ブラン:LP4000
沢渡:LP4000



Side:ブラン


いよいよ始まった舞網チャンピオンシップ。
その1日目のラストにオレはジュニアユース選手権における遊勝塾所属の生徒としての先陣を切る事になったわ。

オレの相手は沢渡シンゴ…ある経緯で少なくとも2枚のペンデュラムカードを所持しているはずのLDS所属の男だ。
逆恨みされているとはいえ、数少ないペンデュラムの使い手のはず…相手にとって不足はないわ。
1日目の最後をかざるこのデュエル…勝ち負け以前に楽しまなきゃ。
そして、エンタメデュエリストらしく会場を大いに盛り上げないとならないわね。

で、今回は沢渡の先攻みたいね。


「先攻は頂くぜ、俺のターン!
 さて、沢渡シンゴによる伝説のリベンジデュエルの幕開けだ!
 俺はスケール4の『魔術師竜オッドアイズ・キャスト・ドラゴン』とスケール8の『時読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」
魔術師竜オッドアイズ・キャスト・ドラゴン:Pスケール4
時読みの魔術師:Pスケール8



いきなりかよ!
やっぱり、新しいペンデュラムカードを手に入れていたのね!
とはいえ、もう片方は時読み…初っ端からわくわくさせてくれるじゃない。


嘘でしょ!?

「これは…まさか!しかも使ってるのが榊じゃない!」

『ななな、なんと!?沢渡選手がペンデュラムスケールを揃えてきたぞ!』


そりゃ、観客やニコも驚くわよね。
オレじゃなくて、相手の方がペンデュラムを使うのだから。
そういえば、オレ以外がペンデュラムを公の場で使うのは初めてなのよね。
でも、これでペンデュラムの存在がより認知されると思うと悪い気分じゃないわ。


「やっぱり手に入れていたのね…新しいペンデュラムカードを。」

「当然だろ?ユーヤ君…これでレベル5から7のモンスターが同時に召喚可能!
 ペンデュラム召喚!手札からまずはこいつだ、レベル5『星読みの魔術師』!」

『ハァァァッ!』
星読みの魔術師:DEF2400


まずは守備力2400のこいつか…地味に厄介な壁だけど、何か仕掛けてきそうね。


『おおーっと、まずは沢渡選手がペンデュラム召喚をやってくれました!
 まずは様子見と言うべきか、守備力2400の上級モンスターを出してきました!
 しかも、よく見れば榊選手がストロング石島戦で使ってきた2体のモンスターでもある!
 これは一体何がどうなっているのか!』



あ、やっぱり気付いちゃったか。
流石にストロング石島のマネージャーもやっていただけあって抜け目ないわね。


「どうしてブランお姉ちゃんが持ってたはずのペンデュラムを沢渡が持ってるんだ…?」

「確か、光焔ねねの説得で返してもらったはずなのに…!」

「ああ、それね…なんというか、ブランが血迷ったからよ。」

「言わなかったのは悪かったけど、蒸し返さないで。」


柚子…血迷ったなんて酷い事言わないでくれるかしら。
実際、沢渡が持ってたあのカードは喉から手が出るほど欲しかったカードなのよ。
反省はしてるけど、後悔はしていないわ。
相性が悪くて手放してしまったカードだけど、別の人が愛用してくれればそれはカードにとって幸せなものだと思うからね。
こんな事言ったところで言い訳乙ですね、すみませんでした。










超次元ゲイム ARC-V 第26話
Master of Pendulum』










Side:零児


「ペンデュラムエネルギー検知、フィジカルイメージ正常、パワーバランス・質量ともに安定。
 まだ本格的な動きはないですが、成功です。」

「そうか、だが本番はここからだ。」


ペンデュラムの導入に熱心な沢渡シンゴをテスターに引き込んでおいて正解だった。
彼がユーヤ・B・榊に一度は返したはずのオリジナルのペンデュラムカード2枚を何故持っているのかは兎も角、そのお蔭で安定したペンデュラムの開発が上手くいっている。

だが、本番はここからだ。
彼にはこちらが渡した数枚のレオ・コーポレーション製のペンデュラムカードの力を引き出してもらわねば。
その上で彼女に、ペンデュラムのその先を見せてもらわねばな。

そして、何より観衆にペンデュラム召喚の実在を認知させる事…これが最重要だ。
いずれくるであろう、レオ・コーポレーション製のペンデュラムカードの流通…来るべきその日のためにもな。
期待しているぞ、沢渡シンゴ…そして、ペンデュラムの開祖…ユーヤ・B・榊。








――――――








Side:ブラン


「すげぇ、ネオ・ニュー沢渡…!」

「いや、まだまだこんなもんじゃねぇよ。」

「というか、沢渡がペンデュラムカードを持ってるってことは俺たちが手に入る日も割と近いんじゃね?」


確かにペンデュラム召喚したと言ってもまだ1体だけ。
本領はこれからだろう。


「そして、オッドアイズのペンデュラム効果を発動!
 魔術師のペンデュラムモンスターのみがペンデュラム召喚に成功した時、自らを破壊してレベル4以下の魔術師のペンデュラムカード1枚を手札に加える。
 これによりオッドアイズは破壊され、代わりに手札に加えるのは『慧眼の魔術師』だ!」


またオレの知らないペンデュラムカードを…これで何をするつもりだろう?


「そして、スケール5の『慧眼の魔術師』をペンデュラムゾーンにセッティング!」
慧眼の魔術師:Pスケール5


「慧眼の魔術師のペンデュラム効果を発動!
 もう片方に魔術師のペンデュラムカードがある時、このカードを破壊して別の『魔術師』をペンデュラムゾーンに置く。
 これにより、スケール2の『賤竜の魔術師』をペンデュラムゾーンにセッティング!」
賤竜の魔術師:Pスケール2


またしても新たなペンデュラムカードか…スケール2というのも優秀だが?


「そして賤竜の魔術師のペンデュラム効果も発動させてもらおうか。
 もう片方のペンデュラムゾーンに魔術師があるため、エクストラデッキの表側表示の『魔術師』か『オッドアイズ』1体を手札に戻すぜ。
 これにより手札に戻すのは…『魔術師竜オッドアイズ・キャスト・ドラゴン』だ。」


回した挙句、さっきエクストラデッキに行ったオッドアイズを手札に戻してきた。
嫌な予感がするのは気のせいではないと思う。


「まだ序盤も序盤だ、お楽しみはこれからだぜ?
 オレはカードを2枚伏せてターンエンド…さて、今度はお前が魅せる番だぜ?」

『沢渡選手、ペンデュラムカードを回しつつ堅実な布陣でターンを終えた!
 さらに、相手の決め台詞を言うなど榊選手を刺激してきました!』


沢渡は通常召喚しないままターンを終えたみたいね。
オッドアイズを手札に戻しつつ、伏せたカードが気になるところだけど今度はこっちの番か。


「そう言われたら応えないわけにはいかないじゃない…オレのターン、ドロー!
 オレは手札から魔法カード『シーフード・カーニバル』を発動!
 手札の水族・攻撃力1000以下の通常モンスターのカニカブトを墓地へ送り、デッキから2枚ドロー!
 そして、手札からチューナーモンスター『エビカブト』を召喚!」
エビカブト:ATK550


「エビカブト使ってるの見た事あるけど…?」

「チューナーって…?」


確かにエビカブトをチューナーとして使ったのは確か権現坂にしか見せてないわね。
オレがペンデュラムしか能がないと思っていたら大間違いよ。


「エビカブトが召喚した時、墓地の『カニカブト』1体を特殊召喚できる。
 そして、スケール4の『甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター』をペンデュラムゾーンにセッティング!」
カニカブト:DEF900
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:Pスケール4



一先ず、ここで観客を少しだけ沸かせてみましょうか。


「おいおい、ペンデュラムカードは2枚セットしなきゃペンデュラム召喚はできないぜ?」

「そんな事は百も承知、セッティングした目的は別にあるわ。
 それよりも、5連戦の成果の1つ…まずはそれを見せてあげる!
 オレはレベル3のカニカブトに同じくレベル3のエビカブトをチューニング!」

「まさか!?」


そのまさかよ、今オレが行うのはシンクロ召喚だ。
もっともレベル6のシンクロは初だけれどもね。


「シンクロ召喚!現れろ、レベル6!命を操る水の槍術師『ガリデス・ギルマン』!!」

『ハァァァッ!』
ガリデス・ギルマン:ATK1600



「本当にシンクロ召喚できるようになっていたのか…」

「だが、シンクロで出したにしては攻撃力が低いようだな。」


これはどちらかといえば潤滑剤的な役割だし、元々の攻撃力は低くて当然よ。
本格的に動くのはここからよ。


「エクストラから水族が特殊召喚された事でオッドシェルのペンデュラム効果を発動!
 自らを破壊し、デッキから『シュテルアーム・ロブスター』を手札に加える。
 続いて、シンクロ召喚した事でデッキから水族か魚族1体を墓地へ送ってガリデス・ギルマンの効果を発動!
 ターン終了時まで発動時に墓地へ送ったモンスターのレベルの100倍だけ攻撃力をアップする!
 墓地へ送ったモンスターはレベル8の『甲殻剣豪スピニー・ブレード』…よって攻撃力は800アップ!」
ガリデス・ギルマン:ATK1600→2400


「いつの間にシンクロ召喚を会得した上に、それをペンデュラムに応用してきたか…!
 だが、これでもまだ俺の星読みの守備力には届かないぜ?」

「本命は効果のコストで墓地送りする事よ。
 ガリデス・ギルマンの効果で墓地へ送られた『甲殻剣豪スピニー・ブレード』の効果でデッキから1枚ドロー!」

『おおーっと、ブラン選手…ここまでで手札消費を実質0に抑えつつエクストラと墓地を肥やしていきます!
 ペンデュラムゾーンをも利用し、流れるようなコンボを魅せてくれます!』



ここまで手札の消費が実質なしで動けているのがいいわね。
それじゃ、沢渡に先を越されたけど皆さんお待ちかねのアレといきましょうか。


「それじゃ、行きます!オレはスケール2の『ロブスター・シャーク』にスケール5の『シュテルアーム・ロブスター』でペンデュラムスケールをセッティング!
 もう片方にロブスターがあるため、シュテルアームのペンデュラム効果で自らのスケールを8にする!」
ロブスター・シャーク:Pスケール2
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5→8


「これでレベル3から7のモンスターが同時に召喚可能!
 揺れろ、魂のペンデュラム!天界に架かれ、流星のビヴロスト!ペンデュラム召喚!来て、オレのモンスターたち!
 手札からレベル6『甲殻砲士ロブスター・カノン』!エクストラデッキからレベル7『甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター』!!」

『フゥゥッ!』
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200

『ウォォォォォッ!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500 forEX



「おっ…榊の奴、シンクロに続いてペンデュラム召喚を!」

「上級レベルのモンスター…それも一気に2体も!」

「それがいずれ俺たちも使えるようになる日がくるんだろうなと思うとわくわくするぜ。」


オレじゃなくてもペンデュラムが使える事は沢渡が証明済みだからね…鬼畜眼鏡、もとい赤馬零児もだけど。
とりあえず、知らなかった観客にペンデュラム召喚の魅力を伝えられそうね。
この調子でペンデュラムが流行ってくれれば、開祖であるオレも胸が張れるというものよ。


「さてと、ペンデュラム召喚された甲殻砲士ロブスター・カノンの効果を発動!
 こいつが手札から召喚またはペンデュラム召喚に成功した時、相手の特殊召喚されたモンスターを破壊しデッキに戻す!
 この効果で『星読みの魔術師』をデッキまで吹き飛ばす!『ハイドロ・ブラスター・カノン』!」

「そうか、デッキまで吹き飛ばせばペンデュラムのゾンビみたいな特性も発揮されない!」


そういう事。
だけど、沢渡だって見てるはずだし…これで倒せるほど甘くはなさそうね。


「おっと、その手を喰らうわけにはいかないな?
 この瞬間、星読みの魔術師をリリースして速攻魔法『エスケープ・マジック』を発動!
 リリースしたモンスターより守備力の高い魔法使い族モンスター1体をデッキから特殊召喚するぜ。
 これにより特殊召喚するのは守備力2500の『法眼の魔術師』だ!」

『フッ…!』
法眼の魔術師:DEF2500



成程…リリースエスケープか、やってくれるわね。
しかも出てきたモンスターの守備力は2500…このままじゃオッドシェルでも倒せないか。
それなら、アクションカードで…!


――ぱすっ!


「おっと、ユーヤ君のお目当てのものはこれかな?」

「…やられたわね。」


ここで沢渡の手には1枚のアクションカードが握られていた。
これでこのターン、オレはアクションカードを取れなくなっちゃったわね。
自分が受けている立場だけど、こうして相手の取らせないようにすることも駆け引きの一つよ。


「ま…運悪くアクショントラップ『マジカル・アクシデント』を引いてしまったから、お互い500ダメージを受けるが…ぐえっ!」
沢渡:LP4000→3500


「…オレにまで飛び火するのね、アクショントラップなのに。」
ブラン:LP4000→3500


っと、ここのアクショントラップの確率はあまり高くないはずなのに引いてしまったのね。
なんというか沢渡らしいけど、地味にオレも巻き込まれているというね。


「この大会からアクションカードは1ターンに1枚、どちらか1人しか拾う事ができなくなったからこのターンはもう拾えないぜ?

「当然、ご存知よ…アクショントラップを引いてなお、目的は果たしたわけね。」

『肉を切らせて骨は守る!アクショントラップを引いてなお、榊選手によるアクションカードの奪取を阻止した沢渡選手…実にお見事!』

「沢渡なんかにしてやられて、ブランってばもう!


アクショントラップだろうとアクションカードなのだからね。
本当にアクションデュエルの駆け引きがより面白くなったわね。
法眼を倒せるようなアクションカードを引いていたら、このターンで沢渡を倒せた可能性もあったからね。
例え自分に不利益なアクショントラップでも、取る事で相手の動きを抑制できる可能性がある事を証明してくれたわ。


「そういう事さ…さて、どうするんだい?」


実際、このターンで法眼を処理する事はこの手札じゃできない。
まだ始まったばかりだし、焦る必要はないけどね。
だけど、できる事はやっておかなくちゃね。


「できる事はやるわ。ここでオッドシェルをリリースし、ガリデス・ギルマンのもう1つの効果を発動!
 墓地から水属性モンスター1体を守備表示で効果を無効にして特殊召喚する!
 これで甦らせるのは『甲殻剣豪スピニー・ブレード』よ。『デプス・リンカーネイション』!!」

『フゥッ…!』
甲殻剣豪スピニー・ブレード:DEF2200(効果無効)


ちなみに発動条件は自身以外の水属性1体をリリースする事。
攻撃力が中途半端になる自らをリリースできないのが玉に瑕なのよね。
とはいえ、これでペンデュラムモンスターをあらかじめエクストラに逃がせるのは悪くない。


「成程、自らのエースをエクストラデッキに逃がしたわけだな?」

「流石にペンデュラム使いにはバレるわね…ターンエンドよ。」
ガリデス・ギルマン:ATK2400→1600
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール8→5



「ならば…俺のターン、ドロー!さて、今度は俺に観客が注目する番だぜ?
 セッティング済みのスケールでペンデュラム召喚!
 エクストラデッキから現れよ、レベル4『慧眼の魔術師』!そしてレベル5『星読みの魔術師』!!」

慧眼の魔術師:ATK1500 forEX
星読みの魔術師:DEF2400 forEX



まずはここでペンデュラム召喚してきた。
でも、手札に戻ったはずのオッドアイズがペンデュラム召喚されていない?
よく考えれば、前のターンで手札に戻さなくても出せたはずだから…怪しいわね。


「あなたのオッドアイズのレベルは7…スケールの範囲内なのにペンデュラム召喚しないなんて、何かあるわね。」

「ご名答、流石だユーヤ君。
 生憎手札にあるオッドアイズはペンデュラム召喚じゃ真価を発揮できないモンスターでね。」


やはりあえてしなかったみたい。
しかも、通常召喚権は残っている…という事は恐らく!


「こいつの真価を発揮させるにはこうするんだ!
 俺は星読みの魔術師と慧眼の魔術師の2体をリリースし、アドバンス召喚!
 魔術極めし神秘の竜よ、烈風と共にその気高き姿を現せ!いでよ、レベル7『魔術師竜オッドアイズ・キャスト・ドラゴン』!!」

『ガァァァァァァァッ!!!』
魔術師竜オッドアイズ・キャスト・ドラゴン:ATK2400



敢えてのアドバンス召喚!?

「いったい何を仕掛けてくる…?」


成程、アドバンス召喚と来たみたいね。
ペンデュラムと相性はいいのだけど、いったい何が起きるというのかしら?


「ここで、オッドアイズ・キャスト・ドラゴンの超絶効果を発動!
 このカードが魔術師のペンデュラム2体をリリースしてアドバンス召喚に成功した時、お前の場の表側表示のカードを全て手札に戻すぜ!」

「何っはあっ!?」


なんて効果だ…特定のモンスター2体をリリースして出すと、オレの場の表側カードを全て手札に戻すだって!?
だけど…戻したところで場が空くだけで次のターンは盤面を戻せるはず。
シンクロモンスターのガリデス・ギルマンも正直エクストラに戻してくれた方がいいし。


「だけど、それじゃ…」

表側カードを手札に戻されたところで次のターンにはまた展開できるから大丈夫とか思ってるのだろうが、慌てるなよ。
 お楽しみはこれからだぜ、ペンデュラムがお前を敗北に導くんだからな!
 この効果にチェーンして永続罠『魔術の眩暈風』を発動!」

「効果にチェーンして永続罠…それにペンデュラムがオレを敗北に導くだって!?」

「決め台詞をまた奪ったのは置いといても、ペンデュラムがブランに敗北を導くって!?」


ペンデュラムが云々のこの言葉…はったりとは思えない。
一体どんな効果を持っているというのかしら?


「魔術の眩暈風は俺の場にレベル5以上の『魔術師』ペンデュラムがいる場合のみ発動できる。
 そして、俺の場にこのカードとペンデュラムゾーンの魔術師がある時、魔術師ペンデュラム以外のカードが手札に戻る場合、代わりにデッキへと戻すのさ!

「うげっ、手札バウンスをデッキバウンスに変えるだって!?」

「つまり、ペンデュラムカードを含めて5枚のカードがデッキに戻っちゃう!」


つまり、フィールドアドバンテージどころか…全体のアドバンテージを根こそぎもってかれてしまう!
これを止める手段は今のオレにはない。
だったら、あそこにあるアクションカードを…!?


――ビュゥゥゥゥン!!


「ああっ!」


アクションカードがオッドアイズが巻き起こしてる風に吹き飛ばされた!


「おやおや、頼みの綱のアクションカードも吹き飛ばされて取れないみたいだね?
 ペンデュラムカードは維持できればゾンビみたいな持久力を得られるけど、デッキに吹き飛ばされちゃ大損だからな。
 そういうわけでお前の5枚のカードには退場して貰うぜ!!『マジカル・ロスト・トルネード』!!」


――ビュオォォォォォォォ!!


「バイバイ…甲殻類どもの巣穴は駆除させてもらったぜ。」

「っ…!」

「ブランのフィールドががら空きに…!」


これは非常に痛い…ペンデュラムカードを含めて一気にカードアドバンテージを持ってかれてしまった!
ペンデュラムは手札消費が激しく、全体デッキバウンスにあまりにも弱い弱点を突かれた形になる。
これにより、これからは厳しい戦いを強いられてしまうわね。


「あはは…最初からペンデュラムカードを含めたオレの場のカードを全てデッキに戻す事が狙いだったのね。」

「その通り、破壊されても蘇るゾンビじみたものでもデッキに戻ってしまえさえすれば怖くないからな。
 それはお前も最初から分かっていたよな?だから、眩暈風に誘ってデッキに戻したわけだ。」

「…!」

「しかも、眩暈風にはもう1つ、お前のターンに魔術師ペンデュラムを1体手札に戻す事もできるんだぜ?
 つまり、ペンデュラム召喚から表側全バウンスを毎ターン繰り返す事が出来る!
 これぞ、沢渡レジェンドコンボ…マジカル・ロスト・トルネードだ!」


つまり、これを恒久的に続けられてしまうという恐ろしいコンボが完成したわけだ。
コンボ名はダサいけど、ペンデュラムのみならず大半のデッキに対して非常に有効打…!
勿論、ペンデュラムに対する対抗策としてもあまりにも有用…思っていたよりもとんでもない事をしてくれたわね。


「これで榊のペンデュラムも怖くないってわけだな。」

「沢渡のくせに恐ろしい事やるじゃねぇか。」

「もっとも、コンボのネーミングは最低ランクですわ。」


いや、LDSの各召喚コースのエースの3人からは手厳しい事を言われた沢渡だけど。
もう既に追い越してるような気が…するのは気のせいかしら?

あ、あそこにさっき飛んだアクションカードがあった。
沢渡が余裕見せてる今のうちにくすねなきゃね。


――ぴろっ…!


これは…今は役に立たなそうね。
でも、ないよりはマシ。


「さてと、法眼の魔術師を攻撃表示に変更し…」
法眼の魔術師:DEF2500→2000


「伝説を生む男…このネオ・ニュー沢渡が華麗にフィニッシュを決めるぜ!
 バトル!オッドアイズ・キャスト・ドラゴンで攻撃!」


だけど、攻撃はそう簡単に通さない!
状況は悪くても、まだまだ戦えないわけじゃない以上…諦めるもんか!
あ、アクションカードはこの状況じゃ役に立たないからこっちよ。


「そう簡単にやらせない!直接攻撃宣言時に手札の『イージス・キャンサー』を自らの効果で特殊召喚!」
イージス・キャンサー:DEF1600


「ちっ、流石に防いでくるか…だったら、まずはそいつを蹴散らせ!『螺旋のブラスト・ハリケーン』!!」


――ビュオォオォォォォ!!


「イージス・キャンサーのもう1つの効果を発動!
 デュエル中1度だけ、手札の水属性モンスターを1枚捨てる事で、このターンは戦闘破壊されない!」

そんな効果もあったのか!
 このターン中戦闘破壊されないとは、面倒な事やってくれるぜ。
 という事は法眼で攻撃しても無駄か…このターンは命拾いしたな。」


これで法眼の攻撃も防げるのが大きいわ。
もっともこれはデュエル中1度しか使えないから、これターン以降はこれで防ぐことはできない。
だけど…手札を捨てたのはもう1つ目的があるわ。


「それだけじゃないわ、手札から捨てられた『ザリガニカブト』の効果でデッキから『カニカブト』と『ザリガン』を1体ずつ手札に加えるわ。」

「しかも、弱小モンスターとはいえ手札を増やされちまったわけか。」


手札に加えたのは確かに低いステータスの効果もないモンスター。
だけど、手札の枚数を水増しするだけでなく、デッキも圧縮させてもらったわ。


『榊選手、この攻勢はなんとかしのげました。
 ですが、デュエル中に1度しか使用できないイージスキャンサーの耐性効果を切ってしまいました!
 手札は4枚…うち1枚がアクションカードで2枚が低攻撃力の通常モンスターと依然としてピンチには変わりありません!
 果たして、ここから盛り返す事ができるのでしょうか!』


「まぁ、いい…いずれにしろ次の俺のターンで決めさせてもらうぜ?
 そういうわけで、どこまで足掻くか見せてもらうぜ。
 賤竜の魔術師のペンデュラム効果でエクストラデッキの『慧眼の魔術師』を手札に戻し、俺はこれでターンエンド。」








――――――








Side:柚子


「ペンデュラムとかが一気にデッキに戻された…!」

「どうなってしまうの…?」

「ブラン、どんな苦境に陥っても諦めるなー!熱血だ!」


沢渡がペンデュラムを持ってた事はブランから聞いていたけど…彼もまたペンデュラムの特性をうまく使いこなせているわ。
それに…あのすごくダサい名前のコンボも喰らったら大きな損失がもたらされてしまう。
そして、ブランは実際にそれを喰らってしまった。
ペンデュラムと言うのは手札の損失が大きいためにデッキバウンスは他のデッキより大きな被害を受けるわ。
このターンはなんとか凌げたけど、このカード差をひっくり返すのは困難と言わざるを得ないわ。
このままじゃ、ブランが負けちゃう可能性が高いわ……!
でも…!


「大丈夫ですよ、あの子は。」

「そうみたいね…だって……」


追い詰められているはずのブランが…微笑んでるのが見えたから。


「この状況に追い詰められてなお、今のブランの目は力強い。
 慌てず騒がず、最後まで信じて見守るんだ。」

「ええ、ブランの真価が試されるのはこれからだから。


この逆境の中でいかに逆転するかもエンタメデュエリストの腕の見せ所よね。
ブラン、ここから観客を沸かせて見せて…!








――――――








Side:零児


「これが社長の仰ったペンデュラム封じ…」

「ああ、ペンデュラムは手札に戻されようが破壊されようが、ペンデュラムスケールがある限り次のターンで復活できるのが最大の強み。
 ならば、対策としては先ほど沢渡がしたようにデッキに戻せばいいというわけだ…。」


もっとも、デッキバウンスは他の展開を重視するデッキにとってみても大きな痛手だ。
そして、ペンデュラム主体のデッキにはより刺さる。

現状、沢渡シンゴはこちらが渡したペンデュラムカードを上手く使いこなしている。
これにより、世間へのペンデュラムの認知も上手くいっている事だろう。

そして、こちらの目論見通りにユーヤ・B・榊のペンデュラム含めた表側表示のカードをデッキに戻し、彼女に大きな損失を齎す事に成功したわけだ。
私としては彼女の成長を見たいのでな…追い込まれれば追い込まれる程に真価を試されるわけだ。
彼女が仮に大して成長できていないのであれば…今ので彼女の心は容易く折れていただろう。
だが、今の彼女はこの状況の中でも前を見据え『笑顔でいる』のが伺える。

ペンデュラム召喚のその先は未だ見せていないとはいえ、シンクロ召喚を体得している事は確認できた。
私の見込み通りなら…このデュエルで『ペンデュラム召喚のその先』を見せてくれるはずだ。
期待しているぞ、ユーヤ・B・榊。








――――――








Side:ブラン


手札は水増しできたけど、うち2枚は低レベルの通常モンスター。
後は、使いどころがよくわからないアクション魔法と水属性1体のみ。
完全に追い詰められているわね。
だけど、なんだろう…だからこそ逆に燃えてくるじゃない。


「さて、次のターン…決着と行こうじゃないか。」

決着?馬鹿言わないで…お楽しみはこれからでしょ?
 むしろ、ここからがエンタメデュエリストの腕の見せ所じゃない…オレのターン、ドロー!」

「ほう?いいぜ、お前のあがきに最後まで付き合ってやろうじゃねぇか。


そうこなくちゃね。
さてと、この状況で最高のカードが来てくれたわね。


「まずは手札から魔法カード『強欲なウツボ』を発動!
 手札の水属性2体…ザリガンとカニカブトの2体をデッキに戻しシャッフル!
 そして、デッキから3枚ドロー!」

「ほう?この状況でそのカードを使ってくるか。
 これで手札の質がだいぶよくなったようだな。」


さてと…ドローしたカードはこれね。
これが来たならここはこいつで耐えてみようじゃない。


「オレは手札から『コロソマ・ソルジャー』を召喚!」
コロソマ・ソルジャー:ATK1300


「コロソマ・ソルジャーが召喚した時、手札の水族か魚族1体を捨てて1枚ドロー!
 そして、水属性のコストで墓地へ送られた『甲殻剣豪スピニー・ブレード』の効果でもう1枚ドロー!」

「まだ手札を稼いでくるか…!」


そう…できる限り、次々とドローさせてもらうわ。
さて、ここでレベル3のモンスターが2体揃った。


「それだけじゃないわ…オレはレベル3のイージス・キャンサーとコロソマ・ソルジャーでオーバーレイ!
 強かな心を強固な鎧に秘め、ここに見参!エクシーズ召喚!ランク3『ハードシェル・クラブ』!!」

『フンッ…!!』
ハードシェル・クラブ:DEF2100 ORU2



「おおっ、ブランがエクシーズ召喚したね。」

「確かあのモンスターは破壊耐性はあったけど、バウンスには耐性なかったはずだよ?」

「でも、ここはブランを信じましょ?」


その通り、ハードシェル・クラブはバウンスには無力。
でも、手札にあのカードを握れたから出しておくわ。
仮にバウンスされたとしても、素材は墓地へいく…だからここは惜しまず行く。


「今度はエクシーズ召喚と来たか…だが、いくら堅いモンスターを出しても俺のオッドアイズで戻すだけさ。」

「ふふっ、そう上手くいくかしら?
 オレはカードを2枚伏せてターンエンドよ。」

「ここで永続罠『魔術の眩暈風』のもう1つの効果をオッドアイズを対象に発動!
 こいつを手札に戻させてもらうぜ。」


魔術の眩暈風でまたオッドアイズを使いまわすみたいね。
魔術の眩暈風は魔術師ペンデュラム以外のカードへの手札バウンスをデッキバウンスにするだけじゃなく…あっ。
そしてこのアクションカード…ふふ、思わぬところから突破口が見えたわ。
その効果、今度はこちらが利用する番よ!


「閃いた!その『魔術の眩暈風』…逆に利用させてもらうわ!
 この瞬間、手札からアクションマジック『イリュージョン・トランス』を発動!
 この効果であなたのオッドアイズの名称をこちらで勝手に変えさせてもらうわ。
 そうね…その子の名はただの『オッドアイズ・ドラゴン』よ。」

魔術師竜オッドアイズ・キャスト・ドラゴン→オッドアイズ・ドラゴン:ATK2400


「何をするかと思えば、名前を変えたところでどうにかできるのかい?」

「自分で発動した永続罠の効果をよく思い出しなさい。
 『魔術師』ペンデュラム以外のカードが手札に戻る場合、代わりにデッキに戻るという事を。

「それがどうした…って、しまった!

「ただのオッドアイズ・ドラゴンになったその竜はもう魔術師のペンデュラムじゃないわ。
 あなた自身が吹き寄せた眩暈風に導かれてデッキへ戻りなさい!」


――ビュゥゥゥゥゥ!!


「俺のオッドアイズが…逆にデッキに戻されただと!」

『おおーっと!今度は沢渡選手のエースモンスターが永続罠の効果を逆に利用されてデッキへ戻ってしまった!
 榊選手、逆境の中でのこの機転…実にお見事です!』


「ユーヤ・B・榊、意外とこういった小技でも魅せてくれるんだね…わくわく。」

「相手のカードを逆手にとっての見事な返しを決めてきたね。」


「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」」」」」」


よし、手ごたえあり!
もう少し気が付くのが遅れたら、こんな喝采は起こらなかったわね。
だけど、今のは自分でもエンタメデュエリストとしての成長を実感できた気がするわね。

もっとも、依然として状況が不利なことに変わりないけど。
次のターンの方こそ…本当の正念場ね。
このデュエル…プレイしている身としても本当に楽しい。














 続く 






登場カード補足






ガリデス・ギルマン
シンクロ・効果モンスター
星6/水属性/水族/攻1600/守1800
チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
「ガリデス・ギルマン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがS召喚に成功した時、デッキから魚族・水族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで、墓地へ送ったモンスターのレベル×100アップする。
(2):1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドの水属性モンスター1体をリリースして発動できる。
自分の墓地の水属性モンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効になる。



魔術師竜オッドアイズ・キャスト・ドラゴン
ペンデュラム・効果モンスター
星7/風属性/魔法使い族/攻2400/守1800
Pスケール「4:4」
(1):もう片方のPゾーンに「魔術師」カードが存在する場合に「魔術師」PモンスターのみがP召喚に成功した時に発動できる。
このカードを破壊し、デッキからレベル4以下の「魔術師」Pモンスター1体を手札に加える。
『モンスター効果』
(1):「魔術師」Pモンスター2体をリリースしてこのカードがアドバンス召喚に成功した時に発動できる。
相手フィールドの表側表示のカードを全て持ち主の手札に戻す。



エスケープ・マジック
速攻魔法
(1):自分フィールドの魔法使い族モンスター1体をリリースして発動できる。
リリースしたモンスターより守備力の高い魔法使い族モンスター1体をデッキから特殊召喚する。



魔術の眩暈風
永続罠
自分フィールドにレベル5以上の「魔術師」Pモンスターが存在する場合に発動できる。
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在し、自分のPゾーンに「魔術師」Pモンスターが存在する限り、「魔術師」Pモンスター以外のフィールドのカードが効果で手札に戻る場合、手札に戻らず持ち主のデッキに戻る。
(2):相手ターンに1度、自分フィールドの「魔術師」Pモンスター1体を対象としてこの効果を発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。



イリュージョン・トランス
アクション魔法
(1):フィールドの表側表示のモンスター1体を対象とし、モンスターカード名を1つ宣言して発動できる。
そのモンスターのカード名はこの効果で宣言したカード名になる。



マジカル・アクシデント
アクション罠
(1):お互いに500ダメージを受ける。