Side:ねね
ブランの所属する遊勝塾と、わたしが一応所属しているLDSとの対抗戦。
現在、お互いに一勝ずつのタイ。
そして迎えた3戦目…LDSからはシンクロ使いの『早見烈悟』。
高速シンクロが持ち味の彼は1ターン目から2体のシンクロモンスターを展開していきました。
そのうち1体の攻撃力は3000の大台を超えております。
その一方、彼とデュエルするのはブランの親友という『権現坂昇』。
彼は他塾所属みたいですが、わたしと違い対戦相手の立場でないのが幸いしたようで参加が認められたようです。
今はまだ動きを見せておりませんが、相手のシンクロ2体を前にしても動じている様子はありません。
彼の信条という『不動のデュエル』…どんなものかはわたしには判りませんが、信じるしかないようですね。
二人とも熱い心の持ち主みたいですが、速攻を仕掛ける早見さんに対し静かに機を待つ権現坂さん。
対照な二人によるこのデュエル…見ているこちらも気を抜けないものになりそうです。
超次元ゲイム ARC-V 第10話
『
権現坂:LP4000
裏守備×1
烈悟:LP4000
ジャンク・ウォリアー:ATK3100(ジャンク・ウォリアー効果)
ニトロ・シューター:ATK2300
ドッペル・トークン:ATK400
Side:ブラン
相手はいきなりのシンクロ召喚2連発。
この点でも展開の速さに関して相当なものと言える。
「言っとくが、これでもまだ動き悪いくらいだ。これくらいでビビっているようじゃついてこれないぜ?」
「男はどっしり構えて、慌てず騒がず。
無駄に動き回る輩に勝利を掴むことはできん!」
「そう返すか、面白い!」
そう、権現坂はその2体とトークンを相手にしても動じるそぶりも見せない。
何事にも動じない鋼のメンタルも彼の強みと言っていいわね。
だけど、トークンを中途半端に1体残してきたのが気がかりといえば気がかりね。
「バトル!まずはニトロ・シューターで裏守備を攻撃!『ダイナマイト・バレット』!!」
――ドガァァァァン!!
ニトロ・シューターが放ったの弾丸が炸裂し、権現坂の裏守備モンスターはなすすべもなくやられる。
もっとも、破壊されたモンスターは…!
「ぬぅ…破壊され墓地へ送られた超重武者装留イワトオシの効果!
デッキからイワトオシ以外の『超重武者』モンスターを手札に加える。これで手札に加えるのは『超重武者テンB−N』だ。」
そう、イワトオシだった。
実際にはフィールドから墓地へ送られるだけでいいので発動が容易で優秀なサーチカード。
無駄なくキーカードを集められるのが強みなのよ。
「次の一撃は重いぜ?ジャンク・ウォリアーでダイレクトアタック!『スクラップ・フィスト』!!」
――ドガァァァァッ!!
「ぐうっ…!!」
権現坂:LP4000→900
ダメージは避けられなかったか。
一気にライフが1/4以下になってしまったのは痛いわね。
だけど、3100のダメージを受けてなお踏みとどまっている。
「3100のダメージを受けて、踏みとどまった…!」
「これが不動のデュエル…!」
ねね、真髄はそこじゃない。
これはどちらかというと副産物みたいなものよ。
その本領は…実際に見た方が早いと思うわ。
とはいえ、相手の攻撃はまだ終わっていない。
「こいつも忘れちゃこまるぜ、ドッペル・トークンも続け!」
――ボォオン!
「ぐぬ…!」
権現坂:LP900→500
これで残りライフは500…いきなり崖っぷちに追い詰められてしまった形になるわね。
「追い詰められても威風堂々とした様子は相変わらずか。
それならあまり行儀はいいとは言えないが、アレを使わせてもらうぜ!」
「アレって…!?」
「いったい何をするつもり?」
攻撃が終わったと思ったらまだ何かやるみたいだな…!
行儀がよくないっていうのが気になるところだが…。
「ここでドッペル・トークンをリリースし、ニトロ・シューターの効果発動!
1ターンに1度、レベル2以下のモンスターのモンスター1体をリリースし、お前の手札をランダムに1枚捨てる!」
「ここで、俺の手札を…!」
成程、ハンデスしてきたか。
ランダム故に確実性はないけど、相手の撃てる手を減らせる厄介な手ね。
しかも、攻撃力わずか400のモンスターを棒立ちさせずに処理できたのも大きいわね。
「ああっ、権現坂の手札が…!」
「ハンデスは嫌がられる傾向にあるから、行儀がよくないと前置きしたのも納得ね。」
「でも、ブランだってハンデスはやるよね?」
うっ…確かにあなたとのデュエルで使ったわ。
それは置いといて相手の攻め手を削ぐため、有効な戦術であるものの行儀がいいとは言えないのも納得だ。
それを承知で使ったという事は、権現坂が一筋縄ではいかない相手だという事を感じたみたいね。
ドッペル・トークンを敢えて1体残していたのもこのためみたい。
そうしてソリッドビジョンでランダムに選ばれた1枚が捨てられた。
もっとも、権現坂の表情を見るに大した影響はなさそうだ。
「ふん、その行動が己の敗北を招くことに繋がらなければいいがな。」
「そうなったら怖いな。俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」
それどころか、墓地で機能するあのカードが落ちた可能性も十分ある。
いずれにしろ、次は権現坂のターン…頼むぜ!
「俺のターン、ドロー!『超重武者テンB−N』は相手の場に2体以上モンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない場合に特殊召喚できる!」
超重武者テンB−N:DEF1800
「あれは、前のターンでサーチしたカード!」
「捨てられなかったわけか、いいぜ。」
よし、テンB−Nは捨てられてなかったみたいね。
こいつは超重武者の展開の要と言える重要なモンスターだからこれは大きい。
「テンB−Nが特殊召喚した時、墓地の超重武者1体を守備表示で特殊召喚できる!甦れ『超重武者装留イワトオシ』!!」
超重武者装留イワトオシ:DEF0
「動かざるごと山の如し!不動の姿、今見せる!俺は超重武者テンB−Nとイワトオシをリリースし、アドバンス召喚!!
天下無双の鬼武者、ここに推参!レベル7『超重武者タダカ−2』!!タダカ−2は召喚した時、守備表示になる!」
『オォォォォォォオ!!』
超重武者タダカ−2:ATK800→DEF3200
「出た!権現坂のエースモンスター!」
「アドバンス召喚した途端、守備表示になっただと…?にしても守備力高いなオイ!」
これが権現坂のエースモンスターの1体…『超重武者タダカ−2』!!
一度も戦場では傷を負わなかったという、凄まじい逸話を持つ武将がモチーフだ。
「これが権現坂さんのエースモンスターみたいですが、守備表示ですか…大丈夫なのでしょうか?」
「心配いらないと思うぜ、光焔の姉ちゃん。」
「フトシの言う通り大丈夫、初見はビビると思うけど。」
エースモンスターを守備表示で出す…というのは滅多に見ないからな。
だけど、超重武者タダカ−2は守備表示でこそ真価を発揮するんだ。
「墓地へ送られたイワトオシの効果により『超重武者装留ブースト・アーマー』を手札に加える。
そして『超重武者装留ブースト・アーマー』を捨てて効果発動!このターン、タダカ−2はモンスターに2回攻撃できる!」
「2回の攻撃を可能にしたか。だが、守備表示じゃ折角のその能力も…」
「動かずして、勝つ!!権現坂道場、不動のデュエルの真髄!
バトルだ!俺はタダカ−2でジャンク・ウォリアーを攻撃!!」
「何っ、守備表示のままで攻撃だと!?」
そうだ、タダカ−2は守備表示で攻撃できる特殊なモンスターだ!
当然、それだけじゃない。
「タダカ−2は守備表示のままで攻撃でき、守備力の数値を攻撃力として使用する!!『豪槍・蜻蛉切』!!」
「しかも、守備力を攻撃力の数値に使用できるのですか!?」
そう、守備主体ながら実質攻撃力3200の強力モンスターとして扱えるんだ!
「そう、これが権現坂の不動のデュエルの一面――守備表示主体の攻防一体のデュエルだ!」
「これが、不動のデュエル…!」
とはいっても、これはあくまでも一面に過ぎないわ。
不動のデュエルの真髄はこんなものじゃないから。
――ズバァァドガァァァッ!!
「ぐあっ…!?」
烈悟:LP4000→3900
まずは、ジャンク・ウォリアーを撃破!
さらに、ブースト・アーマーにより二回目の攻撃も可能になっている!
「続いて、タダカ−2でニトロ・シューターに2回目の攻撃!『連槍・蜻蛉切』!!」
――ズバッシャァァァ!!
「がぁぁぁぁぁっ!!」
烈悟:LP3900→3000
よし、これで相手のモンスターを全滅させた!
ライフ差はあれど、これで盤面では有利になったわけだ。
「だが…ニトロ・シューターがフィールドから墓地へ送られた場合、墓地の『シンクロン』チューナー1体――クイック・シンクロンを手札に戻すぜ。」
…が、ニトロ・シューターにはサルベージ効果まであった。
これで次のターンも動いてくることは間違いない。
権現坂、油断はしないとは思うけど相手の展開に気を付けて!
――――――
Side:権現坂
相手のモンスターを一掃できたとはいえ、ニトロ・シューターのサルベージ効果で次のターンの準備をしてきたか。
だが、どんな状況になろうと慌てず騒がず。
たとえ部外者であろうと、ブランや柚子の所属する遊勝塾を守るため…俺は負けられぬのでな。
そして布陣は整いつつある…よし。
「俺はこれでターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー!
俺は手札から魔法カード『戦士の生還』を発動!これにより墓地のジャンク・シンクロンを手札に戻す。」
魔法の効果でジャンク・シンクロンまで戻してくるか…来るなら来い!
「手札のモンスター1体を墓地へ送り、チューナーモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」
クイック・シンクロン:DEF1400
「続いて、チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚し、効果発動!
墓地のレベル2以下のモンスター『ドッペル・ウォリアー』を効果を無効にし特殊召喚!!」
ジャンク・シンクロン:ATK1300
ドッペル・ウォリアー:DEF800(効果無効)
先ほどと同じ布陣か。
また、連続シンクロする気だろうが…今度はどう出る?
「今度は一味違うぜ?罠発動『エンジェル・リフト』!これにより墓地からレベル2以下のモンスターを特殊召喚する!」
「えーっ、また特殊召喚?」
「一人でやってるよ〜!」
む、相手の戦術にケチを付けるのはけしからんぞ。
もっとも、1人回しが過ぎるのは行儀がいいとは言えんのも事実だが。
「この効果で甦れ『チューニング・サポーター』!」
チューニング・サポーター:ATK100
先ほどのクイック・シンクロンで墓地へ送ったモンスターのようだ。
果たして、何が来る…?
「行くぜ、俺はレベル2のドッペル・ウォリアーにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング!
鉄屑の山に住みし鬼神よ、悪を諌め災いを祓え!シンクロ召喚!吠えろ、レベル7『ジャンク・バーサーカー』!!」
『ワリィゴハ……イネガァァァァァァァァ!!!』
ジャンク・バーサーカー:ATK2700
どこぞのなまはげの如く現れた紅き鬼神といったところか。
あの迫力のある外見と言い、油断はできん。
「まだだ、シンクロ素材となったドッペル・ウォリアーの効果で『ドッペル・トークン』2体を特殊召喚する!」
ドッペル・トークン:ATK400(×2)
それに加え、奴は2度目のシンクロ召喚の準備もできたようだな…!
「ここでチューニング・サポーターをシンクロ素材する場合、レベル2のモンスターとして扱える!
俺はレベル2となったチューニング・サポーターとレベル1のドッペル・トークン2体にレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
亡者の弓を引き絞り、光速の矢で希望を穿て!シンクロ召喚!いでよ、レベル7『ジャンク・アーチャー』!!」
『ハァァァッ…!!』
ジャンク・アーチャー:ATK2300
「またしても連続シンクロですか…!」
「確かあのモンスターの効果は…このままじゃ拙いわ!」
今度は4体のモンスターを素材にしてのシンクロ召喚…!
だが、ブランよ…この程度、機を違えなければ対処に問題はない。
「シンクロ素材にチューニング・サポーターを使用した事で1枚ドロー!悪いが、そのデカブツには一端退場していただくぞ。
ジャンク・アーチャーの効果発動!1ターンに1度、相手モンスター1体をエンドフェイズまで除外する!
これでタダカ−2を異次元へ飛ばす!『ディメンジョン・シュート』!!」
「そんなっ、権現坂の生命線が絶たれたら…!」
「やられちゃうよ〜!」
確かにここでタダカ−2が除去されてしまえばそこまでだ。
だがこの男、権現坂…これしきのことではやられはせん!
「この瞬間、手札の『超重武者クノ−1』を墓地へ送り効果発動!
これでターン終了時までお主のジャンク・アーチャーの効果を無効にする!」
『ハァァァッ…!』
――シュッ!
『オォッ…!』
ジャンク・アーチャー:ATK2300(効果無効)
「危ねぇ、ひやひやさせるなよな…!」
「流石、権現坂…抜かりなく防いできたわね。」
応よ、まずはこの一撃を防いだぞ。
次は如何様にくる?
――――――
Side:ブラン
手札誘発があったから、ジャンク・アーチャーの効果はなんとか防げた。
あれが通ってたらかなり拙かったと思う。
問題はここからよ。
タダカ−2がいるとはいえ、相手はそろそろアクションカードを拾ってきてもおかしくないはず。
「手札誘発で防がれたか、それなら賭けに出てみるとするか…!」
――パシッ!
アクションカードの目星がついていたみたいで取られてしまったわね。
何を手にしたのかが気になるところだが、ここだと打点強化系が多いはず。
「よし。バトル!ジャンク・バーサーカーでタダカ−2に攻撃!」
「ぬっ…?」
守備力に劣っているのに攻撃を仕掛けてきたか。
アクションカード…あるいはジャンク・バーサーカーの能力かしらね。
「ジャンク・バーサーカーは守備表示モンスターを攻撃した時、ダメージ計算を行わずにその守備モンスターを破壊する効果がある!これで!」
――ガキィィィン!
「弾かれた!?」
「アドバンス召喚したタダカ−2がいる時、自身含む守備表示の『超重武者』は1ターンに1度だけ効果では破壊されん!」
それにタダカ−2は限定的ながらも効果破壊耐性も持っているのも強み。
権現坂の布陣がそう簡単に崩されてたまるかよ。
「だったら、これでどうだ!アクションマジック『ガイスト・ソード』を発動!
これでタダカ−2の守備力を永続的に1000ダウンさせるぜ!」
――ザシャァァッ!
『グォォォッ…!』
超重武者タダカ−2:DEF3200→2200
そこで守備力を下げて戦闘破壊を狙いに来たか。
こうなると権現坂が手札にあのカードを持っているかどうかにかかってくる。
彼は信念とカード効果の都合上の両面でアクションカードを取る事は絶対にないからね。
そして、まだジャンク・バーサーカーの攻撃は終わっていない。
「喰らえ『バーサーク・ブレイク』!!」
――バガァァァン!!
「ここで俺は手札の『超重武者装留ファイヤー・アーマー』を捨て、効果発動!
タダカ−2をこのターンの間、守備力を800下げる事で戦闘及び効果の破壊から守る!」
超重武者タダカ−2:DEF2200→1400
「またしても手札誘発…攻撃を素直に通してはくれないわけだな…!」
「俺の信じるデッキが俺を助けてくれただけに過ぎん。」
「あのお方…あの早見を相手に中々やりますわね。」
ふぅ、ヒヤヒヤしたけど攻撃を防ぐカードで良かった。
俗に言う手札誘発はパワーでは罠に及ばないのが殆どだけど、奇襲性が高いから便利なのよね。
「これ以上は攻撃しても意味がないからな、俺はこれでターンエンドだ。」
「この瞬間、ファイヤー・アーマーの効果が終了し、タダカ−2の守備力が2200に戻る。」
超重武者タダカ−2:DEF1400→2200
ターンを終えたとはいえ、ガイスト・ソードの効果は永続なのが厳しいわね。
このままだとあの2体の両方とも倒す事はできない。
特にジャンク・アーチャーの場合は効果も復活したから残したくないところよ。
何とかして倒す手段を引くしかない状況ね…でも、堂々とした姿勢は崩れてないからあまり心配はしてないわ。
と、ここでねねがある疑問を口にする。
「ふと思いましたが、どうして彼はアクションカードを取りにいかないのでしょう?」
「それが彼のデュエルよ。
アクションカードとて魔法・罠で使用後は墓地へ行くのはわかるよね?」
「それってどういう…そういえば…まさか!?」
「そのまさかなんだ、ねね。」
権現坂のデッキは文字通りフルモンスター。
聞いただけでは無茶苦茶なデッキだと思うけど、意外と理にかなった構築をしていてとても強いんだ。
さっき使ったクノ−1だって実際は墓地に魔法・罠があったら使用できないの。
それに権現坂は『デュエルとは己のデッキを信じ戦うもの。何が出るかわからないアクションカードに望みをかけるのは百害あって一利なし』という強い信念を持っているの。
逆にオレはアクションカードを利用する戦術を好んでるけど、対照でもお互いの違う考えを認め合っているからこそ親友なのよ。
最初はオレも権現坂の不動のデュエルのデッキや戦い方に面食らったわ。
でもその戦術や戦い方は正直真似できないけど、とても強力でしかも格好いい。
「こんなデュエルもあるのですね。」
「変わったデュエルだけど、とても痺れるくらいすごいんだぜ!」
「うん!」
子供たちだって権現坂のデュエルの凄さは知っている。
権現坂、あなたの信じる不動のデュエル…見届けさせてもらうわ。
「俺のターン、ドロー!俺は手札から『超重武者装留グレート・ウォール』を装備カードとしてタダカ−2に装備!これでタダカ−2の守備力は1200アップする!」
超重武者タダカ−2:DEF2200→3400
「ここで守備力強化のカードとはな…運よく引いてくるとはすごいな。」
彼は権現坂のことをよく見てるわね。
どうやら、元からあったものではなくここで引いてきたものみたい。
「見抜かれたか。だが、運ではない!俺の覚悟が呼んだのだ!」
「信念が運命を引き寄せてきたわけか…そうこなくちゃな!」
「バトルだ!タダカ−2でジャンク・アーチャーを攻撃!『豪槍・蜻蛉切』!!」
――ズバァァァッ!
「ぐあぁぁっ、くっ…!」
烈悟:LP3000→1900
ここで厄介な除去能力を持つジャンク・アーチャーを破壊できた!
それにこれでライフ差を詰める事が出来た。
「一進一退の凄まじい攻防です。」
「よし、もう一息よ!」
「でもさ、ゴンちゃんは手札1枚でライフ500…そう都合よく次のターンも耐えきれると思えないんだよね。
相手だってまたシンクロ召喚してくるだろうしさ。」
そういえば、里久も今まで権現坂のデッキを知らないんだったよね。
それじゃ、あのカードの存在も知らないか。
アクションデュエルだと特に威力を発揮する権現坂の切り札を…!
「確かにそうかもね…でも、権現坂は諦めていないわ。
それに権現坂の言葉を思い出してみて?あのハンデスであのカードが墓地へ落ちた可能性も高そうよ。」
「なにそれ?」
「え〜と、確か…あっ、あのカードがあるかもしれないわ!」
柚子は気が付いたみたいね。
権現坂が『その行動が己の敗北を招くことに繋がらなければいいがな。』と言った手前、可能性は高いわ。
「俺はこれでターンエンド。」
手札1枚を残してターンを終えたわね。
お互いにライフが危なくなってきているはず、仕掛けるならこの相手ターンよ。
「俺のターン、ドロー!来た!俺は800ライフを払って魔法カード『調律復号』を発動!
墓地のチューナーモンスター『クイック・シンクロン』を蘇生する!」
クイック・シンクロン:DEF1400
烈悟:LP1900→1100
まずは蘇生カードでチューナーを展開してきたか。
「その後、デッキトップのカード1枚を墓地へ送る!
来た!これで墓地へ送られた『ダンディライオン』の効果で俺の場に『綿毛トークン』2体を特殊召喚する!」
綿毛トークン:DEF0(×2)
おいおい、なんて運命力だよまったく…!
墓地で発動する効果を持ったモンスターをこのタイミングで落としやがった!
「運命を引き寄せてきたか。お主もデッキを信じ戦っているようだな。」
「まぁな。俺はレベル1の綿毛トークンにレベル5のクイック・シンクロンをチューニング!
燃え上がる魂を弾丸に宿し、勝利の号砲を撃ち上げろ!シンクロ召喚!レベル6『ニトロ・シューター』!!」
『ハァァッ!!』
ニトロ・シューター:ATK2300
「またお前か。」
またしてもこいつが出てきやがったか。
こいつが出てきた以上、権現坂の手札を空にするつもりだろう。
「レベル1の綿毛トークンをリリースし、ニトロ・シューターの効果を発動!
お前に手札誘発があると想像はついてる!さあ、その1枚を捨ててもらうぞ!」
「む…!」
権現坂はハンデスを受けて手札0になったわけだ。
これでもう手札誘発に頼ることはできない。
ここからはハンデスで落とされたカードが墓地で機能するカードかどうかにかかってくるわけだ。
ただ、相手にとってこのよかれと思ってしたであろう迂闊な行動が墓穴を掘ったかも。
墓地へ送られたカードのおかげで勝利を手にする…こういうエンタメもいいわよね。
だけど、権現坂の表情に大きな変化は見られない。
「いくぞ、チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚!
効果で墓地の『チューニング・サポーター』を特殊召喚!」
チューニング・サポーター:DEF300(効果無効)
今度はドッペル・ウォリアーじゃなくてチューニング・サポーターを蘇生してきたか。
レベル2になる効果を適用できないとはいえ…どのようにくるのかしら?
「さらに俺の場に『ジャンク』モンスターが存在する時、手札から『ジャンク・サーバント』を特殊召喚できる!」
ジャンク・サーバント:ATK1500
ここからさらにモンスターを展開してきた。
ここであいつの手札は0枚…またシンクロしてきそうね。
「俺はレベル4のジャンク・サーバントとレベル1のチューニング・サポーターにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
鉄より生み出されし強大な魔神よ、この地上を更地に染め上げろ!シンクロ召喚!粉砕せよ、レベル8『ジャンク・デストロイヤー』!!」
『ウォォォォオオ!!』
ジャンク・デストロイヤー:ATK2600
どこぞの巨大ロボットみたいな見た目なのにバーサーカーより攻撃力が低いのは意外ね。
どうやらジャンク・アーチャーはあれ1体だけしかない可能性が高そうね。
破壊者の名前を持っていることから破壊効果を持っているのは想像つくけど…!
「シンクロ素材にされたチューニング・サポーターの効果で1枚ドロー!
そしてジャンク・デストロイヤーがシンクロ召喚した時、シンクロ素材にしたチューナー以外のモンスターの数までフィールドのカードを破壊する!
俺が破壊するのはお前のタダカ−2とグレート・ウォール!喰らえ『タイダル・エナジー』!!」
――バッシャァァァァァ!!
その見た目とは裏腹に破壊効果は水流のようなエネルギーを発射しての破壊効果なのね。
「ぐぅっ…グレート・ウォールは破壊される。
だが、タダカ−2は1ターンに1度だけ相手の効果では破壊されん!」
超重武者タダカ−2:DEF3400→2200
「わかってる!だが守備力を下げた上、これでもうその破壊耐性は使えないはずだ!」
これで相手モンスター2体の攻撃力は全てタダカ−2の守備力を上回った上、仮に守備力を上げても破壊耐性が消えた今バーサーカーの効果でなすすべもなくやられるのに変わりはない。
おまけに手札もなく、フルモンスターゆえに伏せカードもない。
墓地を考えなければまさに絶体絶命の盤面と言ったところね。
「あ〜あ、こりゃもうダメっぽいね。」
「…それはどうかな?」
「そうよ、あたしたちのために戦ってくれてる中…信じてあげないでどうするの?」
「「「うん、うん!」」」
「…いずれにしろ、決着はそろそろつくでしょうね。」
確かに、そろそろ決着がつきそうな気がするわね。
それでも、オレたちは権現坂の勝利を信じて見守るだけよ。
それに、この状況でも権現坂の眼は…決して死んでいないもの。
「ふっ…俺にここまで食らいついた奴は久しぶりだったが、そろそろ決着を付けようぜ!
バトルだ!俺はジャンク・バーサーカーで超重武者タダカ−2に攻撃!」
「それを待っていたぞ!!!」
「何っ!?」
…来た!この攻撃に対し、この状況で発動するカードと言えばアレしかない!
「俺は墓地から『超重武者イ−I』の効果を発動!!」
「ここで墓地からモンスター効果…はっ!」
そう、イ−Iだ!
こいつはアクションデュエルでこそ威力を発揮する効果を持つ墓地発動のカードだ!
行けぇぇぇぇぇ!権現坂!!
「しまった!それはニトロ・シューターで墓地へ送ったカードか!」
「そうだ!『無駄に動き回る輩に勝利を掴むことはできん!』というのはこの事よ!
このカードは墓地にあってこそ真価を発揮する!
こいつは俺の墓地に魔法・罠カードがない場合、超重武者への攻撃に対して墓地から発動する!
お前の墓地の魔法・罠カードを全て除外し、その数×500のダメージをお前に与える!」
「マジかよ…!俺の墓地にはアクションカードを含めて魔法・罠は6枚…つまり3000ダメージを受けちまう!
それより、その効果…つまりそれを上手く使えるデッキは魔法・罠を入れてないフルモンデッキってことになるじゃねぇか!」
ようやく、気付いたのね。
魔法・罠を発動するそぶりもみせず、アクションカードを決して拾わない事からその前に気付くべきだったわね。
今の相手ライフは1100…すなわちこのダメージが通れば権現坂の逆転勝利だ!
「そうだ、実のところ前のターンのクノ−1も墓地に魔法・罠があると使用できん。」
全てはこのための前ふりだったとはいえ、クノ−1の効果の条件を敢えて伝えなかったのよね。
オレとはスタイルが全く違うものの、ある意味エンタメデュエリストとしても輝いているように見えるわね。
「…これだけじゃなく『超重武者』は魔法・罠が自分の墓地にない時のみ使用できるカードが多いわ。
権現坂はこのカード群を用いたフルモンスターを構築する事で、まさに不動のデュエルを体現していたわけよ。」
「そういうことだったのか…!」
もっとも、驚いているのは対戦相手だけじゃない。
オレとデュエルした真文もまた、現在進行形で狼狽しているみたいね。
「嘘だろ、魔法・罠を入れないフルモンデッキって正気かよ…そんなのアリかよ…!」
「おほほ、これだから負け犬は!常識ばかりに囚われてはいけませんのよ。
アクションカードを使用でき、手札誘発のモンスター効果なども強力になったこのご時世…フルモンスターは案外理にかなっていてよ?
もっともアクションカードさえ使わず、己の信念を貫きとおすその漢らしさ…見事ですわ!」
ああ…融合使いにフルモンを理解しろというのも酷な事よね。
でも、栗音って女…権現坂には妙に評価が高い気がするけど気のせいかしら?
それと、いちいち何かにつけて胸を揺らしてくるのをやめて。
「まさか、こんな手で来るなんてな。すげぇことするじゃねぇか!
だが、俺もだって易々と負けるわけにはいかないんだ!
手札から『アブソーブ・シンクロン』を墓地へ送り、ダメージを1度だけ無効にさせてもらうぞ!」
「なっ…この土壇場で!?」
「嘘…権現坂の切り札が!」
「これじゃ権現坂がやられちゃうよ!!」
相手もここぞという時にダメージ対策カードを握ってやがった…!
よりにもよって、この土壇場でだ。
同名カードの発動宣言がある上、除外効果そのものは適用されるからもう同じ手は使えない。
それでも、まだ権現坂の眼は死んではいなかった。
「…これを阻止してくるとは、敵ながら天晴だ。
悔しいが、どうやらこれで俺に勝ち目はなくなってしまったらしい…すまん、みんな。」
「…流石にお前程の奴でもここまでってことか。」
「「「そんな…!」」」
嘘、勝ち目はなくなったって…!
見守っていたオレたちは、これには思わず絶望ムードを漂わせてしまった。
いや、ちょっとまて…?
「ゴンちゃんもよくがんばったと思うけど、土壇場でこれじゃここまでかな。」
「だが、負けてはおらん!切り札が破られた今、最後の奥の手を使うまで!
南無三!!俺は墓地の『超重武者装留カミカゼ』を除外し、効果を発動!」
「また、ニトロ・シューターで墓地へ送ったカードだと…!!」
そう考えてたら、ここでそのカード!?
権現坂、あなた…!
「こいつは俺の墓地に魔法・罠カードがない場合に相手がバトルフェイズに魔法・罠・モンスター効果のいずれかを発動した時に発動できるカード。」
「おいおい、今度は何が起きるというんだ…?」
相手は知らないみたいだけど、オレはこの効果を知っている。
こいつはカミカゼを名乗るにふさわしいような恐ろしい効果を持っているんだ…!
もっとも、自らもただでは済まないけどな…!
「言ったはずだ、最後の奥の手だと!
お互いのフィールドのモンスターを全て破壊し、破壊した数×500のダメージを互いのプレイヤーに与える!」
「なっ!?破壊されるモンスターの合計は4体ってことは…!?」
「そう、お互いに2000のダメージだ!!」
「ははっ、そういうことだったのか…最後の最後まで面白いじゃねぇか!!」
権現坂のライフは500、そして相手のライフは1100…!
アブソーブ・シンクロンより先に処理される以上、そういうことだ。
確かにこれなら勝ちでも、負けでもない…!
――ドガァァァァァァン!!
「ぐっ、ぐわぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
「う、があぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
権現坂:LP500→0
烈悟:LP1100→0
「これって…?」
「引き分けですか…。」
そう、お互いのライフが同時に尽きた以上…引き分けだ。
惜しかったけど、負けじゃないだけ本当によかった。
「ブランよ、すまん。権現坂流、不動のデュエルをもってしても奴に勝つことはできなかった。」
「ううん…相手は皆、オレたちより遊勝塾の面々より格上だったと思う。引き分けにはあなただからこそできたのよ。
あなたの信じる不動のデュエルの力、LDSのようなエリートたち相手でも通用する事を見せてもらったわ。」
里久は未知数のところが多いにしても、悔しいけどオレたちの中で強く最も信頼できるのは権現坂だった。
はっきりいって、オレが勝てたのは半分まぐれみたいなものだから。
でも、部外者込みでも三番勝負は引き分け…何か嫌な予感がするわ。
『三番勝負の結果は1勝1敗1分…赤馬理事長、あなたは三番勝負に勝てばこの塾をもらうと仰った。
だが、結果は見ての通り引き分け。今回はお引き取り下さい。』
「何を仰いますの?これは決着を付けるためのデュエル。引き分けなどありません!」
やっぱりこうなってしまう…あのプライドが高そうなオバサンの考えそうなことだ。
『いや、しかし…実際に結果は引き分けだったわけですし。』
「延長戦です!!お互いに1勝を挙げたもの同士でデュエルして白黒をつける!よろしいわね?」
『そ、そんな勝手な…!』
確かに2勝挙げたものが勝ちというのが条件だ。
これも引き分けした時のルールを決定しておかなかったのが悪いのよ、塾長。
もっとも、オレも無様な勝ち方をしたまま終わるのは気分が悪い。
勝ったもの同士ということは、栗音という憎むべき女が相手ってことだよな?
柚子の無念を晴らすためにも…ここは敢えて乗ってやる!!
「上等だ、受けてたつ!!」
「ブラン…!」
「…。」
柚子とねねが不安そうな表情でオレのことを見るけど、こうなった以上はやるしかないだろ。
相手は格上とはいえ、ネタは割れている…それにオレにはまだ披露してないネタがあるからな。
「あなたはやる気のようね…なら、こちらは…!」
「うふふ、このわたくしが…!」
「待て!」
この声は…そうだ、あのフードをかぶった不審者だ。
――ぱさっ…!
「決着は私が付けよう。」
「なっ…あなたは!?」
その不審者がフードを取ったその姿に、オレは戦慄した。
外ハネの銀髪で鋭い目つきの眼鏡をかけた男…。
「赤馬…零児…!」
「いかにも。」
そいつはレオ・コーポレーションの社長兼16歳の若さにしてプロデュエリストという――赤馬零児だった…!
道理で見覚えがあったわけだよ。
一目見ただけで分かる、今のオレの手に負えるような相手じゃない。
決して負けられない戦いなのに、こんなのってないだろ…!
続く
登場カード補足
超重武者クノ−1
効果モンスター
星2/地属性/機械族/攻 700/守1400
(1):自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、相手ターンにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
超重武者イ−I
効果モンスター
星3/地属性/機械族/攻1000/守 0
「超重武者イ−I」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の守備表示の「超重武者」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前までに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。
その戦闘を行う自分のモンスターの守備力はターン終了時まで1000アップする。
(2):自分フィールドの「超重武者」モンスターが攻撃対象になった時、墓地のこのカードを除外して発動できる。
相手の墓地の魔法・罠カードを全て除外し、除外した数×500ダメージを相手に与える。
この効果は自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合に発動と処理ができる。
超重武者装留ブースト・アーマー
効果モンスター
星2/炎属性/機械族/攻 0/守1000
(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。
自分の手札・フィールドからこのモンスターを守備力1000アップの装備カード扱いとしてその自分のモンスターに装備する。
(2):自分メインフェイズ1にこのカードを手札から墓地へ送り、自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる。
この効果の発動後、ターン終了時まで対象のモンスター以外のモンスターは攻撃できない。
超重武者装留カミカゼ
効果モンスター
星3/風属性/機械族/攻 500/守 500
(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「超重武者」モンスター1体を対象として発動できる。
自分の手札・フィールドのこのモンスターを守備力500アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。
(2):自分フィールドに守備表示の「超重武者」モンスターが存在し、相手がバトルフェイズに魔法・罠・モンスターの効果を発動した時、墓地のこのカードを除外して発動できる。
フィールドのモンスターを全て破壊し、破壊した数×500ダメージをお互いに受ける。
ニトロ・シューター
シンクロ・効果モンスター
星6/炎属性/戦士族/攻2300/守1500
「ニトロ・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
自分は「ニトロ・シューター」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
(1):1ターンに1度、自分フィールドのレベル2以下のモンスター1体をリリースして発動できる。
相手の手札をランダムに1枚選んで捨てる。
(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の「シンクロン」チューナー1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。
アブソーブ・シンクロン
チューナー・効果モンスター
星1/地属性/機械族/攻 100/守 0
(1):このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン自分が受けるダメージを1度だけ0にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
調律復号
通常魔法
「調律復号」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):800LPを払い、自分の墓地のチューナー1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
その後、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。
ガイスト・ソード
アクション魔法
(1):フィールドの表側表示のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの守備力を1000ダウンする。