本人は事情を察したようだ。
「悪いけど、このままだとネプテューヌもわたしも身が危なくなりそうだしね。
恐らく、わたしのオッドシェルとネプテューヌのカオス・リベリオンは互いに呼び合う。
紫吹、あなたはよく知らないだろうけどね。」
「そういう事だから、外で油売ってるね。
終わったら通信で呼び戻して!」
――ガチッ、バタッ!
「お、おい…!」
ネプテューヌはそんな台詞を置いて、この部屋から立ち去った。
…とりあえず、これで心置きなくデュエルができる。
立ち去った彼女には悪いけどな。
しかし、油売るって言い方はいかがなものかと。
「だけど、これで思う存分やれる!
そして手札からチューナーモンスター『エビカブト』を召喚!」
エビカブト:ATK550
「そしてエビカブトのモンスター効果!
このカードが召喚・特殊召喚した時、墓地から『カニカブト』1体を蘇生させる!」
カニカブト:DEF900
「これでレベル3のモンスターが2体…しかも片方はチューナー。
シンクロとエクシーズ…どちらが来る?」
「チューナーがいる以上はだいたいこっちかな。
わたしはレベル3のカニカブトにレベル3のエビカブトをチューニング!
シンクロ召喚!現れろ、レベル6!命を操る水の槍術師『ガリデス・ギルマン』!!」
ガリデス・ギルマン:ATK1600
「そいつが来たか…ちっ。」
ここで舌打ちという事は、その伏せカードの正体は…恐らくアレかな?
「シンクロ召喚したガリデス・ギルマンの効果をデッキから水族か魚族1体を墓地へ送り発動!
そして、水族がエクストラデッキから特殊召喚された事でオッドシェルのペンデュラム効果を発動!
逆順処理でまずはオッドシェルのペンデュラム効果により、自身を破壊しデッキから水属性・攻撃力1500以下のペンデュラム…『シュテルアーム・ロブスター』を手札に!
続いてガリデス・ギルマンの効果!墓地へ送ったガントレット・カメノテのレベルは2だから、このターン攻撃力を200アップする!」
ガリデス・ギルマン:ATK1600→1800
流石にガリデス・ギルマンのこの効果に対してアレを発動してもあまり意味がない。
この効果の本体はコストによるデッキからの墓地肥やし。
例え、無効にしてもコストの支払いまでは阻止できないからな。
その辺は重々承知なはず。
さてと、揃ったしそろそろアレといこう。
「わたしはスケール5の『シュテルアーム・ロブスター』をペンデュラムゾーンにセッティング!
もう片方に『ロブスター』カードがある時、このカードのスケールをペンデュラム効果でこのターン8にする!」
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5→8
ここからはターンの終わりまでデメリットにより水族しか特殊召喚できない。
だから、エクストラデッキに送られたとはいえ魔法使い族であるロブスター・ソーサリーは呼び戻せないが…!
「これでレベル5から7のモンスターが同時に召喚可能!
揺れろ、魂のペンデュラム!天界に架かれ、流星のビヴロスト!ペンデュラム召喚!来て、わたしのモンスターたち!
エクストラデッキからレベル5の『甲殻水影ドロブスター』!レベル7の『甲殻奏者ロブスター・ハープ』!
そして、レベル7の『甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター』!!」
甲殻水影ドロブスター:ATK1800 forEX
甲殻奏者ロブスター・ハープ:DEF2600 forEX
『ウォォォォォォォォォォォ!!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2600
「ペンデュラム召喚…!モンスターゾーンが一気に4体に…」
「物量こそパワー…言ってしまえば、それを体現するのがペンデュラム召喚だしな。」
まぁ、全て展開とまでは行かないけどな。
手札からペンデュラム召喚というのもあまりやらないし。
もっとも、紫吹相手だと展開したままにしておけばアドバシティ・フュージョン等による反撃が待っているわけだ。
それもあって、相手から除去されない限りは維持できるシュテルアームにしたわけだが。
だが、ペンデュラム召喚はいわば脚かけ。
真骨頂を発揮するのはここからだ!
「ここからだ!水属性のドロブスターをリリースし、ガリデス・ギルマンのもう1つの効果を発動!
この効果により、墓地から水属性モンスター1体を選んで効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する!」
「…いいだろう。」
「この効果で甦らせるのはレベル2のチューナーモンスター『ガントレット・カメノテ』!!」
ガントレット・カメノテ:DEF1000(効果無効)
これもまたペンデュラムによる恩恵だ。
リリースが確保しやすくなった事でガリデス・ギルマンのもう1つの効果で様々な展開が行える。
何より、攻撃力アップという名目の墓地肥やし効果と噛みあっているのが大きい。
「またしてもチューナー…!」
「今度はこれだ!レベル6のガリデス・ギルマンにレベル2のガントレット・カメノテをチューニング!
星々の煌きを拳に宿し、立ちはだかる敵をぶちのめせ!シンクロ召喚!舞い降りろ、レベル8『甲殻拳士カニメデス』!!」
『ヌゥゥゥ…ハァッ!!』
甲殻拳士カニメデス:ATK2500
「そうくれば、やはり連続シンクロか…!
本当は貴様がネプテューヌを襲撃したのではないのか?」
「馬鹿言うなよ、当時の『オレ』はお前はネプテューヌより圧倒的に格下だ。
それにあのベールという通り魔にはこっちも襲われたんだよ。
まぁ、シンクロ召喚に関しては忌々しい事にあいつとの接触が原因で会得したようなもんだがな。」
「どういうことだ?」
「そう言ったはいいが、自分でもよくわからん。」
「ふざけた答えを…!」
実際の所、推測はできるけどな。
チューナー自体はそれ以前から持っていたけど、シンクロモンスターに関してはあいつとの接触が原因みたいだ。
もっといえば、その時にも当時の『オレ』は暴走したらしい。
多分あのミラージュウィングだとかいうシンクロの名を冠したモンスターの影響を受けたんだろうけど、確証はない。
「もっとも、まだまだこんなものじゃない。
自分フィールドに水属性モンスターが存在するため、手札から水属性モンスターを墓地へ送り、墓地の『ガントレット・カメノテ』を除外し効果を発動!」
「前のターンで戻したアビス・シュラークを墓地へ送ったか…!」
「この効果でデッキから『甲殻』モンスター…『甲殻神将オッドシェル
「2種類目のオッドシェルだと!?」
ここでアビス・シュラークを墓地へ送り、今度は新たなエースを手札に握っておく。
流石に教会の面々以外にはこいつは見せていない。
そして、アビス・シュラークの最後の効果のトリガーがここで引かれた!
「さらに水属性のコストで墓地へ送ったアビス・シュラークの最後の効果!
墓地から『シェルアーマー・アドベント』を対象とし、手札に加える!」
「墓地の儀式魔法が手札に…!?
ちっ、儀式モンスターでありながら手札に戻したのもこれに繋げるためだったのか!」
「そういう事!」
この効果で儀式魔法を手札に戻しておく。
これでわたしの新たなエースを紫吹に披露する準備が整った!
「行くよ!手札から儀式魔法『シェルアーマー・アドベント』を発動!」
「2度目の儀式召喚…やはり来るか!」
「この効果によりレベル7のロブスター・ハープをリリース!
これにより、レベル7の『甲殻神将オッドシェル・R・ロブスター』を手札から降臨させる!」
今度降臨させるのは墓地にいるアビス・シュラークではなく、手札にあるもう1種のオッドシェルだ!
「二色の殻持つ者よ、降臨の儀式により新たな力を得て生まれ変わらん!儀式召喚!降臨せよ、レベル7『甲殻神将オッドシェル
『ウオォォォォォォォ!!』
甲殻神将オッドシェル・R・ロブスター:ATK2800
「括目せよ、これがわたしの新たに手にしたエースの1体だ!」
「このモンスターからカオス・リベリオン以上の力を感じるだと?
まぁいい、ならその新たなエースとやらの力を俺に示してみるがいい!何だろうと叩き潰してくれる!」
新たに手にしたエースモンスターを降臨!
まぁ、2800もの素の攻撃力の高さも魅力的だけど、本命はそこじゃない。
効果を使ったカニメデスの方が打点が高くなるわけだが。
「言われるまでもないけどね。
エクストラデッキの表側表示のドロブスターをデッキに戻し、オッドシェル・R・ロブスターのモンスター効果を発動!
相手フィールドのモンスター1体を対象に持ち主のデッキに戻す!
対象はもちろん、アサルト・ラークだ!」
「デッキバウンス…ならば、罠発動『S・R−ヘッドウィンド』!
この効果で特殊召喚されているオッドシェル・R・ロブスターの効果を無効にする!」
「何っ…!」
甲殻神将オッドシェル・R・ロブスター:ATK2800(効果無効)
もちろん、この反応はブラフだ…心理戦にはリアクションがあるといいからな。
驚いているそぶりは見せておくけど、やっぱり伏せカードはこのカードでこのタイミングで使ってくるだろうとは思っていた。
流石に融合モンスターを戻されてしまっては今のヘッド・ウィンドも満足に働けずゲームエンドのはず。
向こうとしても通すわけには行かないだろうからね。
「ふん、儀式召喚で折角出したエースの効果も俺にはそう簡単には通させるわけがなかろう。
所詮、貴様のデュエルは見かけ倒し……そこには意志も覚悟も強さも…」
「躱されたけど…まだまだ手はあるさ。
わたしは手札から魔法カード『アタック・チャージャー』を発動!
この効果でペンデュラムの方のオッドシェルの攻撃力をターン終了時まで500アップ!」
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500→3000
「ここで攻撃力3000…確かそいつの効果は……」
流石に覚えていたみたいだ。
神将の方にはないけど元の神騎の方は戦闘で破壊したモンスターを墓地へ送らずデッキへ戻す効果がある。
しかも、1000ダメージ付きだ。
はっきり言って、さっきの単体デッキバウンス効果は囮…新しいエースとは言ったがな。
むしろ、ここでの本命はこっち。
さてと、準備ばっかりしてないでそろそろバトルに入ろう。
「バトル!」
「……」
さて、カニメデスとオッドシェル…どっちで攻撃するか。
カニメデスの攻撃力アップのためにそっちから殴るのも悪くはない。
もっとも、紫吹は色々と墓地発動する効果が多いのが問題か。
だけど、ここは…決めた。
「オッドシェル・P・ロブスターでアサルト・ラークを攻撃!」
「貴様の思い通りにはさせん!この瞬間、墓地から『
このターン、自分の融合モンスターのアサルトラークは1度だけ戦闘・効果では破壊されなくなる!」
やはり墓地で発動するモンスターの効果が来た。
カニメデスの効果は…まだ我慢だ。
前のターンに言った効果が本当であればな。
「っ、そう簡単には行かないか…!」
「そして、ダメージ計算時にアサルト・ラークのモンスター効果を発動!
このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行うダメージ計算時のみ、自らの攻撃力を800アップする!」
よし、アサルト・ラークの効果を発動させた!
発動するなら…今だ!
「ここだ!この瞬間、デッキから水属性モンスター1体を墓地へ送ってカニメデスのモンスター効果を発動!
1ターンに1度、相手がバトルフェイズに魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、デッキから水属性1体を墓地へ送る事でその発動を無効にし破壊する!」
「くっ…だが、効果が無効にされようと……」
「ワインド・スパロウに付与させた効果で1度だけ破壊されない…でしょ?
そんな事は端から承知!」
そう、これでいい!
破壊はされないとはいえ、効果の発動を阻止できた。
そして、ワインド・スパロウの1度きりの破壊耐性を消費させられるってわけだ!
「兎に角、これでワインド・スパロウの攻撃力アップは無効!
戦闘を中断させずに、ワインド・スパロウの破壊耐性を使わせられた!」
「くっ…ワインド・スパロウの効果に使わなかったのはこのためか!」
そういうこと。
800の差とはいえ、戦闘ダメージに差が出るからね。
中々気付きにくいけど、こういう事が勝敗を左右しかねないのよね。
「そして、先ほど水属性のコストで墓地へ送った『甲殻剣豪スピニー・ブレード』の効果で1ドロー。
アサルト・ラークをぶっ飛ばせ!『螺旋のシュトロム・シュラーク』!!」
――ズドォォォォォ!!
「ぐおぉぉぉぉぉ!!」
雲雀:LP4000→3000
よし、攻撃は通った…!
これで後は戦闘破壊したアサルト・ラークをオッドシェルの効果で吹き飛ばせば…!
S・R−アサルト・ラーク:ATK2000
「破壊されていない…!?」
「残念だったな、墓地から『
自分フィールドの『
「やられたぜ、2段構えか……」
戦闘破壊されていなかった…だから、エクストラデッキへ吹き飛ばす事もできない。
なんと、2段構えの防御をしてきたのだった。
流石にこの破壊は通していたら相手は負けが決定的だしな。
とりあえず、これで勝負がわからなくなった。
流石にそう思い通りにはさせてはくれない。
だからこそ、駆け引きができて楽しいわけだが。
「…何を笑っている?」
「いや、こういう駆け引きがあるからこそデュエルって楽しいんじゃないのか?」
「…くだらん、そんなもの理解できんな。」
「そんなものって…ひどいなぁ。」
まぁ、そりゃ紫吹たちにとってはデュエルは戦いの道具に過ぎないらしいからね。
デュエルをする事になった経緯を考えれば、わたしみたいな競技しての楽しさの感覚を理解できないのも納得だ。
文字通りの命がけの戦いでしかないのだから。
でもそれって、やっぱり悲しいなぁと。
だからこそ、この次元戦争をなんとかしようと思うわけで。
いずれにしても、相手を楽しませるという点においてはわたしはまだまだか。
そして、このターンで決着は付けられなさそうだ。
紫吹には相手のモンスターが多い方が強く出やすい特徴がある。
ならば…!
「仕方ない、バトルを続行。
今度はリチューアル・ロブスターでアサルト・ラークを攻撃!」
「何!?血迷ったか!アサルト・ラークの効果の発動は1度は無効にされたが、効果そのものを無効化したわけではあるまい!
このカードが特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を800アップする!」
S・R−アサルト・ラーク:ATK2000→2800
「あっ、しまった!」
と慌てたように言ってみるが、こうなる事は…知った上でやっている。
「っ…『螺旋のスクリュー・フラッド』!!」
「迎え撃て、アサルト・ラーク!!」
――シュオォォ…ドゴォォォォォォォ!!
結果は当然相討ちに終わる。
とりあえず、これでいい。
「くっ…儀式召喚したオッドシェル・R・ロブスターが墓地へ送られた場合、墓地から儀式魔法1枚を手札に戻す。
戻す対象は『シェルアーマー・アドベント』だ。」
「俺もアサルト・ラークの効果を発動しておく。
このカードが戦闘・効果で破壊され、墓地へ送られた事で除外された『S・R』モンスター1体を手札に加える。」
この効果により、『
墓地へ送りされた時の効果で儀式魔法を回収しておけるからな。
同名制限あるから次のターンでないと使えないけど。
もっとも、それはアサルト・ラークも同様だった。
これでこの戦闘でのアドバンテージは帳消しか。
だけど、これでわたしのフィールドのモンスターは2体。
相手の選択肢は狭められたはず。
「そして、カニメデスでダイレクトアタック!『スパイラル・フィスト』!!」
さて、ここで墓地のアレを使ってくるかどうか。
――ドゴォォォォ!!
「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!」
雲雀:LP3000→500
…流石にまだ使わずにこのまま通したか。
わたしでもそうするだろうね…極論、ライフロスなど死ななきゃ安いからな。
長く生き延びるためにも、ここは敢えて身を削ったわけだな。
「墓地のアレは使わないか…だけど、今のは効いたろ?」
「御託はいい、さっさと進めろ。」
う〜ん。強く睨み返されたか。
それは兎も角、敢えて身を削る事で真価を発揮する戦法もあるからなぁ。
墓地にアレを残したのは厄介だけど、このターンはどうにもならないな。
紫吹が本当に怖いのは逆境に追い詰めた後のはず。
だから、ここからが正念場って奴だな。
「おっと、そう怖い顔するなよ。
このターンはどうしようもないし、カードを2枚伏せてエンドフェイズ!
アタック・チャージャーの効果で1枚ドローし、ターン終了。」
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK3000→2500
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール8→5
「散々長い事貴様のターンだったな。
だが、貴様は知っているはずだ…俺はこのような逆境にこそ強いのだと。」
「ええ、里久とのデュエルでご存知よ。」
墓地の罠による粘り強さ、そして対多数こそが得意だという事もね。
いずれにしろ、次の攻勢が来る!
「なら話は早い…覚悟するがいい。
俺のターン、ドロー!ここで墓地のブロックン・スパロウのモンスター効果を自身と墓地のアサルト・ラークを除外し発動!
これにより、デッキから『
「リベリオン・フュージョン…!」
「…あのシャコもどきを出さなかったのは失敗だったな。」
アビス・シュラークの事をシャコもどきって言うな。
いずれにしてもシェルアーマー・アドベントは1ターンに1度しか使えないからそれは無理な話なわけで。
それは兎も角、そっちを手札に引き込んでおいたか。
しかも、融合モンスターのアサルト・ラークを除外した…!
さて…一体、何が出てくる?
「これで貴様を這いつくばらせてやる!魔法カード『
この効果で除外されているアサルト・ラーク、ワール・スパロウ、ブロッケン・スパロウの3体の『S・R』をデッキに戻し融合する!」
「やはり、アサルト・ラークを融合しに来たか…!」
「混ざり合え、3つの強風!襲いくる圧倒的な敵をも打倒する、逆襲の嵐を巻き起こせ!融合召喚!現れろォ!レベル7『
『キィィィィィィィィィ!!』
S・R−アゲインスト・ラーク:ATK2000
攻撃力がアサルト・ラークと変わっていない…?
という事は、効果の方に厄介なものが備わっているなこれは。
逆襲の雲雀という事はそれ相応の能力があるとみてよさそうだ。
「アゲインスト・ラークのモンスター効果を発動!
相手よりLPが2000以上下回る場合にこのカードが融合召喚に成功した時、相手モンスターを全てデッキに戻す!」
「な!?デッキバウンスだと…しかもわたしのモンスター全体への!?」
嫌な予感はしていたが、やってくれやがったぜ。
カニメデスの攻撃をまともに受けたのはこのためか!
流石にこれはまともに受けたら半壊する。
だったら…!
「カウンター罠を…発動できない!?」
「無駄だ!この効果の発動に対し、貴様はカード効果を発動できん!」
おいおい、チェーン不可って冗談だろおい…!
それじゃ防ぎようがないじゃないか…!
「我が僕の前に立ちふさがる奴らよ、戦場から消え失せろ!『アゲインスト・ストーム』!!」
――ビュオォォォォォォォ!!
「カニメデスとオッドシェルがデッキに戻された…!」
やられた…けど、儀式の方のオッドシェルは事前に墓地へ送りしておいてよかった。
どうやら、オッドシェル・R・ロブスターをアサルト・ラークと相討ちさせた判断は間違っていなかったようだ。
「その後、デッキに戻した数1体につき攻撃力を1000アップする!
この効果でデッキに戻したモンスターは2体…よって攻撃力を2000アップだ!」
S・R−アゲインスト・ラーク:ATK2000→4000
攻撃力も大幅に上がるのか…しかも永続的に!
融合モンスターを素材にするだけあって厄介なモンスターだぜ、本当によ。
「このターン、俺は特殊召喚はできんが召喚はできる。
手札から『
S・R−ワインド・スパロウ:ATK1800
紫吹は勝負を仕掛けてきたな。
駄目押しとばかりに出したわけだけど、下級で攻撃力1800は中々の数値だ。
とはいえ、これ以上の特殊召喚が来ないとなるとここで攻勢に移るはず。
「これで貴様に引導を渡してやる!バトルだ!」
「待った!バトルフェイズ前に罠カード『貪欲な瓶』を発動!
墓地のカード5枚をデッキに戻しシャッフル!!」
だからここで罠を発動しておく。
この効果で戻すカードは『ガリデス・ギルマン』『エビカブト』『甲殻戦車オマール・チャリオット』『シーフード・カーニバル』『甲殻脱皮』の5枚だ。
シンクロモンスターのガリデス・ギルマンはエクストラに、それ以外をデッキへ戻している。
「その後、1枚ドロー!」
ドローしたカードは…よし、これなら!
「このタイミングで1枚ドローしたところで、俺のモンスターからは逃げられん!
やれ、アゲインスト・ラーク!『ブレイク・クロー・アゲインスト・スラッシュ』!!」
「だからといってここでやられるつもりはない!この攻撃宣言時に手札から『イージス・キャンサー』の効果を発動!
この効果で手札から自身を特殊召喚!」
イージス・キャンサー:DEF1600
「手札誘発でのモンスター召喚か…!
だが、そんなモンスターを出したところで気休めにしかならん!
アゲインスト・ラークは『
「それでも、ここは耐え忍ぶ!手札の水属性1体を捨て、イージス・キャンサーのもう1つの効果を発動!
デュエル中1度しか使えないこの効果でこのターン、このカードは戦闘では破壊されない!」
ちなみにこの効果で捨てたカードはザリガンマン。
シーフード・カーニバルでドローしたカードの1枚だけど、やむを得ない。
「ちっ…だが、ダメージは受けてもらうぞ!」
――ザッシャァァァァ!!
「うわぁぁぁぁぁぁあ!!」
ブラン:LP2900→500
このターンは防げるとはいえ、貫通で3桁になったのが痛い。
「だけど、このターンはこのイージスは戦闘破壊されないよ。
さあ、どうするの…雲雀ちゃん?」
――ギリッ!
「貴様…!」
「…調子に乗ってごめんなさい。」
ちょっと、おちょくってみるけど凄い形相で睨み返されたので謝っておく。
いやだってねぇ…雲雀って女の子っぽい名前だからなぁ。
とはいえ、親からもらっただろう名前をいじられるのは嫌だろうから今のは無神経だった。
そして、凌げるとはいえワインド・スパロウもまた貫通効果があるから…!
「ワインド・スパロウにも貫通が付随してある!喰らうがいい!」
「がはっ…!」
ブラン:LP500→300
ライフが残りわずか300に…!
どうやら、このままだと次のターンは耐えられそうにないか。
「そして、アゲインスト・ラークは相手の効果の対象にならない効果もある。
やれるものなら俺を屈服させてみるがいい。
できなければ、次のターンで終わりだ!ターンエンド。」
これでターンエンドというわけか。
アゲインスト・ラークは兎も角、狙われやすいアゲインスト・ラークを残しているのが気になるが…?
しかしながら対象をとれないとなると突破はなかなか難しいか。
リチューアル・ロブスターの効果も通用しないわけで。
いずれにしても次のターンで決めきれないと紫吹を前に這いつくばる事になる。
これから融合次元へ赴く身としてはそれでは女神としての面目が立たない。
ノブレス・オブリージュ…高貴さには義務が伴うとはよく言うけど今まさにここで決めなきゃならない状況だ。
なってしまったとはいえ立場上女神故にこの言葉が重く圧し掛かってくる。
それだけに次のこのドローに全てがかかっている。
「わたしのターン…はぁーっ。」
そうなっては、カードを引く手が重く圧し掛かるのも当然。
だからこそ、深呼吸をして呼吸を整えて緊張をほぐしておく。
これで全てが決まるのだから。
兎にも角にも…引かなきゃ始まらないよね。
「…ドロー!」
引いたカードは…よし、この状況ならありがたい。
「わたしは手札から『ウォーター・ペインター』を召喚!」
ウォーター・ペインター:ATK900
「レベル3のモンスターが2体…まさか、エクシーズ召喚でもするつもりか?」
「ランク3はハードシェルしか持ってないし、それじゃ守り切れないよ。
そして、ウォーター・ペインター自身とイージス・キャンサーをリリースしモンスター効果発動!
これによりデッキから2枚ドロー!」
そしてドローした2枚のカードは…よし、デッキが答えてくれてるな。
とりあえず…ワインド・スパロウは恐らく潰させてはくれないだろうから、その辺は期待できないけど。
「ふふっ…」
「何を笑っている?まさか、この状況をどうにかできるカードでも引き込めたか?」
「ああ、このターンで決めたいところだったからね!」
「なら、しかと見せてもらおう!貴様の足掻きを!」
とりあえず、こう言った以上はここで決めないとね。
「よし、元よりそのつもりよ!
まずはシュテルアームのペンデュラム効果を発動し、このターン水族以外を特殊召喚できなくする代わりにスケールを8にする!」
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5→8
「これでレベル5から7のモンスターが同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!
エクストラデッキからレベル7の『甲殻奏者ロブスター・ハープ』!そして手札から『甲殻神騎オッドシェル
甲殻奏者ロブスター・ハープ:DEF2600 forEX
『ウオォォォォォォォォ!!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500
「ふん、馬鹿の一つ覚えのペンデュラム召喚か…それで何ができる?
まさか、エクシーズ召喚でもする気か?」
「それも面白いかもしれないけど、生憎ランク7のエクシーズは持っていないんだ。
ま、そんな難しい事するわけじゃないさ…だけど、儀式魔法『シェルアーマー・アドベント』を三度発動!
フィールドのレベル7のロブスター・ハープをリリースし、墓地よりレベル6の『甲殻鎧獣アビス・シュラーク』を儀式召喚!」
『ギシャァァァァ!!』
甲殻鎧獣アビス・シュラーク:ATK2300
「何?リリースしたモンスターがレベル7ならレベル7の儀式モンスターしか出せないはずでは!?」
「シェルアーマー・アドベントは儀式召喚するモンスターのレベル以上になるように水属性をリリースすればいい儀式魔法だ!
よって、レベル6のアビス・シュラークは儀式召喚できたんだ!」
その辺は儀式魔法によって違うけどな。
シェルアーマー・アドベントは水属性しかリリースできないけどその辺の融通が利くのが有能だ。
ここでリチューアル・ロブスターを出した所でアゲインスト・ラークが対象にならないんじゃ意味がないからな。
「そういう事か…だが、今更そんなシャコもどきを出した所で…!」
「あくまでアビス・シュラークは…見ていればわかる。
が、ワインド・スパロウを殴って何もしなければそれで終わりだぞ?
もっともそれをお前がどうにかできないとは思えないがな。」
「やってみろ…来るなら来い!」
こう言ったという事は、何かある…あるいはただのハッタリか。
いずれにしても今のわたしにこの攻撃をしない選択肢はない!
「いくぞ、バトル!甲殻神騎オッドシェル
「その攻撃を通すはずがないだろう!
フィールドのワインド・スパロウをリリースし、手札の『
相手モンスターの攻撃宣言時に自分フィールドの『
成程、コストで処理する手段があったからこそ臆せず攻撃表示で出したわけか。
だが、まだ手札に存在するという事は…効果を使うなら今だ!
「そうはいかない!この瞬間、アビス・シュラークのモンスター効果を発動!
このカードを手札に戻し、手札・墓地のモンスター効果の発動を無効にし除外する!
今効果を発動したボーラ・スパロウを深淵にぶっ飛ばせ!『トライブング・シュラーク』!!」
――ドッゴォォォォォ!!
「それがどうした!既にワインド・スパロウは墓地へ送られている!
墓地へ送られたワインド・スパロウの効果を発動!」
「それも止める!除外された水族のガントレット・カメノテをデッキに戻し、カウンター罠『ギョッ!』を発動!
そのモンスター効果の発動を無効にする!」
「ちっ…!」
2種類のカウンターでモンスター効果を徹底阻止!
スカイ・レイダーズの性質を考えるとこれでいいはず。
ワインド・スパロウは破壊耐性付与だけど、変なのを送られるよりはましだ。
この『ギョッ!』は前のターンでは発動できなかったけどな…!
まずはこれでアゲインスト・ラークとのタイマンに持ち込んだ!
「だが、俺の場には攻撃力4000のアゲインスト・ラークがいる。
貴様は展開力や単体除去にこそ優れてはいるが、攻撃力のアップは重視しない傾向にあると踏んでいるが?
今の貴様にはカオス・リベリオンのようなこの攻撃力の差を埋められるようなエースはカニメデスくらいしかないはずだ。」
実際、彼の言うように攻撃力については若干不足気味なのは否定できない。
わたしの戦術を実に分析している。
確かに戦闘より除去に頼っている感があるのは自覚しているよ。
ただし、攻撃力を一気に上げられるカードを使わないなんて言っていないぞ?
それはカオス・リベリオンをネプテューヌに返した今…猶更だ!
「果たしてそれはどうかな?
巻き戻しが発生した事により、攻撃対象をアゲインスト・ラークに変更だ!」
「墓地のワインド・スパロウの効果を発動し、このターンアゲインスト・ラークの戦闘・効果破壊を1度だけ防がせてもらう!
何を狙っているかはわからんがオッドシェルを返り討ちにしろ、アゲインスト・ラーク!」
ここでワインド・スパロウのもう1つの効果を使ってきたか。
流石にここは過信せずに戦闘・効果耐性を付与してくるか。
攻撃力を1でも上回ったらオッドシェルの効果が炸裂するからな。
だが、そんな事は百も承知!
ここでウォーター・ペインターの効果でドローしたもう1枚のカードだ!
「なら、こいつで決める!オッドシェルを対象に速攻魔法『ペンデュラム・ストリーム・アタック』を発動!
自分ライフが2000以下の場合、エクストラデッキの表側表示の水属性ペンデュラム1体を墓地へ送り、その元々の攻撃力分だけ対象のモンスターの攻撃力にターン終了時まで加える!
墓地へ送るモンスターは『甲殻導師ロブスター・ソーサリー』…よって攻撃力は2000アップだ!」
『ウォォォォォォォォォォ!!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500→4500
「攻撃力4500…俺が、こんな奴に負けるというのか!」
「ああ、残りライフ500だったのが運の尽き…このデュエルはわたしがもらった!
喰らいやがれ!『激流のストリーム・シュラーク』!!」
――ドッゴォォォォォォォォ!!
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
雲雀:LP500→0
ふぅ、か…紙一重でデュエルには勝った。
だけど、倒れた彼の苦々しい顔を見るに…デュエルを楽しんではもらえなかったか。
ムキになったとはいえ、悔しいなぁ。
「くっ、何故俺は負けた…!
俺たちにとってデュエルは戦いの道具…娯楽・競技の一環でやっていた貴様に三点!」
う〜ん、こう睨み付けられるとデュエルに勝ったとはいえ達成感も何もない。
それとそのようなデュエルの認識はやっぱり悲しいものだ、この辺は仕方ないと割り切るしかないけど。
「確かにわたしたちにとってデュエルはエンタメで駆け引きを楽しみ競い合う競技だ。
その一方で争いの手段としてのデュエルもある事も知った…置かれた環境からその認識の差は仕方ないだろうね。」
「そうだ…ある時から常に戦場にいた俺たちと違い、平和な日常を満喫しながら遊び半分でやっていた貴様などに…」
「かつてはね…でも今はわたしたちだって危機感を感じてデュエルに取り組んでいる。
それにこっちだってデュエルを決して遊び半分でやっているわけじゃない、それは誤解しないで。」
いずれにしても、あのバトルロイヤルで平穏な日常が完全に打ち砕かれた事は確か。
それ以前にも不穏な事が起こっていたけど、わたしたちに危機感や覚悟が足りていなかったのもあった。
そして柚子が連れ去られたり、沢渡たちがカードに封印されたりという惨劇が起こってしまった。
だからこそ、その教訓の下に自分に秘められた力をモノにするために教会で修行するのも抵抗がなかった。
わけのわからない危険な力はいらない…だなんて言っている場合じゃない。
危険な力だからこそ、自らのモノにしないとこれから先、何が起こるかわかったものじゃないからね。
そもそも、多少はふざけてたところもあったかもしれないけど…デュエルには常に真剣に取り組んでいる。
それは今も昔も変わらない…いや、スランプでやる気無くしていた事はあったけど。
自分のデュエルの幅を広げ、相手の未知なる戦術に対応するための研究は欠かしていない。
今の成果は相手フィールドのモンスターを問答無用でリリースする壊獣を導入した事もあったりするけど。
「それにさ…こういう全力を出した末の敗北だって今じゃないと経験できないはず。
そういう経験だって、時には大切だと思う。」
「敗北の経験が大切だと?何をふざけた事を…!」
あちゃ、今までで一番凄い形相だこれ。
命がけの戦いを強いられているが故に負ければ取り返しのつかない事になる。
そういう環境の中で生き延びたからこその怒りだという事もわかってるけど…!
「負けても楽しいなんて事を言うつもりはないよ…まぁ、わたしは楽しんではいるけど。
だけど、敗北から学べるものもある…例えば『悔しさ』だってそうだ。」
「悔しさだと?」
「そう、わたしたちは何度も負けた事による悔しさを経験している。
その度に折れそうになった事はあるけど、その時の悔しさをバネに試行錯誤して日々強くなってきた。
ここで一度負けても、それっきりじゃない…次があるはず。」
デュエルというものはどうしても勝敗がつくもの。
だから、わたしたちは様々な敗北を経験している。
何度敗北し、挫折しかけてもその時の悔しさや辛酸をなめた事を糧とし色々と見つめなおして強くなってぶつかってきた。
そして、その繰り返しで徐々に強くなっていったんだ。
何より、勝利以上に次のステップへ向けてのモチベーションの向上にもつながる。
だからこそ、負ければそれで終わりというのは人から成長の機会を奪っている事なんだ。
「でも、これから次元を渡ってしまえば負ければそれで終わりかねないし、あなたたちはそうだったんでしょ?
だからこそ、今の敗北は自分を見つめなおすいい機会じゃないかなと思う。
もっとも、全体でみれば敗北の悔しさを既に味わっているかもしれないかも知れないけど。
後、色々と下手な説明でごめん。」
「成程な…そういう事か。
敗北を糧に強くなる必要があるから、こういう機会は大事というわけだな。」
「色々な意味でね。
後は…立場上憎しみを抱くのは仕方ないかもしれないけど、それに囚われてたら本当に大事なものも見えなくなる。
例えば…そうだね、憎しみに囚われて前が見えなくなったあまりあまり妹を救えなくなったとなっちゃ嫌でしょ?
お願いだからそれだけはわかってください、お願いします。」
「ちっ…わかったから顔を上げろ、土下座されるというのも面倒だからな。」
「OK。」
で、憎々しげながらもようやく耳を傾けてくれたみたいだ。
もっとも、今のわたしは立場上…そう負ける事は許されないだろうけどね。
だけど、こういう説教垂れた事を言うのはあまり性には合わない。
とりあえず、土下座してでも憎しみに囚われるなとだけは伝えておく…説明が下手ながらも。
それでこの話はこれで終わりにしよう…はーい、やめやめ!
「で、わたしたちはこれから融合次元へ向かう。
真相を掴み、くだらないこの次元戦争を終わらせるためにね。
そのためにも今のわたしのデュエルはどうだった?」
「ちっ…いまいち気に喰わんが、今の貴様の実力ならあまり問題はないだろう。
それに、大会の時と比べても容赦がなくなっている。」
「その辺はご容赦を…あまりなりふり構っていられないからね。」
ここから先は一瞬でも油断をすればその隙を突かれかねない。
逆に言えばそのスリル、駆け引きを楽しめる事でもあるけど。
「貴様の覚悟はわかった…俺たちの故郷へは行きたければ勝手に行け。
向こうにいる俺の仲間やエクシーズの奴らに八つ裂きにされても知らんがな。
だが、下手な真似はするな…最悪、俺は貴様を潰しに行く。」
「OK、肝に銘じておくよ。」
ちっ、場合によってはランサーズの敵に回るかもしれない事に気付かれたか。
でも、少しはわたしの事を認めてくれたようでうれしい。
それは兎も角、向こうの彼の仲間もギスギスとした雰囲気を纏っている事は察した。
中々一筋縄ではいかなそうだけど、最高のハッピーエンドのためにがんばるぞい。
「今回は…こんな形でも話につきあってくれてありがと。」
「ふん、礼を言われる筋合いはない。
俺は先にここを出る…ネプテューヌと合流するためにな。」
「了解、一度外の空気を浴びてリフレッシュもしておきたいだろうしね。
落ち着いたら、もう1度話を聞きに行ってもいいかしら?」
「ふん、構わん。」
――サッサ…
そう言い残して紫吹は一足先にここを後にした。
さてと、わたしも少し疲れたしそろそろ表へ出たいところ。
だけど、どうやらここに一匹ネズミが紛れ込んでいるようで…!
――ドンッ!
「見ていたのね…で、これは何の真似かしら?」
「手荒で悪いけどちょっと君と話がしたくてね、ブランちゃん。」
英国の学生風の男がわたしを壁ドンしてきた。
そう、わたしが尊敬していたエンタメの先輩にして…どうも不審な動きを耳にするデニスが接触してきたわけだ。
まさかここで遭遇する事になるなんてね。
続く
登場カード補足
融合・効果モンスター
星7/風属性/鳥獣族/攻2000/守2400
「S・R−アサルト・ラーク」+「S・R」モンスター×2
このカードの融合召喚は上記カードでしか行えない。
(1):自分LPが相手より2000以上少なく、このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。
相手フィールドのモンスターを全て持ち主のデッキに戻し、このカードの攻撃力はその数×1000アップする。
この効果の発動に対し、相手はカードの効果を発動できない。
(2):このカードは相手の効果の対象にならない。
(3):自分の「S・R」モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
効果モンスター
星5/風属性/鳥獣族/攻1200/守2400
「S・R−ボーラ・スパロウ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手モンスターの攻撃宣言時に自分フィールドの「S・R」モンスター1体をリリースして発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、その攻撃を無効にする。
(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分の「S・R」モンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを1度だけ0にする。
ペンデュラム・ストリーム・アタック
速攻魔法
(1):自分LPが2000以下の場合に自分フィールドの水属性Pモンスター1体を対象として発動できる。
エクストラデッキの表側表示の水属性Pモンスター1体を墓地へ送り、このターン対象のモンスターの攻撃力はこの効果で墓地へ送ったモンスターの元々の攻撃力分アップする。