Side:ブラン
「むにゃ…。」
――はぴふる〜きゅあ〜ぴゅあ〜♪
「…う、う〜ん。」
…ん〜っ、気持ちよかったのに煩いわね。
あら、目覚ましのメロディが鳴り響いている。
まだ眠たいけど、そろそろ起きなきゃ。
今日も一日がんばろう。
超次元ゲイム ARC-V 第4話
『狂気の工作玩具』
――スタスタ
「おはようございます、ブラン様。」
「おはよう、母さん…。」
朝早くから挨拶してくれている侍女のようなややあどけない外見の女性はフィナンシェ・榊。
榊からわかるようにオレの母さん。
そのはずなんだけど、どこか違和感がある気がするのよね。
どうみても10代半ばあるいは後半程度にしか見えないし。
「あ、師匠!先にいただいてるよ。」
それに、あなたは黒龍院里久…どうしてここにいるのかしら?
しかも朝ごはんまでちゃっかり食べている始末。
「はぁ…母さん。これはどういう事かしら?」
「申し訳ありません、ブラン様。でも、彼がこの辺をうろついておりましたので事情を伺うと、ブラン様に用があるみたいでしたので。」
「…それで、あがらせたわけね。」
まったく、母さん…見ず知らずの人を勝手にあがらせるのはちょっと。
何か起こったらどうするの?知り合いだったからまぁいいけどね。
あと…!
「それに、わたしはあなたの師匠になった覚えはないわ。」
「えー?」
「まったく、勝手にあなたがそう呼んでいるだけでしょ?勝手にあがりこんで朝ごはんまで。」
「むぅ、いいじゃん。師匠のお姉さんの作る朝ごはんおいしいし。」
いや、それはわかるわ…母さんの料理は美味いもの。
でも、言いたいことはそれじゃなくて…図々しいってことよ。
沢渡の件はとても助かったから、あまり強く言えないのが辛いわね。
それに…。
「あはは、そう言ってくださるのはありがたいのですが…。」
「…気持ちはわかるけど、お母さん困ってるから。」
「違ったの?ごめんごめん。」
はぁ…朝っぱらから面倒なことになったわね。
埒が明かないけどとりあえず飯いただこうかしら。
――――――
朝食後、柚子と一緒に学校へ登校しているところよ。
…例の彼は大人しくしてくれると助かるのだけどね。
「へぇ…里久くん、今ブランの家にいるんだ。」
「うん。どこで調べたのやら、オレの家まで押しかけてきたわけ。」
「師匠ー!」
うわ…話してたら聞き覚えのある声が。
「はぁ…何でついてきてるのかしら?」
その姿は案の定、里久だったか。
やっぱり大人しくしておらず、こうなったか。
「だって僕は師匠の弟子だし。師匠の行くところならどこへでも!」
彼って今流行りのストーカーかしら、怖いわね。
「だから違うと言ってるじゃない。」
「いいじゃん、弟子にしてよー!僕、師匠のデュエル見てときめいちゃった!ペンデュラム召喚、すごいよね。僕もやってみたいな。」
「…本音がダダ漏れよ?あなたもそのクチだったのね。言っておくけど、何者か分からない子にペンデュラム召喚を迂闊に見せられないわ。」
「…ブランも沢渡の件で警戒しすぎじゃない?」
それなんだけどね、柚子。
あれでオレだけじゃなくて柚子たちも酷い目にあったのよ?
用心するに越したことはないと思うわ。
「うぅ〜けち…。ねぇ、お姉ちゃんからも何か言ってよ?」
「なんで、あたしが…?」
「だって、師匠も彼女の言う事なら聞くかもしれないでしょ?」
ちょっと待った…どうしてそうなる?
「彼女?」
「えっ、違うの?」
「違うわよ!あたしは……//」
柚子?どうしてそこで顔を赤らめるの?
女の子同士なのに柚子はそっちの道行っちゃっていいの…?
オレは、その…ううん、ダメダメ。
「違う。そもそもわたしと柚子は女の子同士だから…そういう関係じゃないわ。」
「え、師匠って…いわゆる男の娘じゃないの?」
「誰が男の娘だ…ったくもう。兎に角、後でデュエルはしてあげるわ。だから、今は付いてこないで大人しくしてて?」
「ちぇーっ。」
はぁ…背に腹は代えられなかったとはいえ厄介なことになったわ。
これで少しは大人しくしてくれると助かるのだけれど。
――――――
「ちょっと、ブラン…いつまで機嫌悪そうにしてるのよ?」
「だって…里久の奴があまりに突飛な行動をするものだから。
まさか更衣室までついてくるなんて何考えてるの、まったくもう!」
「あ…確かにそれはそうね。」
あれから今は放課後、柚子と帰っているところなんだけど…。
結局全然大人しくしてくれなかったわ、あの子。
授業中にも度々現れるわ、様々な所で出くわすわで大変だった。
特に気分が悪かったのは女子更衣室でオレが使ってたロッカーに彼が忍び込んでた時よ。
女子更衣室に男子が忍び込んでいるのが分かると辺りは一瞬で地獄絵図と化した。
おまけにオレもとばっちりを喰らいそうになった。
あの子、あまりにも常識やデリカシーに欠けているわね。
あまりの傍若無人さにオレも堪忍袋の緒が切れて『フライスィヒフォアスト』という名の三連パンチを食らわせて追い出したわ。
これでちょっとは反省してくれるといいのだけれどもね。
「そういえば、ブラン…あなた結構性格変わった?」
「ブツブツ…え?」
柚子?いきなり何を言っているの?
「だって、ブランってば里久くんが更衣室に侵入していた時、他の人たちがパニックになる中でやり方は兎も角として収拾をつけたじゃない。
今までの弱気なブランだったらそんなの考えられなかったことよ?」
むぅ、酷い言われようね。
でも、この件はオレの管理不届きも多少はあったし自分からやらないとって思ったからね。
それでも、少しでも変われた言ってくれてありがとね。
きっかけは…間違いなく石島と戦うことになったアレだよね。
「言われてみると、確かにそうかもしれないわね。」
「今まではブランって頼りない妹分だと思ってたけど、随分頼もしくなったと思うわ。」
頼りない妹分って思われてたのか…。
今まで柚子には世話になりっぱなしだし、オレが腐ってた時期があったから仕方ないけど。
「でも、そう言ってくれるのは嬉しい。」
「そうそう、その意気よ!明るく楽しくエンタメないとね。」
はっ…図ったな、柚子!?
でも、確かにいつまでも機嫌悪そうにしてたら子供たちをがっかりさせちゃうからね。
「そうね。気持ちを切り替えて塾へ向かいましょ?」
さてと、父さんのようなエンタメデュエリストになるためにもがんばらなくちゃ。
――――――
――遊勝塾――
「お待たせ。いつもニコニコ、みんなを楽しませるエンタメの使者『ブランちゃん』!わたし、がんばり…」
「あ、師匠ー!」
( ゚д゚)
なんでこんな回復早いのこの子…?
女子更衣室の件できつくおしおきしたのに。
「ブラン姉ちゃん、遅いぜ。」
「そうだよ、弟子が待ってるのに。」
「いや、違うから。」
あの、みんな?
その子の言ってること真に受けないでくれませんか?
「ブラン!お前の弟子ってことは…我が遊勝塾に入ってくれるんだろうな?」
塾長まで…もう!
「だから、あの子は弟子でもなんでも…。」
「師匠、デュエルしようよ!それでペンデュラム召喚やってみせてよ!楽しみだな〜師匠とのデュエル♪」
確かにあの時デュエルするとは言ったわ…でも。
「デュエルなら…もうしたわよね?」
大勢のみんなを巻き込んだデュエル(物理)をね。
「えー!あんなのデュエルって呼ばないよ!」
騙されるわけないか。
でも、このままじゃ示しがつかない。
「はぁ…だってあなた、まだ謝ってないじゃない。柚子たちにしでかしたあのことを。」
あえて自分のことをぼかしてるのは子供たちもいるから。
自分の事を最優先で言ったら、大人げないからね。
とりあえず、女子更衣室に侵入した件は反省してもらわないと。
「謝るって…いったいなんのこと?」
「誰かさんに追い出されたの覚えてない?あの時のことよ。」
もっとも、その誰かさんってオレなんだけどな。
それは兎も角、わざわざ女子更衣室…しかもロッカーに侵入するだなんて。
どうして見回りの人に気付かれなかったんだろう?
それにこの回復の速さ…絶対只者じゃないわね。
「何がいけなかったのかよくわかんなかったけど…ごめんなさい。」
「ブラン、あの事はもういいんじゃない。」
「まぁ…こちらこそ状況が状況だったとはいえ、殴って悪かったわ。」
…呆れたわ、よくわかっていなかったなんて。
でも、謝ってくれたからにはこちらも殴ったこと謝らないとね。
柚子が一応許したという事もあるけど。
「え、ぶったの…?」
「よくわからないけど、可哀想だよブランお姉ちゃん…!」
「だから、デュエルしよ…ね?」
「そうだぞ、謝るのも兼ねてデュエルしてあげようよー!」
…そしてこのあざとい顔である。
それに子供たちから非難されてるというのは…悲しくなるわね。
そうは言っても…。
「あざとい。」
「右に同じ。」
やっぱり柚子もそう思うよね。
悪気はなかったみたいとはいえどっちも覗かれた被害者だし。
「でも、一回くらいしてあげてもいいんじゃない?」
「…まいったな。」
なおここで柚子にも促されてるけど、どうしようか。
いずれにしても沢渡の件といい彼が只者じゃないのは事実…決めた。
「ブラン!お前を挑まれたデュエルから逃げるようなデュエリストに指導した覚えはないぞ!」
「師匠ー!僕と…デュエル!」
あの…折角の決意が揺らぎそうなのですが?
とはいえ、塾長の言う通り挑まれたデュエルから逃げるわけにはいかないわね。
「はぁ…ま、いいわ。やりましょう。」
「やったー!」
「ただし、わたしが勝ったらストーカーしたり師匠とか呼ばない事…いいわね?」
「はぁーい。それと…そんな無理した言葉遣いしなくていいよ♪」
何言ってるの?別に無理してないわ…まったく。
まぁ、沢渡戦見られてるからね。
テンション上がった時の粗野な口調もバレバレというわけだ。
おっとその前に、アクションデュエル場へ向かいましょう?
――――――
『最後に立っているのは貴様か、俺か…!』
「うーっ、わくわく…!」
アクションデュエル場へ入って準備はできたけど、随分と物々しい塾長のスピーチね。
変に凝らず普通に始めてほしいところだけど。
『アクションフィールドオン!フィールド魔法!『荒野の決闘タウン』!!』
すると、辺り一面が西部劇の決闘シーンで使われそうな荒野の町に変化した。
それにしてもこことなると妙な電波が飛んでくるわね。
これは、そうだな…あのセリフを言わなきゃ。
「さあ、オレを満足…」
「えーっ!なんかやだ!!僕にこんなの似合わないし。」
「最後まで言わせろよ!!」
ちょっ、おま…結構言うの恥ずかしかったのに。
本当に調子狂わされるな、この子には。
『え…?』
「こんな殺伐としたのじゃなくて、もっと楽しくて面白そうなのないの?」
「はぁ…。」
あの、塾長困惑してるから。
あまり手間かけさせないであげて。
『こほん…では、気を取り直して。これならどうだ!『マッシュルーム・キングダム』!』
すると、今度はどこかで見覚えがあるような辺り一面デフォルメしたきのこだらけのファンシーな王国へと一転した。
個人的にはさっきの方がよかったものの…仕方ない。
「わぁーっ、楽しそう!こういうのを待ってた!おじさん、ありがとう!」
『可愛いー!』
塾長…確認していないけど、多分男に対してそういう事言うのはちょっと…。
とりあえず…。
「気を取り直して…始めましょ。」
ソリッドビジョンのデュエルディスクを展開し、お互いに決闘の体勢になる。
「戦いの殿堂に集いし、デュエリスト達が!」
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い…!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」
「アクショォォォォォォォォン!!」
「「デュエル!!」」
ブラン:LP4000
里久:LP4000
今回の先攻は…久しぶりにオレじゃなかった。
よし、これでドローによるカードアドバンテージが取れた。
「先攻は僕だね。僕は『クラフトイ・プレーン』を召喚!ひょいと。」
クラフトイ・プレーン:ATK1700
「うおっ、夏休みの工作的なアレか!青春だな…。」
「塾長もああいうの作ったのか!俺も。」
「僕も僕も。」
彼がまず出してきたのは…まるで夏休みの課題で作ってきたような飛行機のおもちゃみたいなモンスターか。
特に外野の男性陣の受けもいいみたい。
さっそく乗ってきたけど、アクションデュエルでは便利そうなモンスターね。
「プレーンの効果で召喚時に手札からクラフトイモンスター1体を特殊召喚できる。出てくるのは『クラフトイ・マジシャン』!」
クラフトイ・マジシャン:ATK1800
今度はその辺の適当な材料でできたようなおもちゃの魔法使いみたいなモンスターと。
クラフトイ…いわば工作玩具デッキってところか。
「さらに手札から永続魔法『クラフトイ工作机』を発動し、これでターンエンド。」
今度は工作をする時に使う机までも…!
こういう永続魔法は得てして厄介なものがあるけど…オレのターンだ。
「オレのターン、ドロー!まずは『コロソマ・ソルジャー』を召喚!」
コロソマ・ソルジャー:ATK1300
「召喚時に効果発動!手札の水族か魚族のモンスター1体を墓地へ送り、デッキから1枚ドロー!
次にこの効果を使うために手札から墓地へ送られた『ザリガニカブト』の効果でデッキからザリガンとカニカブトを手札に加える。
そして魔法カード『強欲なウツボ』を発動!さっき加えたカニカブトとザリガンの2枚をデッキに戻し3枚ドローする!」
よし、いい具合に回ってるな。
「さてと、手札も確保できたし…早速お待ちかねのアレといきますか!」
「お、これはもしかして!」
ここで目を輝かせてるってことは…やることバレてるか。
それでも、やることにはかわらないけどな。
「オレはスケール2の『ロブスター・シャーク』とスケール5の『シュテルアーム・ロブスター』でペンデュラムスケールをセッティング!!」
ロブスター・シャーク:Pスケール2
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5
「早くも出た!」
「待ってたぜ、ペンデュラム召喚!」
やっぱりこの子たちも待っていたか。
さて、行くよ!
「そしてもう片方のペンデュラムゾーンにロブスターカードが存在する場合、シュテルアーム・ロブスターのペンデュラム効果で自身のスケールを8にする!」
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5→8
「これでレベル3から7のモンスターが同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天界に架かれ、流星のビヴロスト!ペンデュラム召喚!!水流を突き破り、敵に狙いを定めよ!レベル6『甲殻砲士ロブスター・カノン』!!」
『ハァァッ!』
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200
「えーっ、1体だけー?つまんなーい!」
「いや、必ずしも2体以上召喚しなきゃならないわけじゃないからな。」
別にただ1体のみの展開補助として使う事ももちろんできるわけだ。
それが手札消費に見合っているかはさておき。
とりあえず、ロブスター・カノンに乗っておく。
「ロブスター・カノンの効果発動!手札からの召喚かペンデュラム召喚に成功した時、相手の特殊召喚されたモンスター1体を破壊しデッキに戻す!」
「えっ、ペンデュラム召喚した時も!?」
「使えるのは手札から出した時だけだがな。今これで破壊できるのはクラフトイ・マジシャン!喰らえ『ハイドロ・ブラスター・カノン』!!」
「うーん、なにかないかな…あった!」
ここで彼がアクションカードを拾ってきたわね。
流石に機動力では飛行機のようなプレーンには負けちゃうか。
「僕はアクションマジック『ボム・ソルジャー爆発』を発動!これで自分フィールドのモンスター1体を破壊…って、自分フィールド!?ニヤリッ。」
あ…自分のカードを破壊しちゃうアクション魔法を引いちゃったか。
テキストをよく確認して使わないとああいうこともあるから気を付けなきゃね。
でも、一瞬ニヤリとしたのが気になるわね。
「うぅ、そんな…ごめん、クラフトイ・マジシャン。」
――BOMB!
とりあえず、対象のクラフトイ・マジシャンがこの爆発でひしゃげちゃったからロブスター・カノンの効果は不発か。
なんというかモンスターに対する謝罪の仕方がわざとらしいし、相手の狙い通りかも。
「あっ、でもこれでクラフトイ・マジシャンとクラフトイ工作机の効果が発動できる!
クラフトイ・マジシャンは効果で破壊され墓地へ送られた場合、デッキからクラフトイの魔法カード1枚をセットできるんだ。僕がセットするのは『クラフトイ工作キット』だよ。
さらにクラフトイ工作机は1ターンに1度、僕のフィールドのクラフトイモンスターが効果で破壊された場合、デッキからクラフトイモンスター1体を手札に加えられるんだよね。この効果で僕が手札に加えるのは『クラフトイ・クレイン』!」
成程、工作机の方は兎も角としてマジシャンの方は墓地へ送られないと効果が使えないわけか。
やっぱり、さっきのアクション魔法は決して無駄ではなく、大きな一手だったという事か。
どうもクラフトイは効果破壊されると発動するような効果が多いみたいだ。
「それでも、てめぇのフィールドが1体減ったことには変わりない!バトル!ロブスター・カノンでクラフトイ・プレーンを攻撃!
そろそろそいつには墜ちてもらうぜ!『キャノンアーム・ストライク』!!」
――ペシャァ…!
「うわっ、ひょいっと!」
…あれ、ダメージが通ってない!?
というより、あっさりとひしゃげたとかそういう感覚だ。
「あっ、クラフトイの多くのモンスターは攻撃対象になるとダメージステップ開始時にペシャンと破壊されちゃうんだよね。
んで、ダメージ計算は行ってないからダメージを受けないでやりすごせるんだ。」
そういう事か…やってくれるじゃねぇか。
しかも、効果破壊だから工作机との連動性も高い。
それは既に効果を使っているからこの破壊では発動できないとはいえ。
「そっか、ダメージを受けてない理由がわかったぜ。」
「ダメージ計算を行ってないとはいえ、ダメージステップには入っちゃったからね。
そこで戦闘を行う相手モンスターがいなくなっても今更巻き戻しはできないんだ。」
子供たちもその辺はわかってるみたいで嬉しいところね。
巻き戻しは相手のモンスターの数が戦闘中に変動した場合に攻撃対象を変更できるというものだけど、それはバトルステップ中まで。
このようにその先のダメージステップに入ってからはそれが適用されなかったわけだ。
「とはいえ、これでてめぇの場はがら空きだ!続いてコロソマ・ソルジャーで攻撃!」
――ズンッ!
「うわっ…!!」
里久:LP4000→2700
よし、まずはこんなところ…。
「へへ。でも、戦闘ダメージを受けた事で手札から『クラフトイ・クレイン』を特殊召喚するよ!
さらに、受けたダメージの半分の数値分ライフを回復させてもらおうかな。」
クラフトイ・クレイン:DEF2400
里久:LP2700→3350
「ダメージを半減させた上でモンスターを残してきた…やってくれるな。」
展開された上に思っていたほどダメージは与えられなかった。
やっぱりこの子、只者じゃない!
「あの子、お姉ちゃんに食らいついてきてるよ。」
「流石、ブランの弟子。熱血してるなー!」
「いやいや、彼はブランの弟子とかじゃないから。」
もう、塾長までそんなこと言わないの。
そしてよく反論してくれたわ、柚子。
「カードを2枚伏せて、ターンエンド。
ここでシュテルアーム・ロブスターのペンデュラムスケールは元に戻る。」
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール8→5
「…ふふ、あはははは!ちょっと肩すかし気味だったけど、それでもやっぱペンデュラム召喚すごいや!これが3体以上とかになると本当に最高なんだろうね!」
…ペンデュラム召喚したのが1体だけだったことが気に食わないか。
とはいえ、さっきのを見せられて妙にやる気になったみたい。
「さてと、師匠のアレを見せてもらったところで…そろそろ僕のデッキの本当の力を見せちゃおっかな!」
「くっ、今までのはほんの小手調べだったみたいだな。」
やはりというか、さっきまでは前哨戦。ここからが本番というわけか。
いったいこれからどう出てくるのか、見せてもらおうか。
「ふふっ、それはもうすぐわかるよ。僕のターン、ドロー!まずは『クラフトイ・ラット』を召喚!」
クラフトイ・ラット:ATK600
「クラフトイ・ラットの効果!このカードが召喚・特殊召喚した時、墓地のクラフトイ1体を効果を無効にし守備表示で特殊召喚できる!
これで僕が呼び戻すのは…『クラフトイ・マジシャン』!」
クラフトイ・マジシャン:DEF200
これでモンスターが3体…だけど、ここで終わるようには見えない。
「ここでセットされていた永続魔法『クラフトイ工作キット』を発動!
1ターンに1度、僕の場のクラフトイ1体のレベルを2つ上げる事が出来る!これでレベルを上げるのはクラフトイ・ラット。これでマジシャンと同じレベル4になる。」
――ザクッ、ザクッ!
クラフトイ・ラット:Lv2→4
「うっ…!」
うわ…道具で加工されてラットの姿が無残なことになってやがる。
ここでレベルを上げてきたという事は…まさか!
「ふふ、これでレベル4のモンスターが2体になった。この意味わかるかな?」
「レベルの同じモンスターが2体…なっ、エクシーズ召喚!?」
「わかってるじゃん。さっきはあえてしなかったけど、今度はいかせてもらうよ!
僕はレベル4となったクラフトイ・ラットとクラフトイ・マジシャンでオーバーレイ・ネットワークを構築!!童心を重ね合わせ、悪魔の如き狂気を目覚めさせよ!エクシーズ召喚!!」
こいつ、エクシーズ使いだったのか!
「あれは石島も使ってた…えーと、確か…?」
「場の同じレベルのモンスターを2体以上重ねてエクストラデッキからエクシーズモンスターを呼び出すエクシーズ召喚だよ。
でも、この塾のデュエル場でそれを使う人がでてくるなんて思わなかったな。」
確かに石島もエクシーズ召喚を使っていた。
けれど、これは…何かが違う!?
「現れ出ちゃえ、全てを引き裂く狂気のケダモノ!ランク4『クラフトイ・マッド・ベアー』!!」
『グヒヒゲヒャヒャヒャ!!』
クラフトイ・マッド・ベアー:ATK2000 ORU2
出てきたのは厚紙やその辺の適当な材料で作られたツギハギのクマ。
なんというか、色々と狂気を感じる。
攻撃力はロブスター・カノンより低いとはいえ、これは絶対何かあるな。
「すっげぇ、おぞましいデザインだな!!」
「柚子姉ちゃん…怖いよ。」
「大丈夫だから…アユちゃん…。」
塾長はいいとしてアユちゃんがすごく怖がってるな。
やばい、あれは想像力豊かな子供には見せちゃダメなモンスターだ。
「さて、ここから僕の本気をたっぷりと見せてあげるよ…!
クラフトイ・マッド・ベアーの効果発動!僕のフィールドのカード1枚を破壊し、このカードの攻撃力をターンの終わりまで1000アップできる。狂気の熊の糧となれ、クラフトイ・クレイン!」
――グシャ、ペタペタ…!
『アヒャヒャヒャ!!』
クラフトイ・マッド・ベアー:ATK2000→3000
こいつ…素材も使わず、自らのカードを破壊して強化してやがる!
しかも破壊したのは、クラフトイのモンスターじゃねぇか…!
「僕の場のクラフトイ・クレインが効果で破壊された場合、デッキから同名以外のクラフトイのカード1枚を手札に加えられるんだ。
これで手札に加えるのは2体目のクラフトイ・ラット。さらに工作机の効果で2体目のクレインも手札に加えるよ。」
これで次のターンに備えられたということか。
早めに決められないと拙そうだな。
「それともう1枚アクションカードを見つけてたんだよね。よっと!
アクションマジック『ダブルフラワー』を発動!これでこのターン、マッド・ベアーは攻撃力を300アップしつつ2回攻撃が可能となる。」
クラフトイ・マッド・ベアー:ATK3000→3300
いつの間に2枚目のアクションカードを…さっきといい身体能力半端ない。
「さて、その腕でっかちのザリガニから降りてもらおうかな?
バトル!クラフトイ・マッド・ベアーでロブスター・カノンに攻撃!『マッド・ベアクロー』!!」
「ちょ…!?」
こいつ、見た目の割に素早い!?アクションカードを取る余裕がない!?
――ズバァッ!!
「うわぁっ…!!」
ブラン:LP4000→2900
っ、落とされちまった。
でも、大丈夫…ロブスター・カノンは普通のモンスターじゃない。
「でも、ロブスター・カノンはペンデュラムモンスター。フィールドから墓地へ送られる場合はエクストラデッキに…」
「おっと、ここでマッド・ベアーのもう1つの効果を使うよ。
戦闘で相手モンスターを破壊した時、このカードのオーバーレイユニットを1つ使い、そのモンスターを攻撃力800アップの装備カード扱いとして自身に装備できる。
残念だったね、エクストラデッキへは送らせないよ。『マッドネス・カスタマイズ』!!」
クラフトイ・マッド・ベアー:ORU2→1
え…そんなっ、破壊したモンスターを装備するだって!?
――ズタ、ズタッ!
「「うわぁっ!?」」
「「「ひえぇぇぇぇっ!!」」」
「ロブスター・カノン!!!ううっ…!」
ああっ…ロブスター・カノンが無残な姿にされてあのモンスターに装備された!?
ひぐっ、オレのロブスター・カノンが…どうしてこんなことに…!
『ヒャハハハハハハ!!』
クラフトイ・マッド・ベアー:ATK3300→4100
「うおっ、さらにキモイ恰好になった!?」
「それに攻撃力…4100!?」
「しかももう1度攻撃を残してる!?」
くそっ、次の攻撃を受けたら…コロソマ・ソルジャーまでも!
それならアクションカードは…あった!このキノコのギミックを使って…跳ね飛ぶ!
――ポイーン!
「クラフトイ・マッド・ベアーで続けてコロソマ・ソルジャーに攻撃!」
――ぱすっ!
さっきあいつも使った『ボム・ソルジャー爆発』…っ!
違う、これじゃない…!
「引き裂け『マッド・シザークロー』!!」
――ズバッシャァァ!!
「うわぁぁぁぁぁっ…!!」
ブラン:LP2900→100
これで、ライフの残りがわずか100。
次のターン、凌がれでもしたら…間違いなくやられる!
「もう1度、オーバーレイユニットを使ってマッド・ベアーの効果発動!コロソマ・ソルジャーも装備カードとして頂くよ!『マッドネス・カスタマイズ』!!」
『ギヒャヒャヒャ!!』
クラフトイ・マッド・ベアー:ATK4100→4900 ORU1→0
ぐすっ…コロソマ・ソルジャーまでも無残にあのモンスターの装備に…!
よくも…こんな酷い、ことを…!
「あれあれっ、さっきまでの余裕はどこいったのかな?
それにこんなことで涙目になっちゃって…ぷーくすくす♪攻撃はこれでおしまいだけどね。
僕はカードを1枚伏せてターンエンド。だけど、これは次のターンで決まっちゃうかな?
ま、ここでマッド・ベアーの最初の効果とダブルフラワーの効果が切れるけどね。」
クラフトイ・マッド・ベアー:ATK4900→3600
――――――
Side:柚子
「ロブスター・カノンはブランが勇気ある一歩を踏み出せた証の1つ。ブランが生み出したペンデュラム召喚の象徴のうちの1体。」
「それがコロソマ・ソルジャーと共にあんな無残な姿にされてしまったからな。
結局のところブランとて繊細な女の子のはずだ。悔しいがあれで戦意を喪失してもおかしくはない。」
あれからブランは地面に這いつくばったまま帽子で顔を隠しちゃってる。
お父さんの言う通り、あれじゃもうブランは…今までの弱気で心が弱いブランに逆戻り。
今まで、無理をしてきたのがここで一気にきちゃったの?
「ブランお姉ちゃんが心にまでダメージを…!」
「やだよ…こんなのに負けないで、ブランお姉ちゃん!!」
「このままじゃ痺れられないぜ…!」
あれを見て子供たちもあんな不安な顔に…。
でも、あたしたちじゃ今はどうにもできない。
ねぇ、ブラン?彼らの顔を曇らせたままでいいの?
父を超えるエンタメデュエリストになるんじゃないの?
だからお願い、立ち上がって…!
「…ふふふ、はははははははは!!」
「え?」
…この笑い声は…え、ブラン?
ショックのあまりおかしくなっちゃったの?
彼も突然の事で呆気にとられてるわよ!?
「よくもまぁ、ここまでしてくれやがって…。
このお礼は…たっぷりとしなくちゃな!!さぁ、お楽しみはこれからだ!」
「そうこなくちゃ!」
前言撤回。
全然戦意喪失してなかったわね、ブラン。
それとその怖い顔だと『お楽しみはこれからだ』というセリフが違う意味に聞こえるんですけど!?
「ブランお姉ちゃん、よかった…!」
「やっちゃえー!」
「ちょっとやべぇ、お姉ちゃん目が笑ってねぇ!?」
あの子、大丈夫よね?
――――――
Side:ブラン
ふぅ…キツイもの見ちゃったけど、泣きたい時こそ笑い飛ばせば案外どうにでもなるものだな。
この言葉を教えてくれてありがとう、お父さん。
とはいえ、演出とはいえ人の大切なモノにこんな残酷な事をするなんてこれはちょっとお話が必要みたいだな。
さて、実のところ勝算は十分…問題は残る必要なカードの内1枚を引けるかだけどな。
とりあえず、このドローにかかっている。
あのクマのハリボテどもを懲らしめる一手を…引かなきゃな!!
「オレのターン…ドロォォォォォォォ!!」
ドローしたカードは…よし、十分いける。
「で、この状況をひっくりかえせるようなカードは引けたのかな?僕、楽しみだな!」
「まずは魔法カード『浮上』を発動し、墓地のザリガニカブトを守備表示で復活させる!」
ザリガニカブト:DEF900
「そして、場のザリガニカブトと手札の釣られアングラー――合計2体の水属性をリリース!
起動効果で手札から特殊召喚!逆境を切り裂け、氷水の剣閃!現れろ『甲殻剣聖クルヴ・ヤイバー』!!」
『ハァァッッ!!』
甲殻剣聖クルヴ・ヤイバー:ATK2100
「攻撃力3600のマッド・ベアーがいるのに攻撃力2100のこいつを出してきた…何かあるね。」
そうだ、攻撃力だけで判断されては困る。
「クルヴ・ヤイバーはこの効果で特殊召喚した時、墓地のレベル3以下の魚族…ここで釣られアングラーを手札に戻す。
さらに『釣られアングラー』が水属性の効果を発動するために墓地へ送られた場合、デッキから同名カードを特殊召喚できる!」
釣られアングラー:ATK600
「サルベージ効果があるんだ。でも、それじゃ僕のマッド・ベアーには勝てないよ?
ついでに言うと、他のクラフトイと違って自壊しないからさ。」
「誰がこれで終わりだといった?クルヴ・ヤイバーの本領はここからだ!」
「へぇ?」
というよりもさっきの効果はおまけに過ぎない。
本命の効果はここからだ!
「手札を1枚捨て、クルヴ・ヤイバーの更なる効果を発動!
このターン、相手の特殊召喚されたモンスター1体――クラフトイ・マッド・ベアーの効果を無効にする!
確か、装備カード化されたモンスターは装備元のモンスターの効果が無効になったら破壊されるんだったよな?」
「成程ね。それなら、アクションカードを見つけなきゃ…!」
狙いはそういうことだ!これでロブスター・カノン達は返してもらうぜ!
それを阻止するためにアクションカードを拾おうとしてるのだろうけど、そうはいくか!
立ちふさがれ、クルヴ・ヤイバー!
――シュゥゥン!
「くっ、邪魔だな!!」
アクションデュエルではモンスターを使って相手のアクションカード奪取を邪魔することだってできる。
これはクルヴ・ヤイバーの素早さを生かした戦法でもあるんだ。
ちなみに捨てたカードは前のターンに拾ったアクションカードだ。
「まずはマッド・ベアーを黙らせてやる!喰らえ『ハーゲル・シュトラール』!!」
――シュパァァァァ!!
『グォォォォォォォ!!』
クラフトイ・マッド・ベアー:ATK3600→2000
「やった!これであの怖いクマが弱体化した!」
「これは、やってくれるじゃないか…!!」
「これでマッド・ベアーの装備は解除され、ロブスター・カノンはエクストラデッキに送られた。
ここでシュテルアーム・ロブスターのペンデュラム効果で自身のペンデュラムスケールを8にする!」
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール8
ちなみにシュテルアーム・ロブスターのペンデュラム効果の水族しか特殊召喚できないデメリットは発動後の効果扱い。
発動する前なら魚族の釣られアングラーを特殊召喚しようとも関係ない。
「よし、一時はどうなるかと思ったけどブランの流れに戻ってきた!」
「お姉ちゃん、いっけえぇぇぇぇぇ!!」
ああ、アユちゃんやみんなからの声援には応えなくちゃな!
「いくぜ、ペンデュラム召喚!!エクストラデッキから甦り、憎きクマもどきをぶちのめせ!『甲殻砲士ロブスター・カノン』!!」
『ハァァァァァッ!!』
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200 forEX
「ペンデュラム召喚は手札からいっぱいモンスターを出すだけには留まらない…か。」
「このしぶとさこそペンデュラムの真骨頂だ。バトル!ロブスター・カノンでクラフトイ・マッド・ベアーに攻撃!!」
さあ、ロブスター・カノン。
まずは一度は無残な姿にされたリベンジを果たすぜ!!
「けど、それじゃ僕は倒せないよ!罠発動『クラフトマイン』!
相手がクラフトイのモンスターに攻撃してきた時、その相手モンスターを破壊しその攻撃力分のダメージを与える!これで返り討ちだ!」
「しまった!これでオレのライフは…なんてな!ここでロブスター・シャークのペンデュラム効果!オレの場の水族の上級モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊できる!」
今まで使ってなかったけど、こいつのペンデュラム効果も中々優秀だ。
知ってる相手には警戒されるけど、初見だと呆気にとられることは間違いないからな。
「身代わりだって?さっきは温存していたのか!あはは、こういう予想外があるから面白んだけどね!」
気付いたか。ロブスター・カノンの戦闘破壊時はペンデュラムモンスターの性質もあって温存してたんだ。
実際、マッド・ベアーのあの効果は知らなかったからな。
まさか、あんな残酷なものを見せられるとは思わなかった。
でも、ここ一番の時に温存していて正解だったようだな!
「よって、ロブスター・カノンは破壊されず戦闘は続行される!ここで罠発動『オマール・ガントレット』!!
このカードはオレの甲殻モンスターの装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力を700アップする!これをロブスター・カノンに装備!喰らえ『キャノンポッド・クラッシャー』!!」
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200→2900
――ドガァァァァッ!!
「うわぁぁぁっ!!」
里久:LP3300→2400
「さらに、オマール・ガントレットを装備したモンスターが戦闘で破壊したモンスターはデッキに戻る!」
「あちゃ…マッド・ベアーにはもう1つ効果があったけど、デッキに戻されたんじゃ使えないね。
でも、手札にはこのカードがまだあるよ。手札から『クラフトイ・クレイン』の効果を発動。」
そういえば、あいつの手札にはクラフトイ・クレインがあったんだ。
これじゃ、このターンでライフを削り切れない…とでも思っているのか?
それも対処する算段は既についているんだ!
それとごめん、ロブスター・カノン。
「その発動に対し、ロブスター・カノンをリリースしてカウンター罠発動『ヴァッサー・シュラーク』!!
オレのターンに発動した相手のモンスター効果・魔法・罠カードの発動を無効にし破壊!その後、相手の手札をランダムに1枚デッキに戻す!!渾身の一撃を喰らいやがれ!!」
――バガァァァァン!!
「よし、これで厄介なクレインを処理できたわけだ。
さらにオマール・ガントレットが墓地へ送られた事でデッキから『甲殻』モンスター1体を手札に加える。
ここで手札に加えるのは…『甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター』だ。」
「こんなカウンターまで伏せていたなんて!すごい、すごいよ師匠…いいや、ブラン!!」
ここにきて呼び捨てかよ!…ま、師匠呼びされなくなっただけましか。
さて、アクションカードを取られる前に!
「続いて、釣られアングラーでダイレクトアタック!」
――ガブッ!
「くっ、このままじゃ…そうだ!!」
里久:LP2400→1800
「クルヴ・ヤイバーでトドメだ!こいつを喰らって頭を冷やしやがれ!!『フロッケ・ブリッツェン』!!」
ここでまたアクションカードを探そうと、クルヴ・ヤイバーの素早さには…!
「ひょいっと!!」
――パスッ!
「なっ!?」
マジかよ…モンスターの助けなしにクルヴ・ヤイバー以上の凄まじい速さでアクションカードを取りやがった!?
つまり、アクションカードの引き次第じゃまだ…!
「あちゃ…今回は僕の負けかな。」
「え…?」
――ズシャァァァァッ!!
「う、ぐ…うわぁぁぁぁ!!」
里久:LP1800→0
「やった、お姉ちゃんが勝った!」
「あはは…思ったより酷くなくてよかったわ。」
「だけどよ、ブランお姉ちゃんのあの顔…呆気にとられてるぜ。」
あれ…勝ったのか?
どうもアクションカードを使用しなかったのを見るに、攻撃を防げるようなカードじゃなかったということか。
ただ最後に見せたあの身体能力といい、彼からは何か得体のしれない恐ろしさというものを感じた。
それでも勝ちは勝ち…言うべきことはきっちり言っておかないと。
「想像以上にやるわね、危なかったわ。でも、約束覚えてるわよね?
それに、あのエクシーズモンスターは刺激が強すぎるからできればあの子たちの前では自重…」
「あー面白かった!ブランとのデュエル!!」
あの…人の話聞いてる、里久くん?
「でも、約束は約束だから弟子入りはやめた。でも、友だちになるならいいよね?」
「いや、あの…?」
「そうか、そうか!二人は友達になったのか!塾生の友達はまた塾生。どうだ、君?我が遊勝塾へ入らないか?」
あの…塾長?塾の勧誘をしても、入ってくれるとは…。
「いいよ!!こっちの方がLDSよりずーっと楽しそうだし♪」
「よっしゃー!そうとなれば早く入塾のための書類を持ってくるからとぉぉぉぉっ!!」
即答かよ!?まぁ、こっちの方が楽しそうと言われたのは塾生として素直に嬉しいわね。
それと塾長、あまり急ぐと危ないわ…。
「そういえば、LDSの生徒でもないのにエクシーズ召喚なんてどこで覚えたの?」
そう。エクシーズ召喚を使用した彼だけど、どこで覚えたかの出どころは気になるわ。
一般的な習得手段とされるLDS経由でない以上は特にね。
「え?エクシーズなんか僕が前にいたところじゃみんな当たり前のようにやってたけど?」
「マジで…?普通にやってたって、それ何処なの?」
「別にいいじゃん、そんな細かいことは。僕とブランは友達なんだしさ。」
すごく興味ある話だったけど、ぼかされちゃったか。
とするとあまり詮索するのはよくないか。
そして、その話に戻るのね。
「いや、まだ友達だなんて…まぁ、別に構わないけど。」
「よろしくね、ブラン。」
「…こちらこそ。」
結局、こうなっちゃったか。
これはまた、大変だけどより賑やかになりそうね。
得体がしれないとはいえ、エクシーズ使いと友達になれたのはいいのかも。
でも、残酷なデュエルとか色々と自重する様に言っておかないとね。
続く
登場カード補足
甲殻剣聖クルヴ・ヤイバー
効果モンスター
星6/水属性/水族/攻2100/守2100
「甲殻剣聖クルヴ・ヤイバー」の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが手札に存在する場合、手札と自分フィールドの水属性モンスターを1体ずつリリースして発動できる。
手札からこのカードを特殊召喚する。
(2):このカードの(1)の効果で特殊召喚に成功した場合に発動する。
自分の墓地の魚族・レベル3のモンスター1体を選んで手札に加える。
(3):手札を1枚墓地へ送り、相手フィールドの特殊召喚された効果モンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターの効果を無効にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
釣られアングラー
効果モンスター
星3/水属性/魚族/攻 600/守1200
「釣られアングラー」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
このカードはS素材にできない。
(1):このカードが水属性モンスターの効果を発動するために墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「釣られアングラー」1体を特殊召喚する。
クラフトイ・マッド・ベアー
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/地属性/悪魔族/攻2000/守1800
レベル4「クラフトイ」モンスター×2
(1):1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊し、このターンこのカードの攻撃力は1000アップする。
(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、そのダメージ計算後にこのカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
そのモンスターを攻撃力800アップの装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
(3):X召喚したこのカードが破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
デッキから「クラフトイ」カード1枚を手札に加える。
クラフトイ・プレーン
効果モンスター
星4/風属性/機械族/攻1700/守 0
「クラフトイ・プレーン」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードが攻撃対象となった場合、そのダメージステップ開始時に発動する。
このカードを破壊する。
(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
手札から「クラフトイ」モンスター1体を特殊召喚する。
クラフトイ・マジシャン
効果モンスター
星4/地属性/魔法使い族/攻1800/守 200
「クラフトイ・マジシャン」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードが攻撃対象となった場合、そのダメージステップ開始時に発動する。
このカードを破壊する。
(2):フィールドのこのカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「クラフトイ」魔法カード1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットする。
クラフトイ・クレイン
効果モンスター
星6/水属性/鳥獣族/攻 800/守2400
「クラフトイ・クレイン」の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードが攻撃対象となった場合、そのダメージステップ開始時に発動する。
このカードを破壊する。
(2):フィールドのこのカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「クラフトイ・クレイン」以外の「クラフトイ」カード1枚を手札に加える。
(3):自分が戦闘ダメージを受けた時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚し、受けたダメージの数値の半分だけ自分のLPを回復する。
クラフトイ・ラット
効果モンスター
星2/地属性/獣族/攻 600/守 200
「クラフトイ・ラット」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドのこのカードが攻撃対象となった場合、そのダメージステップ開始時に発動する。
このカードを破壊する。
(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、自分の墓地の「クラフトイ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。
オマール・ガントレット
通常罠
「オマール・ガントレット」の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「甲殻」モンスター1体を対象として発動できる。
このカードを攻撃力700アップの装備カード扱いとして、そのモンスターに装備する。
(2):装備モンスターが戦闘で破壊したモンスターは持ち主のデッキに戻る。
(3):フィールドの表側表示のこのカードが墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「甲殻」モンスター1体を手札に加える。
ヴァッサー・シュラーク
カウンター罠
(1):自分のターンに相手がモンスター効果・魔法・罠カードを発動した時、自分フィールドの「甲殻」モンスター1体をリリースして発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
その後、相手の手札をランダムに1枚選んで持ち主のデッキに戻す。
クラフトイ工作机
永続魔法
「クラフトイ工作机」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドの「クラフトイ」モンスターが効果で破壊された場合に発動できる。
デッキから「クラフトイ」モンスター1体を手札に加える。
クラフトイ工作キット
永続魔法
「クラフトイ工作キット」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できず、このカードの(1)の効果を発動するターン、自分は「クラフトイ」モンスターしか特殊召喚できない。
(1):自分フィールドの「クラフトイ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターのレベルを2つまたは4つ上げる。
(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「クラフトイ」モンスター1体を手札に加える。
クラフトマイン
通常罠
(1):相手モンスターが自分フィールドの「クラフトイ」モンスターに攻撃宣言した時、攻撃モンスター1体を対象として発動できる。
攻撃モンスター1体を破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
ボム・ソルジャー爆発
アクション魔法
(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
ダブルフラワー
アクション魔法
このカードを発動するターン、対象のモンスター以外のモンスターは攻撃宣言できない。
(1):自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターの攻撃力は300アップし、一度のバトルフェイズに2回攻撃できる。