夏休みのある日、一夏とヴィシュヌは沖縄付近に点在する無人島へとやって来てた――本日より、一夏とヴィシュヌにとっては夏休み一の過酷なイベントであろう『無人島でのサバイバルキャンプ100時間』が開始されるのだ。
無人島でのサバイバルキャンプを高校生が行うなど、普通は無謀でしかないのだが、一夏は中学時代に天羽組の小林から『夏休みの思い出にキャンプするぞ』と言われてついて行ったら孤島でのサバイバルキャンプだったのでサバイバル経験はバッチリあるのだ。


「という訳でサバイバルキャンプ開始なんですが、持って来たモノは?」

「YouTubeに動画上げるから撮影用のスマホ、狩り用の銛、後は水を煮沸する為の鍋と水筒とサバイバルナイフな。
 ガチのサバイバルするなら水筒と鍋はダメなんだろうけど、水確保できなかったらガチで死ぬから……あの夏のサバイバルキャンプも、小林のアニキが『水寄越せコノヤロー』って言って岩ぶん殴って、殴った岩が割れて水が出て来なかったら俺死んでたかもだからな。」

「岩を素手で破壊出来る時点で中々にぶっ飛んでいるのですが、水脈を引き当てると言うのは恐るべき強運ですね。」

「小林のアニキはここ一番での運を持ってるからな。」


そして始まったサバイバルキャンプは先ずは水の確保からになったのだが、これは意外と簡単にクリアできた。
無人島にはほぼ間違いなく海に繋がっている川があるので、島を一周すればほぼ確実に水場を確保できるのだ――一夏とヴィシュヌは川を見付け、その付近にキャンプを造る事になった……とは言え、持ってきているモノは必要最低限なのでテントを張る事は出来ない。

なので一夏とヴィシュヌは周囲の植物を駆使して枝で作ったテントの骨組みに重ねて行ってテントを作り上げていったのだった。








夏と銀河と無限の成層圏 Episode40
『夏休みの一幕~Let's go on a survival camp!~』










テントが完成した後は食料確保だ。


「そんじゃ俺は海で魚とか取って来るわ。」

「では私は山で何か探してきまね。
 山芋やヤマゴボウ、木の実に山菜にキノコと色々ありそうですね。」

「……ヴィシュヌ、キノコ採取の経験は?」

「バッチリありますから安心して下さい。」

「なら安心だな……素人のキノコ狩りの成果なんてのは最早ギャンブル以外のナニモノでもないからな。」


火を起こしてから汲んでおいた川の水を入れた鍋を火にかけて雑菌を飛ばして飲み水に変えて夫々の水筒に確保すると、一夏は銛をもって海に向かいヴィシュヌは鍋をもって山に入って行った。

山に入ったヴィシュヌはスマホを使いながら山菜やキノコを集めていた。
夏の山菜はそれほど多くないが夏特有の高温多湿の環境は多種多様なキノコを育成するのには十分な環境だったらしく、天然のシイタケにシメジにマイタケになめこにエノキタケが見つかり、更にはヤマドリタケやタマゴタケと言った希少なキノコも見つける事が出来ていた。


「此れは……もしかしてマツタケでしょうか?……よもやこれほど群生しているとは思いませんでした。半分ほど取る事にしましょう。取り尽くしてしまったら次がなくなってしまいますからね。」


更にはマツタケまで発見し、ヴィシュヌは来年以降の収穫に影響が出ないレベルでキノコを採取するのだった。








――――――








一方で銛一本で海に出た一夏はと言うと……


「よっしゃー!イシダイゲット!!」


素潜り漁で銛を使って魚をゲットしていた。
とは言ってもサバイバルキャンプでは食料の保存が基本出来ないので取り過ぎる事はせずに、一度の食事で消費できる量だけを取っていた……このイシダイで三匹目だ。


「こんな穴には……いるよなウツボが。ゲットだぜぇ!!」


更に岩場の穴に居るウツボも銛でゲットして無人島に帰還。

島では既にヴィシュヌが原始的なきりもみ方式で、水煮沸用よりももっと強い火力の料理用の火を起こしておりいつでも調理可能な状態だった。


「新たに火起こししてくれてたのか、助かるぜ。」

「此れ位は大した事ではありませんので。それで一夏、成果は?」

「イシダイとウツボが一匹ずつ。それから何処から迷い込んだ的なロブスターが二匹……イシダイとウツボは刺身にして、ロブスターは焼いて喰おう。」

「そうしましょうか。」


二匹のロブスターとキノコは木の枝をサバイバルナイフで削った串に突き刺して焚火の周りに置き、一夏はイシダイとウツボをサバイバルナイフで捌いて刺身にしていった。
ロブスターとキノコの焚火焼きにイシダイとウツボの刺身とはサバイバルキャンプに於いては最高級のご馳走と言えるだろう。


「イシダイの身の弾力も凄かったですが、ウツボの美味しさは予想外でした。
 此れはもう刺身一択ですねウツボは。鯛以上の極上の白身ですね……淡白ながらも力強い野性味を感じさせてくれる白身の魚はウツボ以外には存在しないと言っても過言ではありません。」

「ウツボは見た目が凶悪だから敬遠されてるけど、実は食ったら滅茶苦茶旨い魚でもあるからな。
 でもって俺の会社でも近々ウツボの国内流通に行こうかなって思ってんだ。――そうなった時には改めてお前に負担をかけちまうことになるんだが……」

「それは気にしないで下さい一夏。
 私は貴方の恋人として、貴方が立ち続けられるように傍で支えるのが役目ですから。」


そして日も暮れかけた夕刻、一夏とヴィシュヌは今晩の食べるモノを探しに来ていた。
サバイバルキャンプではクーラーボックスを持ってきていないので獲った獲物を保存する事が出来ず、その時々によって採取するしかないのだ――という訳で一夏とヴィシュヌは島の河口付近へとやって来ていた。
海水と淡水が交わる河口付近の生粋域は海と川の両方が獲れる場所なので狩猟場所としては最高レベルであると言えるだろう。

一夏もヴィシュヌも川魚を次々と殴って川から殴り飛ばすと、其れは狙ったかのようにバケツに放り込まれていた。


夜の成果は『ノコギリガザミ』と『サワガニ』と複数の夜行性の甲殻類をバケツ一杯にゲットし、それらの甲殻類は蒸し挙げて美味しく頂いたのだった。








――――――







キャンプ二日目。
サバイバルキャンプでも一夏とヴィシュヌのルーティーンは変わらず、早朝に目を覚ますと体操とトレーニングを行っていた……大きくない無人島とは言え一周5㎞の島を僅か十四分で回ってしまった一夏は最早人間でないのは間違いないだろう。
先にトレーニングを終えたヴィシュヌは川で水浴びをして汗を流し、一夏もトレーニング後に水浴びで汗を流していた。


「それで今日は如何しますか一夏?」

「取り敢えず海で魚獲って来ます!火を起こしといてくれ!」

「了解です。」


一夏が海に魚を獲りに行くと、ヴィシュヌは弓切り式で火を起こし、其処に集めておいた枯れ枝をくべて火を大きくしていった。
それから一時間ほどして一夏が海から戻って来た。


「一夏、成果は如何ですか?」

「ウツボにタカアシガニに、それからサメだ!!」

「サメですか!?って言うか人間って生身でサメに勝てるんですか!?」

「ウツボの血の匂いに反応して突撃して来たからカウンターで銛を放ったら脳天にクリティカルヒットした訳よ……なんかロープの代わりになるものある?」

「ツタ植物のツタを何かに使えるかと思って採取しておきましたが。」

「GJだヴィシュヌ。
 サメはコイツで括って木の枝に吊るして……サバイバルナイフで皮膚を切って水分を出す。」

「水抜きですか?」

「と言うかアンモニア抜きだ。
 サメ肉はアンモニアが多くてそのままだと臭くて食えないからな……こうしてアンモニア抜きしてやらないとダメなんだよ。」

「成程。」


まさかのサメを獲って来た一夏だったが、其れをすぐさま適切な下処理を済ませ食べられるようにしていく。
その日の昼は、ウツボの刺身と蒸したタカアシガニで、夜はアンモニアを完全に抜いたサメの丸焼きと、日暮前に川で獲った魚の焚火焼きとヤドカリの蒸し焼きと……


「マムシゲット!!」

「……食べられるんですか其れ?」

「マムシは旨いんだぜ?小林のアニキとのサバイバルキャンプで食った事あるけど、パワーが漲る旨さだ。」


マムシの焚火焼きだった。
マムシはウナギ以上の精力増強作用があるので、これが平時だったら夜のISバトルに突入していたのだろうが、サバイバルキャンプではそんな事をしている暇はないので、今夜はそのまま眠る事になった。



そんなこんなでサバイバルキャンプを続け、遂に最終日の五日目。
今日も今日とて一夏は朝から魚を獲りに出て、ヴィシュヌは火起こしをしてから林で自生している木の実や山菜を採取していた。

最終日の昼食は一夏が獲って来た魚の刺身とヴィシュヌが採取して来た木の実と、山菜のサラダだった。


「と言う訳で、こうしてサバイバルキャンプも終わった訳だけど、如何だったヴィシュヌ?」

「大変な事もありましたが楽しかったです。機会があればまたやりたいですね。……次はアマゾンでやりますか?」

「それは水ラーメンさんがやった後でな。」


こうして100時間のサバイバルキャンプを終え、更に逞しくなった一夏とヴィシュヌであった。
尚、このサバイバルキャンプの様子を編集した動画はYouTubeでも大バズりし、特にヴィシュヌの水浴びシーンを撮影すると見せかけて一夏の筋肉が現れるシーンは一部の筋肉好きの女子にはぶっ刺さっていたのだった。








――――――








「くーちゃん、イッ君から荷物が届いたんだけど、どうしようか此れ?」

「サバイバルキャンプをしていたらしいが、ウツボにシイラにコブダイか……私に任せておけ。この姿に転生する前に得た我が主の料理スキルは此の身に沁み込んでいるからな。
 全て美味しく食べられるようにしてやるさ。」

「わお、クーちゃん頼りになる!」


一夏から送られて来たサバイバルのお土産に困った束だが、助手のリインフォース・クロニクルがそれらを全て的確に処理して結果として束の晩酌のあてとなっていたのだった。










 To Be Continued