Side:雲雀
「…貴様は?」
「赤馬零児…レオ・コーポレーションの現社長だ。」
「赤馬零児…成程な。」
他の奴とは一味も二味も違う強者の雰囲気からして、そうではないかと思っていたが…大当たりだったようだ。
つまり、ようやく本命の貴様にたどり着けたというわけだ。
「この舞網市でレオ・コーポレーション直属のLDSの関係者を襲撃していたのも私に会いたいがため…違うか?」
「そうだ…赤馬零王の息子である貴様が来るのを待っていたわけだ!
貴様には俺の相手になってもらう!さあ、デュエルだ!!」
貴様を捕え、妹の月子を救うためにも!
「その前に聞いておこう…私と戦う理由を。」
「…貴様に答える必要はない。」
「それは、恐らく仲間の救出…君に前回遭遇したLDSの生徒が、君がこうしたと証言している。
遊勝塾の柊柚子に対し、『月子』と言いながら変質者の如くにじり寄ったと。」
「ちっ…色々納得できんが、否定はしない。」
特に変質者呼ばわりとは解せん。
あの女――確か、柊柚子が敵に捕まってるはずの月子に似ていたのだから仕方ないだろ!
だが、ネプテューヌの奴は目の前でそいつがエクシーズ召喚を嬉々して習っているのを見たらしい。
どんな状況に置かれようと、月子が敵の召喚法を習うはずがない…別人のようだとここでわかった。
「それより、その証言したというLDSの生徒…憎むべき敵『星光の殲滅者』ではないのか?」
「光焔ねねに異名らしきものがあったのは初耳だが、話の腰を折らないでいただきたい。」
ちっ、はぐらかされたか。
光焔ねね…そいつの事も知っておきたかったが、仕方ない。
「話を戻そう…月子とは君たちにとって大事な仲間であり、敵の手にかかったらしいという事が推測できる。
そして、月子は未だに敵の手からは逃れられていない…そうだろう?」
「確かに月子は今も敵の手中にあるに違いない。
だが、必ず救い出す…そのために貴様の身柄を手に入れる必要があるんだ!どんな手段を使おうと!」
「そうしてLDSへの襲撃を続け、今に至る…と。
要は私を人質交換の材料にするというわけか。」
そういう事だ、月子が敵の手中にある以上…こうするしかないのでな!
特に貴様は赤馬零王の息子…これほど人質交換の材料にふさわしいものはないはずだ!
「そうだ!LDSを襲い続けたのも、その魂を封印したカードを送り付けたのも貴様を捕えるためだ!
実の息子との交換ならば、赤馬零王も決して首を横に触れないはずだからな。」
「それはどうだろうな?」
「何…?」
実の息子を人質に取られたら、何としても取り戻したいのが親というものではないのか!?
「異次元にいるあの男がそこまで私を大事に思っているとはとても信じられない。」
「っ…!」
言われてみれば、実の息子をこの次元に置きざりにしているともいえる状況だ。
貴様の言う通り、その可能性も十分考えられるという事か…!
だとしたら、俺は今まで何のために…!
「まぁ、君が戦いと言うのなら受けてやってもいいが条件がある。」
「条件だと?」
「その条件を君が飲み、実行したならば喜んで相手になってやろう。
そして、君が勝ったその時は…私を好きにするがいい。
だが、我々にも準備と言うものがある……話を聞きたければ、LDSに来るがいい。」
「おい!」
ちっ、行ってしまいやがった。
護衛の黒服たちも俺と戦った3人を運んでいった。
奴はLDSの関係者を襲撃した俺に何をさせるつもりなんだ?
仕方ない…言われた通り、LDSに伺うとしよう。
超次元ゲイム ARC-V 第22話
『覚悟の5戦目!』
Side:ニコ
ここまでの4戦、あなたは私の期待通り…いや、それを超えたといってもいいほどの成長を見せてくれました。
1戦目では辛い思いをした幼い子にも笑顔を与えたという事を証明し、観客に笑顔を与える事の喜びを学びました…この一戦を決めたのは殆ど大人の事情ですが。
ここでエクシーズ召喚を初めて披露した事も覚えております。
続く、2戦目では独りよがりではデュエルが成立せずに、相手や観客などのコミュニケーションこそ大切という事。
3戦目では、一度は敗れたライバルたちへの競争心や柔軟な発想など臨機応変な対応を。
…実のところ、既にワタシの予想を超えていましたが心を鬼にして更なる発破をかけました。
そして4戦目ではどんな苦境が襲おうと諦めず、そしてワタシの予想を遥かに超えた驚きと感動をあの場のギャラリーに与えてくれました。
ここまでは合格点。
しかし、本当に大事なのは次の1戦。
私のプロデュースする5連戦の最終戦にして、彼女の今年の50戦目。
これに勝てば公式戦の50戦30勝で勝率6割を達成し、ジュニアユース選手権への出場が決まるのです。
いわば、このデュエルを制する事こそが彼女の夢への第一歩となるのです。
この大事な戦いで今までの集大成を見せた上で勝ってください。
相手もとっておきのものを用意させていただきました。
期待しておりますよ、ブラン君。
――――――
Side:ブラン
「むにゅ……う〜ん…!」
日差しが出てきたわね、もう朝か。
そうだ、今日はいよいよ5連戦の5戦目…ジュニアユース選手権出場への王手がかかった大事な一戦の日が来た!
今日でオレの未来が決まると言っても過言ではない。
ニコの事だからこれまでで最も手強い相手を出してくるはず…でも、オレは負けない。
この前の第4戦で見つけた、俺の『ペンデュラムのその先』を完全にモノにした上で勝ちに行くのみよ。
――パシッ…!
よし、張りつめ過ぎない程度に気を引き締めてから試合会場へ向かわないとね。
まずは下に降りて腹ごしらえしなきゃ。
っと、降りてみたのはいいのだけど…。
「あれ、誰もいない…?」
いつもいるはずの母さんがいないわね。
かといって気配も感じられないし…こんな大事な日にオレを置いて何処へいったのかしら?
仕方ない、朝食のパン自体は机に置いてあるし…それと適当に目玉焼きなんかを作っては食べて試合へ向かいましょう。
だけど、この時のオレはその可能性を考えていなかったと思う。
連戦のラストを飾る相手が…アイツである事に。
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朝食を済ませると、すぐに5戦目の試合会場へ向かった。
だけど、事前にニコから伝えられた試合会場って…ここで合っているのかしら?
と疑問に思うのも、オレがよく知る場所だったからだ。
「あれ…ここって権現坂道場よね?」
「はい、その通りです。
おはようございます、ブラン君。」
「あ、おはようございます。」
っと、ニコがここに来ている事はやっぱりここで合ってそうね。
「どうも朝からみんなの姿が見えないのだけど…どういう事かしら?」
「さて、何の事でしょうね?」
「むぅ…場所が権現坂道場と言い、まさか。」
「それはご自身の目でお確かめを…では、お入りください。」
うぐ…このままじゃ埒が明かないわ。
実際のところはニコの仕業だろうけど、ここは入るしかなさそうね。
――ガラッ…!
「たのもー!」
「待ちかねたぞ、ブラン!」
門を開けると、道場の目の前に立ちはだかる権現坂の姿が。
成程、いつも以上に粋な事をしてくれるじゃない。
「来た時からそんな予感は薄々感じてたけど…最終戦の相手は権現坂、あなたみたいね。」
「そうだ!」
遊勝塾をかけたLDSとの3番勝負の時から会う機会がなかったのだけど、まさかここで相まみえる事になるなんてね。
権現坂が5連戦の最後の壁として立ちはだかるわけか。
「お二人は何度も戦っているようですが、真剣勝負そのものは一度もなかったはず。」
確かにそうね…あくまで練習的なものしかしてなかったはずだし。
そう考えるとここで全力でぶつかるのもいい機会なのかもしれないわね。
「そして、あなた方が親友同士である事は存じでいます。
特にブラン君の父…榊遊勝がチャンピオン決定戦を前に突然姿を消し、それを嘲笑う人々から権現坂君が体を張って守り続けたとの噂も聞いております。
これを聞き、その性別をも超えた美しい友情にワタシも感動しましたが…」
「同い年でも、体格差から下手すればロリコンに間違えられないけどね。」
「失敬な…今は兎も角、その時は俺もまだ小さかったぞ。」
それでも幼女のオレよりはだいぶ大柄だったけどね。
だけど、体を張って守ってくれた事…本当に感謝しているわ。
「しかし、例え親友同士だろうと勝負は別…プロを目指すなら猶更です!」
「その通りだ、俺は今までお前と何度も戦ってきた。
が、そこに真剣さはなかった。」
「まぁ、昔は今ほどやる気がなかったしね、」
人に笑われてばっかりで楽しくなかったからね。
やっぱりこういうのはまず自分が楽しめないと話にならない…って思う。
それは置いておくとして…。
「父の失踪で気付いたお前の気持ちを考えると、俺も強く咎める事はできなかった。
しかし、そんな情けがいつしか俺自身も弱くしていた事にようやく気付いたのだ!」
「お前自身を弱く?」
権現坂は、まとまった休みの日なんかは時々山で修行しているらしいのよね。
だからこそ、自分にも厳しい人だという事は知っていたわ。
でも、自分自身を弱くしていたとはどういうことかしら?
「遊勝塾をかけた三番勝負の3戦目…一勝一敗で迎えたその決勝戦に俺は勝つ事ができなかった。」
「それはそうなのだけど、初見でシンクロコースの看板を背負った相手に引き分けに持ち込めたって相当よ?
少しばかり自分を追い込みすぎじゃないかしら?気持ちはわからなくはないけど、あまり気張り過ぎてもよくないと思うわ?」
「心配してくれるのは有難い…だが、勝てなかったのは俺の心の弱さ。
勝負を決められなかった甘さが原因…それを拭うにはより自分を追い込まねばならん。」
本当にストイックね…だけど、彼のそういった姿勢が好き。
あれで満足しない悔しさや向上心の高さ…オレも見習わなくちゃ。
「そこで権現坂君は自分のジュニアユース選手権への出場条件も敢えてこの戦いに懸ける事にしたのです。
そう!勝率6割まであと一戦としながら他の対戦の申し出も受け付けずにブラン君がここまで勝ち続けるのを待っていたのです!」
「マジか…そこまで自分を追い込んでまでオレとの真剣勝負に臨むというのか…!」
権現坂道場はオレのいる遊勝塾より塾としての地位が高いし、対戦希望者も多くなるはずだ。
それの申し出を全て蹴ってまでオレとの真剣勝負に臨んだ…その覚悟は本物だ。
それなら…答えは一つ!
「だったら、オレもその覚悟に応えたい!
それに、親友を蹴落としてでもプロの道へ進む覚悟があるかと問いたいわけね。」
「お、察しがいいですね…つまりそういう事です。」
「後ろめたい事もない事はないけど…覚悟なら当然あるよ!
お互いに夢がかかっているなら、どちらがより本気かぶつかり合って決めなきゃね。
それに今のお前と真剣勝負をしておきたかったのはオレも同じだ!」
それにデュエルと言うのは結局のところそういうものだからな。
言い方は悪いけど、今のオレの実力で格上のお前に膝をつかせられるかどうか…試しておきたかったしな。
「既に覚悟はできているわけか…そうこなくてはな!
いずれこの道場を継ぐ俺にとってこの戦いは不動のデュエルを極め、さらに進化させるための試金石!
親友だからこそ、情け無用で全力で倒しにいくぞ!」
「ああ!お前が修行を積んできたように、オレも今までの4連戦を通して実力を磨いてきたんだ!
まずはオレの夢へのスタートラインを踏むためにも、今までの集大成をお前に見せる時がきた!そして、勝つ!」
「流石はブラン、見事な心意気だ!存分にぶつけてこい!俺も全力で迎え撃つ!」
っと、気合十分なのはいいのだけどまずは道場に入らないとね。
権現坂も相当修行を積んだはず…相当手強いだろうけど、だからこそわくわくする。
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そうして、権現坂道場へお邪魔させてもらう。
厳格な印象のデュエル道場だけあって、見渡す限り道着を身に着けた礼儀正しそうな男ばかり。
やはりというか、オレの身内は対戦相手の権現坂のみ。
成程、完全アウェーの状態で力を発揮できるか見ているわけね。
いかにもニコがやりそうな事ね…オレのこれからの事を見越して。
朝起きた時に母さんたちもいなかったところを見るに、オレに内緒で事前に手をまわしていたわけね。
…実は別室で見ているというオチもありそうだけどね。
だけど、だからこそ熱くなれると思う。
それならオレはオレ自身のデッキを信じて、権現坂とぶつかるだけだ。
周りからのプレッシャーに負けてたら、決して楽しいデュエルなんてできないもの。
「デュエルとは魂の磨き合い。
互いに切磋琢磨し何事にも動じぬ不動の心を養う事こそ我が権現坂道場の目指す道。」
これが権現坂の不動のデュエルの原点とも言える言葉だ。
今話しているのがここの長にして権現坂のお父さんだけど、小柄なオレより小さい気がするわね。
…失礼極まりないから、口が裂けても言えないけど。
「この戦いにおいても正々堂々真正面からぶつかり合い、魂の研磨に一層励んでいただきたい。」
それが言い終わるのと同時に、オレと権現坂がお互いに向き合う。
「礼!」
「「よろしくお願いします!!」」
そして長の掛け声とともにお互いに挨拶をし、お辞儀をする。
いよいよ、5連戦の最後をかざるデュエルが始まるのね。
「いざ、アクションフィールドオン!フィールド魔法『剣の墓場』!!」
すると、辺り一面が錆びた剣が刺さった陰気くさい戦場となる。
このフィールドは以前に権現坂が烈悟と戦った時と同じものね。
「このフィールドは…あの時と同じね。」
「理由は今にわかる…いくぞ!」
「ああ!」
何かあるみたいだけど、聞くのは野暮よね。
それよりも今から始まるデュエルに集中するのみ。
「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」
「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!」
「見よ!」
「これぞ!」
「「デュエルの最強進化系!」」
「アクショォォォォォォン!!」
「「デュエル!!」」
ブラン:LP4000
権現坂:LP4000
いよいよデュエルの幕が切って落とされた。
先攻は権現坂のようね。
「先攻はいただくぞ、俺は手札から『超重武者カゲボウ−C』を召喚!」
超重武者カゲボウ−C:ATK500
「カゲボウ−Cの効果発動!このカードをリリースし、手札から『超重武者』1体を特殊召喚できる!
天下無双の鬼武者、ここに推参!レベル7『超重武者タダカ−2』を守備表示で特殊召喚!」
『ヌォォォッ!!』
超重武者タダカ−2:DEF3200
初っ端から飛ばしてくるわね、いきなりエースを出してきたわけか。
しかもカゲボウ−Cが墓地へ落ちた…墓地で発動するこいつの効果が中々厄介なのよね。
タダカ−2自体はアドバンス召喚されたわけじゃないから、耐性効果は使えないけど。
「俺はこれでターンエンド!」
「最初から全力のようね。」
「当然だ、親友だからこそ俺は情けを捨てて全力でお前を倒すと!
敢えて言う必要はないだろうが、お前も全力でかかってこい!」
「言うまでもないわ、端からそのつもりよ!オレのターン、ドロー!」
そうはいったものの、タダカ−2の守備力は3200…中々骨が折れる数値なのよね。
しかも、墓地から除外する事で『超重武者』を対象を取るモンスターの効果の発動を無効にした上で破壊するカゲボウ−Cがある。
だけど、こうであってこそ乗り越え甲斐があるものだわ。
「オレはスケール2の『ロブスター・シャーク』とスケール7の『甲殻槍士ロブスター・ランス』でペンデュラムスケールをセッティング!」
ロブスター・シャーク:Pスケール2
甲殻槍士ロブスター・ランス:Pスケール7
「これでレベル3から6のモンスターが同時に召喚可能!
揺れろ、魂のペンデュラム!天界に架かれ、流星のビヴロスト!ペンデュラム召喚!来て、オレのモンスターたち!
レベル3『タイムテール・ロブスター』、そしてレベル6の『甲殻砲士ロブスター・カノン』!」
タイムテール・ロブスター:ATK1600
『ハァッ…!』
甲殻砲士ロブスター・カノン:ATK2200
タダカ−2は特殊召喚されたモンスター。
だから、ロブスター・カノンの効果で破壊できる。
「ロブスター・カノンが手札からの召喚・ペンデュラム召喚に成功した時、相手の特殊召喚されたモンスター1体を破壊しデッキに戻す!
対象は当然カゲボウ−Cの効果で特殊召喚されたタダカ−2よ!『ハイドロ・ブラスター・カノン』!」
「早速来るか…だが、それを通すわけにはいかん!
墓地のカゲボウ−Cを除外し効果を発動!
超重武者1体を対象に取る効果の発動を無効にし破壊する!」
「む…ペンデュラムのロブスター・カノンがフィールドで破壊された事に変わりないからエクストラデッキに加えさせてもらうわ。」
ここでカゲボウ−Cの効果を使ってきたか。
「だが、この事は最初から織り込み済みだろう?」
「当然よ、この手の厄介な奴はできるだけ序盤のうちに使わせたいからね。
むしろ、本命はここから!手札の水属性1体を捨てて、タイムテール・ロブスターの効果を発動!
デッキから水族のペンデュラムモンスター1体をエクストラデッキに加えるわ。」
この効果でエクストラデッキに加えるのは『甲殻鎧竜オッドアイズ・オマール・ドラゴン』だ。」
「いつの間に『オッドアイズ』のペンデュラムモンスターを手にしていたのか…!」
赤馬零児が別のオッドアイズを使っていたからか反応を見せたわね。
そう…これが、オレの手にした新たな力の1つ!
「そして、水属性のコストで墓地へ送られた『エビカブト』の効果を発動!
デッキから水族・攻撃力800以下の通常モンスター『カニカブト』を特殊召喚!」
カニカブト:DEF900
これで水族モンスターが2体…条件はそろった!
「ここでモンスターを並べて何をするのか、見せてもらおう!」
「言われるまでもないわ!エクストラデッキからオマール・ドラゴンの効果を発動!
オレの場の水族2体…タイムテールとカニカブトの2体をリリースし、手札かエクストラデッキに存在するこのカードを特殊召喚する!」
「エクストラデッキから直に特殊召喚されるペンデュラムというわけか、いいだろう!」
「そういうこと!現れろ、雄々しき甲殻の鎧纏いし二色の眼を持つ竜!レベル7『甲殻鎧竜オッドアイズ・オマール・ドラゴン』!!」
『ガァァァァァァァ!!』
甲殻鎧竜オッドアイズ・オマール・ドラゴン:ATK2600
そして、こいつの背中に乗ってアクションカードを探しつつ動く。
権現坂が信念からアクションカードを使わないとしても、オレが使わないかは別問題。
全力でのぶつかり合いなのだから猶更よ。
とりあえず、アクションカードを見つけたわ。
――ぱしっ。
よし、これは中々のものね。
そして、オマール・ドラゴンの力を存分に味わいなさい!
「バトル!オッドアイズ・オマール・ドラゴンでタダカ−2に攻撃!」
「このままでは俺のタダカ−2には及ばないが、手があるのだろう?」
「当然!この瞬間、オマール・ドラゴンの効果を発動!
攻撃宣言時にフィールドのモンスター1体を手札に戻す!対象はタダカ−2だ!」
ロブスター・カノンのデッキバウンスとは違ってこちらは手札バウンスだから再利用の恐れはある。
それでも、タダカ−2はレベル7の最上級モンスター…喰らえば中々の痛手のはず。
権現坂はこの効果を前にどう出る?
「だが!この瞬間、手札の『超重武者クノ−1』を墓地へ送り効果発動!
俺の墓地に魔法・罠が存在しない場合のみ発動でき、これでお前のオマール・ドラゴンの効果をターンの終わりまで無効にする!」
――シュッ…!
『ガッ…!?』
甲殻鎧竜オッドアイズ・オマール・ドラゴン:ATK2600(効果無効)
成程、クノ−1も手札に握っていたみたいね。
この効果も防いでくるなんて流石ね、権現坂。
「効果を無効にしたといえど、オマール・ドラゴンの攻撃が止まるわけではない!
これにより、600の反射ダメージをお前に受けてもらうぞ!」
「やるわね…だけど、オレは既にこのアクションカードを握っているわ。
この瞬間、アクションマジック『ガイスト・ソード』を発動!
これにより、タダカ−2の守備力を1000ダウンさせる。」
超重武者タダカ−2:DEF3200→2200
烈悟も使ったこのアクションカードは権現坂に思い切り刺さるはずよ。
これでオマール・ドラゴンの攻撃力がタダカ−2の守備力を上回ったわ。
「これでタダカ−2を倒せるようになったわ!喰らえ『激流のハンマー・シュラーク』!!」
――ドガァァァァ!!
「だが、我が不動の要であるタダカ−2をそう簡単に倒させるわけにはいかん!
手札から『超重武者装留ファイヤー・アーマー』を捨て効果発動!
このターン中、タダカ−2の守備力を800ダウンする代わりに戦闘・効果では破壊されなくなる!」
超重武者タダカ−2:DEF2200→1400
「む…やはりそう簡単にはやらせてくれないわね。
だけど、ここで甲殻槍士ロブスター・ランスのペンデュラム効果を適用!
オレの『甲殻』モンスターのオマール・ドラゴンの攻撃は貫通攻撃となる!
オマール・ドラゴンの攻撃力とタダカ−2の守備力との差分、1200のダメージを喰らえ!」
「ぐぬぅぅぅ…!!」
権現坂:LP4000→2800
先制ダメージこそは与えられたけど、ここまでしてタダカ−2を破壊できなかったのは痛いわね。
だけど、それに伴って権現坂の手札消費も激しい…オレの消耗も激しい分ここからが本当の勝負といったところね。
次のアクションカードを早めに拾っておきたいところね。
「オレはこれでターンエンドよ。」
「この瞬間、ファイヤー・アーマーの効果は終了し、その減少した守備力が元に戻る。」
超重武者タダカ−2:DEF1400→2200
だけど、ガイスト・ソードの効果は永続的に適用されるわ。
下がった守備力でここからどう来るのかが見物ね。
修行の成果…敵ながら楽しみにしているわ。
――――――
Side:ニコ
道場長と共に正座しながら二人の試合を見させていただいております。
序盤からお互いに手札を多く使っての激闘が繰り広げられておりますね。
ですが、二人の決闘の毛色が見事に分かれておりますね。
「アクションカードも活用しつつガンガン攻めていくブラン君と、どっしり構えて守る権現坂君。
予想通りの展開ですが、お互いに全力で戦っている感じが見て取れますね。」
「左様、息子の昇は相手がいくら動こうと決して惑わされずに不動の構え。
まさしく、我が権現坂道場の王道たる戦いぶりをしております。
それでこそ、我が道場の跡取り…よいぞ、昇!」
「確かにここまでは王道の戦い方をしておられますね。
ですが、権現坂君はそれ以上にさらなる高みを目指しているのを聞いております。
対戦相手のブラン君の言葉を借りるなら…まだまだ『お楽しみはこれからだ!』という事ですよ?」
「何?」
さて、今度は権現坂君がここにいる皆を驚かせる番ですよ。
彼が試みる新たな不動のデュエルを前にして、ブラン君がどう立ち向かうのか…見せていただきますよ。
――――――
Side:ブラン
「手強いけれど、ここまでは想定の範囲内ね。
だけど、修行してきたというからにはあるのでしょう?オレを驚かせる程の成果が。」
「見抜かれていたか…だが慌てるな、まだ勝負は始まったばかりだ。
故にまだ全力を出し切っているわけではない。いくぞ!俺のターン!」
――ビュゥゥゥゥ!!
「っ…!」
ドローしただけでこの風圧…修行しただけの事はあるわね。
そしてやはりというか新しく得たものもあるみたいね…今から楽しみよ。
「この男、権現坂…強敵を倒すため、自分の殻を破り不動のデュエルを次の段階へ進化させる事を決心した!
ここで、まずは新たに手にしたその力の一端を見せる時が来た!
俺はレベル1のチューナーモンスター『超重武者ツヅ−3』を召喚!」
超重武者ツヅ−3:ATK300
「チューナーモンスター…ということは?」
ここでチューナーモンスターだと…!?
そういえば、烈悟が言っていた意味深な言葉…それにこのフィールド。
そうか、そういう事だったわけね。
「そのまさかだ!確とその目に焼き付けるがいい!
俺はレベル7のタダカ−2にレベル1のツヅ−3をチューニング!
不屈の戦神よ!雄大な翼はためかせ、砂塵渦巻く戦場に現れよ!シンクロ召喚!いざ出陣!レベル8『超重翼神ホウ−O』!!」
『ヌゥォォォォ…!!!』
超重翼神ホウ−O:DEF3000
出てきたのは翼を持つ鎧を纏った機械仕掛けの武将といった姿のモンスター。
オレの知らない間にシンクロ召喚を会得していたのね。
『おぉ…!』
『ほほう…!』
「権現坂…あなたが、シンクロ召喚を……!」
「最初に言っておくが、これはまだ進化の一端に過ぎん。
だが、これにより本当の真剣勝負の幕が下ろされた!覚悟しろ、ブラン!!」
進化の一端とはよく言ったものね。
確かに守備力そのものはタダカ−2に劣っているみたいだからね。
まだまだ本命というわけではないようだけど、まずはその進化の一端の力を見せてもらうわ。
――――――
Side:里久
ブランには悪いけど…僕たちは皆、現在別室でTV中継にて観戦させてもらっているわけだ。
直接見れないのは残念だけど、ニコちゃんに釘を押された以上は仕方ないことだし。
とはいっても、僕達が誰もいない状態でもブランは今までやってきただろうから…完全アウェーでも心配ないけどね。
だけど、その中でゴンちゃんが見ない間にシンクロ召喚を会得していたなんてね。
この前のデュエルも凄かったけど、このデュエルに懸ける想いも半端ない事がわかる。
「権現坂が…」
「シンクロ召喚を…?」
「これはまた…面白いことになって来たね。」
実は今回が初めてというブランとの真剣勝負…どんどん面白くなっていきそうだね。
その瞬間を見るのがあと一歩遅かったけど、ブランもシンクロ召喚を会得したみたいだし…ね。
シンクロモンスター同士のぶつかり合いも期待できそうだ…どうせならエクシーズ同士のぶつかり合いが見たかったけどね。
だけど、今出てきたシンクロはまだ進化の一端に過ぎないらしい。
ということは更なる切り札が控えている…のは間違いなさそうだ。
一方のブランはペンデュラムの性質を悪用…もとい、利用しての変わった方法で出したモンスターぐらいかな?今はね。
これも十分凄いけど、ブランにはまだエクシーズもシンクロも控えているからね。
本当にここからが見ものだね…異性ながら親友同士というの二人の激闘を見届けさせてもらうよ。
――――――
Side:ブラン
「いくぞ、ブラン!ここからが本当の真剣勝負だ…覚悟はいいな?」
「もちろん、できているわ。
知らない内にお前がシンクロ召喚を会得していたのには驚いていたけど…本気を出し切れていないのはオレも同じよ。
それを見せていない内からやられるわけにはいかないもの。」
その中には今しがた権現坂が行ったシンクロ召喚もあるわけだ。
しかもただのシンクロ召喚ではなく、ペンデュラムのその先とも言えるとっておきのものが。
もっとも経緯が事故に近い上、まだまだモノにしたとは言い難い。
今はまだ答えを見つけた段階だからな。
4戦目で得たペンデュラムのその先の答えをこの5戦目で完全にモノにした上で勝つ。
その相手がシンクロ召喚を会得した権現坂と言うわけだ。
相手にとって不足なし、オレの前に立ちはだかる大いなる壁だけど…乗り越えて見せるわ。
そのためにも、まずは権現坂の本命を出させないとね。
「あいや、そこまで!」
「!?」
「ふぇっ!?」
と…真剣勝負が始まろうとしたところに水を差す、空気を読まない厳格な声が。
道場長の声みたいだけど、どうしてここで止めたのかしら?
「この勝負…我が息子、昇の負けとする!!」
「は?はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
は?今、なんて言った?
それって、どういうこと…?わけが分からない。
ふざけんな…こんなので終わってしまったら、満足できねぇよ!
続く
登場カード補足
甲殻槍士ロブスター・ランス
ペンデュラム・効果モンスター
星5/水属性/水族/攻2000/守1800
Pスケール「7:7」
(1):自分の「甲殻」モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
(2):自分は水族・魚族のモンスターしかP召喚できない。
この効果は無効化されない。
『モンスター効果』
(1):このカードが召喚・P召喚に成功した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの表示形式を変更する。
(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。