『デュノア社倒産』のニュースは瞬く間に世界に広がって行った。
デュノア社は第二世代でありながら圧倒期汎用性を有する『ラファールリヴァイブ』を武器に欧州でのISシェアを長年独占して来たのだが、世界的に『第三世代機』の開発が始まると、デュノア社は後れを取る形になり、最終的には欧州におけるIS開発計画『イグニッションプラン』から除外される事になった。
これがデュノア社だけがイグニッションプランから除外されたのであれば一社の損失で済んだのだが、イグニッションプランはデュノア社だけでなくフランス其の物をプランから除外してしまったのだ。

デュノア社だけならばフランスも無視出来ただろうが、フランスが国ごと除外されたとなっては其の限りではなく、此処でイグニッションプランに再参加してISの開発で欧州での主導を握りたいフランスと経営を立て直したいデュノア社の利害が一致し、デュノア社の社長である『アルベール・デュノア』の一人娘である『シャルロット・デュノア』をIS学園に送り込む事を決めた――のだが、性別を偽り、男子の『シャルル・デュノア』としてだが。

シャルロットは中性的な見た目であり、一人称も『僕』なので行けると確信し、あわよくば世界初となる『男性IS操縦者』である一夏に接近し、一夏の専用機である『蒼龍皇』のデータを取る目的もあったのだろう。
それが巧く行けばフランスもデュノア社も自分達が抱えている問題を解決出来ると思っていた……だが、其処に誤算があった。
シャルロット・デュノアは確かにデュノア社の社長であるアルベール・デュノアの娘であるのだが、アルベールの正妻である『ロゼンタ・デュノア』との間にもうけた子供ではなく、アルベールが結婚前に交際していた女性――『シェリル・デュノア』との間にもうけた子供だったのだ。

因みにシェリルとアルベールの姓は同じだが血縁関係はマッタクない。


そしてシャルロットはアルベールとロゼンタに対して憎悪を抱いていた……既にシェリルは鬼籍に入っているのだが、その死因は病気であった。
しかしその病気は難病であっても金さえあれば適切な治療を受ける事が出来る、決して治らない不治の病ではなかった――なので、シャルロットは父親であるアルベールに助けを求めたのだがアルベールは其れを拒み、ロゼンタに至っては『泥棒猫の子が厚かましいのよ!』と言って平手打ちをしてシャルロットを拒んだのだ。

だがしかし、シャルロットはフランスの国家代表トライアルに参加しており、其処でトップクラスの成績を叩きだした事を知ったアルベールは態度を一変してシャルロットを自社のパイロットとして迎え入れ、そして男性として偽ってIS学園へ送り込む事を決めたのだった

シャルロットも其れを了承したのだが、それは表向きで裏ではデュノア社とフランス政府のズブズブの癒着関係や粉飾決済その他諸々の真っ黒な実態を全て暴いてそのデータを欧州の主力メディアに送り、そしてデュノア社は事実上倒産し、フランスは欧州での立場を失ったのであった。


「以上が今回のフランスにおける騒動がなぜ起きたのかに関する詳細になりますわ織斑先生。」

「ここまで詳細に調べ上げる事が出来るとは、更識の諜報能力には脱帽せずにはいられんな……しかしまぁ、母親の無念を晴らす事が目的でここまでの事をしてしまうとは、同姓ながら女の執念と言うモノは恐ろしいモノだな。」

「それに関しては諸手を上げて同意します。」


それらの情報が記された『更識』からの報告書に目を通した千冬は思わずため息を漏らし、楯無も扇子で口元を隠しながら溜息をついたのだが、GW明け早々にやって来る厄介な案件がなくなったと考えれば悪い事ではないだろう。


「お疲れ様だったな更識。良ければ昼飯を奢るが、何かリクエストはあるか?」

「本土にあるモノレール駅の一階にあるラーメン屋さんの『濃厚とんこつラーメン』を麺大盛り、ニンニクチャーシュー辛め背脂マシマシで♪」

「良いだろう。」


千冬と楯無、世界最強と学園最強が良い関係を構築していると言うのは、IS学園に対してよからぬ事を考えている連中にとっては間違いなく有り難くない事であろう。









夏と銀河と無限の成層圏 Episode15
『GW5日目~Let's play in the cyber world~』










GWも中日となる今日、一夏とヴィシュヌ、そして円夏は織斑家の一夏の部屋に集まり、全員がヘッドギア型の装置を頭に装着していた。
一見すると可成り危ない光景なのだが、此のヘッドギア型の装置は今やゲーム関連機器としては『必須』とも言われており、特に『ISEXVS』に於いてはこのヘッドギア型の装置――『ブレインダイブ』が無ければ本当の意味で楽しむ事は出来ないとまで言われているのだ。


「そんじゃ行くぜ!」

「行きましょう!」

「精々私を楽しませてくれよ!!」


『ブレインダイブ』は所謂『VR装置』ではなく、『電脳ダイブ』を行うための装置であり、これを使えば電脳世界に己の精神をアクセスさせる事が可能になるので、ゲームをより臨場感あふれる状態でプレイできるのだ。
そして此のブレインダイブの存在が、『ISEXVS』を大ヒットゲームへと押し上げたとも言える――電脳ダイブを行った状態ならば、電脳空間で自由に身体を動かす事が可能になるので『究極のISシミュレーター』としても機能する事になり、IS学園や各国のIS機関が採用するに至ったからだ。


さて、ブレインダイブを装着した一夏とヴィシュヌと円夏は電脳ダイブでISEXVSにログインしていた。
ISEXVSではアバターも自由に設定出来るのだが、アバターパーツは滅茶苦茶多いので自分に可能な限り寄せたアバターを作る事も可能で、一夏は自身に寄せた外見にしつつも髪は銀髪で目は赤く、右の額から眉間を通って鼻の左側にまで抜ける切り傷痕がある感じとなっており、ヴィシュヌは髪色がリアルよりも明るいエメラルドグリーンとなっていた。
そして円夏は……此方も意外な事に髪色が赤くなっている以外はリアルの円夏とほぼ同じだったのだが、これは一夏達がリアルでもIS操縦者である事が大きかった。
ISEXVSは只の対戦型ゲームではなく電脳ダイブを使った体感型ゲームであり、だからこそ国家代表候補生や国家代表、国家代表トライアルに挑む者達から最高の訓練シミュレーターとされているのだが、それだけにIS搭乗者のアバターは容姿は兎も角として体格は現実のプレイヤーと遜色ないモノとなっていた。
電脳ダイブした電脳世界で己の身体を動かすになるので、リアルとかけ離れ過ぎた体型のアバターでは現実との差が出てしまい効果のある訓練にならないのである。

話をゲーム其の物に戻すが、此の『ISEXVS』はソロプレイも可能だが、ソロプレイヤーはISEXVSを訓練用シミュレーターとして使用しているIS操縦者であり、一般プレイヤーの多くは特定の『ISクラブ』に所属している。
ISクラブは誰でも開設出来るモノであり、クラブメンバーを集めてクラブ戦やクラブ限定特別ミッションなどに参加する事を目的としている。
そして一夏……ISEXVS内でのアバターネーム『ツルギ』は、現時点では最強と言えるISクラブ『蒼天の災兎(さいと)』の設立者でありクラブ長で、ヴィシュヌこと『ヤイバ』とプレイヤーネーム『カタナ』が副クラブ長を務めている。
クラブメンバーは円夏の『M』、オータムの『モミジ』、鈴の『バルムンク』、乱の『オルカ』とリアルでのIS操縦者が揃っており、この手のゲームでは滅茶苦茶強い弾こと『バレット』の存在も大きいだろう。
尚ISクラブを設立すると専用のクラブルームが設定され、クラブルーム内は好きなようにカスタマイズ可能となっており、蒼天の災兎のクラブルームはツルギによって和風にカスタマイズされている。


「お待たせ、少し遅れちゃったわ。」

「お、来たかカタナ。待ってたぜ。」


蒼天の災兎の拠点に新たにログインして来たのは外側に跳ねた髪型が特徴的な赤い髪と青い目が特徴的な少女であり、蒼天の災兎の副クラブ長を務めているカタナだった。
カタナの実力はISEXVS内でもトップクラスであり、現在のプレイヤーレベルランキングではツルギ、ヤイバ、カタナの三人が同率の一位となっていると言えばカタナの実力が分かるだろう。


「改めて見るとそのキャラデザ(アバターのデザイン)…まさかだけど、『さらしき』って名前に心当たりはあるか?」」

「!!その名を知ってるって事はIS学園の生徒か、あるいはそっち側の人間なのかしらクラブ長さんは?
 と言うか其の容姿からもしかしたらと思ってたけど、ツルギ君って一夏君じゃないかしら?其れでヤイバちゃんはヴィシュヌちゃん、Mちゃんは円夏ちゃんよね?」

「はい、大正解です♪
 それから鈴と乱もいますよ。後は俺の護衛やってるオータムも。」


そしてそのカタナの正体は、IS学園の生徒会長である『更識楯無』その人だった――そのカタナもツルギ達の正体が誰であるのかはある程度予測していたようだが。


「IS学園のトップクラスの実力者と、貴方の護衛が居るとか改めてとんでもないわよねこのクラブって。
 其れでツルギ君、今日のクラブ戦は優勝狙いよね?」

「勿論優勝狙いだが、本日より我が『蒼天の災兎』に新メンバーが加わるから、先ずはそいつの紹介と行こうぜ……とは言っても、既にクラブ戦に登録してるから知ってる奴も居ると思うけどさ……入ってきていいぞ『コキア』。」


本日はこのクラブに新たな加入者が居るらしく、先ずは其の新メンバーの紹介となった。
ツルギに呼ばれてクラブルームに姿を現したのは、明るめの茶髪をリボンでポニーテールにした『コキア』と呼ばれた少女だった。


「本日より参加させて貰う事になったコキアだ。
 まだまだ初心者だがよろしく頼む……尤も、IS学園の者には私の正体はバレバレだと思うがな。」

「そりゃあねぇ?
 アバターも髪色変えただけだから分かるに決まってんでしょ箒?」

「最初は姉さんにしようかとも思ったんだが、其れだとインパクトが強すぎる上に変な噂が立ちそうな気がしたので止めた。」


其の正体は箒だ。
あまりゲームには興味のなかった箒だが、一夏から『ISの訓練も出来るし何よりも面白いからやってみてくれよ。』と勧められてプレイする事を決め、ツルギのISクラブに所属する事にしたのだ。
アバター名の『コキア』は、コキアと言う植物は枝が箒の原料となる事で『ホウキ草』とも呼ばれており、箒は自身の名からこの名を選んだと言う訳だ。


さて、このゲームにおける使用機体は既存の機体だけでなく、国家代表や代表候補生の専用機を使用する事が可能であり、量産機も専用機もゲーム内限定である程度のカスタマイズが可能となっている――尤も専用機に関しては現在稼働しているモノに関しては課金する事で一般プレイヤーも使用する事は可能ではある。(本来の使用者が使用する場合は、使用者しか知らない機体のIDや搭乗者認識パスワードを入力する事で無課金で使用出来る。)
例えばツルギの機体は現実でも使っている蒼龍皇をゲーム用にカスタマイズした『星龍皇』となっており、青を基調とした蒼龍皇とは異なって全身が明るいオレンジの装甲となり、頭部のデザインも異なっている。(イメージとしては高身長の流星丸。)
超力変身が行えない事以外に大きな違いはないが、遠距離武器として蒼龍皇にはないビームバルカンがナックルガードに搭載されている――ある意味でこのゲームでの機体のカスタマイズは現実の自機に追加装備を加える際にどのような装備が有効であるのかを試す機能とも言えるだろう。


「さてと、新メンバーの紹介も終わったところで、今回のクラブ戦も優勝を当然狙ってく訳だが……今回のクラブ戦、勝ち進んで行けば確実に決勝戦で『黒神』と当たる事になる。」

「「「「「「!!!」」」」」」


コキアの紹介も終わり、改めて今回のクラブ戦も優勝狙いだと言ったツルギだが、決勝戦で確実に当たるであろう『黒神』なるクラブ名を聞いた途端、コキア以外のクラブメンバーの顔に緊張が走った。
ISクラブ『黒神』……其れはISEXVS内にて現在クラブランク2位に位置している強クラブだ。
普通ならば何度かクラブ戦でぶつかっていそうなモノだが、此れまで黒神は予選の出場人数を調整するなどして蒼天の災兎とは同じ組み合わせにならないように調整して来たのだが、此処で同トーナメントになったという事は、黒神が遂に蒼天の災兎と直接遣り合う事を決断したと言う事であり、同時に『今なら勝てる』と確信したからだと言えるだろう。


「ふん、大人しくナンバー2の座に座っていればいいモノを、態々叩き潰されに来るとはな……ならば思い知らせてやらねばならんなぁ?
 私達に歯向かった事を、この『黒騎士・絶』の力をもってして思い知らせてやる!!」

「……俺の妹が高校生になったのに中二病を拗らせてる件について。」

「諦めましょうツルギ、Mはもうとことんまで突きぬけてしまった方が良いのかもしれません。」

「確かにな。」


クラブ戦のルールを説明しておくと、まず毎週月曜日にクラブメンバーがクラブ戦への参加登録を行い、火曜日に手持ちのゲーム内通貨である『ISゴールド』を任意の金額払って『バフ貯金(任意)』を行い、水曜日にAIによるオート戦闘で予選が行われ、予選の上位8クラブが本戦へと駒を進め、本戦の組み合わせは予選の成績によって決められるのである。
そして木曜日に決勝トーナメントへの参加登録が行われ、金曜日にバフ貯金、土曜日に本戦トーナメントなのだが、本戦はAIによるオート戦闘ではなくプレイヤーによるマニュアル戦闘になるので、本戦当日にどれだけ登録メンバーがインできるかもトーナメントを勝ち抜けるかどうかに関わって来るだろう。

そして本日の蒼天の災兎はクラブメンバーが全員インしており、負ける要素は皆無と言えた。


「それじゃあ行くぜ!蒼天の災兎!ファイ!」

「「「「「「「「「「お~~し!!」」」」」」」」」」


円陣を組んで手を重ね合わせ、気持ちを一つにする!
クラブ戦、いざ開始だ!!








―――――――









クラブ戦:本戦一回戦


「全てを焼き尽くすぞ黒騎士・絶……邪王炎殺、黒龍波~~~~~!!」

「ツルギ、貴方がアレを使えるように設定したのですか?」

「んな訳ねぇだろ……間違いなく束さんだろうな……」

「あ~~……何と言うか色々スマンな私の姉が。」


Mが最強すぎる厨二必殺技を放って敵クラブを一撃で壊滅させていた。




クラブ戦:本戦二回戦


二回戦はツルギがMに炎殺黒龍波の使用を禁じた事で瞬殺とはならなかったのだが、力の差は圧倒的でツルギ、ヤイバ、カタナ、M、コキアが近接で戦闘でプレッシャーをかけ、其処にバルムンクとオルカの見えない龍砲が炸裂し、更にバレットの正確無比な射撃が敵クラブのメンバーの動きを制限していく。


「相手が悪かったなぁ?」

「お前等、死ぬ覚悟はできてるかぁ?」


そしてよしんばそれから抜け出したそしても、抜け出した先にはモミジと、プレイヤーネーム『カブト』が待ち構えており、抜け出して来た相手を一撃のもとに葬り去り、蒼天の災兎は無傷で決勝戦に駒を進めることになったのであった。








――――――








・同刻:天羽組本部


其処では天羽組の最高戦力の一人である『小林』がブレインダイブを装着してISEXVSをプレイしていた。


「小林のアニキ、面白いんですか其れ?」

「ん?あぁ、華太ぉ、此れは思った以上に面白いぞ?
 それに俺が所属してるクラブのクラブ長は一夏だからなぁ……そんでもって、今回のクラブ戦の相手は敢えて俺達に挑んで来やがったからなぁ……真正面からぶっ潰しても良いよな?
 それからゲーム内なら死なないからグリンかましても良いよな?」

「敵を倒すのはOKですけれど、グリンはNGです小林のアニキ。流石にアレは刺激が強すぎますので。」

「そうか。じゃあ諦めるわ。」


蒼天の災兎の強力プレイヤー『カブト』とは天羽組最高戦力の一人である『小林』その人だった。
小林は間違いなく天羽組の最高戦力であるのだが、幼いころから暗殺者養成施設で育った事が原因でコミュニケーション力が極端なまでに劣っているのだが、小林は天羽組に入門するとあっと言う間にトップクラスまで上り詰めた猛者中の猛者なのできっといい仕事をしてくれるだろう。









 To Be Continued