Side:里久
すごいや…融合使いだと思って侮っていたけど、それに加えてシンクロとエクシーズも出してきたか。
赤馬零児…3つの召喚法を同時に使う人なんて見るの初めてだよ!
エクシーズモンスターのティーチの攻撃だけはブランも防いだけど、あれにはオーバーレイ・ユニットを使った効果があっただろうからそれで正解。
多分、その攻撃を通していたら差は広がってたんじゃないかな?
これだけでもすごいけど、彼はまだ何か隠しているね。
だって、ブランがあの3体を倒す宣言をしても涼しい顔をしてるんだもん。
確か…あのおばさんはあいつがペンデュラムカードを開発してると言った。
もしかして、このデュエルでそれが見られるんじゃないかなと期待してる。
いずれにしても、ブランには悪いけど…今のままじゃ勝てる要素が見つからないねこりゃ。
遊勝塾が潰れちゃうのは残念だけど、仕方ないよね。
だって、始まる前から無謀だと思っていたもん。
あ〜あ、これなら僕が出るべきだったな…!
勿体ないことしたよ、まったく。
ようやく、僕の本気を出すに相応しそうな相手が見つかったのにな!!
超次元ゲイム ARC-V 第12話
『突きつけられる現実』
ブラン:LP2850
零児:LP6850
DDD烈火王テムジン:ATK2000
DDD疾風王アレクサンダー:ATK2500
DDD海洋王ティーチ:ATK2500 ORU2
Side:ブラン
あの三体を全てぶっ飛ばす手筈は整えた…!!
まずは、ペンデュラム召喚からいく!
「オレはスケール1の『タイムテール・ロブスター』とスケール5の『シュテルアーム・ロブスター』でペンデュラムスケールをセッティング!!」
タイムテール・ロブスター:Pスケール1
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5
「さらに、このターン水族しか特殊召喚できなくする代わりにシュテルアーム・ロブスターを自身のペンデュラム効果でスケールを8にする!」
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5→8
これで、レベル2から7の水族モンスターを同時に召喚可能…!
「揺れろ、魂のペンデュラム!天界に架かれ、流星のビヴロスト!ペンデュラム召喚!現れろ、オレのモンスターたち!!
エクストラデッキからレベル5『甲殻水影ドロブスター』!そして、レベル7『甲殻神騎オッドシェル
『フゥゥ…!』
甲殻水影ドロブスター:ATK1800 forEX
『ウォォォォォォォ…!!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500 forEX
「来た、ペンデュラム召喚!」
「さあ、ここから反撃よ!ブラン!!」
「頼むぞ、ブラン!!」
いや、これはまだ準備の段階だから。
そしてオッドシェルに跨り、新たなモンスターを呼び出す!
「まだまだ、ここで『ウィング・トラウト』を通常召喚!」
ウィング・トラウト:ATK1000
「ウィング・トラウトが召喚した時、ドロブスターをリリースして効果発動!オッドシェルに翼を授けろ!!」
オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500→3000
「あ、オッドシェルに竜のような翼が生えたわ!」
「まるで、ロブスターというよりも何らかのドラゴンの一種みたいですね。」
確かに言われてみるとドラゴンにも見えてきた。
というより、元々割とドラゴンっぽい姿ではある…ロブスターだけど。
だけど、変化したのは見た目だけじゃない!
「これでこのターン…オッドシェルの攻撃力は500上がり、相手モンスター全てに攻撃できるようになった!」
「そう来たか。」
そう、全体攻撃付与と打点強化…これであの3体を全て蹴散らしてやる!
「いくぜ、オッドシェル!バトル、まずは烈火王テムジンに攻撃!『螺旋のシュトロム・シュラーク』!!」
――ザッバァァァッ!!
「くっ…!」
零児:LP6850→5850
よし、通った!次は効果だ!
「ダメージ計算後、オッドシェル・P・ロブスターの効果!破壊したモンスターをデッキに戻し、アンタに1000ダメージを与える!」
「ぐぅっ…!だが…テムジンは破壊された場合、墓地の契約書1枚を手札に戻せる。
これにより『地獄門の契約書』を手札に加える。」
零児:LP5850→4850
成程、エクストラデッキに戻ろうが破壊されれば効果が発動するのは厄介だな。
だが、それでもやる事は変わらない…一気に蹴散らしてやる!
「そして、残りの2体も攻撃だ!『螺旋のツヴァイ・シュラーク』!!」
――ズバッシャァァ!!
「そして効果でその2体をエクストラに戻し、合計2000のダメージを喰らえ!!」
「ぐおぁぁっ…!見事だ、一気にここまで削ってくるとは。」
零児:LP4850→4350→3350→2850→1850
よし、このターンだけで5000も削る事ができた…!
この調子で行けば、塾を守り切れる!!
「よし!!」
「やったわ、このターンだけで一気にライフを削れた!」
「くぅ〜っ、痺れすぎてたまんな〜い!」
「いいぞ、ブラン!その調子で熱血だ!!」
でも、今回の攻勢はここまで。
「ウィング・トラウトの効果を使用したターンは、対象のモンスター以外は攻撃できないからこれで攻撃終了。
だけど、宣言通りにあの3体を倒すことができた!みんな…ご喝采、ありがとう!!」
が、まだまだ気は抜けない。
肝心の零児は大ダメージを受けたのにも関わらず、まだ涼しい顔をしてやがるからな…。
それならこのまま、アクションカードを探すまで。
「ペンデュラム召喚に加え、オッドシェルのバーン効果が1ターンに複数回発動できる事を生かしての全体攻撃…実に見事だった。
そのお礼と言っては何だが、次は君にとって…残酷な現実を見てもらう。」
「っ…!?」
「へぇ?これは、もしかしてアレがくる…?楽しみだな。」
今度は残酷な現実を見せるだと…?
三大召喚を行っておいて、今度はいったい何をしようというんだ?
それに里久…お前はどうして相手に期待しているんだ?
いや、相手のペースに飲まれるな…自分のできる事を考えろ…!
「この瞬間、罠カード『DDDの人事権』を発動!
手札・フィールド・墓地の『DD』モンスター3体をデッキに戻し、デッキから新たな『DD』モンスターを2体手札に加える。
私は墓地の『DD』モンスター3体全てをデッキに戻し、デッキから『DDプロト・ガリレイ』と『DDプロト・ケプラー』の2体を手札に加える。」
「なっ…!?おい、冗談だろ…?」
どう見ても、例のアレじゃねぇか…!
確かあの理事長がそれを匂わせる発言をしてたけど、よりにもよってこんな時にできていたなんて…!
今はここ場にいないあいつが使っていた時とは次元が違う。
どう見てもアレはやばい、冷や汗が止まらない…!
それに、本来ならバトルフェイズに入った直後にこれで全体攻撃の損害を減らせたはず。
だけど、プレミしたというよりはわざと受けたようにしか見えない…!
――ガクガクブルブル…!
「ブラン!?急に震えてどうしたの、しっかりして!!」
「相当、ブランにとってショックなものが相手の手札に来てしまったみたいですね…!
それにしても、あえてこのタイミングであの罠を使用してきましたか…遊ばれてますね。」
「ついにくるんだ…アレが!」
どうして体が震えてるの…オレ?
現実から逃げちゃだめだ、この隙にアクションカードを拾って備えろ…!
まだ、最後のプレイから1分経ってない…よし、見つけた!
――ぱすっ!
「はぁ、はぁ…オレはカードを1枚伏せてターンエンド…!
この瞬間、ウィング・トラウトは効果で手札に戻り…オッドシェルの攻撃力も元に戻る!」
オッドシェル・P・ロブスター:ATK3000→2500
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール8→5
「私のターン、ドロー!まずは永続魔法『地獄門の契約書』を発動し『DDD反骨王レオニダス』を手札に加える。
そして、私はスケール1の『DDプロト・ガリレイ』とスケール10の『DDプロト・ケプラー』でペンデュラムスケールをセッティング!!」
DDプロト・ガリレイ:Pスケール1
DDプロト・ケプラー:Pスケール10
「「「「「なっ!!?」」」」」
「まさか本当に来るなんて…!」
「くっ…!」
そう、アレというのはペンデュラムカードの事だ…!
自分由来ではないカードでのペンデュラム召喚がこんな早く来るなんて…!
それにあのペンデュラムカードのスケール幅、広すぎだろ…?
「あれはペンデュラムカード!?」
「そんな…!」
ブレイクスルーと引き換えに交換したから、沢渡の奴もペンデュラムカードを持っている。
オレが困惑しているのは、こんなに早く相手がペンデュラムカードを製造できたという現実だ。
それと、スケール値がやたら広いこともある。
「これでレベル2から9のモンスターが同時に召喚可能!
我が魂を揺らす、大いなる力よ!この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!出現せよ、私のモンスターたちよ!!
レベル7『DDD反骨王レオニダス』!同じくレベル7、二色の眼を持つ黒龍『DDD異眼王オッドアイズ・アーサー・ドラゴン』!
そして、全ての王をも総べる超越神、レベル8『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』!!」
『ンナァァァァ!!』
DDD反骨王レオニダス:ATK2600
『ガァァァアアッ…!!』
DDD異眼王オッドアイズ・アーサー・ドラゴン:ATK2600
『オォォォォォォ…!!』
DDD死偉王ヘル・アーマゲドン:ATK3000
これが赤馬零児のペンデュラム召喚ってわけか…!
出てきたモンスターの攻撃力は全てオレのオッドシェルを上回ってやがる…!
問題はそれだけじゃない、なんだよこれ…?
「オッドアイズ…だと?」
「そこか…もっとも、君はかつて『オッドアイズ・ドラゴン』を使っていた時期があるそうだな。」
そう、スランプだった時期にオレはそんな名前のドラゴンを使っていた。
そして、オッドアイズといえば今は沢渡の手にある魔術師ペンデュラムのペンデュラムスケールの変動を阻止できるカテゴリ。
あくまでもペンデュラムならという話だが。
そもそも、DDでありながらオッドアイズの名を何故冠してるのかがわからない。
もっとも、今はそんなこと考えている余裕はない…!
「この際、それは置いておくとしてバトルだ。まずはレオニダスでオッドシェル・P・ロブスターを攻撃!『ワイドショット』!!」
『デュワ!!』
――ザァァァァァ!!
「あうっ……!破壊されたオッドシェルはエクストラデッキに戻る。」
ブラン:LP2850→2750
どうみてもあの特撮ヒーローの技だが、そんな事言ってられるような状況じゃない。
次はどうくる…!
「続け!オッドアイズ・アーサー・ドラゴン!ここでオッドアイズのモンスター効果を発動!
バトルフェイズに私の場の『DD』1体…レオニダスを手札に戻し、攻撃力を500アップする!」
オッドアイズの能力はモンスターを手札に戻しつつ攻撃力500アップ…!
次のターンのことを考えるとここは…!
「手札に戻させない!罠発動『ブレイクスルー・スキル』!このターンの間、オッドアイズの効果を無効にする!」
――パキィィィンン!!
「…そう来たか、だが攻撃は続行だ!『アヴァロンズ・バースト』!!」
ダメージは避けられないけど、今使う!
「ダメージ計算時に罠発動『回遊流し』!まずは戦闘ダメージを半分にする…ぐあぁぁぁぁぁっ!!」
ブラン:LP2750→1450
「その後、デッキから水族か魚族のレベル3モンスター『イージス・キャンサー』を手札に加える…っ。」
これは今からでも壁として使えるモンスター。
もしもの時のために手札に加えておく…あくまでも最終手段だ。
「このタイミングでそれを使ってきたとなると…まぁいい。
やれ、ヘル・アーマゲドン!『スプレッド・デストロイヤー』!!」
「やらせない!アクションマジック『回避』でその攻撃を無効にする!」
さっき拾ったアクションカードがこれだ。
効果的に使える時に使っておかないと…!
「何とか、凌げたわ。」
「ひやひやさせますね…。」
危ない、何とかこの攻勢は凌げたみたいだ。
大丈夫だ、今のところまだ活路はある…はず。
「では、私はカードを2枚伏せてターンエンド。」
「見事だわ、零児さん。
そこまでペンデュラム召喚を使えるなら、もう遊勝塾もユーヤ君も…潰してしまえばいいわ。」
ちっ、あのレオ・コーポレーション社長がペンデュラム召喚を成功させた今…理事長にとってオレは邪魔らしい。
そうなると、負けた場合はペンデュラム召喚までも敵の独占状態…さらにはオレが人生のターンエンドを迎えるのが目に見えている。
それに、負けられないというのに極度の不安と疲労のせいか目の前が霞んで見える始末…!
「はぁ…っ…!」
――ふらっ…
ちくしょう、こんな時に眩暈が…!
「倒れるな、ブラン!まだ勝負は終わってないぞ!熱血だ!!」
塾長…!?そうだ、まだデュエルの途中。
こんなところで、倒れるわけにはいかない…!
――パンッ!!
「そうだ、塾を守るためにもデュエルに勝たなきゃ…!オレの…ターン、ドロー!
シュテルアーム・ロブスターをペンデュラム効果でスケールを8に!」
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール5→8
「はぁ、はぁ…ペンデュラム召喚!現れろ、オレのモンスターたち!!
エクストラデッキから再び現れろ『甲殻水影ドロブスター』!『甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター』!!」
『フンッ!』
甲殻水影ドロブスター:DEF1600 forEX
『ウォォォォォォォオオ!!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500 forEX
「よし、ブランはまだまだやる気だ!!」
「がんばって、ブラン!」
だが、そろそろ眩暈がやばいのも事実。
だから、このターンで決着を付けてやる!
「さらに『ウィング・トラウト』を召喚!効果によりドロブスターをリリースし、オッドシェルに翼を授ける!
これでオッドシェルの攻撃力は500アップし、全体攻撃が可能になる!」
ウィング・トラウト:ATK1000
『ウォォォォッ!!』
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK2500→3000
これで準備は整った…!
まずはレオニダスに攻撃し、オッドアイズの効果を使ってきたところで墓地のブレイクスルー・スキルの効果で阻止する。
そうして、レオニダスとオッドアイズの両方を撃破すればオッドシェルのバーン効果で…勝てる!
さらに、ペンデュラムゾーンのタイムテールの効果でオッドシェルの攻撃時に相手は魔法・罠を発動できない…いける!
「いいわ、このままいけば相手を倒して遊勝塾を守れる!」
「そう上手くいくでしょうか…?」
「え…?」
「ま…僕としては、あいつに同じ戦法が2度も通用するとは思えないけどね。」
そんなこと…やってみなければわからないじゃないか…!
「バトル!オレはオッドシェル・P・ロブスターでで反骨王レオニダスに攻撃!」
「ここで、異眼王オッドアイズ・アーサー・ドラゴンの効果!
レオニダスを手札に戻し、このカードの攻撃力をターンの終わりまで500アップする!」
「やらせない!墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、オッドアイズの効果をターン終了時まで無効にする!
それに、タイムテールのペンデュラム効果でてめぇはダメステ終了時まで魔法・罠を発動できない…!」
これで、ぶっとべぇぇぇぇぇ!!
「私は手札から『DDコート・スライム』を捨て、『DD』モンスターのオッドアイズを対象に効果を発動する!」
「手札から…?そんなっ!?」
そんな…っ、ここにきて手札誘発だと…!
モンスター効果までは…無効にできない…!
「これにより、1度だけオッドアイズを対象とするカードの効果を無効にさせてもらう!」
「っ…あっ…!」
これじゃ、ブレイクスルー・スキルの効果が…通らない!?
「よって、オッドアイズの効果は有効となる。」
『ガァァァァァッ!!』
DDD異眼王オッドアイズ・アーサー・ドラゴン:ATK2600→3100
「攻撃力3100…!」
「対処できない事はないけど、今のブランには絶望的だね。」
ちくしょう…これじゃ両方とも攻撃したらオッドシェルが破壊されてしまう…!
「っ、何か手は…?あった、あそこにアクションカード!」
「っ!?そのカードの周りには…!取っちゃ駄目、ブラン!!」
この時、オレは周りの声もよく聞こえず…アクションフィールドの状況もよく見えていなかった。
そう、肉体的にも精神的にも最早限界だったんだ。
「であぁぁぁぁっ!!」
――ぱしっ…!バンッ!!
「が……あっ…」
ブラン:LP1450→950
「あのブランが…嘘…だろ?」
「己の得意とするアクションフィールドで…アクショントラップを引いてしまうとは…!」
「アクショントラップ『狙撃兵の誤射』…!
拾った者に500ダメージを与えつつそのターンの場合、強制的にエンドフェイズに移行する最悪のカード。
誠に残念だよ、ユーヤ・B・榊…これが心を乱した今の君の現実だ、しかと受け取るがいい。」
「あ…ひぐっ…。」
やってしまった……!
周りが見えていなかったばっかりに最悪のタイミングで最悪のアクショントラップを…!
普段のオレなら、フィールドの周りを見てから拾っているからこんな事態は起らないのに…!
帽子を目深に被って誤魔化すこともできないほど、泣き崩れた今のオレはあまりに惨めだった。
「…これでは遊勝塾が、ブランが…!」
「そんな…!」
「ブランはもう限界だったようです…もう、お終いですね。」
いくら後悔しても、むせび泣いても、もう…取り返しのつかない。
ごめん…なさい、柚子…権現坂…そしてみんな…!
「ぐずっ…ひぐっ…ターン……エンド…!ウィング・トラウトは…手札に戻る。」
甲殻神騎オッドシェル・P・ロブスター:ATK3000→2500
DDD異眼王オッドアイズ・アーサー・ドラゴン:ATK3100→2600
シュテルアーム・ロブスター:Pスケール8→5
「私のターン、ドロー!む…?」
――ガタガタガタガタ…!
えっ、相手のペンデュラムゾーンのカード2枚が突如として暴走を始めた…?
――ビリビリバリィィッ!!
DDプロト・ガリレイ:Pスケール1→2
DDプロト・ケプラー:Pスケール10→5
『グォォォォォッ…!!』
『ガッギャァァァァッ…!!』
「何っ…!?」
「あの2体のモンスターが…消えた!?」
「ペンデュラムスケールが狭まったことと何か関係が…!?」
あの2枚のスケールが大幅に変動すると、ヘル・アーマゲドンもオッドアイズも消えてしまった…!
これは、いったい…!?
「だが、これは好機だ!」
「これで次に彼がペンデュラム召喚しようとしても、レベル3と4のモンスターしか呼べないはず…!」
オッドシェルの攻撃力なら例えレベル4モンスター2体のペンデュラム召喚からのエクシーズでティーチを出されても相撃ちになる。
だけど、攻撃力を上げる手段がないとも…それに手札に戻ったレオニダスを出す手段がないとは思えない…!
「所詮はプロトタイプか、安定性に欠ける。
そして、スタンバイフェイズに私は地獄門の契約書のリスクを受ける…ぐっ…!」
零児:LP1850→850
「効果ダメージを受けたこの瞬間、手札の『DDD反骨王レオニダス』の効果を発動!
このカードを特殊召喚し、受けたダメージと同じ数値だけライフを回復する!」
『デュ…!!』
DDD反骨王レオニダス:ATK2600
零児:LP850→1850
ひぐっ、契約書のリスクさえレオニダスを出すトリガーになってしまう…!
さっきのは…儚い希望に過ぎなかったってことかよ…ぐずっ…!
「…フッ、フフフフフ…フッハハハハハハハ!!」
すると、突然相手が高笑いを始めた…?
「何故、今まで気付かなかった…ペンデュラムも完成系ではないことに…!」
「なっ…!?」
ペンデュラムが…完成系でない…?
どういう、ことなの?
「私には見えた…ペンデュラムの更なる進化の可能性が!」
ペンデュラムの更なる進化…!?
いったい、彼は何をする気…なの?
「今、それを実証して君に…」
「なんですって…!?」
「西川先生が…!?」
「「っ…!?」」
突如、理事長と栗音の大きな声がここにまで響き渡り思わず振り返った。
すると、スーツを着たグラサンの男が理事長に何か耳打ちしているようだ。
声色からも動揺していて、深刻そうな顔をしているわね。
「零児さん!!」
――シュン…タッ!
すると、何かの連絡を受けたあいつはこの場から早足で立ち去ろうとしていた。
「ぇ…?いったいどこへ…?」
「急用ができた…この勝負、預ける。」
余程急を要する用事ができたのか、相手は事実上の試合放棄を宣言した。
つまり…それって…!
「それって、遊勝塾には…!」
「ああ、手を退かせてもらう。
本来、この機会に君自身の腑抜けたデュエルに引導を渡すつもりだったが…こうなった今、忠告しておく。」
「忠告…?」
今は手を出さないみたいだけど…オレを潰すつもりだったのか…?
それに忠告って…!
「今のままの君のエンタメデュエルとやらは間違っている。」
「あ……。」
そう言いながら、彼含むLDSの連中は立ち去ってしまった。
そして、無情にもオレのやってきたエンタメデュエルが…否定されてしまった。
実力面でも精神面でも…圧倒的な力不足を思い知らされた。
相手の都合で勝手に手を引かれた今…塾を守ったという実感がない。
あはは…何もかも、わからなくなっちゃった。
そして、目の前が…
――ドサッ…!
「どうした!?」
「しっかりして、ブラン!!」
真っ暗になった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「ん…うぅっ…!」
うぐ…知らない天井だ。
嘘よ、ここは遊勝塾の健康管理室のベッドね。
「気が付いたか、ブラン。
デュエルが終わった後、すぐに倒れたからみんなも心配してたぞ。」
「本当に心配したんだから…!」
「心配かけちゃったね…塾長、みんな。
あんな不甲斐ないデュエルを見せちゃって、ごめんなさい。」
そう、あの時の柚子以上にオレの心がくすんでしまった結果があのザマよ。
まるで、力が及ばなかった上に…オレのエンタメデュエルが否定されちゃった。
「ブラン、起きてばかりで申し訳ないが…あの赤馬零児と戦ってどうだった?」
「格が違いすぎる…オレのデュエルが通用しなかった。」
表面的にはあと一歩のところまで追い詰めてはいたのかもしれない。
だけど、そもそもペンデュラムカードがプロトタイプということからも実験台に見られていた可能性が高い。
相手が最初から全力だったら…すぐにボロ雑巾にされる光景が思い浮ぶ。
「ペンデュラム召喚はいずれそうなる事は予想してたとはいえ…こんなに早くプロトタイプを作り上げていたなんて思わなかった。
面と向かってオレのエンタメデュエルは否定され、ペンデュラムは不完全といい…不安で頭が沸騰しそうだよ…!」
「お前の気持ちはよくわかる…むしろ居場所が奪われるかもしれないという不安と恐怖の中、よくがんばったと思う。
だがな、ブラン…エンタメデュエルと言いながら結局のところ独りよがりで、時折お前の弱気な地の部分が出ていたんじゃ否定されて当然だ。」
「やっぱり、そうだよね…。」
塾長…やっぱり、そう思われていたんだよね。
結局のところ…オレは自らの弱さをペンデュラムで誤魔化していたに過ぎなかった。
それでいて、感情的で後ろ向きになりやすい所が出たままデュエルしていた…エンターテイナーとしてまるでダメだ。
「それに、エンタメデュエルにはお前自身がどんな状況であれ笑みを絶やさずやるべきだ。
まずは、お前のそのすぐ後ろ向きになる弱気さを改善していかなければならない…すぐには難しいと思うがな。」
塾長の言う通り、相手の出方を恐れているとすぐ後ろ向きになってしまうのがオレの悪癖。
どんな不利な状況でも諦めず、むしろ笑みを浮かべないとエンタメデュエリストらしくないよね。
そうだ、オレ…純粋に悔しいんだ…このままじゃ終われるもんか!!
無意識に父さんの影を追いかけていたことを指摘されたから、自分のエンタメを貫かないとね。
「うん。それに、あんな事言われて悔しいんだ…!
だからオレ、腕も心も鍛えてもっと強くなる…それでいつか、オレだけのデュエルでみんなを笑顔にしたい!!」
「悔しいと思う気概があればなによりだ、がんばれ…ブラン!
それに、ペンデュラム召喚を生み出したものとして後を追う者の模範となれ!」
「ブラン…!」
――パシッ!
よし、後ろ向きなオレもここまでだ…もう逃げない!
今よりもっと心身共に強くなるためにも、もっとがんばらなきゃ。
「ありがとう、塾長…もっと、がんばる!」
――――――
No Side
「社長、お疲れ様です。」
一方でブラン…ユーヤ・B・榊とのデュエルを放棄してまでレオ・コーポレーションの管制室に帰還した赤馬零児ら3人。
部下から挨拶されながらも、すぐに案件に取り掛かった。
「うむ、西川襲撃事件の詳細を報告せよ。」
「はい、発生しましたのは舞網市内NLD38地区…発生時刻は16時58分で異常に強い召喚反応を検知しました。」
「召喚法は…?」
「融合です。」
どうやら、融合使いがLDSの職員を襲撃したようだ。
しかもその時間、零児たちは沢渡襲撃の疑いのあったブランとデュエルしていたため…彼女は犯行不可能である。
「その時間、ユーヤ・B・榊は私たちと共に…!
融合コースの落ちこぼれと見て光焔の証言を軽視しておりましたが、まさかこんな…!」
「何より、彼女はペンデュラム一辺倒で融合を使う知識も力も持ちえていなかった。
例えこの事件の襲撃犯が沢渡襲撃事件の犯人とは別人だったとしても、ユーヤ・B・榊が犯人ではないのは明らか。」
襲撃犯が沢渡の件とは別人であることを考慮に入れても、ブランが白であることは明白であった。
そもそも、LDSの一生徒に過ぎないとはいえ光焔ねねの証言が正しかったのだ。
「中島、西川の消息は?」
「今だ掴めておりませんが…室長、例のものを。」
「はい、事件現場にこちらが…!」
中島と呼ばれたグラサンの側近に促され、ある袋を提示する。
その中身には損傷のあるデュエルディスクとエクシーズモンスターの『交響魔人マエストローク』が目立つカードの山が入っていた。
「一早く駆けつけたティオのチームが発見しました。」
「損傷が激しいですが、西川のものに間違いありません。」
「…引き続き、我がLDSの総力を挙げて西川の行方を追え。」
「はい!」
そうして、冷静に引き続き西川の行方を追うように伝えた。
ブランの疑いが晴れたとはいえ、裏で何かが起こり始めていた。
続く
登場カード補足
ウィング・トラウト
効果モンスター
星3/水属性/魚族/攻1000/守1200
(1):自分メインフェイズ1にこのカードが召喚に成功した時、自分フィールドのモンスター1体をリリースし、自分フィールドの水属性・レベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターの攻撃力は500アップし、相手モンスター全てに1度ずつ攻撃できる。
この効果の発動後、ターン終了時まで対象のモンスター以外の自分のモンスターは攻撃できない。
(2):自分エンドフェイズに発動する。
フィールドのこのカードを持ち主の手札に戻す。
イージス・キャンサー
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻1100/守1600
「イージス・キャンサー」の(2)の効果はデュエル中1度しか使用できない。
(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(2):手札の水属性モンスター1体を捨てて発動できる。
このターン、このカードは戦闘では破壊されない。
この効果は相手ターンでも発動できる。
DDD異眼王オッドアイズ・アーサー・ドラゴン
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/悪魔族/攻2600/守2400
Pスケール「4:4」
「DDD異眼王オッドアイズ・アーサー・ドラゴン」のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分エンドフェイズに発動できる。
このカードを破壊し、デッキから「契約書」カード1枚を手札に加える。
『モンスター効果』
(1):1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドの「DD」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。
その後、このカードの攻撃力はターン終了時まで500アップする。
この効果はお互いのバトルフェイズにのみ発動できる。
DDプロト・ガリレイ
ペンデュラム・効果モンスター
星10/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
Pスケール「1:1」
(1):自分スタンバイフェイズに発動する。
このカードのPスケールを倍にする。
その後、このカードのPスケール以下のレベルを持つP召喚した自分のモンスターを全て墓地へ送る。
『モンスター効果』
(1):このカードが戦闘を行うダメージステップ開始時に発動する。
このカードの攻撃力はダメージステップ終了時まで自分のPゾーンのカードの攻撃力の合計になる。
DDプロト・ケプラー
ペンデュラム・効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0
Pスケール「10:10」
(1):自分スタンバイフェイズに発動する。
このカードのPスケールを5つ下げる。
その後、このカードのPスケール以上のレベルを持つP召喚した自分のモンスターを全て墓地へ送る。
『モンスター効果』
(1):1ターンに1度、自分フィールドのPモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。
DDコート・スライム
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 100/守 300
(1):相手ターンにこのカードを手札から墓地へ送り、自分フィールドの「DD」モンスター1体を対象としてこの効果を発動できる。
このターンに1度だけ、そのモンスターを対象として発動したカードの効果を無効にする。
狙撃兵の誤射
アクション罠
(1):自分に500ダメージを与える。
さらに自分のターンの場合、そのターンのエンドフェイズになる。