Side:ブラン
LDSでの公式戦の三連戦が終わった後、少し時間が空いたから遊勝塾にも顔を出しておかなくちゃね。
「こんばんは、遅くなりました。」
「待っておりました!久しぶりです、ブラン君!」
「あなたは…あのニコ・スマイリー!?」
だけど、入り口で待っていたのは黒と黄色の虎柄のスーツを来た胡散臭い男。
彼はストロング石島のマネージャーをしていた『ニコ・スマイリー』。
その彼がどうしてここにいるのかしら?
「ストロング石島のマネージャーをしていたあなたがどうしてここに?」
「おう、お疲れブラン!実は吉報を持ってきてくれたんだよ。」
すると、塾長が言うには彼が何か嬉しい情報を持ってきたみたい。
聞いてみる価値はありそうね。
「喜べ、ブラン!お前、ジュニアユース選手権に無条件で出られることになったぞ!」
「え゛?無条件で?」
「そうです、ブラン君!
エキシビジョンとはいえあのストロング石島を破った君の実力を舞網市デュエル協会が認め、『特別枠』としてジュニアユース選手権への参加が許可されたのです!」
マジかよ!?あの試合でデュエル協会がオレの事を認めたってどういうことなの?
いや、ちょっと待て?おいしい話には何か裏があるというのが相場なはずよ。
それに、今のオレの実力のままではジュニアユース選手権の『特別枠』に入れたとして情けない醜態を晒すのは火を見るよりも明らか。
確かにとても嬉しい申し出ではあるのだけど…!
「ん、どうしたブラン?」
「ごめんなさい、嬉しい申し出だけど…その話、お断りします。」
「えぇぇぇぇ!?何故!?Why!?」
特別枠での出場を何も考えず了承したところで、勝ち残れる実力がなければ何も意味がないわ。
それに、他の正攻法で参加した方々に白い目で見られるのは明らかよ。
「ちゃんとした手順踏まずにそれで出場したら、卑怯者呼ばわりされてもおかしくないわ。」
「ノンノン!協会が認めたのですから、どうか胸を張って!」
いや、協会が認めたというあの勝負もVTRで客観的に見てみるとペンデュラム召喚というイレギュラーによる初見殺しにすぎなかったわけで。
むしろ、今思うと石島がどうしてあの勝負を認めたのが不思議に感じるくらいよ。
それにね…。
「それを使って出場したところで正攻法で出場した方々に立ち向かえるかは別問題。
何より、現状の自分自身の実力不足を思い切り痛感しているのよ。」
実際、さっきのLDSの各召喚コースのエキスパート3名を相手にした公式戦で1勝2敗だったことも実力不足を裏付けるわけで。
「成程、実力不足ですか。
ですが実のところ、ワタクシは現在フリーなのです。
ストロング石島はあの試合の後、自らタイトルを返上し『一から自分を鍛えなおす』と言って海外へ修行の旅に行ってしまったのです。」
あの後、石島はチャンピオンの座から降りて武者修行へ行ったのね。
このように意外と謙虚なところがあったのも、人気だった理由なのかもしれないわね。
それは兎も角…。
「身も蓋もない言い方をすると、要はマネージメントする相手が欲しかったわけね。」
「そうです!ワタクシは君から感じる才能と可能性にゾッコン惚れたのです!
そこでブラン君、ワタクシと一緒に一から頂点を目指そうではありませんか!」
このまま彼を無下に返したとして、ジュニアユース選手権に出られるかは別問題。
何より彼はストロング石島のマネージャーを務めていた以上は敏腕のはず。
特別枠は蹴るとして、マネージャーの件は乗ってみる価値が高そうね。
「それなら、あなたのマネージメント能力を見込んで折り入って頼みごとがあります。」
「頼み…いったい何をです?」
「実は、ジュニアユース選手権に出場するためにはあと5戦足りずに6割以上になるためには5連勝しなければなりません。
だけど、その対戦相手が見つからなくて困っています。
なまじエキシビジョンとはいえ石島選手を倒してしまったばかりに、最近は公式戦の申し出を断られてばかりで。」
現状の戦績は45戦25勝20敗。
出場資格を得るためにはあと5戦は戦わなくてはならず、その50戦で出場するためには5連勝が必要になるわ。
「時間があまりないことは承知しております。
ですが、最低5人…公式戦の相手を見つけるのに協力していただけませんか?」
「ふむふむ、それならお安いご用です。
君を鍛えあげるのにふさわしい相手を探し出すのに、ワタクシが全面的に協力いたしましょう!」
「ありがとうございます!よろしくお願いします!」
とりあえず、公式戦の対戦相手が見つからない問題はこれでなんとかなりそうね。
後は、自分の腕次第でどうなるか…がんばらなくちゃ。
「そういえば、他のみんながいないわね。先に帰ったのかしら?」
「タツヤたち3人は帰ったけど、柚子は里久を探しに行ってまだ連絡がないみたいだ。」
柚子と里久がいなくて連絡もないと…心配ね。
「ここに来て早々悪いんだが、二人…特に柚子の事探しに行ってもらえないだろうか?」
「構わないわ、心配だもの…見つけたら連絡するわ。」
前に柚子が思いつめた顔をしているのが思い出される。
心当たりはあるわ、早く探し出さないと…!
超次元ゲイム ARC-V 第14話
『鉄仮面の少女、再び』
Side:里久
とりあえずLDSの前まで来てみたはいいものの、警備が厳重だよ。
やっぱり一昨日のデュエルを中断したのは何か一大事が起こったからなんだね。
これじゃ、到底社長――赤馬零児に会わせてくれっていっても一蹴されるのがオチだね。
あくまで僕は立場上、目立ちすぎる行動をするのはまずい。
…悔しいけど、ここは我慢の時かな。
「やっぱりここにいた!」
「お?」
あれ、柚子だ。
口調から察するに僕を探してたみたい。
「塾に出てないのは、赤馬零児を狙っていたからなのね!
うちのブランに近づいた時と同じ!興味を持つとすぐストーキングしようとするんだから!」
ストーキングって酷い言われようだな…だからあの時は悪かったって。
ただ、赤馬零児を狙っていたのは否定できないけどね。
だって…エクシーズ・シンクロ・融合だけでなく、ペンデュラムまで使っちゃうのだからね。
それにしても、うちのブラン…ね?
「もしかして柚子ってソッチ系?」
「ちょっ…急に何を言い出すの!!」
「いや…軽い冗談だよ、冗談。」
あまり、柚子をからかわない方がいいかもしれないね。
「ま、赤馬零児は気軽に近づける相手じゃないのはわかってるけどね。
なんせ、レオ・コーポレーションの社長だし。」
「よくわかってるじゃない。でも、ごめん…今はあたしと来て!」
「え、ちょ!?どこ連れてくの!?」
「いいから!」
ちょっと、僕をどこへ連れていく気だよ!?
口ぶりからして塾へと戻るわけでもなさそうだし。
なんだかなぁ…?
――――――
Side:栗音
「ここが事件があったという現場ですわね。」
わたくしにエクシーズ召喚をご教授していただいた、西川先生が何者かに襲われてしまったとの報告がありました。
その報告を聞き、遊勝塾などという塾との対決を切り上げてLDSへ戻ってきたみたはいいものの会わせられないとの一点張り。
きぃぃぃぃぃ、まったくもって納得がいきませんわ!
これは確実にこのわたくしに何か隠し事をしておりますわね!
こうなってはいてもたってもいられません!
事件があったという現場の情報をお家の力で掴みましたわ。
そこで、負け犬と烈悟を伴い現場直行して今に至るわけですわ。
「俺は負け犬じゃなくて真文だって!」
「あら、空耳ではなくて?」
「それはいいとして、これ無断で入ったら拙いんじゃねぇか?」
確かに烈悟の言う通り、立ち入り禁止のテープが張られている以上は入るのは好ましくありませんわね。
ここは恐らくはLDSのトップチームの『制服組』が捜査に当たっている事でしょうから。
いくら財力があるとはいえ、今のわたくしはエクシーズコースの一生徒に過ぎません。
今入ろうとしても門前払いされるでしょうから、ここの捜索は後日といたしましょうか。
間違いなく、隠し事をしているのでしょうから気に食いませんがね!
「確かに今入るのは拙いですわね…今はやめておきましょう。
ここには例の襲撃犯はいらっしゃらないようですので、別の場所を探しますわ。」
「いや、今日はもう探すのをやめた方がいいんじゃないか?」
「真文の言う通りだ、そろそろ暗くなり始めてきたからな…。」
「あら、二人とも怖気づいたのかしら?
もっとも無理に付き合う義理はないから帰っても構わなくてよ?」
わたくしは強く、気高く、美しいのですから一人でも構わなくてよ。
例え襲撃犯がどんな方であろうと、わたくしのホープデッキの前にひれ伏す事になるのですから。
流石にあと今日は1〜2時間くらいが限度ですから、探すのも急がなくてはなりませんわね。
首を洗って待っていなさい!!
――タッタッタ…!
「って、栗音様が行ってしまったんだが。」
「仕方ねぇな、俺たちも手分けしてそれらしい奴を探してもし見つけたら連絡しようぜ?」
「そうだな…融合が悪用されているようで、同じ融合使いとして何か嫌だしな。」
――――――
Side:里久
柚子に引っ張られて行き着いた先は埠頭の方にある廃工場の倉庫らしき場所だった。
そして、その中へ連れてかれちゃった。
いったい、こんな怪しい場所で何するのかな?
「どうして、こんな人気のないところに?」
もしかして、何かにかこつけて僕を襲おうとしてるのかな?
いや、流石にそれはないと思うけど…ね?
――ギギギギギ…!
って、扉しめてるし。
本当に大丈夫かな?
――タッタッタ…!
と、ここで柚子が僕の目の前に立ってきた。
あれ…冗談だよね、ね?
「はぁ〜っ…お願い、あたしにエクシーズ召喚を教えて!」
「えっ、なんでまた…!」
「強くなりたいの、今のままじゃだめだから!」
どうも、柚子はエクシーズ召喚を学びたいみたい。
とりあえず、襲われるなんてことはないようでよかった。
「もしかして、あの巨乳のお姉ちゃんにいいようにやられたのを悔やんでる?」
確かにあの時の柚子さえしっかりしていれば、ブランにあのような想いをさせずに済んだかもしれないからね。
相当、悔しい思いしている事がよくわかった。
「あの時、赤馬零児は勝負を預けると言った。
あたしも遊勝塾を守るために力になりたいけど、今のままじゃダメ。
それでも、あたしは次こそあの桜小路栗音に勝ちたいの!だから…!」
「それで、同じエクシーズ使いの僕からエクシーズ召喚を教えてほしいと…?」
「だからお願い、教えて!」
う〜ん、困ったなぁ。
柚子の気持ちはよくわかるけど、立場上はあまり迂闊な行動はしたくない。
でも、エクシーズ使いが増える事自体は嬉しいことではあるからなぁ。
「う〜ん、どうしようかな?」
「…駄目?」
「いや、駄目というか…いいのかなぁ?」
エクシーズ召喚を習得できたら、間違いなく強くなるしなぁ。
こっちの人を勝手に強くするのは…う〜ん。
エクシーズ召喚の素晴らしさが多くの人に伝わるのはいいと思うんだけどね。
ま、少しくらいは大目に見てもらえるかな。
柚子のデッキにちょうどいいエクシーズモンスターがあることだし。
「ま、いいか。エクシーズ召喚、教えてあげるよ。」
「本当!」
「うん。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「はい、これがエクシーズモンスター。
同じレベルのモンスターをフィールドに揃えてから重ねてエクストラデッキから呼び出す。
これがエクシーズ召喚の基本中の基本だから、いい?」
「うん、大丈夫。
エクシーズモンスターによってレベル以外にも必要な素材が違うんだね。」
「まぁ、これは柚子のデッキに向いたエクシーズだけどね。
出したいエクシーズモンスターによって素材の指定や数はピンキリだから気を付けないと。」
結局、教えちゃってるよ。
身内に甘すぎるのが僕の唯一の欠点だよなぁ。
「細かいところで気を付けなきゃならない事はいっぱいあるけど、出すことそのものは決して難しくないからその辺は心配いらないよ。」
「わかったわ。」
細かい所というのはランクだったり、エクシーズ素材の扱いだったりとね。
この辺は追々教えるとして…!
「ん?」
「…!」
――ビュンッ!
ちっ、上の方で誰かに覗かれてたか…!
見たところ鉄仮面をしていて顔は伺えないけど、ブランと似た体格の女なのはよくわかった!
「待て!」
「え、どうしたの!?」
――ヒュ、ヒュン!!
ここでデュエルディスクを装着しておく。
謎が多いこいつだけど、この身のこなしは普通じゃないからね。
――ピィィィン!!
「そこっ!」
「ちっ…!」
――ガキィィィィン!!
っと、あっちもデュエルディスクを展開して攻撃してきたか!
当然僕も展開して迎え撃つ…!
だけど、鍔迫り合いは長く続かずお互いに弾かれる。
「きゃっ…!」
「くっ…!」
そうして距離が離れ一息ついたところで…!
「君、こっちの世界の人じゃないよね?」
「本日のお前が言うなスレはここかしら?」
どうやらそっちの事、話してくれる気がないみたいだね。
ま、僕も人の事は言えないんだけどね!
「あ!あなた、この前の!?」
「柚子の知り合いだったんだ。」
「実は…この前、沢渡とここで…!」
つまり、この前沢渡って奴を襲った真犯人ってのがこいつってわけか。
本当にブランにとってみれば、とんだとばっちりもいいところだ。
「今度のLDSの職員が襲われた事件もあなたがやったの?」
「…え?」
「…成程、やっぱりそれで警備が厳重だったわけだね。」
だけど、その件に関しては彼女はむしろ戸惑っているというような感じだね。
どうやら仲間みたいなのが、もう一人いると見た方がいいってことかなこれは?
「…あなた、何者なの?
沢渡とデュエルしたのはあたしを助けるため?それともLDSに恨みが?」
「それは…!」
――ガラガラ…!
「おーっほっほっ!見つけましたわ、あなたが西川先生を襲った犯人かしら?」
「あなたは、桜小路栗音!どうしてここに?」
っと、ここで柚子が打倒を目指していたエクシーズ使いの巨乳の姉ちゃんまででてきちゃったね。
どうやら、襲われたのは彼女を指導した人みたいだね。
どうみても怒ってるし…こりゃ、おっかないなぁ。
「最初の事件の現場に行けば何かつかめるかもしれないと思ったわけですのよ。
それで大当たりだったようですわね、わたくしと勝負なさい!!」
「ちょっと待ってよ!あたしはまだあの人と話が…!」
「邪魔しないでくださる?わたくしの話の方が先ですわ!」
「何言ってるの!それにまだ彼女が犯人と決まったわけじゃ…!」
確かに彼女を犯人と断定はできなさそうだね。
だけど、彼女が栗音って人に近づいていってるね。
「西川先生というのが誰かはご存じないのだけど、それで気が済むのなら相手になるわ。」
「きぃぃぃぃっ!そのような態度、気に入りませんわ!!
わたくしの前にひれ伏しなさい!お覚悟はよろしくて!」
あらら、どちらもやる気になっちゃったか。
これじゃ止められそうにないね。
「やめてよ!二人とも!」
「いや、こうなっちゃ止めても無駄だね。」
「里久まで!」
「それに僕としては二人の実力を見れるいい機会だ…しかと見させてもらおうかな。」
彼女が何者なのか、LDSのエクシーズが異世界出身と思われる彼女に果たして通用するのかをね!
「「デュエル!!」」
栗音:LP4000
???:LP4000
「先攻は頂きますわ!まずは手札から『ガガガマジシャン』を召喚します!」
『ガガガ…!』
ガガガマジシャン:ATK1500
「自分フィールドに『ガガガ』モンスターが存在する場合、手札から『ガガガキッド』を特殊召喚できますの!」
ガガガキッド:DEF1200
いきなり2体のモンスターを出してきたけど、レベルが違う。
ということは、効果でレベルを合わせてきそうだね。
「ここでガガガキッドの効果を発動します!
このターンのバトルフェイズを放棄する代わりに、このモンスターを他の『ガガガ』モンスター1体と同じレベルになりますわ!」
ガガガキッド:Lv2→4
「いきなりレベル4が2体。」
「柚子もよく見ておくんだね。」
エクシーズ召喚を早く習得したいのなら猶更のこと。
百聞は一見にしかずとはよく言うじゃん?
「わたくしはレベル4となったガガガキッドとガガガマジシャンでオーバーレイ!
麗しき純白の翼翻す希望の国の使者よ、我が下へ降臨なさい!エクシーズ召喚!ランク4『希望皇ホープ・ハート』!!」
『ホォォォォォプ!!』
希望皇ホープ・ハート:ATK2500 ORU2
「エクシーズ……この世界にまで…!」
出てきたのは前にも見た事のあるホープ・ハート。
防御能力の高さから序盤に立てるのには丁度いいモンスターだね。
一方で鉄仮面の女の方の表情はわからないけど、声色から悲しげな感じが伺える。
「あらあら、わたくしのホープを見て怖気づきましたの?
わたくしはカードを1枚伏せてターンエンドですわ。」
「いいえ、こっちの話よ…あなたにはわからないでしょうね。
わたしのターン、ドロー!手札から『
GHジェリー・スライム:ATK1000
まず出してきたのはホープより大分攻撃力の低いモンスターだけど…?
「ジェリー・スライムが召喚に成功した時、デッキか墓地から『融合』を手札に加えるわ。」
「っ…案の定、融合を持っていましたわね…!」
「へぇ、融合…成程ね。」
どうやら、こいつが融合の残党の可能性が高そうだね。
今は迂闊な事はできないけど、いずれは…!
「いかせてもらうわ、手札から魔法カード『融合』を発動!
わたしが融合するのは、手札の『GHグラス・イーター』と場の『GHジェリー・スライム』!
硝子の鳥と流動の魔物…二匹の英雄の心を重ね、絶望に叛逆する力と姿を示せ!融合召喚!現れなさい、吸引の捕食者!レベル4『
『ベボォォォオイ!!』
GHコラプサー・イーター:ATK1000
面倒な融合召喚で出てきたのは、攻撃力わずか1000のモンスターか。
これは何かありそうだね。
「融合召喚で何を出すのかと思えば、攻撃力わずか1000の気持ち悪いモンスターのようですわね。
そんなモンスターでいったい何ができると仰いますの?」
「これは体内に小さなブラック・ホールを宿したモンスターよ、甘く見ないことね。
その前にグラス・イーターを融合素材とした事で、相手の魔法・罠カード1枚を破壊させてもらうわ!」
――ビュイィィン!!
「っ、エクシーズ・リボーンが…!」
「まだよ!今度はコラプサー・イーターの効果を発動!
1ターンに1度、相手の表側モンスター1体を攻撃力1000アップの装備カード扱いとして吸収する!
希望皇ホープ・ハートを吸い込みなさい!」
――ヒュゥゥゥゥゥン!!ゴクッ!
GHコラプサー・イーター:ATK1000→2000(希望皇ホープ・ハート吸収)
「何ですって!よくも、わたくしのホープ・ハートを!!」
成程ね、吸収効果持ちだったのか。
融合のくせに小賢しい真似してくれるじゃん。
「あまり手荒な真似はしたくなかったのだけど、覚悟!
バトル!コラプサー・イーターであなたにダイレクトアタック!『スクリューアーツ』!!」
『ウゥゥゥゥウ!!』
――ビリィィィィ!!
「ひっ…いやぁぁぁぁぁぁ!!」
栗音:LP4000→2000
うげ…あの気持ち悪い融合のきりもみ蹴りで栗音の上半身の服をビリビリに引き裂いた!?
豊満な胸が丸見えだよ、どうすんのこれ?
すごく、目のやり場に困るんだけど…!
「やっぱり実際に衝撃が…里久、あっちを見ちゃだめ。」
「うん、わかってる。」
ま、柚子も目の前にいることだしあれを見ちゃだめだよね。
女子更衣室に入ったあの時は本当にすみませんでした。
「その恰好じゃ、まともにデュエルを続行できそうにないわね?
これ以上やってもお互いに無益よ、この場は引きましょう?」
「巫山戯ないで!よ、よくも、このわたくしをこんな破廉恥な恰好にしてくれましたわね!
絶対に許しませんわ!続けますわよ!」
いや、こっちが困るんだけど?
その恰好でデュエルを続行するのは絶対に拙いって…!
けど、柚子の服じゃ合わないだろうし…なにより今度は柚子本人が拙い格好になっちゃう。
かといって僕の服じゃサイズ的に絶対に着れないだろうしな…どうしよう?
上着あればそれでよかったんだけどね。
――ピカァァァァ!!
え、ここで柚子のブレスレットから強烈な光が…!?
「ねぷっ!?また…!」
「何がどうなっておりますの…!」
「えっ…きゃっ…!」
――ピィィィィン!!
うっ…眩しいなっ!?
っと、光が止んだみたいだ。
「あれ…?」
「消えた…?」
おかしいな…さっきまでいたはずの、あの鉄仮面の女の姿が消えた…?
「あの時と…同じ?」
柚子としてはこの出来事を前も経験してるみたいだね。
何かが原因で消えたってことかな?
「何処にいるの、柚子!いたら返事して!」
「ブラン…!?」
この声は、ブランだ…!
あ〜あ、ブランもあの鉄仮面の女の姿が見れるいい機会だったのに…間が悪いなぁ。
「はぁはぁ…いた、里久といっしょに…!
よかった…ここにいるかもしれないと思って来てみたら、案の定だったわ。
こんなところで何してるの、オレや塾のみんなを心配させて…!は…?」
だけど、間が悪いのはそれだけじゃなかった。
彼女の目の前には上半身を曝け出した栗音の姿が…!
「あのエクシーズ使いまでどうしてこんな!?」
すると、困惑しているブランの前に栗音がにじり寄る。
いくら女の子同士だからってその恰好でブランに近づくのはどうかと思うなぁ。
「あなたはユーヤ・B・榊!いったい、あの鉄仮面の女を何処へやりましたの!」
――ガシッ!
「ちょっ、苦じい…いきなりペンデュラムを引っ張らないで!きゃっ!」
「きゃあっ!」
――ドッ、どさっ!
あっ、ブランが突き放そうと栗音を押したところ…あっ。
引っ張られる形でブランが栗音の方へ倒れ込んでしまい、あるものを掴んでしまったみたいだね。
――ぷにっ…!
「ひゃあ…ひっ!」
「え゛…おま…!」
あ〜あ…フリーズしちゃってるけど、ブランってばやっちゃったね。
露出した栗音の生乳を鷲掴みしちゃってるよ。
柚子に至ってはあまりの状況に頭を抱えてるし。
「い、いい、いきなりなんてことしてくれますの、このスケベ!」
――バチンッ!
あちゃ…ブランってば同性に平手打ちされちゃってるよ。
「いたっ!?ふざけんな!そんな下品な脂肪見せてる方が悪いだろ、この痴女!」
「なな、なんてこと仰いますの!好きでこんな恰好してるわけじゃなくてよ!」
「ああ、もう!くそ…オレが悪かったって!上着貸すから、これで隠せよ!!」
――パサッ…!
「うっ…キツイですわね。」
「仕方ないだろ、オレ小柄なんだよ…!
それでも、ないよりはましじゃない…!」
「どうやら、あなたとさっきまでいた鉄仮面の女では対応の差がありますわね。」
とりあえず、ブランはマントみたいに肩にかけてた上着を栗音に渡して体を隠させた。
でも…サイズが合わないせいか大きい胸がいっそう強調されちゃって逆にアレな気もするけど、大丈夫かなぁ?
「だから、鉄仮面の女って何なのよ?」
「そこにいる彼女の顔見知りらしき融合使いのようですわ。
と、とにかく…今回はわたくしの方も…悪かったですわね…!
この借りはいずれお返し致します!では、ごきげんよう!」
「え、柚子の…?」
――サッサッサ…!
栗音は顔を赤らめながらもそう言い残して外へ出て行っちゃった。
ブランって上着ないと、柚子と酷似した格好になっちゃうんだね。
「聞きたい事まだあったけど、行っちゃったわね。
そういえば、柚子は里久といっしょに何をしていたのかしら?」
「う…ちょっとね。」
「実は僕と特訓してたんだよ、エクシーズ召喚のね。
どうもさっきの栗音って人に次は負けたくないみたいだからね。」
「うう…」
別にブランには隠す事じゃないはず…あれ、柚子?
「あっ…もしかして僕からエクシーズ召喚狙うの、ブランにも内緒だった?」
「柚子がエクシーズ召喚を?
ふふっ、ジュニアユース選手権に向けてがんばっているみたいね。」
「え?」
ジュニアユース選手権?何それ?
「それと、オレもあと5戦の相手を見つけてもらえることになったわ。
今日たまたま会った、あのニコ・スマイリーが協力してくれることになったの。」
「そう、よかったね…」
「今日のLDSの各召喚コースとのエキスパートとの公式戦の戦績は散々だったけど、あと5戦こそ全勝してジュニアユース選手権に出場してみせるわ。」
どうやら、ブランと柚子はその大会へ出場するみたいだね。
ブランはまだ出場条件を満たしていないみたいだけど。
もし出られるなら僕も出てみたいな。
「ねぇ、その選手権って僕も出られるの?」
「う〜ん、里久はここにきてから公式戦やったことないでしょ?
ジュニアユース選手権に出るには…いや、公式戦未経験ならあの方法も使えるわね。」
「その方法って何!」
へぇ、どんな条件かは知らないけど僕も出られそう!
「確か、負けなしの6連勝で出場資格を得られるって規定もあるはずよ。」
「やった!それなら簡単だね!それじゃ、僕の分もニコって人に紹介してほしいな。」
「簡単に言ってくれるわね…でも、頼んでみるわ。」
へへっ、そうと決まれば何が何でもジュニアユース選手権に出なくちゃ!
どんなデュエリストと戦えるのか、楽しみだなぁ。
「そうそう、実はオレもエクシーズ召喚の習得を目指そうとしているところよ。
実は今日、ひょんなことからエクシーズモンスターを手に入れたわ。」
「え、ブランもエクシーズを?」
「へぇ、そうなんだ。」
へぇ、ブランもエクシーズの習得を目指しているみたいだね。
ブランってば、僕をいい意味で驚かさせてくれるね。
「柚子が内緒にしておきたいことを知っちゃったから、オレからも内緒にしておきたかったことを教えなきゃって思ったの。」
「そうだったのね…ブラン、選手権出場に向けてがんばってね。」
「うん、柚子も…がんばって!」
いい雰囲気だなぁ、この二人。
それにしても、ブランまでエクシーズ召喚を習得しようとしてるのか。
嬉しいけど、これは僕もうかうかしていられなさそうだね。
あれ、鉄仮面の女の件…二人とも忘れてない?
ま、いいかな。
あいつは、いずれ僕が狩る獲物なのだからね。
――――――
Side:ブラン
あれから数日が立ったわ。
栗音の奴に頬を叩かれるわ、貸した上着が中々会う機会がないために戻ってこないなどの不幸はあったけど明日はいよいよ5連戦の最初の試合の前日。
今、オレはその試合に向けてデッキを調整し終えたところよ。
「…こんなところね。」
北斗戦で披露した儀式召喚は一発ネタに近かったから今回はオミット。
本格的に導入するとなると今のデッキが別物になってしまうのもあるの。
ここでエクシーズモンスターを手に入れた事で、ようやく導入できたのがエクシーズ召喚。
一番導入したかったシンクロ召喚じゃないのが惜しいだけど、贅沢はいってられないわ。
栗音や北斗みたいに本格的に習っているわけではないけど、今まで使われた経験を思い出せば問題なく扱えそうね。
エクストラデッキに入る故に事故が回避でき、ここぞという効果的なタイミングで使いやすいのが魅力ね。
オレのデッキだと殆ど弄らなくても、余裕で出せるのも嬉しい所。
まずはこのエクシーズ召喚をこの5連戦でものにしないとね。
そして、赤馬零児が見出したという『ペンデュラムのその先』…!
できれば、連戦の期間中にそれを見つけておきたいところね。
そういえば、ニコ・スマイリーはお母さんにも明日からの5連戦について話したみたい。
そして、明日はお母さんも一緒に出向くみたいね。
ただ応援しに…行くわけでもなさそうなのよね。
ニコの方もどこか申し訳なさそうな表情をしていたのが気になるわね。
とはいえ…いずれにしても明日からの5連戦、このデッキで勝ち抜いてみせるわ。
そして、プロへの第一歩を踏み出すんだ…!
続く
登場カード補足
GHコラプサー・イーター
融合・効果モンスター
星4/風属性/天使族/攻1000/守1000
「GHグラス・イーター」+「GH」モンスター
このカードの融合召喚は上記カードでしか行えない。
(1):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「GH」モンスター1体を手札に加える。
(2):1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを攻撃力1000アップの装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
GHグラス・イーター
効果モンスター
星3/光属性/岩石族/攻 800/守 200
(1):このカードが召喚に成功した時、相手の墓地のレベル4以下の効果モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを除外する。
その後、エンドフェイズまでこのカードは除外したモンスターと同じ効果を得る。
(2):このカードを融合素材とした融合モンスターは以下の効果を得る。
●この融合召喚に成功した時、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
GHジェリー・スライム
効果モンスター
星2/地属性/水族/攻1000/守 100
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。
自分のデッキ・墓地から「融合」1枚を選んで手札に加える。
(2):このカードを融合素材とした融合モンスターは以下の効果を得る。
●このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの「GH」モンスターはそれぞれ1ターンに1度だけ相手の効果で破壊されない。