沢渡:LP4000
奇術の魔術師:ATK1800
慧眼の魔術師:ATK1500
封鎖の魔術師:Pスケール3
竜穴の魔術師:Pスケール8
ステラ:1700
災星海槍イールグニル:ATK3000 ORU1
災星海杖セイルスピア:ATK2200 ORU1
Side:ブラン
古代遺跡地帯と火山地帯の境目付近に差し掛かったところで、信じられない光景を目にしたわ。
行方不明になっていたはずのねねとオレに1回戦で敗れたはずの沢渡がデュエルしていたのだ。
仮面の不審者たちが乱入している中、どうしてこんな事に…?
「沢渡にねね!どうしてあなたたちがここでデュエルを…?」
「あん?ブランか…いや、それが中々厄介なことになってだな…。
ねねがわけのわからない事やらかしてるもんだから、俺の手で正気に戻すためにな。」
「ある意味で正気を無くしていると言えば否定はできませんがね。
ご無沙汰して申し訳ありません、ですが…今のわたしは光焔ねねではありません。
エクシーズ次元のハンター『
「エクシーズのハンターって…一体どういう事よ、それ…?」
「聞いての通りだ…まぁ、今までエクシーズを使ってなかった奴がエクシーズ使いになっているところからもわかると思うがな。
ねねの奴、いつの間にやらエクシーズの手先になっていたみてぇだ。」
「そんな…!」
2人の口から嘘だと言ってほしいような衝撃の事を聞かされてショックを受ける。
そのステラを自称したねねがエクシーズの手先…つまり、あの仮面の奴らの関係者って事よね?
あのような人を平気でカードに変えてしまうような連中の仲間って事なの?
「手先とは些か失礼ですね、このような身なりでもわたしは幹部格の立場です。
もっとも…結果的にあなた方を欺いてしまい、申し訳ありません。
あなた方の友人の光焔ねねとして過ごしていた時は記憶を失っていましたから。」
「記憶を失っていた…?」
「成程、ある時に記憶を思い出しては行方を眩ませたわけか。」
「我々の業にブランたちを巻き込みたくはありませんでしたから、何も言わずにエクシーズ次元のハートランドへ帰還しました。
…もっとも、何の因果かこうして再会してしまった以上は手遅れのようですがね。」
「あなたがいなくなって、心配してた…なのに再会して早々これって、あんまりよ…!」
ねねだった少女が告げたのは顔を覆い隠したくなるような残酷な真実だった。
ねねは現実としてオーバーレイ・ユニットを持っているエクシーズモンスターを使用している。
「ブランには何も知らないでいて欲しかったのですが、そういう事です。
一度行方晦ましておきながら、結局この世界へまた来てしまいました。」
「ちなみに俺はバトルロイヤルでの事を社長に問いただしたら敗者復活戦というわけでここにいるわけだ。
で、ねねが柚子っぽい奴とそいつに肩を担がれた紫吹って奴を追いかけていたものだからたまたま通りかかった俺が駆けつけたって奴さ。」
恰好つけている沢渡は兎も角、柚子っぽい奴ってどういう事?
それに紫吹を追いかけていた…?
「柚子っぽい…?」
「あ、柚子さんに似ておりますが違います。」
「そう…」
「その様子ですと柚子さんを探しているようですが、残念ながら彼女は見ておりません。
わたしはこの世界へ脱走したそのお方を連れ戻すために来訪する事となりました。
紫吹雲雀を追い掛け回していたのは、我々の仕事の障害となったからです…一応、個人的な恨みもあるにはあるのですが。」
「え?」
「わたしが来た時は、彼はあなたもよく知る黒龍院里久に今まさにトドメを刺そうとしていた最中でした。
それを止め、彼を逃がした上でわたしが引き受けた結果です。」
残念ながら、どうも柚子の手掛かりはないみたいね。
小声で聞こえなかったところもあったのだけど、冷淡な声色からして容赦がない印象を受けた。
使用カードといい、やっぱりオレの知るねねとはやっぱり違う…!
だけど、里久を助けたって事は仲間想いな一面は健在のようね。
それと、里久の奴…紫吹に挑んではまたやられたのか。
「兎に角、立場上敵であるわたしが言うのも変ですが、わたしに構っている暇はないはずです。
わたしが沢渡さんに足止めされている今のうちにあなたには先にやるべきことがあるでしょう?
もしも、邪魔立てするというのであれば親友だったあなたも容赦いたしませんが?」
「そうだぜ?つーわけで、ねねは俺が引き受けた。」
ちょっと待て、沢渡?それ死亡フラグ!?
それに豹変したねねを放っておくわけには…!
「行くぞ、ブラン…俺たちにはこんなところで立ち止まっている時間が惜しい。」
「…わかったわ!でも、必ずねねを正気に戻して!」
「任せてくれ。」
「やれやれ…気が狂ったつもりはありませんがね。」
とはいえ、ファントムの言う通りここで立ち止まっている暇はないわ。
沢渡をここに置いて行ってよかったかどうかわからないけど。
だから、ここは好意に甘えて火山地帯へ足を踏み入れ柚子の捜索を再開するわ。
超次元ゲイム ARC-V 第53話
『倒れゆく者たち』
ロム:LP800
ラム:LP2400
マグゴレム・カルカロス:ATK2700
マグゴレム・ティタン:ATK2100
ヘルマグマ・サラマンダ:ATK1800
マグゴレムの恐獣:ATK1900
Side:ロム
「はぁ、はぁ…っ。」
「あはははは!大それた事言った割には、本当に辛そうだね。
別の今ならサレンダーしてもいいわよ、ロムちゃん。」
確かにダメージが蓄積されて身体はもうボロボロですが、馬鹿言わないでいただきたいものですね。
「確かに…立っていられるのは精々このターンまででしょう。」
「それじゃ…」
「ならば…このターンでラムちゃんを倒せば済む話です。」
「あはははは!何を言うのかと思えば…いくらロムちゃんでもこの布陣相手じゃ…」
それはどうでしょうね?
この程度の布陣…意外ともろいものですよ?
攻めそのものは高いようですが、今のところ返しのターンはあまり得意ではないように見受けられますし。
「それでは、試してみましょうか?ボクのターン、ドロー!
まずはエクストラデッキへ送られている『零海古龍ブリューナク』を墓地へ送り、墓地のレベル5以下の『零海』モンスター『零海精エトワル』を手札に戻します。」
「またエクストラからの効果なの?いい加減にしなさいよ。」
「それがあってこそです。」
エクストラからの効果にウンザリしているようですが、これで最後になるはずです。
あ、エクストラからの発動はですよ?
「そして、スケール2の『零海精グレイス』とスケール6の『零海精エトワル』でペンデュラムスケールをセッティング!」
零海精グレイス:Pスケール2
零海精エトワル:Pスケール6
「これって、またペンデュラム召喚…?」
「はい…これでレベル3から5のモンスターが同時に召喚可能です、ペンデュラム召喚…来て、ボクのモンスターたち。
手札からレベル3の『零海精ウミリリ』!エクストラデッキからレベル3の『零海精ウルサン』!そしてレベル5の『零海聖鳥シグナス』!!」
零海精ウミリリ:DEF1600
零海精ウルサン:DEF1900 forEX
零海聖鳥シグナス:DEF1400 forEX
「またこんなにモンスターを並べてきて…本当に鬱陶しいんだからもう!
でも、そのモンスターでなにができるというの?」
「別にこの子たちでどうにかしようというわけではありませんが、すぐにわかります。
ここで零海精グレイスのペンデュラム効果を発動。
もう片方に『零海』がある場合、このカードを破壊し、デッキから水属性の儀式モンスター1体を墓地へ送ります。
この効果で墓地へ送るのは、レベル11の儀式モンスター『零海氷神アブソリュート・クリオネ』です。」
「レベル11の儀式モンスターを直接墓地へ!?
でも、儀式モンスターって基本的に手札から特殊召喚するんじゃ…?」
「然りです…あなたの知る儀式召喚は……ですが。」
「え?」
基本的に儀式召喚は手札の儀式モンスターを儀式召喚するためのものですからね。
もっとも、我々の儀式召喚はラムちゃんが行方不明になっていた時から進化を遂げているのです。
「これで特別ゲストを呼び出す準備は整いました…ラムちゃん、お楽しみはここまでだ。」
「ろ、ロムちゃん?」
「ボクは手札から儀式魔法『零海の召喚陣』を発動!
この効果でフィールドのレベル3のウルサンとウミリリ、そしてレベル5のシグナスをリリース。
これにより手札…または墓地からレベル11の『零海』儀式モンスターの儀式召喚を執り行います。」
「墓地の儀式モンスターを儀式召喚!?そんなのインチキよ!」
ところがどっこい…ボクだけでなくファントムなど他の方も墓地からの儀式召喚は普通に行えますよ。
それに、崇高なる儀式召喚のリリースを踏み倒したあなたに非難される覚えはないですね。
そして、この儀式で呼び出すのは…ボクの切り札の1体です。
もっとも、強大な力を有しているが故に体力が一気に持ってかれてしまうので禁じ手に近いですがね。
「深海に眠りし絶対零度の氷神よ、召喚の儀式にて浮上せよ!儀式召喚!降誕せよ、レベル11!全て凍てつかせる『零海氷神アブソリュート・クリオネ』!!」
『キィィィィ……コォォォォォ!!』
零海氷神アブソリュート・クリオネ:ATK3500
「何なの、このでっかいクリオネのような氷のモンスターは…!?」
「これがボクの切り札…というよりは禁じ手に近い強大な氷神『アブソリュート・クリオネ』です。
そして、この神があなたを倒します…早速、アブソリュート・クリオネのモンスター効果発動!
1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズにターンの終わりまでフィールドの水属性以外の特殊召喚されたモンスター全ての攻守を0にし、効果を無効にします。」
「えぇぇぇぇ!?攻守0にされるだけでも脅威なのに効果まで無効にしちゃうの!?嘘でしょ…」
「容赦いたしません!煮えたぎる溶岩さえも凍てつかせ、絶対零度の世界へ誘え…『ワールド・オブ・ザ・ゼロ』!!」
――カチカチカチィィ…!
マグゴレム・カルカロス:ATK2800→0(DEF2000→0、効果無効)
マグゴレム・ティタン:ATK2100→0(DEF1700→0、効果無効)
ヘルマグマ・サラマンダ:ATK1800→0(DEF200→0、効果無効)
マグゴレムの恐獣:ATK1900→0(効果無効)
「そんな、わたしのマグゴレムたちが…全て氷漬けに!?」
これが、アブソリュート・クリオネの超絶効果です。
お互いのメインフェイズに1度、水属性以外のモンスターをターン終了時まで氷漬けにします。
そして、3500もの攻撃力で終わらせます…!
「これで決めます!バトル!アブソリュート・クリオネで攻撃力0となったヘルマグマ・サラマンダに攻撃!」
「来ないでよ!そんなモンスターなんてこれで溶かしちゃうんだから!
除外された炎属性モンスター2体を墓地へ戻し、罠発動『ブレイジング・ブレイク』!!
これでアブソリュート・クリオネを焼き壊しちゃえ!」
「させません!1ターンに1度、魔法・罠カードの発動時にエクストラデッキから2体の『零海』ペンデュラム2体を墓地へ送り、アブソリュート・クリオネの更なる効果を発動!
その魔法・罠カードの発動を無効にし破壊します!『スペル・フリーザー』!!」
――パリィン!!
「そんなっ!?何なのよそれ!」
フリーチェーンのモンスター破壊を伏せていたようですが、発動タイミングが悪かったですね。
ペンデュラムで出したモンスターのうち1体でも破壊していれば、アブソリュート・クリオネの出現は防げたのですが。
まぁ、出現したモンスターを破壊するのも悪くはないのですがね。
「狙いは悪くないのですが、今回は相手が悪すぎましたね。」
「だ、だったらアクションカードで…」
――するんっ…ドッ!
「きゃっ!?痛たい…」
「アブソリュート・クリオネの発する冷気で足元が滑りやすくなっております…もう遅いですが。」
この足場の悪さにより、攻撃の間にアクションカードを取るのは困難となったわけです。
今のうちに決めてしまいます。
「惜しかったですが、ここまでです…凍てつけ『ジ・エンド・オブ・アブソリュート』!!」
――シュオォォォォォォォ…!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ラム:LP2400→0
ふぅ…なんとか勝利はできたようです。
「っ…マグゴレムとエクシーズの力でようやくロムちゃんを超えたと思ったのに…!」
「正直、危なかったです…紙一重の差が勝敗を分けたと思っています。
エクシーズに魂を売ったのは感心しませんが、強くなろうと奮闘する意思とボクを打ち倒そうとする向上心は見事でした。」
「なによ、クサい事言っちゃってさ…本当に、ウザったいわね…!
そんな目でわたしを見ないでよ!本心ではいつもいつも上から目線でわたしの事を見下してさ!」
「見下す…?そんなつもりは…」
「ないとでも思っているんだ?へー。
本人はそのつもりはなくても、わたしからはそう見えてるんだよ?」
…確かにボクの態度は客観的に見ればあまりいいものではないかもしれません。
最近だと、モアなんかは明らかにボクに敵対心剥き出しでしたから。
今思えば、目の前のラムちゃんと喧嘩しがちなのも無意識に見下していたからかもしれません…今の時点で殆ど差はないに等しいはずなのに。
女神代行として相応しいと思った立ち振る舞いをしようと考えての行動が、逆に反感を買っていた…?
だとすれば、今までボクは何をしていたのでしょう?
皆に信頼されてこそのルウィー教会の頭であるはずなのに…よりにもよって双子の妹から現在進行形で憎まれているのですから。
「いつもいつも、わたしにもわけのわからない修行や教育を押し付けてさ…!
わたしはわたしなりの生き方があるはずなのに…!
そうやって、いつもいつもいつもわたしを見下して優越感に浸りたいんでしょ!」
「そんなつもりじゃ…将来のためを思って…」
「アンタ何様よ!そういった事が一々癇に障るのよ!本当にむかつくのよ!」
ボクたちの使命は女神に次ぐ者としてこの世界を守る事だと考えています。
力ある者にはそれに伴う義務があるはずです…持つ者にはそれに伴う義務がある、ノブレス・オブリージュのような。
ですが、ラムちゃんはボクとは別人…それがさも当然と思われて不快感があるのも致し方ないわけですね。
理想ばかり押し付けてラムちゃんの気持ちをあまりに無碍にしていたようです。
これでは……恨まれて然りですね。
何より、ボクもラムちゃんもまだ10歳なのですから。
「ま…負けちゃったし今回はこの辺にしておいてあげる。
でも、次はこうはいかないわよ…覚えてよね!」
――ピシュンッ…!
そして、倒れ伏せたまま捨て台詞を残して消えてしまいましたか。
デュエルをすれば分かり合える…とは中々いかないものですね。
今までラムちゃんの気持ちをあまり考えていなかったのだとも思い知らされました。
所詮、ボクは立場に反して周りが見えていなかったクズとでも言うべきでしょうか?
「うっ…」
――ガクッ…
そして、ここで疲労と侵略者の攻勢によるダメージが一気に圧し掛かりました。
それと、零海氷神を呼んでしまったツケがここに来たようです。
目が霞んできました…どうやら、ここまでのようです。
ファントムや侵略者を食い止めている皆さん…後は任せました……。
――ガタッ…
――――――
モア:LP4000
月影:LP500
忍者マスター HANZO:ATK1800
ドッグ:LP4000
スモーキング・ドッグ:ATK2600 ORU1
ハンターA:LP4000
フォトン・ハウンド・ケルベウス:ATK2700 ORU1
ハンターB:LP4000
フォトン・ハウンド・ケルベウス:ATK2700 ORU3
No Side
火山地帯においての2vs3のデュエル…!
そのデュエルで3名のハンターの攻勢を前に月影の永続罠『結界忍法-影寄せの術』のバトルフェイズを終了する効果でなんとか身を守れていると言ったところだ。
バトルフェイズ開始時に発動する事でケルベウスの効果を適応させる事なく一方的に自分の罠を適応できたようだ。
スモーキング・ドッグには罠カードの発動を無効にする効果があるのだが、速攻魔法の効果で事前に発動を阻止していた。
「ふん、ようやくオレのターンが回ってきたか…ドロー!」
そして、ようやくモアのターンがやってきたが、相手側の全てのプレイヤーにはセットカードが2枚以上あり、ドッグに至っては4枚も伏せられていた。
「自分フィールドにモンスターが存在しない場合、レベル8の『スパイクダート』は手札から守備表示で特殊召喚できる!」
スパイクダート:DEF2000
「まずは永続魔法『砂礫の駆け道』をスパイクダートを対象に発動し、それより攻撃力の低い『ジャイアントダート』を手札に加え、地属性・鳥獣族の攻撃力を100アップ!
続いて永続魔法『恐鳥の狩場』を発動し、自分フィールドの鳥獣族・地属性のモンスターの攻撃力をさらに300アップ!
さらに、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、オレが永続魔法カードを発動した時、手札からレベル8の『ジャイアントダート』を自らの効果により特殊召喚できる!」
ジャイアントダート:ATK1500→1900
スパイクダート:DEF2000(ATK1800→2600)
「これでモア様のフィールドにはレベル8のモンスターが2体…」
「アレが来るぞ…」
なお、スパイクダートの攻撃力は自らの永続魔法1枚につき200アップする効果によりさらに400アップしているが守備表示のため関係はない。
重要なのはレベル8のモンスターが2体揃った事…つまり!
「貴様らのくそ犬共でオレをどうにかできると思うな!さっさと片付けてやる!
オレはレベル8のスパイクダートとジャイアントダートでオーバーレイ!
蘇りし恐鳥よ、荒れ果てた大地を神の如き速度で駆け抜けよ!エクシーズ召喚!現れろ、ランク8『神速恐鳥ディアダート』!!」
『ガギャァァァァァ!!』
神速恐鳥ディアダート:ATK2900→3300 ORU2
ここでモアが追っ手などに簡単に屈する者かとばかりにランク8のエースモンスターを召喚する。
一方、隆起した山陰に隠れてその様子を見る者もいた。
「やっぱり、彼女はハートランド仕込みのエクシーズで来るよね。」
そう、モアにドッグたちをけしかけたデニスである。
ハートランドでエクシーズ関連の戦術を仕込まれたと見ている辺り、何かあるのは間違いない。
「ん?」
一方、彼の視線の先の別の物陰では…!
「あれは何や?」
「多分、あれがブランちゃんが言ってたハンターとかいう連中じゃないかな?
殺伐とした雰囲気といい…どうみても、正規の参加者じゃなさそうだ。」
「せやな…あまり関わらない方がよさそうやが、どないする?」
「…今はじっと様子を見よう。」
ブランやファントムとは別行動していた山越シェフと網代幹也の2人が隠れてデュエルを見ている。
2人とも冷や汗をかきつつも、今は冷静に静観に徹するようだ。
「でも、あれってブランって奴が好意を抱いてた柊柚子やったよな?
それにしては使用するカード違くないか?」
「ああ…それに妙に攻撃的な感じがするね。
とはいえ、似ているだけって可能性はあるみたいだけど…」
「せや…本人かどうかは関係あらへん。」
彼らはとりあえず、実はモアという別人である柚子らしき少女の動向に注意して動くようだ。
そして、当のモアもデュエルを進めていく。
「ここで装備魔法『走鳥の若鳥』をディアダートに装備!
これによりディアダートの攻撃力は自分フィールドの表側表示の魔法・罠の数×500アップする!」
神速恐鳥ディアダート:ATK3300→4800
「さらに、自分フィールドにエクシーズモンスターが存在するため、魔法カード『ジェネレーション・フォース』を発動!
デッキから『エクシーズ』カード1枚を手札に加える。
そしてライフを1000支払い、手札に加えた魔法カード『エクシーズ・エクスキュージョン』をディアダートを対象に発動!」
モア:LP4000→3000
「このターン、対象のエクシーズモンスターでしか攻撃できない代わりにディアダートは相手のエクストラデッキから特殊召喚したモンスター全てに攻撃可能となる!
そして、戦闘で破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージをコントローラーに与える効果も付与される!」
神速恐鳥ディアダート:ATK4800(EX全体攻撃&直火焼き付与)
「げぇっ…!」
「流石はモア様…一気に我々を倒すのを狙ってきましたか…!」
ここでモアは己のエースであるディアダートを永続魔法や装備魔法で大幅に強化した上、エクストラモンスターへの全体攻撃と直火焼きを付与して敵の殲滅を狙いに行く。
この攻撃が決まれば戦闘ダメージと直火焼きのダメージが合わさり1回につき総ダメージは4000を超え、全体攻撃により全員倒す事ができるわけだ。
さらにディアダートの効果を使用すれば、このターン中は相手の効果の影響から逃れられる。
そして、そのために必要な手札に戻す効果により『砂礫の駆け道』を手札に戻してもディアダートの攻撃力は4200…殲滅には十分な火力は確保できる寸法であった。
あくまでこのまますんなりと行けば…の話ではあるが。
「バトルだ!」
「ひぃっ…!」
「ディアダートを相手に私の伏せカードではどうしようも…!」
そして、どうやら仮面のハンターの2人の伏せカードではどうにもならない様子だ。
が、この追っ手3名の中でもドッグは違った。
「狼狽えるでない!このバトルフェイズ開始時に、ディアダートを対象に速攻魔法『エクシーズ・オーバーディレイ』を発動ぜよ!」
「無駄だ!オーバーレイ・ユニットを1つ使い、ディアダートの効果を…」
「そうはいかんぜよ!このカードの発動に対し、あらゆる効果の発動はできぬわ!」
「何だと!?」
彼女は幼くも貫禄のある声で狼狽える2人を諌めると、チェーン不可が付与された速攻魔法で対抗する。
ディアダートの効果を発動できないとなっては流石のモアも驚愕を隠せないようだ。
「オーバーディレイの効果により、対象のエクシーズ1体のオーバーレイ・ユニットを全て取り除き…」
神速恐鳥ディアダート:ATK4800 ORU2→0
「そのエクシーズモンスターを持ち主のエクストラデッキに戻す!
そして、取り除かれたオーバーレイ・ユニットとなったモンスターをレベルを1つ下げて守備表示で特殊召喚してもらうぜよ!」
「馬鹿な、オレのディアダートが…!?
しかもスパイクダートは1ターンに1体しか特殊召喚できないから戻せない…!」
ジャイアントダート:DEF2400 Lv8→7(ATK1500→1900)
ディアダートがデッキに戻され、素材そのものはフィールドに戻ったとはいえレベルが下がっている状況だ。
しかも、スパイクダートは自らの制約によりこのターン中は特殊召喚できない。
一気に決めようとした分、心理的なダメージも大きいだろう。
「疑似的な完全効果耐性が得られるディアダートにも効果を使用する必要がある以上は隙はある。
流石にチェーン不可のカードを使われれば一溜りもあるまい。」
「流石リーダー!」
「モア様の攻勢をも軽くあしらうなんて痺れるあこがれるぅ~!」
仮面で表情は伺えないものの、3人がしたり顔している事は確定的に明らかであった。
「しかも、モア様にランク7のエクシーズモンスターがない事など事前に把握済みよ…!
さあ、これで最早打つ手はあるまいよ…大人しくお縄につくぜよ!」
「ぐっ…フィールドから墓地へ送られた『走鳥の若鳥』の効果によりデッキから『ダートランナー』を特殊召喚する。」
ダートランナー:DEF0(ATK1900→2300)
モアの戦術は既にドッグには筒抜けだったようである。
そして、苦々しそうに対象不在で墓地へ送られた装備魔法の効果でダートランナーを展開するも…。
「苦し紛れでダートランナーを呼ぼうと攻撃力は我らがモンスターには届かず守備表示、悔しかろうに。」
攻撃力は強化分含めても3人のモンスターには届かない。
そして、本人の様子からも彼女はランク7のモンスターも持っていないようだ。
苦悶の表情からも、今のところこのターンに打つ手はもうないのは明白であった。
「あの子が大ピンチやな…どないする?」
「正直怖くないと言ったらウソになるけど、僕たちも行こう…!
正直僕たちでは力不足かもしれないのだけど…!」
「せやかて、このまま黙ってみているわけにはいかへんで…!」
「だね。」
一方、モアのピンチに物陰に潜んでいた山越シェフら2人がここでデュエルに駆けつける決心をしたようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
里久:LP200
クラフトイ・カオス・ベアー:ATK2400 ORU1
日影:LP3200
黄昏の忍獣-テンドウ:ATK2800
モアや月影が橋上部分で追っ手のハンターと死闘を繰り広げている一方、その下では日影が手負いの里久に逆襲されつつあった。
忍術で翻弄するも、日影は月影と比べると守りはやや手薄。
一瞬のスキを突いて里久がエクシーズチェンジで召喚したカオス・ベアーでワンチャンを狙っていく。
「クラフトイ・カオス・ベアーの効果発動!
オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスター1体を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!
テンドウを葬り去れ!『レイザー・エッジ・ショット』!!」
クラフトイ・カオス・ベアー:ATK2400 ORU1→0
――ザシュザシャァァ!!
「ぬおぉぉっ!!」
日影:LP3200→400
「はぁ、はぁ…手こずらされたけど、ようやく…」
「里久!!」
「ん……ブランが来ちゃったか。」
そして、カオス・ベアーの効果により日影のテンドウをズタズタに引き裂かれたその時、ブランとファントムが漸くこの場に駆けつけた。
「あなた、何やってるの!こんなボロボロになって…!
それに見てしまったわ…あなたの仲間らしき奴らがデュエルで倒した相手をカードにした所を!」
「どんな理由があっても、お前たちのやってる事は決して許されない事だ!」
「はぁ…タイミング悪すぎだよ。
悪いけど話は後、今は取り込み中だからね。」
「うむ…まずは拙者を倒してからにしていただこう…!そして、助太刀無用。」
「っ…!」
とはいえ、現在デュエル中の2人はブラン達の干渉を望んでいないようである。
「でも、このままじゃ…!」
「やめておけ、あの忍者は覚悟を決めたようだ。
なのに、水を差すような真似はできない…!」
「納得はできないけど…出しゃばっては無粋って事かよ。
だけど、里久に関してはオレも負い目がある…!」
そして、ファントムはこのデュエルに関しては静観を決め込んだようで、ブランも渋々応じる。
が、その頃…ファントムが橋上でデュエルが行われている事に気付いたようで…!
「そういえば…向こうにいるの、柚子たちじゃないか?」
「え…?」
ここでブランはファントムから指摘され橋上を確認する。
ここから見えた柚子と思わしき少女は…汚れてはいるものの柚子と同じ衣装を身に着けていた。
「あれは、柚子なのか!?いや、違う…やっと見つけたと思ったのに…!」
「…違うのか?」
「容姿は似てるのだけど…使用モンスターも違うし、何より雰囲気が明らかに違うわ。
なんというか、やけに刺々しい感じ……一体、あの子は誰なんだ?」
「お、おい…ブラン?」
もっとも、彼女は柚子に酷似している者のブランにとってみればすぐに別人だとわかったようだ。
それだけに、ようやく見つけたと思った柚子が別人だった事にショックを受けているようだ。
そして、その柚子に似た少女…もといモアは。
「ぐっ、おのれ…カードを1枚伏せて、ターンエンド。」
「モア様にもはや成す術もあるまい…仲間がその忍者一人ではな。
これで一巡したようだが最早…」
エースであるディアダートを失い、エクシーズ召喚が満足にできずにカードを1枚伏せたのみでターンエンドする羽目となった。
だが、その瞬間…物陰でこそこそそのデュエルの様子を伺っていた2人が現れる。
「待てや!」
「ここは僕たちも混ぜていただこうかな!」
「む、お主ら…!?」
『『乱入ペナルティ2000ポイント』』
――ビリビリィ!!
「あばばばば!何もしてないのにライフ2000取られたやて!?」
幹也:LP4000→2000
「仕方ないよ…デュエル中に乱入したんだからさ!」
敦也:LP4000→2000
2000ポイントの乱入ペナルティを取られつつも有無を言わさず乱入する2人。
重要なのは彼ら2人がモアたちの窮地を救えるのかどうかである。
「腹くくっていくとしよう…僕のターン、ドロー!」
まず動いたのは山越シェフこと敦也の方だった。
「僕は儀式魔法『料理修行』を発動!
この効果で手札のレベル3の『トマボー』とレベル4の『にん人』をリリース!
これによりレベル7の『無欠の料理人』の儀式召喚を執り行う事ができる!
クッキングデュエルの修行を旅を終え、完全無欠の料理人がここに誕生する!儀式召喚!いでよ、レベル7『無欠の料理人』!!」
『ウムッ!』
無欠の料理人:ATK2400
ここで山越シェフは儀式召喚を行い攻撃力2400の料理人らしきモンスターを展開する。
もっとも、相手3人のモンスターの攻撃力には届いてはいない。
「儀式召喚で何を出したかと思えば、攻撃力2400では我々のモンスターには届かんぞ?」
「承知の上さ…カードを1枚伏せ、仕込みは完了。」
が、どうやら狙いは別にあるようだ。
「何を狙っているのかはわからんが、所詮わしらの敵では…」
「あまり僕たちをみくびらないでもらいたいものだね。
それじゃ、幹也君…後は頼んだよ!」
「任しとき!ドローや!まずは『
共振虫:ATK1000
「続いて永続魔法『落葉樹』を発動し、フィールドの『共振虫』をリリースして効果発動や!
これによりデッキから昆虫族1体…『リトルミリピード』を墓地へ送る!
効果で墓地へ送られた『リトルミリピード』の効果でデッキから昆虫族・レベル5以上の『デビルドーザー』を手札に加えるで!
さらに、フィールドから墓地へ送られた『共振虫』の効果でレベル10の『ディアボロスドーザー』を手札に!
でや、墓地の昆虫族2体を除外する事により、レベル8の『デビルドーザー』を特殊召喚や!」
『ギシャァァァッァァア!!』
デビルドーザー:ATK2800
ここで幹也は手札と墓地を整え、ファントムとのデュエルした時も使用したデビルドーザーが出現する。
「共振虫が除外された場合、もう1つの効果で『レベル・スティーラー』を墓地へ送るで!
そして、墓地の『レベル・スティーラー』の効果!デビルドーザーのレベルを1つ下げて蘇生できるんや!」
レベル・スティーラー:DEF0
デビルドーザー:Lv8→7
さらに墓地肥やしを利用してさらにモンスターを展開。
だが、これだけでは終わらない。
「さらにデビルドーザーを含む2体の昆虫族モンスターを墓地へ送り、レベル10の『ディアボロスドーザー』を特殊召喚や!」
『グオォォォォォォォォ!!』
ディアボロスドーザー:ATK3000
ここで手札に加えたデビルドーザーの上位種の特殊召喚を決める。
攻撃力は下位種と200しか変わらないものの…!
「ディアボロスドーザーが特殊召喚に成功した時、効果発動!
これにより、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを3体まで除外できる!
これで、あの3人のモンスターを喰らいつくすんや!『デビルズ・プレデクション』!!」
「来たね、それに合わせて僕もいこうか!罠カード『モンスターグリル』を発動!
このターン、効果モンスターがフィールドから離れる度にそのモンスターのコントローラーに『グリルトークン』(星1・悪魔・炎・攻/守0)を特殊召喚するよ!」
「「「なっ…!?」」」
グリルトークン:ATK0(×3)
特殊召喚されたモンスターを3体まで除外できるという凄まじい効果でハンターら3人のモンスターを全滅させる。
その動きに合わせて山越シェフが罠カードで3人にモンスタートークンを送り付ける。
そして、2人の快進撃はまだ続く。
「ここで『無欠の料理人』のモンスター効果を発動!
1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが召喚・特殊召喚された時、手札を1枚捨てる事でそのモンスターを全て破壊するよ!」
「さらに効果を上乗せや!速攻魔法『フォビドゥン・ショック』を発動!
除外された相手モンスター3体を墓地へ戻し、このターン発生する効果ダメージは倍や!」
「グリルトークンは破壊された時、そのコントローラーは1体につき1000ダメージを受ける!よって…」
「2000ポイントずつのダメージを喰らえや!」
――ボォォォォォォォ!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドッグ:LP4000→2000
「「ぐわぁぁぁぁぁ!!」」
ハンターA:LP4000→2000
ハンターB:LP4000→2000
息を合わせたコンボにより、見事ハンター3人に2000ポイントずつの大ダメージを与えられた。
密林地帯でコンビを組んだ事でお互いの戦術を熟知し、コンボ攻撃を決める事に成功したわけだ。
「最後に手札から墓地へ送られた『デカトマボー』の効果で墓地の『トマボー』を手札に戻すよ。
今日組んだばかりだというのにまさか、ここまで上手く決められるなんてね。」
そして、墓地へ送られたカードの効果で手札を増やし、次のターンも料理人の効果を発動する体制が整えられた。
「せや、俺たちは最高のコンビや!」
「ああ!さて、もうひと踏ん張り頑張ろうか!」
「あたぼうよ!」
見事な連携攻撃を決めた後はここでお互いの健闘を称えあう。
そして、ここからディアボロスドーザーの攻撃を決めれば誰か1人のライフを削り切る事もできるわけだ。
もっとも…彼らはある事を失念していた。
「ふふふ、あははははは!!」
「…?」
「何がおかしいんや!」
「そりゃ…皮肉なものだと思うと笑いが止まらんよ。」
ここで、リーダー格のドッグが彼ら2人を嘲笑う。
2人は彼らが何を言っているのかのかわからないようだが…?
「その最高のコンビが自ら最低な終わりを招いたとなればな!!野郎ども!」
「何!?」
「どういうことや!?」
「こういう事だ!俺は2枚の伏せカードを発動!
永続罠『魔獣の咆哮』!そしてもう1枚の永続罠『魔獣の執念』の順にな!」
どうやら、見事な連携を決めたこの2人の快進撃もここまでのようであった。
ドッグの掛け声により、まず手下のハンターの1人が伏せていた2枚のカードを発動した。
「まずは猟犬の執念の効果により、墓地から『フォトン・ハウンド・ケルベウス』を攻撃表示で復活させる!」
『グルル…!』
フォトン・ハウンド・ケルベウス:ATK2700 ORU0
「さらに!自分フィールドに獣族エクシーズが墓地から特殊召喚された事で1ターンに1度、猟犬の咆哮の効果により、1000ダメージを与えるが…お前たちは自ら墓穴を掘ったのだよ!」
「墓穴やて…あかん!?」
ここで幹也がある事に気が付いた。
そう…とあるカードの効果により、自ら墓穴を掘ってしまった事に。
「ごっちゃんでしたよ、わざわざ『フォビドゥン・ショック』で除外したわしらのモンスターを墓地へ戻した上にこのターンの間の効果ダメージ2倍までつけてくれちゃって!」
「やってしもうたで…俺らへの効果ダメージも2倍になるんや…!」
「そんな…!」
後悔先に立たず、気付いた時には時すでに遅しであった。
「つまり、1000の倍の数値の2000のダメージを受け散れ!!」
――ドッゴォォォォォォ!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
敦也:LP2000→0
「山越シェフ!!」
――ドォォォォンッ!!
コンビ攻撃が墓穴を掘った形で、山越シェフが吹き飛び…背面のビルへ激突。
そのまま、力なく地面へ倒れ込んでしまった。
「シェ、シェフ…嘘やろ……?」
山越シェフがやられる様を間近で見た幹也は、目を見開いたまま呆然となる。
無理もない…勝負を決めようと自ら打った一手が裏目に出てこのような事になってしまったのだから。
「リーダー…こいつ、どうします?」
「放っておけ…と言いたいところだが、これ以上変な虫が湧いては面倒だ。
見せしめも兼ねて…消してしまうぜよ。」
「悪いな、そういう事で消えてもらおう…ククク、乱入なんてしなければよかったものを。」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
そして、山越シェフを倒したハンターが彼ににじり寄る。
遠くからのブランの叫びもむなしく…!
――ピカァァァァ!!
――ぱらっ…
「そんな…!」
「あいつら…まるで嘲笑うかのように人をカードに…!
ブラン…どうやら、あの時にお前がぶちぎれたのも無理はなさそうだな…!」
――ギリギリッ!
ハンターのうち1人により、山越シェフがカードに封印されてしまった。
流石にファントムも彼らの凶行には怒りを隠せないのが伺える。
「くそ、こんな事なら早く向かうべきだった…あいつら、デュエルをこんな事に使うなんて許せない!
ブラン、俺はもう駄目だ…!だけど、俺が言えた義理はないけどお前はここは堪えてくれ…!」
「あっ、ファントム?ちっ、お前も人の事言えた義理かよ…!」
そして、彼は早く向かうべきだったと後悔しつつ、モア達の下へ向かっていってしまう。
この場に置いてかれたブランは、ファントムに悪態をつきつつ…!
「里久!あいつら、あなたの仲間でしょ!こんな酷い事もうやめて!」
「放っておいてよ、ブランには…」
里久に彼らの凶行の事を問い詰めるも、素っ気ない返事しか帰ってこない。
「関係ないってか……それで済むと思ってるのなら、いい加減にしろよ…?」
「なっ…ブラン……?」
彼の意固地な態度が逆鱗に触れたのかブランは眼の色と髪の色を変色させ、声色を下げる。
ただならぬ彼女の様子の変化に、デュエル中の里久も危機感を感じている様子である。
一方、山越シェフがカードに封印された後のモア達の方は…!
「よくも、山越シェフを!」
「おっと、お前もすぐに奴の所へ送ってやるよ。
俺も永続罠『魔獣の咆哮』と『魔獣の執念』を発動し、この2枚のコンボ攻撃でな!」
『ガルルルル!!』
フォトン・ハウンド・ケルベウス:ATK2700
幹也が激昂する中で、もう一人のハンターが先ほどのもの同じ永続罠2枚を発動してしまう。
「お前も2000ダメージを喰らいな!!」
――ドッゴォォォォォォ!!
「どわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
幹也:LP2000→0
これにより、彼もまた成すすべなく2000ダメージを受けて倒れてしまった。
そして、うつぶせで倒れた彼の眼前にはカード化された山越シェフが落ちていた。
「ははっ、何カードにされてるんや、山越シェフ…俺たち最高のコンビのはずやったやろ?」
「ちっ、目障りなんだよ…」
――ピカァァァ!!
「永遠にコンビでカードになってな!」
そして、無慈悲にも幹也もカードに封印されてしまった。
彼らをカードへ封印したハンターたちには罪悪感も感じられず悪びれる様子もなかった。
「ぐっ、うぅぅ…!」
「ああ、くそ!クラフトイ・マッド・ベアーでトドメだ!『カオス・ベアレイザー』!!」
――ズバァッ!
「無念…!」
日影:LP400→0
――ドサァッ…!
そして、里久が相手をしていた忍の一人…日影が倒されて里久が彼にデュエルディスクを向けた瞬間!
――ドクッ!!
「うっ…がぁぁぁぁぁぁぁ…!」
「っ…!」
――シュオォォォォォォ!!
それがキーとなって、彼女は光の柱に包まれ姿を変貌させる。
スーツの男ことガナッシュとのデュエルの時に見せた…美しくも凶暴な女神の姿へと。
思うように己の感情を律する事はできなかったのか?
「な、なんだよ…これ?」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!里久!!」
そして、里久の凶行を止めるべくその女神は飛び出していった。
続く
登場カード補足
零海氷神アブソリュート・クリオネ
儀式・効果モンスター
星11/水属性/水族/攻3500/守2500
「零海の召喚陣」により降臨。
このカードは自分フィールドのモンスターを3体以上使用した儀式召喚でのみ特殊召喚できる。
(1):1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。
このターン、フィールドの水属性以外の特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0になり、効果は無効になる。
(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
(3):1ターンに1度、相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。
自分のエクストラデッキから「零海」Pモンスター2体を墓地へ送り、その発動を無効にし除外する。
ジャイアントダート
効果モンスター
星8/地属性/鳥獣族/攻1500/守2400
「ジャイアントダート」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
このカードをX召喚の素材とする場合、地属性モンスターのX召喚にしか使用できない。
(1):相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、自分が永続魔法カードを発動した時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):1ターンに1度、自分フィールドの鳥獣族・地属性・レベル4のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターのレベルを8にする。
黄昏の忍獣-テンドウ
効果モンスター
星7/闇属性/獣族/攻2800/守1000
このカードはルール上「忍者」カードとしても扱う。
(1):1ターンに1度、自分の墓地の「忍法」カード1枚を除外して発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで500アップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。
自分フィールドの「忍法」カードの数×400ダメージを相手に与える。
無欠の料理人
儀式・効果モンスター
星7/炎属性/戦士族/攻2400/守1200
「料理修行」により降臨。
「無欠の料理人」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した時、手札を1枚捨てて発動できる。
その召喚・特殊召喚したモンスターを破壊する。
(2):このカードが戦闘または相手の効果で墓地へ送られた場合、自分の墓地のレベル4以下の植物族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
デカトマボー
効果モンスター
星4/闇属性/植物族/攻1800/守1500
「デカトマボー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードはデッキから特殊召喚できない。
(1):このカードが手札・フィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の「デカトマボー」以外の「トマボー」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。
ディアボロスドーザー
特殊召喚・効果モンスター
星10/地属性/昆虫族/攻3000/守2800
このカードは通常召喚できない。
「デビルドーザー」を含む自分フィールドの昆虫族モンスター2体を墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。
(1):このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを3体まで対象として発動できる。
そのモンスターを除外する。
この効果の発動後、ターン終了時までこのカード以外の自分のモンスターは攻撃できない。
(2):このカードが相手に戦闘ダメージを与えた場合に発動する。
相手のデッキの一番上のカードを除外する。
リトルミリピード
効果モンスター
星4/地属性/昆虫族/攻1300/守1100
「リトルミリピード」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキからレベル5以上の昆虫族モンスター1体を手札に加える。
走鳥の若鳥
装備魔法
鳥獣族・地属性のモンスターにのみ装備可能。
「走鳥の若鳥」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):装備モンスターの攻撃力は自分フィールドの表側表示の魔法カードの数×500アップする。
(2):フィールドに表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキ・墓地から「ダートランナー」1体を選んで特殊召喚する。
エクシーズ・エクスキュージョン
通常魔法
(1):自分メインフェイズ1に1000LPを払い、自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターは相手フィールドのエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター全てに1回ずつ攻撃できる。
さらに、対象のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
料理修行
儀式魔法
「無欠の料理人」の降臨に必要。
(1):自分の手札・フィールドから、レベルの合計が7以上になるようにモンスターをリリース、またはリリースの代わりに自分の墓地の植物族または獣族のモンスターを除外し、手札から「無欠の料理人」を儀式召喚する。
落葉樹
永続魔法
(1):1ターンに1度、自分の手札・フィールドの昆虫族モンスター1体をリリースしてこの効果を発動できる。
デッキから昆虫族モンスター1体を墓地へ送る。
フォビドゥン・ショック
速攻魔法
(1):除外された相手のモンスター3体を対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の墓地に戻す。
このターン、お互いが受ける効果ダメージは倍になる。
ブレイジング・ブレイク
通常罠
(1):除外されている自分の炎属性モンスター2体を墓地へ戻し、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
結界忍法-影寄せの術
永続罠
自分フィールドに「忍者」モンスターが存在する場合にこのカードを発動できる。
(1):相手バトルフェイズ開始時に、自分のLPを半分払って発動できる。
そのバトルフェイズを終了する。
(2):自分フィールドに「忍者」モンスターが存在しない場合、このカードを破壊する。
モンスターグリル
通常罠
(1):このターン、フィールドの効果モンスターがフィールドを離れる度に、そのモンスターのコントローラーのフィールドに「グリルトークン」(星1・悪魔・炎・攻/守0)1体を特殊召喚する。
「グリルトークン」が破壊された場合、このトークンのコントローラーは1体につき1000ダメージを受ける。
魔獣の咆哮
永続罠
(1):1ターンに1度、自分フィールドに獣族Xモンスターが墓地から特殊召喚に成功した場合にこの効果を発動できる。
相手に1000ダメージを与える。
魔獣の執念
永続罠
(1):1ターンに1度、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、自分の墓地の獣族のXモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。