タイから帰国した一夏とヴィシュヌは日本の夏休みが本格的に始まっていた。ヴィシュヌは夏休み中は織斑家に滞在する事になっている。
朝は何時もの早朝トレーニングなのだが、一夏とヴィシュヌは早朝ランニング後に小学生達のラジオトレーニングに参加し、其の後は其処でスパーリングを行い、小学生達を沸かせていた――これを見た小学生の何人かが格闘家を目指す事になるのだが其れはまた別の話だ。

そして――


「Xの値が昇龍拳でYの値が闇払いの場合、この式の答えは?」

「外式・百合折りからの立ち弱キックキャンセル外式・夢弾きキャンセル禁千弐百拾壱式・八稚女。」

「正解です。」


学園からの課題を熟していた。
一夏もヴィシュヌも円夏も学年トップクラスの成績なので夏休みの課題位は余裕のよっちゃんイカであり、一夏とヴィシュヌが日本に戻って来てからは速攻で課題を片付けていた。
そしてこの日は箒と鈴と乱とラウラとロランもやって来ていたので織斑家は大所帯となっていた。


「まさか此処まで大所帯になるとはな。」

「私達も示し合わせて一緒に来た訳ではない……タイミング最悪で訪れる時が重なってしまったのだろう。」

「逆に示し合わせたのだとしたら嫌がらせ以外のナニモノでもねぇだろマジで。」


とは言えIS学園一年生の中ではトップテンの成績上位者が織斑家には集っていたので、夏休みの課題は余裕のよっちゃんイカ……ってのは前にもやったので今回はうまい棒3本レベルだったとしておこう。








夏と銀河と無限の成層圏 Episode39
『夏休みの一幕~A scene from summer vacation~』










そんなこんなで夏休みの課題を一気に終わらせた一行は、リビングでゲームに興じていた。
オンライン対戦の出来る格闘ゲームも悪くはなかったのだが、今プレイされているのはSwitch用で発売された任天堂が世界に誇る対戦アクションゲームである『スマッシュブラザーズ』の最新作だった。
ゲームキューブ時代は任天堂のオールスターだったが、今の時代は他社のゲームのキャラも参戦した正に大乱闘のゲーム内容となっていた。
現在対戦しているのは一夏、ヴィシュヌ、鈴、ラウラだった。
一夏は餓狼伝説から参戦したテリー・ボガード、ヴィシュヌは鉄拳より参戦した三島一八、鈴はFFⅦからの参戦であるクラウド・ストライフ、ラウラがストリートファイターから参戦のリュウだ。
性能的な面で言えば鈴が使うクラウドが数多一つ抜けており、ラウラは既に3回飛ばされており、ヴィシュヌも1回飛ばされている。
一夏はまだ飛ばされていないがダメージは既に100%越えで何時飛ばされてもおかしくない状況だったのだが、実はこれこそが一夏が待っていたモノだったのだ。


「この時を待っていた!
 迂闊だったな鈴!忘れたか、スマブラのテリーは蓄積ダメージが100%以上になると、超高性能の超必殺技が使い放題になるって事を!
 喰らえや、パワー……ゲイザー!ゲイザー!ゲイザー!バスターウルフ!ゲイザー!ウルフウルフゲイザー!!」

「超必連射するなぁ!ってかなんでスマブラで其れやって他の技が暴発しないのよ!!」

「俺の華麗なコマンド入力舐めんなぁ!」


ピンチ状態で超必殺技が使い放題になったテリーで暴れまくり、最終的には一夏が勝利をもぎ取っていた。

其の後も色々なゲームを楽しんだ。


・マリオカート

「ふはははは!見たか、此れが一周三秒の鬼カットだぁ!!」

「やり方は知ってるが実際に対戦でやった奴は初めて見た。」


・Capcom vs SNK2

「EXグルーブはやっぱり良いぜ。
 チェーンコンボから荒咬み、九傷、七瀬に繋いで、七瀬にスーパーキャンセルでMAX大蛇薙じゃぁぁぁぁ!!」

「同じくEXグルーブのサガットでチェーンからのタイガークラッシュ後に弱アパカで拾ってスーパーキャンセルタイガージェノサイドです!」


・ザ・ハウスオブザデッド4

「撃てぇ!撃って撃って撃ちまくれ!!クリーチャー共を一体たりとも生かしておくな!」

「了解でありますラウラ隊長殿!!」


と、こんな感じで遊びまくった。
格ゲーで遊んでいた時はオンラインで対戦を申し込んで来た相手が居たので、何れの場合も一夏が対処しストリートファイターならリュウで、KOFなら京、アッシュ、K'の『KOF歴代主人公チーム』で圧倒的に叩きのめしていたのだった。








――――――








ゲーム後、昼食に良い時間になったので一夏とヴィシュヌは買い出しに来ていた。
予想外の大人数になったので食材が足りなくなってしまったのだ。


「乾麺の中華麺の方が安いな……此れを3つ。
 其れから……とんこつラーメンスープの素とピリ辛メンマ、それからチャーシュー……は、昨日のうちに仕込んでおいた蒸し鶏の冷製で代用すれば良いか。」

「白髪ネギ買いますか?」

「買っとくか、作るのも地味に面倒だからな……っと、花椒パウダーとラー油も買っといて。」

「了解です。」


スーパーでの買い出しを終えた一夏とヴィシュヌはまっすぐ家に戻ろうとしたのだが……


「すみません、もしかして織斑一夏さんですか?」

「いかにも俺は織斑一夏だけど、アンタ達は?いや、声かけて来たアンタが元プロレスラーの中西学さんだってのは知ってるけど。」


その道中でロケを行っているであろうテレビクルーに声をかけられた。
旅番組の類らしく、アポなしのロケなのだろう。


「俺のこと知ってるのか?嬉しいね。」

「俺プロレス好きなんで。豪快なアルゼンチンバックブリーカーは見事だったぜ中西さん……そんで何のご用で?」

「えっとだな、俺はテレビ東京の昼飯ジャーニーって番組で此処を回ってるんだけど、今は何してるの?」

「見ての通り買い物ですね。」


其処から何を買ったのか、次の予定を聞いて、最後には一夏達の本日の昼食を取材する事になったのだった。


そして帰宅後、一夏とヴィシュヌは直ぐに動いた。
一夏は冷やしておいた水をボールに開けてラーメンスープの素と混ぜてから冷蔵庫に戻して冷やし、中華麺は沸騰したお湯で茹でた後に冷水にとって麺を締める。
同時にヴィシュヌはおろしニンニクと一味唐辛子とケチャップと中濃ソースを合わせたタレに漬け込んだ鶏もも肉と、オイスターソースと五香粉と花椒パウダーと紹興酒と醤油のたれに漬け込んだ鶏もも肉に片栗粉と小麦粉と米粉を混ぜた衣をつけて熱した油に投入して揚げて行く。
その隣では此のメンツの中では料理上手な鈴と乱も料理をしていた。
鈴がナス、ズッキーニ、キュウリにミョウガと言った夏野菜を適当な大きさに切るとボウルに放り込んで乱にパスし、乱は切られた夏野菜にオイル漬けのツナを加えてポン酢をぶっかけて混ぜ合わせ中華風の夏野菜サラダを完成させた。
そして一夏も中華麺を冷やすと、其れを丼に盛り、麺の上に具材を乗せてその上から良く冷やしたとんこつラーメンスープを注ぎ、ラー油を一垂らしして花椒パウダーを振って夏の冷やしとんこつラーメンが完成。
其れと合わせるようにヴィシュヌも唐揚げを全て揚げ終え、更に盛ってからパクチーを適量添えて唐揚げも完成――更に其の裏では箒がデザートの白玉あんみつを作っていたりもした。


「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」

「どうぞ。」


そうして昼食タイム。
冷たいながらもとんこつラーメン特有のコクを失っていない冷やしとんこつラーメンはラー油のピリ辛さがアクセントとなっており、具材の茹で鶏、メンマ、味玉、ラー油と花椒パウダーと和えた白髪ネギ、白きくらげとキムチも良い感じであった。
鈴と乱が作った夏野菜の中華風サラダも彩りが良く、ポン酢のサッパリ感が夏にピッタリで、ヴィシュヌの唐揚げはスパイシーでエスニックな味付けが夏バテを吹っ飛ばす効果があった。


「良ければどうぞ。」

「ありがとうございます。」


此処で一夏が番組スタッフにも料理を振る舞い、其れを食べた番組スタッフもこれ等の料理の美味しさには驚いていた。
食事後は世界初にして世界唯一の男性IS操縦者である一夏をメインにした取材も行われたのだが、番組側もあまり踏み入った事は聞かず、IS学園での日常や苦労している事など、当たり障りない質問だったのは中々見事だったと言えるだろう。
一連の撮影が終了すると、一夏達に番組特製の箸を渡すと……


「もう一つお願いがあるんですが良いですか?」

「なんでしょう?」

「貴方のお友達ご飯見せて下さい。」


今度は一夏の友達のご飯を見せて欲しいと言って来た。
まさかの展開だったが一夏も断る理由はないのでスマホを取り出すと弾に連絡をした。


「もしもし弾か?
 俺だけどさ、今俺の所に昼飯ジャーニーの人達が来ててさ、俺の友達紹介してほしいってんでお前に連絡したんだけどさ、お前の所教えていい?
 爺ちゃんに聞いてみるって、厳さんに聞いたらダメって言うだろ……だからお前が決めろ。
 番組で紹介されれば客が増えるんじゃないかと俺は思うけどな――客が増えたらスタッフが足りない?そうなったらその時は束さんに頼んでアンドロイド店員作って貰うから安心しろ。
 其れならOK?分かった、其れじゃあ今から行くから。OKなんで五反田食堂に行って下さい。」

「ありがとうございます!」


そして五反田食堂にも取材が行く事になり、番組スタッフと対峙した厳は取材を断ろうとしたのだが弾が『爺ちゃん、今日だけは黙っていてくれ』と背後からスリーパーホールドを極めて物理的に黙らせていた。
其の後の展開で五反田食堂の名物である業火野菜炒めは放送後に全国的に知れ渡る事なり、其れを求めて客が殺到し、結果として五反田食堂はこれまで以上に繁盛する事になり、ある時から美少女な店員が増えるのだった。








――――――








その夜、織斑家の庭では夏の風物詩である花火が行われていた。
家庭用の大容量の花火パックには手持ちの花火だけでなく置き型の噴出花火や打ち上げ花火、ロケット花火なんかもあり色々と楽しめた――落下傘付の打ち上げ花火を打ち上げた際には織斑兄妹による落下傘ゲットの超人バトルが行われていたが、一夏と円夏のドラゴンボール的超バトルはある意味で日常なので誰も突っ込む事はなかったが。

そして花火の最後は線香花火なのだが……


「おい、円夏なんだそのバカでかい手持ち花火は?」

「これぞ世界最大級の線香花火のメガ線香花火だ!通常の線香花火の10倍の燃焼時間、通常よりも激しい花火、最後の火玉は通常の線香花火もまた10倍以上だ!!」

「風情も何もあったモノじゃねぇな。」


円夏がトンデモナイ線香花火を持ってきてくれた……其れは線香花火を名乗る事すら烏滸がましいモノだったのだが、線香花火の特徴も確かに有していたので其れも使ってターンエンド。
こうして花火も無事に終わり、後は寝るだけなのだが……


「一夏……今日は其の、して欲しいです。」

「ヴィシュヌ……断る理由がないぜ。」


ベッドの上に下着姿で居るヴィシュヌに『お願い』された事で一夏の理性はブラックホールの彼方にゴッドハンドクラッシャーされ、夏の熱さをも凌駕するレベルで熱く、激しく一夏とヴィシュヌは愛し合ったのだった。








――――――







同じ頃、亡国機業のアジトでは培養ポッドのロックが解除され、その中から一人の男性が現れた――髪と目の色こそ違うが、其の容姿は一夏の2Pカラーと言っても通じるレベルだ。


「実験成功。どんな気分かしら?何か不具合はない?」

「問題なしだ。」

「それならば問題ないから、指令があるまで大人しくしていなさい」

「了解した。」

「ふふ、彼と対峙した時貴方がどんな反応するのか楽しみだわ、織斑一夏君。」


亡国機業は水面下で次の一手を考えているようだった――













 To Be Continued