フトシ:LP900
らくがきじゅう−てらの:ATK3200


タケシ:LP2200


Side:柚子


今、あたしたちはジュニアユースの方を見に行ったブランを除いてジュニア選手権の観戦中よ。
ジュニア選手権は低年齢層に配慮してソリッドビジョンが柔らかくなっているわ。
ここでフトシ君のデュエルがまもなく決着がつきそうよ。


「バトルだ!てらのでダイレクトアタック!」


――ボヨォォォン!


「うわーっ、しびれたぁぁぁ!!」
タケシ:LP2200→0


やったわ、まずはフトシ君が見事に勝利を飾ったわね。
まずは遊勝塾の記念すべき一勝よ!これはジュニアクラスだけど。
前年度はロムというどこかブランに似た幼い少女の独断場で参加者の大半が泣いちゃったのだけど、今年はそんなことなさそうでよかった。


「やったぜ。」

「よくやった、まずは記念すべき一勝目だ。」

「ブランお姉ちゃんが見ていないのが残念だけどね。」

「さて、次はアユの番だ…がんばれよ、熱血だ!」

「うん!」


次は遊勝塾のもう一人の水族使いのアユちゃんの番ね。
ブランがペンデュラム召喚を利用した人海戦術を得意とするなら、アユちゃんは永続魔法を使っての強化を持ち味としているのよ。
見た目もブランがかっこいい甲殻類、アユちゃんはかわいらしい魚といった感じのね。
…なんというか、エンタメ的には後者の方が映えそうなのは気のせいだと思いたいわね。


「で、相手は…」

「LDSの子みたい…零羅って言う。」

「LDSだと!?よし、負けられなくなったな!」

「よし!チャージ完了!」


お父さん、LDSに対して強いライバル心と言うか敵対心持ってるよね。
主に塾が乗っ取られそうになったのが原因だけど。
ま、アユちゃんが気合十分ならそれでいいかな。

そういえば、やけに向こうの方が騒がしかったりしてるけど…何があったんだろう?
あっちはブランが見ているはずなのだけど…大丈夫かな?










超次元ゲイム ARC-V 第25話
『梁山爆破!』










Side:ブラン


「へくしゅん!」


あれ、風邪でもないのにどうしてくしゃみが…誰かに噂されたのかしらね?
まぁ、先ほどの試合は今のオレに驕りがあった事を思い知らされたわね。
北斗を破ったのは巨乳好きの変態と思われる弟と言うふざけた奴だったけど実力は確かだった。
あのような実力者がうじゃうじゃいると思っていた方がよさそうね。


『え〜、気を取り直して次の試合へいきましょう!』


おっと、次の試合が始まるようね。
まず出てきたのは…オレの友達かつライバルのねね。
そして、相手は…あの中華風の恰好と言えば悪名高き梁山泊塾の奴じゃねぇかよ。
しかも、前年度のジュニアユース準優勝者と言う…確か勝鬨勇雄だったわね。
ごめん、みんな…悪いけど、この試合も見ていく事になるわ。


『前年度準優勝者の梁山泊塾所属の勝鬨勇雄と、急激に頭角を見せて出場を決めたLDS所属の光焔ねねの試合を開始します!』

「LDSにもそんな子がいたなんてな…楽しみ。」

「光焔!梁山泊塾だか優勝候補だかなんだか知らねぇが、そんな奴に負けんじゃねぇぞ!」

「相手の動きを注意して見ておけば、あなたなら問題なくいけるはずよ。」


当たり前だけど、オレはねねの応援に回る。
沢渡の声も聞こえるけど、応援じゃ負ける気がしないわ。

一方、勝鬨の所属する梁山泊塾の面々の周りには人がおらず、観客からも引かれているのは明白。
塾の方針らしいとはいえ、リアルファイトじみた感じで相手が取ろうとしたアクションカードを横取りするような事を繰り返していればそうなるわ。
だけど、今回からアクションカードを取れるのは1ターンにどちらか一方のみ。
しかもアクショントラップが紛れ込んでいるのは継続されてるから、アクションカード頼りで行くと痛い目を見ると思うわ。
LDSに次ぐシェア2位(ルウィー教会はあくまで宗教団体のはず)らしいのだけど、彼らの化けの皮が剥がされると思うと楽しみね。
デュエルに笑顔は禁物と言う流儀を抱えているので、オレのポリシーとは真逆だし。

勝てばいいと言わんばかりに暴力じみた戦法など盤外戦術で手段を選ばない輩を、オレは絶対に認めない。
だから、ねね…この勝負絶対に勝って!


『さて、フィールド魔法発動!アクションフィールド『ボルケーノ・サンクチュアリ』!』


すると、辺り一面が火山の内部のような溶岩地帯となった。
オレが5連戦の中でねねとデュエルした時と同じフィールドね。


「ホワァー!」

「はぁ…あなたたち梁山泊塾のデュエルが手荒だという噂を聞いておりましたが、足癖の悪さから本当みたいですね。
 まぁいいでしょう…お互い、いいデュエルをしたいものですね。」

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が…」


いきなり蹴りで威嚇していたり、ねねの話をスルーして始めようとするなど会話が成立していないわね。
どうも皮肉めいた感じに言っているねねとの間に険悪な空気が伝わってくるわね。
なんというか、アレをデュエルで笑顔にするのは至難の業な印象を受ける。


「…モンスターと共に地を蹴り宙を舞い、フィールド内を駆け巡る。」

「見よ、これぞデュエルの最強進化系!」

『アクショォォォォォォン!』


「「デュエル!!」」


ねね:LP4000
勝鬨:Lp4000


――クイッ…



そしてデュエルが始まったのだけど、勝鬨はかかってこいとばかりにねねを挑発する。


「成程…先攻は譲るとみていいのですね?ありがとうございます。
 それでは参りましょう…わたしは手札から魔法カード『炎王の爆誕』を発動。
 これにより、手札・フィールドから融合素材となるモンスターを破壊して炎属性1体の融合召喚を行います。」


ねねの方も相手が相手だけに、いつもより言動に棘がある気がするわね。
そして、初っ端から融合召喚するのね。


「わたしが融合するのは手札の『炎王神獣 アイラーシャ』と『炎王獣 キンシ』!
 守護の聖獣よ、金色の鳶よ、焔渦巻き一つとなりて爆誕せよ!融合召喚!羽ばたけ、業火の凶鳥!レベル6『炎王魔獣 イグニクス』!!」


――ドォォォォォン!!


『キィィィィィィィ!!』
炎王魔獣 イグニクス:ATK2100



まずはイグニクスで牽制しに来たわね。
相手にとってはまずはこいつをどうにかしないとならない。
自分にモンスターがいる状態で破壊したら手痛い一撃を喰らうからね。


「そして、キンシが効果で破壊された事で…あなたにはまず500のダメージを受けていただきましょうか。」

「む…」
勝鬨:LP4000→3500


『素材モンスターを破壊しての融合召喚により、まずは光焔ねねが先制ダメージを与えました!
 この先制攻撃が後で響いてくるでしょう!』



この500の効果ダメージは序盤では影響は少ないだろうけど、この一撃が勝敗を分けかねない事もある。


「続いてイグニクスの効果を発動…手札の『炎王獣 ヨウコ』を破壊して1枚ドロー。
 それでは、カードを1枚伏せてエンドフェイズ。
 破壊されたアイラーシャの効果で墓地の『炎王の爆誕』を手札に戻してターンエンドです。」


そして手札交換と融合カードを回収しつつターンを終了。
次は勝鬨の番だが…肝心のデュエルの方はどうなのか。


「ドロー…相手フィールドにのみモンスターが存在する時、手札から『地翔星ハヤテ』をリリースなしで召喚できる!」

『ハァァッ!!』
地翔星ハヤテ:ATK2100



ふむ……相討ちならイグニクスの効果をすり抜けられるけど…?


「自分フィールドに地属性モンスターが存在する時、手札から『天昇星テンマ』を特殊召喚できる!」

『フッ!』
天昇星テンマ:ATK2100


と思ったら、そうではないようだ。
アドバンス召喚は通常召喚権を行使してしまってるから何か魔法とかがないとできないし…何を考えているんだ?
だけど、2体ともレベル5…こいつらもエクシーズを?


「自分はテンマとハヤテを素材として魔法カード『融合』を発動する。」

「は?」


と思っていたら、何故か融合を使ったぞこいつ…?
LDSとかでもないのに融合を使えるのがエクシーズ使う以上に謎なのは置いといて…わざわざ素材を2体ともフィールドに出した理由がわからない。
場から墓地へ送られる事で何か効果でも発揮できるのか?


「天翔ける星、地を飛び…今一つとなって、悠久の覇者たる星と輝け!融合召喚!来い『覇勝星イダテン』!!」

『ヌォォォォォ!!』
覇勝星イダテン:ATK3000



出てきたのは攻撃力3000のモンスターか。
だけど、仮に破壊耐性がなかったとしたらイグニクスの餌でしかないが。


『ここで勝鬨選手も融合召喚!昨年果たせなかった優勝を勝ち取るべく、更なる進化を遂げてきた!』


ということは、融合召喚を習得したのはつい最近と見た方がよさそうね。
何かするわけでもなしに、一々素材を場に出したところからも融合召喚を使いこなせていない感が否めない。


「攻撃力3000…イグニクスの攻撃力を軽く上回ってきましたか。」

「それだけではない…イダテンのレベル以下のモンスターと戦闘する時、その相手モンスターの攻撃力は0になる。」

「つまり、レベルで下回っている限りはいくら攻撃力があっても関係ないというわけですか…」


そしてイダテンの効果は戦闘関連の効果か…自身のレベル以下の相手モンスターの攻撃力を0にするというものか。
確かに強力ではあるけど…これでイグニクスを止められるかは別問題だ。


「それならば…」


――タッ、タッ!



ここでねねがアクションカードを取りに動いた?
確かここのアクションカードは罠が大半のはずだけど…?
何というか彼女らしくない気がする。
梁山泊塾相手にそれは拙いんじゃないか?アレが来るぞ。


「アクションカード狙いか…だが!


――ドンッ!


「きゃあっ!?」

「ねね!?」


やっぱ、突き飛ばす事で取るのを妨害してきやがった。
いくらなんでも、女の子が暴力で突き飛ばされる光景を見るのは気分が悪い。
しかも、それがオレの友達であるから猶更だ。


――さっ…!


そして勝鬨が何の躊躇いもなくアクションカードを手に取った…すると。


――ボァァァァァァ!


「!?…ぐっ!」

勝鬨:LP3500→3000


『おおっと!勝鬨選手、アクショントラップ『間欠炎』を拾ってしまい、500ダメージを受けてしまった!』


勝鬨の足元から炎が噴き出すアクショントラップでダメージを受けた。
あれ、もしかしてねねの狙いって…?


「っ…人を突き飛ばしてでも取ったアクションカードがトラップですか。
 さて、あなたは今どんな気持ちですか?さぞや悔しい事でしょうね?」

「っ…!だが、アクショントラップであろうとこれでお前はこのターンにアクションカードを引けなくなったわけだ!
 そして、手札から装備魔法『聖星の剣』をイダテンに装備し、永続魔法『魔星の結界』を発動する。
 聖星の剣の効果でイダテンは2回攻撃が可能となり、魔星の結界の効果でお前はバトルフェイズ中にセットされた魔法・罠カードを発動できなくなった。」


あ、さっきアクションカードを取ろうとしたのはこれを見越していたみたい…策士ね。
ねねが倒れたままの状態で勝鬨を煽っており、勝鬨がそれ乗せられてるの様子なのはあまりにも滑稽ね。
オレとのデュエルでこんな素振りは見せてなかったけど、相手が相手だとこんな煽りもするのは驚いたわ。

で…勝鬨はここでイダテンを2回攻撃可能にし、魔星の結界でねねの伏せカードのバトルフェイズ中での発動を封じて決めに掛ったわね。
頼みの綱のアクションカードも封じられてねねがピンチのように見える…何も知らない人にとってはだけど。


「お前のイグニクスは効果破壊で自分のモンスターを破壊するようだが、そうはさせん。
 暗い闇だけを歩んできた以上、ぬくぬくと歩いてきたお前のような者には負けない。」

「なんですか、それは?」

「バトルだ!イダテンでイグニクスを攻撃!
 イダテンの効果発動、お前のイグニクスの攻撃力を0にする!」

『ガァァァッ!?』
炎王魔獣 イグニクス:ATK2100→0



これは、もう決まったんじゃないかしら。


「勝利の風は本物の闇を見たものにだけ吹く!」


――ドォォォォォン!!



「ああぁぁぁぁっ!!」
ねね:LP4000→1000


――ドサァァァッ!


ねねが吹き飛ばされる様は痛ましいのが見ていて辛いわね。
だけど、本物の闇(笑)ね?


「そして、次の攻撃で闇へ落ちるがいい。」

「ふふふ…」

「なにがおかしい!」


オレも父さんが失踪してから、勝負から逃げた卑怯者の娘だとか掌を返した世間の悪意に飲み込まれたのもあって絶不調だったわ。
だけど、あるきっかけでその闇を払い去る動機ができ、進歩と挫折を繰り返して今ここに立っている。
一方で勝鬨の言動からは今もなお闇に飲み込まれているようにとれるわね。

闇に飲まれたまま勝鬨が、落ちこぼれと言う闇の乗り越えてのしあがったねねに勝てる道理はない。
とはいえ、ねねが普段見せない様な狂気じみた笑い方をしているのは流石に驚いているわ。


あはははは!!本物の闇とはとんだ笑い種ですね…実に滑稽です。
 わたしも落ちこぼれと散々蔑まれてきましたが、あるきっかけでここまでのし上がってこれました。
 そのきっかけとなったわたしの友達のブランも風評被害に巻き込まれて、相当辛い目にあったみたいです。
 何があったのかはわかりませんが…辛い目にあってきたのが、あなただけだと思いあがらないでくださいよ?イグニクスの効果発動!」

「!?」


そして、勝鬨はやはりというか致命的な思い違いをしていたようだ。


「イグニクスが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合、相手モンスター1体を破壊しその攻撃力分のダメージを与えます。
 この効果で破壊するのは…当然ですが、あなたの覇勝星イダテンです。」

「何っ!?そいつの効果は戦闘破壊には対応していないのではないのか?」

「一体いつから……イグニクスの効果が効果破壊にしか対応していないと錯覚していたのでしょう?
 確かに戦闘破壊で使ったのはこれが初めてですがね。
 今まで一方的に手段を選ばずに暴力じみたデュエルといえない何かばかりしてきたからこんな思い違いをしてしまったのです。」


そして、ここでようやくねねが起き上がるとじりじりと勝鬨ににじり寄る。
顔は笑顔だけど、目が笑っていないわね。
まるで養豚場の豚をみるような眼差しで後ろに後ずさる勝鬨を見ているわね。


「く、来るな…アクションカードのルールが変わらなければこんな事には…!

「言い残したのはそれだけですか。
 アクションカードが取り放題ならもっと悲惨な事になっていましたよ?
 だって、ここは殆どがアクショントラップなのですから。

「何だと…それを知っていながら何故アクションカードを!?」

「そんなもの…あなたたちのようなデュエルを冒涜する害悪集団に対する嫌がらせに決まっているじゃないですか。
 まさか、本当に引っかかるような愚か者だと思っていませんでしたがね。
 兎に角、暴力にかまけて『楽しむべきもの』というデュエルの本質を蔑ろにしてきたあなたたち梁山泊塾の評判はガタ落ち待ったなしですね。」

「貴様っ!」


案の定、ねねはわざとやっていたみたい…流石にこの事を知らないはずがないものね。
ちょっとどころかだいぶやり過ぎな感じもするけど、相手が相手だからなぁ。
オレだって明るく楽しんでデュエルするという事を強制する気はないけど、こいつらの場合は度が過ぎている。
何よりデュエルに、反則スレスレの卑劣な暴力行為を持ち出すなんて言語道断だ。
モンスターを上手く使って妨害する程度ならまだしも、これは見過ごすわけにはいかない。

やり方は決して褒められないけど、いずれは問題提起してくれなければならなかったわけだしね。
とりあえず、いい見せしめにはなったと思うわね。
同時に恨みを買われそうなのが心配ではあるけど。

そして勝鬨の背後には炎と化したイグニクスがすぐそこまで迫っていた。


「悔しいでしょう…でもそれが現実です。
 もういいですね?では…邪悪な炎に抱かれて消えろ、デュエリストの面汚し。

『キィィィィィィ!!』


――ボアァァァァァァァァァァァッ!!



「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
勝鬨:LP3000→0


そして、イグニクスの効果により決着。
勝鬨を煽りつつ、ラフプレー上等の卑劣なデュエルを全て否定したねねの圧勝であった。
ねねにもこんな冷酷な一面があったのは驚きだったわ。
オレのオマール・ドラゴンを見た時にどこか狂気が潜んでいたのは気のせいじゃなかったのね。


『え〜…しょ、勝者…光焔ねねです。
 なんといいますか、彼女の恐ろしい一面を垣間見たデュエルでした。』



「なんというか、光焔って凄い一面があったんだな。」

「だが、むしろそれがいい。」

「はぁはぁ…あのような冷たい眼差しでぼくを罵ってください。」


一方で観客の反応はだいたいこんな感じだった。
なんというか、変態共いい加減にしろよと言いたくなるわね。

そして、ねねは会場に一礼してからスッキリしたといわんばかりに退場してしまった。

一方で勝鬨の所属する梁山泊塾の面々は退場するねねを鋭い目でみつめているみたい。
ねね…間違いなく梁山泊から目の敵にされたわね。
これから何が起こるかわからないけど、何が起きても無事でいて。

さて…オレの試合はもう少し後だし、フトシやアユちゃんの応援に行こうかしらね。
もう終わっている可能性が高くても、そろそろ顔を出しておかないとね。








――――――








Side:雲雀


この前ようやく接触が叶った奴――赤馬零児が提示した条件…それはこのジュニアユース選手権への出場だった。
そこで俺の敵でもある赤馬零王と戦う精鋭を選ぶらしいとの事だ。
要は俺の実力を見込み、大会に参加させつつ同時にその精鋭を選別する試験官になれということのようだ。
奴が赤馬零王を敵視している事は意外だったが、まさか俺が奴の狗に成り果てるとはな。
だが、これもいずれは月子を取り戻すため…悔しいが、今はこの立場にいるしかない。

そしてこの会場の物陰から試合をチェックさせていただいている。
2回戦に進んだ二人は実力は確かなようだが、色々な面で問題が目立つ。

まず、あの弟というオールバックの男だ。
奴は名前からして明らかなコードネームな上、ルウィー教会なる胡散臭い所からの出場というのが気に食わん。
何より、奴がどうしようもない巨乳厨の変態という事だ。
だが、LDSの奴らよりは実力は確かなようだ…身のこなしから身体能力も高い。
今のところは候補にリストアップしてもいいだろう。
最大の問題は相手に巨乳美女がいる場合、裏切る可能性がある事だが…!

そして、もう一人…どうしても『星光の殲滅者』の影がチラつくあの女。
使ったのはエクシーズ召喚ではなく融合召喚…当然ながら俺の知っている奴が使ったデッキではない。
奴が融合召喚を使う事は赤馬零児から事前に耳をしていたが、まさか本当だとはな。
もっとも、奴の融合召喚から感じるものがない…ここは一般的なLDSの奴らと大差はない。
問題はデュエルのやり方だ…。
今回は相手のラフプレー上等なデュエルスタイルを逆手に取り、上手く事を誘導して相手の評判をガタ落ちさせての勝利を掴んだ。
あのえげつないやり方…冷酷な眼差しといい、奴のやり方そっくりだ。
エクシーズからのスパイ、あるいは記憶を失ってこの次元にいる可能性もありえる。
いずれにしろ、こいつに関しては一時の油断を許してはならん。

後者の場合、記憶が戻る可能性も十分ある。
後で奴の始末か拘束を進言しておかねばな。
能力的には兎も角、こいつだけは選出してはならん…いつ正体を見せて裏切るかわからんのでな。
例え他人であろうとも、俺たちの仲間を尽く消した奴と同じ姿というだけで腹が煮えくり返る。

一方でこの女とデュエルした中華風の恰好の男は不運としか言いようがない。
ラフプレー上等なスタイルはあまりにも不評だが、地獄のような毎日を過ごした俺からすれば勝ちに拘るその精神は賞賛に値する。
一方でデュエルの腕は粗削り…もっとも伸びる余地は十分ありそうなものだが。
人材としては見込みがあるだけに、心理的に奴に甚振られて再起が難しいと思われるのが残念だ。


勝ち上がった二人などに関してはこんなところか。
そして、赤馬零児が特に注目しているのが3人いるらしい。
まずはオールバックの奴と同じルウィー教会出身のロムという幼子。
本来ジュニアクラスながら昨年のジュニアクラスを圧倒的な実力で制覇したのもあって、特例でこのジュニアユース選手権に出場しているらしいが。
あのようなガキが何故注目されているのかが謎だが、試合を見てみなければ評価のしようがない。

次に未知なる召喚法を使うという、ユーヤ・B・榊という俺の仲間のネプテューヌとほぼ同じ顔の少女。
前に、俺の融合召喚の衝撃だけで吹き飛ばされた未熟で幼い女か。
それにあの開会式での奇行にあのふざけた格好は何だ?お遊戯でもしに来たのか?
何故赤馬零児がこんな奴を見込んでいるかが知らんが、恐らく話にならん。
こんな奴がネプテューヌと同じ顔をしていると思うと苛立ちを隠せない。

しかも、俺が敵と認定した光焔ねねの友人である以上…猶更だ。

問題はこのネプテューヌに似た女と同じ所属という黒龍院里久…俺の一回戦目の相手だ。
赤馬零児はこの大会に本物のエクシーズ使いが参戦すると言った。
そして、その最有力候補がこのガキのようだ。

そいつをよりにもよって一回戦目から俺とぶつけてくるなど何を考えている?
いずれにしろ、光焔ねね以上に油断ならない相手なのは間違いないだろうな。
仮に本物のエクシーズ使いであれば…容赦はしないぞ。








――――――








アユ:LP1900
アクア・アクトレス−アロワナ:ATK2000


零羅:LP400
CCC武勇化身ウォーター・ソード:ATK2400


Side:ブラン


ねねの試合まで見た後、急いでジュニア選手権の方へ向かったけど…アユのデュエルは既に終盤まで差し掛かりつつあるわね。
それにしても相手の方はなんて変な形のモンスターを出しているんだ!?


「ごめん、遅れたわ。」

「来るの遅いわよ、ブラン!」

「痺れるくらいやべぇぜ、相手が融合召喚してきたんだ!」

「!?」


しかも、融合召喚してきたなんて…前年度と言い、有望な大物選手が参加しているのね。
そんな子と当たるなんてアユちゃん、一戦目から災難ね。


「バトル、ウォーター・ソードでアロワナに攻撃!
 ウォーター・ソードが攻撃する時、フィールドのこのカード以外の水属性の攻撃力の合計分アップ!」

「アロワナの攻撃力は2000だから…」

「攻撃力は4400…!」
CCC武勇化身ウォーター・ソード:ATK2400→4400


アユちゃんには手札も伏せカードもない…ここまでね。
それにしても、これ…水属性ばかりのオレのデッキにはとてもきついわね。


――ズバズバッ!


『アロ…?』



「く…うわぁぁぁぁぁ!!」
アユ:LP1900→0


健闘していたみたいだけど、惜しくも負けちゃったみたい。
でも、あなたたちはまだまだデュエリストの卵…大成するのはこれからよ。


「先生…あ、アユは…?」

「だ、大丈夫です…」

「ジュニアクラスのソリッドビジョンはやわらかくできてますから。
 挨拶が遅れましたが、ユーヤ・B・榊です…大変失礼しました。」

「う、うむ…私たち2人はアユの両親です。」


とりあえず、アユちゃんの両親に挨拶ができたわね。
そうしたところでアユちゃんのところへ。


「みんな、ごめんね…わたし、負けちゃった。」

「落ち込まないで、アユちゃん。
 負けちゃって悔しいよね…でも、その悔しさをバネにがんばる。
 誰だってそうして一歩ずつ進歩して強くなってきたわ…勿論オレもね。」

「そうだ、かくゆうブランもこの男権現坂にどれだけ負け越してきたか。」


むぅ、今はほぼ同格のはずだけどね。
この前、大事な一戦で一勝もぎ取ったのだから。


「そうそう、オレもこんな感じだったのよ。」

「そうだね、ブランお姉ちゃん…うん!」


アユちゃんのこの笑顔、守りたい。

それはいいとして…相手の子は蚊帳の外ね。
しかも、どうやらインタビューの人をスルーして我が道を行くといわんばかりに戻っちゃったし。


「LDSの子に黒星を付けられたのは悔しいな。」

「で…次はオレの試合だね、本日最後のだけど。」

「相手は、あの沢渡か…お願いだから負けないでね。」

「そう言われちゃったら、勝たないとぶっ叩かれそうね。


とはいっても、あいつはペンデュラムカードを持っているわ。
それに、LDS製のペンデュラムカードで強化されている可能性が高い…間違いなく最初から大きい壁ね。
間違いなく、ペンデュラム対決になるわ…どんな手で来ようと、オレの全力で迎え撃つ!


「そういえば、里久は?」

「あ、どうも他の試合見てくるって言ってたわね…呼び戻すわ。」

「うん、お願い。」


里久と合流したら、みんなで昼食にしましょうか。








――――――








Side:里久


アユとデュエルしてる零羅って奴、人の物まねばかりしてつまらないな。
そう思って、あの場から離れてジュニアユースの方の試合を見てきたけど僕が来たところで終わってしまったみたいだね。
試合場にはうずくまっている一人の中華風の男しかいなかった。
あそこまで項垂れているという事は何があったんだろうね?
ま、こんなこと気にしててもしょうがないかな。
後で誰かにでも聞いておけばいいや。


――ブーブー!


おっと、ここでデュエルディスクから通信だ。
これは…柚子からだね。


「はいは〜い!」

「あ、里久!これから昼食取るけど一緒にどう?
 もしよければ、センターコート前の公園に来て。」

「あ、行く…フィナンシェさんからの差し入れもありそうだしね。」


楽しみだな、フィナンシェさんお手製の弁当。
本当に持ってきてるかはわからないけどね…そう、決まればいかないとね。

そう思っていた矢先、僕はある男とすれ違った。
この紫の不審者は…僕の一回戦での対戦相手、紫吹雲雀…!
いずれは僕が倒すべき鉄仮面の女の仲間で、恐らくはあいつも融合使い。
そうと決まれば、潰す以外に選択肢はないかな…!

だけど、試合は明日だ…今日は後に控えているブランの試合の応援に回ろっと。








――――――








Side:ブラン


あの後、里久と合流してから会場前の公園でシートを広げて昼食を楽しんだわ。
やっぱり、母さんが持ってきたお弁当は絶品ね。
みんなも喜んでくれたし、母さんとしてもうれしかっただろうからなにより。

そして時間は午後3時半くらいになり、いよいよこの時がやってきた。


「いよいよ、ブラン様の晴れ舞台ですね。
 記念すべき最初の一戦ですが、肩の力を抜いて精一杯頑張ってください。」

まずは沢渡に一発かましてきなさい!

「勿論!よし…この試合、本日最後にふさわしいいいデュエルにしなくちゃね。
 だって、エンタメデュエリストの端くれだもの。」


そう、ジュニアユース選手権でのオレの第一試合だ。
ジュニアユース選手権における遊勝塾の先陣を切る形でね。
そうときまれば、無様なところを見せるわけにはいかないわね。
何より、相手は本格的にペンデュラムを手にしたであろう沢渡だ…燃えるに決まってるわ。


『お待たせいたしました!ただいまより本日の最後の試合となります!
 遊勝塾所属のユーヤ・B・榊とLDS所属の沢渡シンゴの一戦でございます!』



会場のモニターにはオレと沢渡が対峙する構図が映し出されている。
いよいよ本当に始まるって実感するわね。


「ブラン!ジュニアユースでの遊勝塾の先陣を切って会場を沸かせて来い!燃えろ、熱血だ!

「当然よ。それじゃ…行ってくるわ。」


そして、試合場へ足を踏み入れた。


「あれが噂のペンデュラム使いか…おお、中々可愛い女の子じゃないか。」

「でも、本当はペンデュラムなんてものないって言ってる人もいるわよ。」



まぁ、こういう懐疑的な声がある事はわかってた。
でも、相手の沢渡だって今回はそれを使うはず…観客には目にモノを見せてあげなきゃね。


「今も沢渡さんの取り巻きではありますが…がんばってください。」

「僕は無様に負けてしまったが、沢渡なんかには負けないでくれよ。」


勿論の事、素直に応援してくれる観客もいる…この二人は既に一回戦を終えてるけどね。
そして、ねねって未だに沢渡の取り巻きと自負してるみたいね…あはは。

問題は…今だに沢渡の姿が見えない事だけど。


Ladies And Gentlemen!

「ふぁっ!?」


その声と共に現れたのは、まるで奇術師のような格好と仮面をした男。
ふざけた事にオレの決め台詞を奪い取ってのこの声は…沢渡!


「さあ、まずはユーヤ君に俺の名前を答えていただきましょう!」

「沢渡でしょ、どう考えても。」

「それはどうかな?」


――バサッ!


そう言って、格好と仮面を脱ぎ捨てていつもの制服スタイルの沢渡が出てきたわね。
あなたが沢渡じゃなければ、だれが沢渡だというの?


「俺は……ネオ・ニュー沢渡だ!

「「「ネオ・ニュー沢渡、最高!」」」


――しーん…


そして、観客は呆然としているわね…例の3人除き。


「え〜と、ネオとニューって…同じ意味よね?」

「ふっ、決まったぜ。」


いや、決まってないし…みんな呆然としてるだけだから。


「ユーヤ・B・榊…お前には数々の恨みがある。
 その1…俺に敗北を味あわせた上にペンデュラムカードを奪っていった!」

「いや、その理屈はおかしい…元々あなたがオレから取ったんでしょ。
 しかも、今はあなたの手元にあるはずだし。」


もともと奪ったのお前だよ。
それよりも、オレがその2枚のペンデュラムを犠牲に手にしたブレイクスルー・スキルの事はどうした?


「ぐっ…その2。お前そっくりの融合使いに怪我を負わされた。」

「オレじゃないし、本当は怪我は大したことないって聞いたわよ。」


その濡れ衣のせいでオレがどれだけ面倒事に巻き込まれたと思ってるのよ。
元はと言えばネプなんとかって奴が余計な事をしなければ済む話だったけど、もっと反省すべきよ。


「その3、俺の尊敬するパパを襲って怪我をさせた!屈辱この上ない!」

「オレじゃないから。でも、その犯人に心当たり有るわ……誰とは言わないけど。」


パパって恐らくあのずんぐりとした自称次期市長よね?
だとしたら、犯人は何故かLDS所属になってる紫吹雲雀のはずよ。
騒ぎになるのは間違いないから伏せておくけど。


「うぐ…お前に受けた屈辱の数々……今こそ返す時が来たぜ!
 ここに宣言する!お前はこのデュエル…最高の屈辱を受けて負けると!」

『おおっと、早くも沢渡選手の勝利宣言です!』


動機は兎も角…勝利宣言するほどという事はそれだけの自信があるという事ね。
デュエリストの性ゆえか、余計に楽しみになって来たわ。


「お前をここまで勝利に導いたペンデュラム召喚…今回はそれがお前を敗北に導く!」

「言ってくれるじゃない、受けて立つわ…このデュエル、一緒に盛り上げていきましょ?」

「へっ…言われるまでもねぇ、そうこなくちゃな!」


ふふ、エンタメデュエルには乗っかってくれそうでなによりよ。

もっとも、5連戦の中でペンデュラム召喚そのものは実はあまり働いてないのよね。
ペンデュラムの性質を利用したりとかは多かったのだけれどもね。
この5連戦と北斗とのデュエルで学んだことも生かして盛り上げましょう!


『では、アクションフィールドをランダムセレクト!
 アクションフィールドオン!フィールド魔法
『マジカル・ブロードウェイ』発動!!』


そして辺り一面が煌びやかな夜の街へと変わる。
父さんが得意としたフィールドで記念すべき第一戦を飾るのね。
観衆を盛り上げるにはふさわしい場を用意しなくちゃね…いい選択よ。


「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

「「フィールド内を駆け巡る!」」

『見よ、これぞデュエルの最強進化系!』

「「「「「「「「アクショォォォォォォン!!」」」」」」」」


「「デュエル!!」」


ブラン:LP4000
沢渡:LP4000















 続く 






登場カード補足






炎王獣 キンシ
効果モンスター
星4/炎属性/鳥獣族/攻1900/守 200
(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「炎王」モンスター1体を破壊する。
(2):このカードが効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。
相手に500ダメージを与える。



らくがきじゅう−てらの
効果モンスター
星8/地属性/恐竜族/攻2400/守1200
このカードは「らくがきじゅう」1体をリリースしてアドバンス召喚できる。
(1):このカードがアドバンス召喚に成功した場合、相手フィールドのモンスター1体を対照として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
このターン、このカードの攻撃力は破壊したモンスターの攻撃力の半分だけアップする。



覇勝星イダテン
融合・効果モンスター
星10/光属性/戦士族/攻3000/守2200
「地」戦士族モンスター+「天」戦士族モンスター
(1):このカードがこのカードのレベル以下の相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。
その相手モンスターの攻撃力はそのダメージ計算時のみ0になる。



地翔星ハヤテ
効果モンスター
星5/地属性/戦士族/攻2100/守1000
(1):相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚できる。
(2):1ターンに1度、自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在しない場合、相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。
その攻撃を無効にする。



天昇星テンマ
効果モンスター
星5/地属性/戦士族/攻2100/守1000
(1):自分フィールドに地属性モンスターが存在する場合、手札からこのカードを特殊召喚できる。



CCC武勇化身ウォーター・ソード
融合・効果モンスター
星6/水属性/悪魔族/攻2400/守1000
「CC」モンスター+水属性モンスター
(1):このカードが攻撃する場合、このカードの攻撃力はダメージステップ終了時まで、このカード以外の水属性モンスターの攻撃力の合計分アップする。



聖星の剣
装備魔法
戦士族の融合モンスターにのみ装備可能。
(1):装備モンスターは1度のバトルフェイズに2回攻撃できる。



魔星の結界
永続魔法
(1):戦士族モンスターが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。



間欠炎
アクション罠
(1):自分は500ダメージを受ける。