『…グオォォォォォォォ…!』
 イビリチュア・クリトルアム:ATK2600(レベル−6)



 プシュケローネが召喚したダークシンクロモンスター、クリトルアム。
 その姿は禍々しく、見た者を狂気に陥れるクトゥルフを彷彿とさせるものであった。


 「エクシーズモンスターとは異なる灰掛った黒枠のマイナスレベルのモンスター…シャルマーニュには1ターンに1度の戦闘破壊耐性と戦闘ダメージ反射能力があるとはいえ、これは…あはははは」

 その不気味さと威圧感にはプリキュアであるマナでさえ苦笑いと冷や汗が止まらず、正気ではいられないようだ。
 そしてプシュケローネから出てくる闇の瘴気がより一層強くなってきた。










 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation ×ドキドキ!プリキュア 後編
 『カオスエクシーズVSダークシンクロ』










 キュアハート:LP4000
 心王子シャルマーニュ:ATK1900


 プシュケローネ:LP3700
 イビリチュア・クリトルアム:ATK2600




 「うふふ、いい顔になってきたわね…クリトルアムの効果発動!デッキから1枚ドローしお互いに確認…それがリチュアと名のついたモンスターなら相手の効果モンスターの効果を無効にするの…しかもこれは2回も発動できるのよ!」

 「はは、伊達にク・リトル・リトルの名を冠しているわけじゃないか。随分と恐ろしい効果をお持ちのようで…」


 ちなみにク・リトル・リトルとはあのクトゥルフの別表記とされている。
 それは兎も角、実質2枚ドローに加えて運が良ければモンスター効果を無効にでき、それでいて攻撃制限もないとは中々恐ろしいものがある。


 「まずは一回目のドロー…引いたのは魔法カード『邪念の魔双剣』ね、まぁいいわ」

 最初に引いたのは魔法カード。リチュアではないため無効効果は適用されないが、まだ一回目であり油断はできない。

 「次は二回目よ、ドロー…あはははは!引いたのはリチュア・リアラルよ!」

 「うっ、引かれたか…」


 二回目のドローでリチュアと名のついたモンスターをドローされてしまった。

 「リチュアモンスターをドローした事により、シャルマーニュの効果は無効にさせてもらう!これで戦闘耐性も反射効果も消えたことになるわね…」


 すると、クリトルアムは触手でシャルマーニュを捕えてしまう。
 シャルマーニュの表情は苦痛に満ちており、力が入らないようだ。


 「シャルマーニュが…」

 「それに貴方を沈めるのにちょうどいいカードを引かせてもらったわ!リアラルを捨て、装備魔法『邪念の魔双剣』をクリトルアムに装備。このカードはダークシンクロ専用の装備魔法、これで装備モンスターに2回攻撃と破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える能力を追加させるわね」


 禍々しい形状の二振りの剣がクリトルアムの触腕に装備される。
 手札コストが必要とはいえ、あのジェムナイト・パーズと同様の効果を付加させるという恐ろしい能力をもった装備魔法といえよう。
 無論まともに喰らったらただでは済まず、マナの場には伏せカードもないため絶体絶命の危機に直面したといったところだろうか。


 「バトルよ。クリトルアム、シャルマーニュを始末しなさい!『旧神蹂躙斬』!!」
 


 ――バシュゥゥゥゥ!



 冷たき闇の炎を纏った魔剣がシャルマーニュを容赦なく斬り捨てる。

 「うっ!?」
 キュアハート:LP4000→3300


 シャルマーニュが処理されるも、逆にこの一撃でマナは正気を取り戻し気を引き締める。

 「だけど、このまま終わらせるわけにはいかないよ!戦闘ダメージを受けた事で手札から特殊召喚!我が生き血を養分とし、咲き開け『ブロッサム・ウィード』!」
 ブロッサム・ウィード:DEF1600

 ここでマナを護るように登場したのは手札誘発で展開される大きな花びらのようなモンスターだ。


 「さらにシャルマーニュが戦闘破壊された事で効果発動!これは墓地で発動される効果だから場で発動する効果しか阻止できないクリトルアムの効果の管轄外だよ。シャルがあたしに聖杯の剣を託した事でデッキから1枚ドロー!」

 「ちっ、ここで面倒なものが。けど魔双剣の効果によりシャルマーニュの攻撃力分…つまり1900ダメージを受けてもらうわ!」

 ここで魔剣より放たれし邪念がマナを襲う。


 「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
 キュアハート:LP3300→1400


 「まだ二回目の攻撃が残っているわ、今度はブロッサム・ウィードに攻撃『旧神蹂躙連斬』!さあ、その攻撃力分の1200ダメージを喰らいなさい!」

 折角出した大きな花びらのようなモンスターもあっさりと切り刻まれ、再びマナに魔剣の邪念が襲いかかった。

 「うわぁぁぁぁぁぁ…!」
 キュアハート:LP1400→200


 0にはならなかったとはいえ、これでマナのライフは残り僅かとなってしまう。
 さらには闇のゲームのためダメージが現実となり相当なダメージを受けたはずなのだが、そこはプリキュアであるためダメージこそは受けているものの平気でいられるようだ。


 「ふぃ、流石に効いた…でもブロッサム・ウィードは戦闘で破壊された時、雑草のごとく『ブロッサム・ウィード』1体をデッキから特殊召喚するよ!」
 ブロッサム・ウィード:DEF1600


 また、ブロッサム・ウィードはリクルーターでもあるので中々しぶとい。
 手札誘発での特殊召喚も含めてなるべくなら相手にはしたくないモンスターだろう。

 「仕留め切れなかったわね。けど貴方のライフはもはや風前の灯…精々足掻くことね。カードを2枚伏せてターンエンドよ」



 大ダメージを受けたとはいえプシュケローネの猛攻をしのぎ、ここでターンが終了。
 2枚の伏せカードが気がかりとはいえ、マナはここで動かざるを得ないだろう。

 「あたしのターン、ドロー!…墓地にモンスターが5体以上いるため、魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地からイービル・ソーン3体、ポルン・ミツバチ、ブロッサム・ウィードをデッキに戻してシャッフルし、2枚ドロー!」


 ―よし、これなら…!

 この土壇場での2枚ドローは大きい。
 これで手札が6枚となり反撃しやすい手札となったようだ。


 「ここでフィールド魔法『ハートリンク・ステージ』を発動!」
 ブロッサム・ウィード:ATK1200→700

 ここでハートをイメージしたいわゆるライブ会場のようなフィールドへと切り替わる。


 「随分とメルヘンで盛り上がりそうなフィールドね。だけど、ただでさえ低い攻撃力が下がっちゃっているけどいいのかしら?」

 プシュケローネに指摘された通り、このフィールド魔法の効果でマナの場のモンスターの攻撃力は下がってしまっている。

 「確かに普通のデッキじゃ見過ごせないデメリットだろうけど、これでいい!エクストラデッキから『No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon』をゲームから除外!強かな心を持つ漆黒の龍よ、白と黒の仮面を纏いて罪に苦しむ者を導け!現れろ『Sin Heart-eartH Dragon』!」
 『ゴォォォォォ!!』
 Sin Heart-eartH Dragon:ATK0



 ここで出てきたのは身体の各部に白と黒の模様の鎧を纏い、頭部に同色の仮面を纏ったような漆黒で長大な禍々しい龍である。
 しかもこの時点でレベル9のモンスターが2体並んだためランク9エクシーズを召喚できるのだが、彼女の展開はまだ止まらない。


 「続いて、ゲームから除外されているハート・アース・ドラゴンをエクストラデッキに戻し『ライクリボー』を特殊召喚!」
 『クリクリィ!』
 ライクリボー:ATK300→0



 「そして『イービル・ソーン』を通常召喚し、自身をリリースして効果発動!まずは300ダメージを受けてもらうよ!」

 「ぐ…小癪な」
 プシュケローネ:LP3700→3400


 「その後、同名モンスターをデッキから攻撃表示で2体特殊召喚するよ!」
 イービル・ソーン(×2):ATK100→0


 この時点でマナの場のモンスターは一気に5体に増え、埋まったことになる。


 「ここでハートリンク・ステージの効果発動!自分の場の全てのモンスターのレベルをレベル9以上のモンスター1体と同じにする!『Sin Heart-eartH Dragon』を選択し、全てのモンスターのレベルを9に変更!」
 イービル・ソーン(×2):LV1→9
 ライクリボー:LV1→9



 これでマナの場の全てのモンスターのレベルは9になった。
 なお、ブロッサム・ウィードは元々のレベルが9であるため変動はしない。


 「行くよ!あたしはレベル9となったライクリボーとSin Heart-eartH Dragonをオーバーレイ!」

 ライクリボーは黄色、ハートアースは紫色に輝く球体となってマナの目の前に発生した赤い渦に吸い込まれていく。


 「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!2つの心を通わせる時、みなぎる愛で世の中を包み込む!降誕せよ『プリティ・ハートリンカー』!」
 『ふふっ…はぁっ!』
 プリティ・ハートリンカー:ATK1500→1000



 髪の色がレモン色より白に近く、薄く透明な羽が生えているなどの差異はあるものの、キュアハートの姿のマナに酷似したランク9エクシーズがここに現れる。


 「ランク9のエクシーズで何が出てくるのかと思えば、変動込みで攻撃力がわずか1000とはね…私を馬鹿にしているのかしら?」

 確かにランク9でありながらこの低攻撃力は一見不安にしか思えないが…


 「馬鹿になんてしてないよ、これがあたしのエースの1体だから。プリティ・ハートリンカーの効果はオーバーレイ・ユニットを持ったこのカードが表側表示で存在する限り、自分の場のモンスターの戦闘によってあたしが受けるダメージは全て相手が受ける!さらに自身が破壊される場合、オーバーレイ・ユニットを1つ取り除く事でその破壊から免れられる!」

 「全てのモンスターにダメージ反射能力を付けるですって!?…そうか、攻撃力を下げたのはこのためか!」


 その効果は全てのモンスターにダメージ反射能力が付き、相手モンスターが高攻撃力であるほど多大なダメージが与えられるという凄まじいもので、流石はランク9の高ランクエクシーズだけある能力といえよう。
 しかもマナの場の殆どが低攻撃力モンスターのため、攻撃が決まれば相手に引導を渡すこともできるというわけだ。


 「バトル!プリティ・ハートリンカーでクリトルアムに攻撃!『慈愛のハート・ストーム』!」

 「けど、残念だったわね!手札のリチュアの儀水鏡を相手に見せ、トラップ発動『儀水鏡の大瀑布』!これにより相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て守備表示にするわ」

 「なっ…!」

 プシュケローネが罠を発動すると、どこからか滝のごとく水流が流れてきてマナの場のモンスターを飲み込んで全て守備表示にしてしまう。
 やはりというかそう簡単には攻撃を通してくれないようだ。


 プリティ・ハートリンカー:ATK1000→DEF2500
 イービル・ソーン(×2):ATK0→DEF300




 「その後、私は1枚ドローするわね」

 マナのモンスターの攻撃を防ぎつつ、自身は1ドローして損失を回復した…今のところは相手のペースに乗せられてしまっている印象である。


 「…止められちゃったか。それならメイン2に入り、プリティ・ハートリンカーの更なる効果を発動!このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ使い、フィールド上の表側表示のカード1枚を破壊する!」
 プリティ・ハートリンカー:ORU2→1


 「破壊効果まで持っているですって!?」

 「対象はもちろん、イビリチュア・クリトルアム!『ハートフル・マナ・ブラスター』!」



 ――ポフュゥゥゥン!!




 ハートリンカーの全身から光線が放たれ、クリトルアムは装備していた魔双剣もろともこの場から消え去った。
 しかし、その瞬間プシュケローネは突如沈黙する…何かが起こる前触れなのだろうか。


 ―沈黙した?いったいどうゆうことだろう。けれど…
 「ここでレベル9となったイービル・ソーン2体とブロッサム・ウィードでオーバーレイ!」

 2体のイービル・ソーンは紫色、ブロッサム・ウィードは黄緑色に輝く球体となり、マナの目の前に発生した宇宙空間のごとき黒い渦に吸い込まれていく。
 
 「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!宿命の心が重なりし時、運命の炎が最強のナンバーズを呼び覚ます!君臨せよ『No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon』!」
 『グォォォォォォォォ!!』
 No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon:ATK0



 ここで現れたのはマナがプシュケローネの障壁をこじ開ける時にも召喚した、禍々しい漆黒の東洋龍のようなモンスターだ。
 これでマナの場には2体のランク9エクシーズが並んだことになるが、その2体の雰囲気は真逆に感じられる。

 「あたしはカードを2枚伏せ、ターンエンド!」



 「ぐ…ア゛ァァァァァァァァ…!!」

 マナがターンの終了を宣言したその瞬間、プシュケローネは突如苦しむように発狂した。
 しかしマナには何が起きているのかは、ある程度想像できているようで顔が険しくなる。

 「ぁぁ…ククク、フハハハハ!我のターン、ドロー!墓地から『リチュア・リアラル』の効果発動!墓地のリチュアモンスターを任意の数除外し、その合計分のレベルのイビリチュアを墓地から復活させるのだ!墓地のエリアルとシャドウ・リチュアを除外し、甦るがいい『DT イビリチュア・ゴストローグ』!」
 『ケケケイィーヒヒヒヒヒ!』
 DT イビリチュア・ゴストローグ:DEF0




 するとプシュケローネは白眼を剥き、まるで別人のように豹変してしまう。
 心なしか彼女から発せられる闇の瘴気の量がまた一層増えてきたようだ。
 そして、墓地からダークチューナーを蘇生させてきたことはまたしてもダークシンクロを呼び出す魂胆なのだろう。

 「手札からリチュアの儀水鏡を捨て、ゴストローグの効果発動!このカードのレベルを2つ上げ、デッキから1枚ドロー!」
 DT イビリチュア・ゴストローグ:LV8→10


 「そして『リチュア・スカウト』を召喚し、効果発動!このカードが召喚に成功した時、場の水属性モンスター1体のレベルを2つ上げる…当然ゴストローグを選択!」
 リチュア・スカウト:ATK900
 DT イビリチュア・ゴストローグ:LV10→12




 これでゴストローグのレベルはとうとう最大レベルまで上昇してしまう。
 いずれにしろチューナー以外のモンスターが出てきたことでダークシンクロが呼び出されてしまうことになる。

 「ハハハハハ、これで我が復活する準備は整った。レベル2のスカウトにレベル12のゴストローグをダークチューニング!!」


 ゴストローグから出てきた12つの星がヒラメ人間のようなスカウトに侵喰し、より禍々しい10つの黒い星に変化する。


 「深淵と闇が交わりし時。現世の肉体を糧とし、我が肉体がここに甦る!クハハハハ!ついにこの時が来た…ダークシンクロ!完全復活だ『絶対捕食王 グレズ』!!」
 『クハハハハハハ!!』
 絶対捕食王 グレズ:ATK3200(レベル−10)




 その姿はヘラクレスオオカブトを彷彿とさせ、至る所に金色の意匠がある黒き虫悪魔のインヴェルズ最強の絶対捕食者『インヴェルズ・グレズ』そのものといっても過言ではないだろう。
 そこからは既にプシュケローネは操り人形同然の状態となっており、モンスターとして出てきているグレズから言葉が発せられる。



 「…ついに姿を現したな、ノエリアの心に巣くうインヴェルズ!!」

 『ククク、我の効果発動!このカードがダークシンクロによるシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するオーバーレイ・ユニットを全て取り除き、この攻撃力はその数の300倍…吸収するオーバーレイ・ユニットは4つ、つまり1200ポイントアップだァ!『エナジー・アブソーブ』!』


 そのグレズが全身に力を込めるとマナのエクシーズのオーバーレイ・ユニットを全て吸収してしまう。


 「オーバーレイ・ユニットが全て吸収された…っ!」
 プリティ・ハートリンカー:ORU1→0
 No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon:ORU3→0

 絶対捕食王 グレズ:ATK3200→4400



 オーバーレイ・ユニットが取り除かれてしまった事でプリティ・ハートリンカーのダメージ反射効果が消滅してしまう。

 ―だけど、ハート・アース・ドラゴンはオーバーレイ・ユニットが無くてもダメージ反射効果は持っている…今のところは大丈夫か。だけど…!



 『そういやハート・アース・ドラゴンにもダメージ反射効果が付いていたなぁ…ならば我に装備魔法『ダーク・ヴェール』を装備…カード効果では破壊できないこのカードを装備する事で攻撃対象モンスターの効果は無効よぉ』


 つまりグレズが攻撃すればHeart-eartH Dragonの効果が適用されなくなり、まともに攻撃が通ればダメージが発生するということである。



 『それに…下手にカード効果で処理しようなどと考えない方がいい。我には効果破壊耐性に加え相手の魔法・罠・攻撃力2500以下の効果モンスターの効果の対象にならないからなぁ!』


 しかも効果耐性がとてつもない事になっているようだ。
 この攻撃力でこれとは非常に攻略が難しく、伊達にレベル−10のダークシンクロモンスターを称してはいないということだろう。


 「バトル、我でハート・アース・ドラゴンを蹂躙してくれるわァ!」

 とはいえ、当然ながらマナに手が無いわけではない。


 「けど、こっちにもまだ手はあるよ!攻撃宣言時にランク5以上のエクシーズ、プリティ・ハートリンカーを対象に罠発動『ネビュラ・ストリーム』!フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠1枚を破壊し発動後、このカードを選択したモンスターのオーバーレイ・ユニットにする!あの装備は破壊できないから破壊するのは…自分のハートリンク・ステージ!!」


 ここでマナは自分のフィールド魔法を破壊してでも、プリティ・ハートリンカーのオーバーレイ・ユニットを回復させて効果を復活させる戦術に出た。
 あくまでもダーク・ヴェールが無効にできるのは攻撃対象モンスターのみ。
 攻撃されていないハートリンカーの効果は無効にならず、戦闘ダメージは全て相手に反射されるため上手い一手といえるだろう。


 『考え抜いた手だろうが、無駄だァ!手札の儀式魔法『リチュアに伝わりし禁断の秘術』を相手に見せ、カウンター罠『儀水鏡の呪術』を発動!その罠の発動を無効にし、相手はデュエル中その同名の罠を使用不可能にしてくれる!』

 「そんなっ…!」


 しかし伏せカードがあるのは相手も同じ事。
 カウンター罠を発動され、その発動を阻止されてしまう…しかも、これ以降同名カード発動不可のおまけつきでだ。

 『クハハ!そのまま絶望し、我が供物となるがいい!全て我にひれ伏せ『キングス・イレイザー』!!』

 グレズは四本の腕に集まった闇のエネルギーを1つにまとめて解き放つと、Heart-eartH Dragonがその力に飲み込まれマナの姿が確認できなくなるほどの大きな砂煙が発生するのだった。


 『フン、他愛もない。まぁいい、これでプリキュアの一人は仕留めたも同然。後はその亡骸を我が供物としていただくとしよう…フハハハハハハ!』

 決着がついたかどうかわからないのにもかかわらず、グレズはさも当然かのように勝利を確信し高笑いを始める。




 「はっはっはっはっは!」

 しかし、煙が晴れる前からグレズの高笑いに合わせて誰かが高笑いをしているようである。


 『ハハハ…何がおかしい!


 その笑い声の主にグレズは激昂する。
 インヴェルズの大ボスでありながらその態度からは余裕を感じさせない。
 そして砂煙が次第に収まりつつあり、辺り一面が見渡せるようになってきた。



 「いやはや、ここまで想定通りになってしまうと笑い声も思わず出てしまうものだよ」
 キュアハート:LP200



 『馬鹿な、あの攻撃を喰らってまだライフが尽きていないだと?何をした貴様!

 笑い声の主はキュアハートことマナであった。
 あの一撃で確実に仕留めたと思っていただけにグレズは驚愕している。

 「簡単な話だよ。ダメージ計算時に墓地から『ライクリボー』の効果を発動していたのさ!墓地のこのカードを除外して戦闘ダメージを0にさせてもらったよ!」
 

 そう、プリティ・ハートリンカーのオーバーレイ・ユニットだったものが取り除かれた時に墓地へ行ったモンスターを利用してダメージを防いだのだ。
 これは対象を取らない効果のためグレズでは阻止できなかったのだ。


 『あの時のか!お、おのれぇ!だ…だが、我が効果で戦闘破壊したハート・アース・ドラゴンを除外し、この傀儡のライフを1000回復だ!』
 プシュケローネ:LP3400→4400


 『ぐ…カードを1枚伏せ、ターンエンド…!』
 ―だ、だがこの伏せカードは『神の宣告』…どんな手でこようとこのカードと我が耐性があれば次のターンで…


 しかしグレズは1枚伏せてターンエンドした瞬間、マナがほくそ笑むのを見逃していた。
 その瞬間に既にマナの脳内には勝利への方程式が導かれていたことを知る由が無かったのだ。


 「グレズ!次のターンで絶対にノエリアをあなたとファントムから解放させてみせる!」


 そして、マナが突如としてグレズを自信満々に指さしながらそう勝利宣言をする。


 『は?何を言っていやがる…それは我とこの伏せカードを乗り越える前提で話しているというのか…!』

 「もちのロン!あの戦闘とさっきカードを伏せた事であたしの勝利への方程式が全て揃ったよ!ライフポイントを半分払い…エンドフェイズ時にトラップ発動!『バリアンズ・タキオン・ストリーム』!!このカードを発動するための条件は自分のランク8以上のエクシーズモンスターが場を離れたターンであること!このターンの間にランク9のハート・アース・ドラゴンが場から離れた事で条件は満たさせてもらったよ!」
 キュアハート:LP200→100


 『何だと…?このターンの事は全て貴様の手の内だったというのかァ!』


 だいぶうろたえているようで、今のグレズからはまったく風格を感じさせない。


 「うん!ネビュラ・ストリームが通ってくれればそれはそれで嬉しい誤算だったけどね…そしてこのカードは相手フィールド上の魔法・罠カードを2枚まで選択して除外する!対象は勿論…ダーク・ヴェールとその伏せカード!」


 すると、禍々しき紅の波動がその2枚のカードを飲み込んだ。

 『馬鹿な、伏せカードの神の宣告もろともダーク・ヴェールを除外しただと…だ、だがしかしそれでも貴様の場にはオーバーレイ・ユニットのない弱小エクシーズとそのフィールド魔法のみ…次のドローでこの状況を打破できるカードがそう都合よく来るわけが無い!』

 確かに普通ならこの状況でマナが逆転勝利するには次のドローに左右されてしまうだろう…あくまで普通ならだが。


 「…それはどうかな!バリアンズ・タキオン・ストリームの更なる効果!デッキからRUM(ランクアップマジック)と名のついたカード1枚を選んでデッキの一番上に置く。あたしが置くのは…RUM−バリアンズ・フォース!」
 ―そう、これが六花を連れて行きたくなかった理由の一つでもあるんだ。

 『ランクアップマジックだと…それで何をするつもりだァ!』


 そう、これには次のドローカードを確定させる効果まで付属していた。
 その瞬間、マナの周りには紅色のオーラが垣間見えていた。



 「それは…すぐにわかるよ!あたしのターン、ドロー!行くよ、手札から『RUM−バリアンズ・フォース』を発動!このカードは自分のエクシーズ1体をランクアップさせ、ランクが1つ高いCX(カオスエクシーズ)に進化させる!」

 『カオスエクシーズだと…!』

 マナはそのバリアンズ・フォースを掲げつつ発動する。
 そして、そこには禍々しい紅き光が集まっていた。


 「あたしはプリティ・ハートリンカーをエクシーズ素材としてオーバーレイ・ネットワークを再構築、カオス・エクシーズ・チェンジ!!」


 するとハートリンカーが紅いエネルギー体に変化し、上空に突然現れた黒い渦に吸い込まれてその渦が爆発する。
 そしてそこから出てきた光球が黒いフレームのカードが連なったようなコード状のもので黒い球体状に包まれ、再構築されたエクシーズが次第に姿を現す。


 「光と闇が交わりし時、混沌なるバリアンの力が現出す!生まれ変わったその心で全てに愛を振りまき、穢れし者を救済する!光臨せよ『CX キュアカオス・ハートリンカー』!」
 『ふっ、はぁぁぁぁ…!』
 CX キュアカオス・ハートリンカー:ATK2000→1500




 現れたのはプリティ・ハートリンカーが少し成長して背には右側が天使の羽でもう片方には悪魔やドラゴンのような黒い翼を生やし、そしてその衣装には紅く発光する線のような部分が目立つ禍々しくも美しい少女の姿であった。
 また、そのオーバーレイ・ユニットは紅く光った菱形の物体『カオス・オーバーレイ・ユニット』に変質している。


 『…だが、カオスエクシーズになったところで攻撃力はたったの1500…その程度で我に何ができる!』

 この時グレズは自身の弱点を致命的にも忘れていた…破壊以外の対象を取らない効果にはその耐性は何も意味をなさない事に。


 「自分で言った事忘れてるんじゃない?あくまで耐性として持っているのは破壊効果全般と対象を取る効果だと!バトル、キュアカオス・ハートリンカーでグレズに攻撃…『救済のハートフル・カオス・レイ』!!」


 『抜かしおって…返り討ちにしてくれるわ!』

 キュアカオス・ハートリンカーが全身から白と黒が混ざった二色の光をグレズに向けて放出する。
 一方でグレズも四本の腕から闇の波動を撃ちだし迎撃するも、その二色の光はグレズの波動を吸収しつつグレズを飲み込む。


 『ぐわぁぁぁぁぁぁ…!』
 「ううっ…」
 プシュケローネ:LP4400→1500


 一応プシュケローネがダメージを受けているのだが、実際にはグレズがよりダメージを受けているようなリアクションであった。


 「キュアカオス・ハートリンカーの効果…このカードは1ターンに1度だけ戦闘でも効果でも破壊されず、自身の戦闘によって発生する戦闘ダメージは全て相手が受ける!」

 『おのれぇ、そいつもそのような効果を持っていたか!だが、それだけでは我を倒すことはできぬぞぉぉぉぉぉ!!』


 確かにダメージ反射だけではまだライフを削りきることはできない…無論それはキュアカオス・ハートリンカーの効果がそれだけであればの話であるが。



 「そう、それだけならね。ダメージ計算後、キュアカオス・ハートリンカーの更なる効果を発動!このカードのカオス・オーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、このカードが攻撃した相手モンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与え、そのモンスターをゲームから除外する!これは対象を取らない効果…グレズ、これで終わりだよ!
 CX キュアカオス・ハートリンカー:ORU 1→0


 そう、キュアカオス・ハートリンカーは相手の攻撃力次第では一瞬で決着がつけられるほどの決定力のある強烈な効果を持っていた。
 グレズの墓地には防げるカードは無く、手札も儀式魔法1枚のみ…これで勝負は決した。

 『馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!』
 「うっ…」
 プシュケローネ:LP1500→0



 キュアカオス・ハートリンカーの一撃がグレズを打ち倒し、ついに決着。
 プシュケローネの闇の瘴気が弱り始める。



 『こうなったら、正真正銘のダイレクトアタックだぁぁぁぁぁ!!


 ところが、グレズの身体は崩れ始めるも…往生際が悪いようでマナに対して特攻を仕掛けてきた。
 しかしマナは動揺せず、今がチャンスだとばかりにラブリーコミューンを取り出す。


 ―よし、瘴気が弱まってきた…今なら浄化できる!
 「シャールルーン!」


 そして、それからそう音声が発せられるとハートの形状の宝石が付いたキュアラビーズをうさぎの部分の額に取りつけ、画面にハートの形の文字を描く。




 「あなたに届け!マイ・スイート・ハァァァァァァト!!!




 ――シュゥゥゥゥン!



 すると、マナの胸部にあるハート状の物質から桃色の光線が発せられ、グレズとプシュケローネを飲み込んだ。


 『ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!この我がぁぁぁぁぁぁ!ラブラブラァァァァァァァァブ…』
 「あっ…」


 凄まじい断末魔の叫びをあげながら、ついにグレズは消滅した。
 プシュケローネの方は安らぎに満ちた顔をしながら甲虫のような黒い鎧部分が消えて行き、ようやく元のノエリアに戻れたようである。



 「う、うぅ…私はいったい何を」

 「正気に戻ってくれたみたいでよかった。あなたはインヴェルズに身も心も支配された状態でファントムという輩に呼び出され、破壊活動の加担をさせられていたようです」


 ノエリアが眼を覚ましたところで、マナは彼女に対し手短に状況を説明した。
 するとノエリアはその表情に悔いを感じさせながら…

 「そう…悪魔召喚の際にナタリアを死なせた上でインヴェルズに乗っ取られ、娘のエミリアや他の民に対しても非道な行いをし続けた私にはお似合いの様よね…そんな無様な私を助けたのはどういうことかしら?」

 「それは…あなたの出自と伝承を知っているから。それを知ってしまったらお人好しなあたしには見過ごすことなんてできるわけないじゃないですか!…それにずっとそんな辛気臭い顔していたらナタリアさんに笑われますよ?」


 辛気臭い顔でそう自虐するノエリアに対し自身が彼女の出自を知っている事をばらしつつ、諭していく。
 ちなみにエミリアとはリチュア・エミリアのことである。


 「ふふ、それもそうね。でも、貴方…私の出自を知っているってどういうことかしら?」


 そのように少しは表情もましになったようであるが、別の疑問が出てきたようだ。
 ここが自らの住む世界とは違う事を知らないはずの彼女にとっては当然の疑問であろう。


 「その説明には最初に言っておかなければならない事があります。それは、ここはあなたが本来住んでいる世界ではないという事です…その上であなたの住んでいる世界の伝承が本やデュエルモンスターズのカードなどの媒体で伝えられ、あたしはそれを見て知ったという事…そしてあなたはファントムといういわゆる悪の組織の手でカードから実体化され、ここに呼び出された可能性が高いという事です」


 マナの住む世界ではカードや本でノエリアたちの住む世界の伝承が伝えられていることなどを説明する。


 「なるほど、そういうことね…それとどうやら、そろそろ元の世界に帰る事になりそうね」


 するとノエリアの身体が輝き、少しずつ姿が見えなくなってきていた。


 「そう…みたいですね。あたしのような若輩者が言えるようなことではないかもしれませんが、己の罪の意識に押しつぶされず、やらなきゃならないことを成し遂げてください!きっとアバンスとエミリアもあなたの助けを待っていると思います」


 別れる前に、マナはそのようにノエリアに激励の言葉を贈る。
 ちなみにアバンスはノエリアの親友、ナタリアの息子の事である。


 「ふふっ、できるだけ善処してみるわ。貴方にはどんなに感謝してもしきれないみたいね。貴方も自分のやるべきこと、がんばりなさい…」


 ノエリアはそうマナに対しての感謝と激励を送ると、もうすでに姿が見えなくなった。
 さっきまでのことが本当であれば、彼女の元いた世界に送り返されたことだろう。


 「ありがとうございます、そちらもがんばってくださいね…うぐ…!はぁ、はぁ」
 ―うっ、闇のゲームによるダメージとカオスエクシーズを使った反動がここにきて出てきたか…正直かなり辛い。


 一方で当のマナは苦しそうに顔を歪め、息を荒くしていた。


 ―あれ…冷静に考えたら自分で手を下さなくても、奴が捕まった後にもし面会の機会ができた時にあの子の両親たちに対して誠意を込めて謝らせればよかったのかも…それであの人たちが納得してくれるとは思えないにしても。


 そのように発想が斜め下になってしまうあたり、もう彼女は限界なのかもしれない。
 それでも、残り僅かな希望をもとにすぐに迫った埠頭の方へ足を進んでいった。










 ―――――――――――――――――










 「所詮傀儡は傀儡ね…でも、時間稼ぎには十分に貢献したわ」


 埠頭にある神殿の玉座の間。
 ここでファントムを掌握した女性『雪花』が玉座に座ってモニター越しにマナとプシュケローネのデュエルを拝見していたのだ。
 そして手に持っていたのはイビリチュア・プシュケローネのカードであるが、言い終わるとそれをその辺に投げ捨てる。


 「それにしてもまさかプリキュアが童美野町に来ていたとはね…だけどこの絶望の最終章にはお呼びじゃないのよ。この神殿には一歩たりとも足を踏み入れさせない…あ〜っはっはっは!!」


 玉座のある部屋には狂気の笑い声が響いていたのであった…










 ―――――――――――――――――










 「ふぃーやっと着いた…ここが埠頭だけど…」


 疲労困憊になりながらも、なんとか童美野町の埠頭の方へ到達したマナ。
 そして海上の先には巨大な建造物が異様な存在感を示していた。
 とはいえ、海に面した先にある神殿にたどりつくのはそう容易ではないだろう。

 ―プリキュアになっているとはいえ今の体力だと、あそこまでたどり着けるかどうかは五分五分といったところ…でも、皆の前であんなことを言った手前やれるだけやってみますか!


 マナが覚悟を決め、助走をつけて…




 「はぁぁぁぁぁぁぁ!…ぐへぇ!?


 海を飛び越えようと飛び出したはいいものの埠頭と海の境目付近において見えない何かに遮られ、跳ね返されてしまう。


 「がはっ!?」

 さらに受け身を取ることにも失敗し、床に叩きつけられてしまう。
 その衝撃でプリキュアの姿が保てなくなったのか、元の姿に戻ってしまった。


 ―ううっ…何か見えない壁のようなものにぶつかって…


 そして変身が解除されて満身創痍のまま海との境界へ近づいていき、見えない壁のようなものに遮られた部分に手を伸ばしてみると、何も触れる事はなかった。


 「あ…あ……」


 その瞬間、彼女は理解してしまった…ファントム達がプリキュアへの対策として超能力として専用のジャマーを発生させていた事。つまりそれは埠頭へ行く際の出来事が全て向こうに筒抜けだった可能性がある事を。
 それに今のマナは満身創痍の状態、船もモンスターの襲撃で破壊されてしまっているものが多くそもそも自分には操作技術もなく周りには人気が伺えなかった。
 プリキュアに変身するとジャマーで妨害され、かといって変身しなければ最早あの海を越える手段は彼女には残されていなかった。


 「あ、ははははは…もはや、ここまでだというの?また、奴らにたどり着く事ができなかったのか。あたしって…ほんとバカ。ちくしょう…ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


 人気のない埠頭にはマナの絶叫が虚しく響き渡っていた…








 「……嘆いてばかりいても仕方ない。遊星さん達はもう神殿に着いているだろうなぁ」


 目を虚ろにさせながらも、いつまでもくよくよしてられないとばかりに少しだけ冷静さを取り戻す。


 「幸い、モンスターの気配もなくなっている…彼らに任せて今は戻ろう。六花たち、思い切り心配してるんだろうなぁ」


 確かに今はモンスターの気配はない…あれがチーム遊戯王の面々をおびき寄せるためのファントム側の作戦だとしたら目的は果たした今、モンスターの実体化と物理干渉はもはや無駄だと判断したためだろうか。
 そう考えつつも満身創痍の中、マナは重い足取りで来た道を引き返していくのであった。










 ―――――――――――――――――










 「ぜぇ、ぜぇ…やっと…戻ってこれた」

 満身創痍で息が切れそうでありながらも何とかマナは噴水広場の方へ戻ってくる事ができたようである。


 「ぶ、無事だったのね!マナ、マナァァァァァァァァァ!」
 「「「「「会長が無事に帰ってきた!」」」」」

 最初に出迎えてくれたのは六花であった。
 目元が腫れている事を考えると、マナのことを大変心配してくれたということだろうか。


 「はぁ、はぁ…ちゃんと戻ってきたよ。みんなも無事でなによりだ」

 他の生徒も疲労しているとはいえ、無事この危機を乗り越えられたようだ。
 しかし、水城の姿だけが見えないのが気がかりであったが。


 「そういえば、水城君の姿がみえないけど…」
 「それなんだけど、途中で失神しちゃったから保健委員が看病して安全を確保した時点でバスに休ませてるよ」
 「本当?…それならよかった」


 どうやら、水城君は無理がたたって失神したために休ませているそうである。
 いざという時に保健委員が動いてくれたのも、生徒会長であるマナにとっては安心したところだろう。


 「それはいいんだが相田?疲れてるところ悪いが、やるべきことというのは結局どうだったんだ?」

 確かにマナのやるべきことができたかどうかは皆が気になるところだろう。
 実際には阻まれたがために戻ってきたマナは首を横に振る。

 「それがね…しくじっちゃった。埠頭へ続く道の中で困っている人を助けていたりしたら、思った以上に時間がかかって疲労が溜まっちゃったのと、敵に目を付けられてしまったみたいであの建造物への侵入に失敗しちゃったんだ…あんな事を言ったのに、みんなごめん!」

 そう言うとマナは跪き頭を垂れる格好で悔しさを表現した。


 「悔しいだろうけど、それでも会長は会長らしく頑張れたんじゃないかな?」

 「ま、そういうこともあるよね」

 「人助けしてて時間食っちゃったのは、それで助けられた人もいるだろうからそれはそれでいいんじゃないの?そっちの方が会長らしいし」

 「はぁ、いつだってこんなはずじゃないことばっかりですのよ…それより無事に戻ってきてくれたみたいでなによりですの」

 「力及ばず何の結果も残せませんでしたぁ〜許してください、ってかァ!?ンヘハハハハハハ!許してやるよォ!!

 「無事だっただけでよかった、マナ!…それとマナへの非礼はあたしが許さないから


 生徒たちはみんなそれぞれ違う形でマナを慰めていた。
 ただし、一人おかしいのがいるのは気にしてはいけないだろう。

 「みんな…ありがとう!…あ、向田君はあとで表へでろ


 こうして、マナと大貝第一中学校二年の皆は無事に再会する事ができた。

 「だけどさ、相田が駄目ならあの建造物は誰がどうにかするんだろうな?」

 確かに埠頭の先に見える建造物は誰かがどうにかしなければならないため、やや不安に思うのも仕方ないだろう。

 「それは多分チーム遊戯王の面々がどうにかしそうな気がするな。だって行った先でチーム遊戯王の不動遊星さんと会っちゃいましてね。彼も埠頭の方へ向ってたから」
 「「「「「マジで!?…羨ましい!」」」」」

 マナはチーム遊戯王のメンバーがどうにかする可能性が高いことを不動遊星と会ってから彼が埠頭の方へ向かったのを根拠に言うと、流石は有名人なのか羨ましがる人が多かった。

 「WRG1の優勝チームの方々がですか…彼らに任せておけば何とかなりそうですね」
 「…今は彼らが成し遂げてくれると信じて待つしかないようだな」

 マナは因縁のアギトには会う事さえ叶わなかったものの、ひとまず大貝第一中学校二年の生徒の皆と共にチーム遊戯王のメンバー達があの建造物をどうにかすることを信じて待つことにしたのであった。

 「そうだね、今は…あっ」
 ――どさっ…


 「しっかりして、マナァ!マナァァァァァァ!!
 「大変だ、保健委員!俺だぁぁぁぁぁ!


 疲労が完全に限界に達したことで、マナは気絶してしまったようだ。
 その後保健委員らによって安全な場所まで運ばれ、看病されながら色々待つはめになったという。

 勿論目を覚ましたところでモンスター襲撃の影響で大半の店が休業してしまっているため、本来自由時間で寄るはずだったカードショップなどに行く事ができなかっただろうことは想像ができた。





 しかし、この時点でマナには知る由もなかった…因縁のあるアギトの魂がファントムの手で生贄に捧げられそうになっている事に…










 END










 登場カード補足



 イビリチュア・クリトルアム
 ダークシンクロ・効果モンスター
 星−6/水属性/悪魔族/攻2600/守2100
 チューナー以外のモンスター1体−儀式モンスターのダークチューナー
 自分のメインフェイズ時に発動できる。
 デッキからカードを1枚ドローし、お互いに確認する。
 確認したカードが「リチュア」と名のついたモンスターだった場合、
 相手フィールド上の効果モンスター1体を選んでその効果を無効化する。
 「イビリチュア・クリトルアム」の効果はデュエル中2度まで使用できる。



 邪念の魔双剣
 装備魔法
 ダークシンクロモンスターにのみ装備可能。
 手札を1枚墓地へ送って発動する。
 装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
 装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
 破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。



 リチュア・リアラル
 効果モンスター
 星4/水属性/魔法使い族/攻1400/守1500
 このカードが墓地に存在する場合、
 自分の墓地の「リチュア」と名のついた
 儀式モンスター1体を選択して発動できる。
 そのモンスターのレベルと同じレベルになるように、
 選択したモンスター以外の自分の墓地の
 「リチュア」と名のついたモンスターをゲームから除外し、
 選択したモンスターを特殊召喚する。
 「リチュア・リアラル」の効果はデュエル中1度しか使用できない。
 


 ブロッサム・ウィード
 効果モンスター
 星9/風属性/植物族/攻1200/守1600
 自分が戦闘ダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚できる。
 このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
 デッキから「ブロッサム・ウィード」1体を特殊召喚できる。



 ハートリンク・ステージ
 フィールド魔法
 このカードがフィールド上に存在する限り、
 自分フィールド上のモンスターの攻撃力は500ポイントダウンする。
 1ターンに1度、自分フィールド上の
 レベル9以上のモンスター1体を選択して発動できる。
 自分フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターのレベルは
 エンドフェイズ時まで選択したモンスターと同じレベルになる。
 フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
 デッキからカードを1枚ドローする。
 「ハートリンク・ステージ」は1ターンに1枚しか発動できない。



 Sin Heart−eartH Dragon
 効果モンスター
 星9/闇属性/ドラゴン族/攻 0/守 0
 このカードは通常召喚できない。
 自分のエクストラデッキから「No.92 偽骸神龍 Heart−eartH Dragon」1体を
 ゲームから除外した場合のみ特殊召喚できる。
 「Sin」と名のついたモンスターはフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。
 このカードが表側表示で存在する限り、自分の他のモンスターは攻撃宣言できない。
 フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合このカードを破壊する。
 このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されず、
 このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。



 ライクリボー
 効果モンスター
 星1/光属性/悪魔族/攻 300/守 200
 このカードはゲームから除外されている自分のエクシーズモンスター1体を
 エクストラデッキに戻す事で、手札から特殊召喚できる。
 また、相手ターンの戦闘ダメージ計算時、
 墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。
 その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。
 「ライクリボー」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。



 プリティ・ハートリンカー
 エクシーズ・効果モンスター
 ランク9/風属性/天使族/攻1500/守2500
 レベル9モンスター×2
 エクシーズ素材を持っているこのカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
 自分フィールド上のモンスターの戦闘によって発生する
 自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
 フィールド上のこのカードが破壊される場合、
 代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除くことができる。
 また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、
 フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して破壊する。



 儀水鏡の大瀑布
 通常罠
 自分フィールド上に「リチュア」と名のついたモンスターが存在する場合、
 手札の儀式魔法カード1枚を相手に見せて発動できる。
 相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスターを全て守備表示にし、
 デッキからカードを1枚ドローする。



 リチュア・スカウト
 効果モンスター
 星2/水属性/魚族/攻 900/守 300
 1ターンに1度、自分フィールド上の水属性モンスター1体を選択して発動できる。
 選択したモンスターのレベルを2つ上げる。
 また、フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
 デッキから「リチュア」と名のついたモンスター1体を
 選んでデッキの一番上に置く事ができる。



 絶対捕食王 グレズ
 ダークシンクロ・効果モンスター
 星−10/闇属性/悪魔族/攻3200/守 0
 チューナー以外のモンスター1体−ダークチューナー
 このカードがシンクロ召喚に成功した時、
 相手フィールド上のエクシーズ素材を全て取り除き、
 このカードの攻撃力は取り除いた数×300ポイントアップする。
 このカードはカードの効果では破壊されず、
 相手の魔法・罠・攻撃力2500以下の効果モンスターの効果の対象にもならない。
 また、このカードが戦闘によってモンスターを破壊した時、
 そのモンスターをゲームから除外し、自分は1000ライフポイント回復する。



 ダーク・ヴェール
 装備魔法
 ダークシンクロモンスターにのみ装備可能。
 装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、
 バトルフェイズの間だけその相手モンスターの効果は無効化される。
 また、フィールド上に表側表示で存在する
 このカードはカードの効果では破壊されない。



 ネビュラ・ストリーム
 通常罠
 自分フィールド上のランク5以上の
 エクシーズモンスター1体を選択して発動できる。
 フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カード1枚を選択して破壊し、
 このカードを選択したモンスターの下に重ねてエクシーズ素材とする。



 儀水鏡の呪術
 カウンター罠
 手札の儀式魔法カード1枚を相手に見せて発動できる。
 罠カードの発動と効果を無効にし破壊する。
 相手はこのデュエル中、この効果で破壊された
 罠カード及び同名カードを発動できない。



 バリアンズ・タキオン・ストリーム
 通常罠
 ランク8以上のエクシーズモンスターが自分フィールド上から離れたターン、
 自分のライフポイントを半分払い、
 相手フィールド上の魔法・罠カードを2枚まで選択して発動できる。
 選択したカードをゲームから除外する。
 その後、デッキから「RUM」と名のついた
 カード1枚をデッキの一番上に置く事ができる。



 CX キュアカオス・ハートリンカー
 エクシーズ・効果モンスター
 ランク10/光属性/天使族/攻2000/守3500
 レベル10モンスター×3
 このカードは1ターンに1度だけ戦闘及びカードの効果では破壊されず、
 このカードの戦闘によって発生する
 自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。
 また、このカードは「プリティ・ハートリンカー」を
 エクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。
 ●このカードが相手モンスターを攻撃した場合、
 そのダメージ計算後にこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。
 相手モンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを
 相手ライフに与え、そのモンスターをゲームから除外する。




 後書き座談会



 yatume(以下Y)「というわけでわたしが愛読させていただいている吉良飛鳥さんの遊戯王New Generation(以下遊戯王NeG)とドキドキ!プリキュアのクロスという誰が得するのだろうといったものを3つに分けて投稿させていただきました!わたしはyatumeと申します」

 マナ「今回はドキドキ!プリキュアの主人公ことあたし、相田マナが主役でした!…でも、色々とキャラや設定が捏造されてるね」

 Y「ドキドキ!プリキュアもまだ始まったばかりだしね。何故か間接的とはいえマナとアギトに因縁があったり、バリアン世界の産物を使っていたりとか。あとプリキュア達の敵ジコチューも弱体化補正かけられてて既に壊滅したということになってる」
 
 遊馬「それで、バリアン世界に行ったことあるのか?」

 マナ「うん。ジコチューの一人『ベール』の手で次元の裂け目に落とされた時に何故か迷いこんじゃってね」

 Y「しかもプリキュアの状態は人間時よりもエネルギー体に近いはずという考えの元、バリアンの力に汚染されてバリアン人に近い存在になりバリアンズ・フォースなどはそれが原因で入手したという裏設定です…前編の禍々しさがうかがえる緋色の瞳という描写はそのことが影響しています」

 遊馬「だけどさ、バリアンには空間を移動できる能力もあるわけだろ?もしマナが使えるとしたらどうしてそれを使って神殿に突入しようとしなかったんだ?」

 Y「それについてはマナの場合は別の次元間あるいは別のバリアン人のいる付近への移動しかまともに使用できる力ではなく、別の次元間においても座標を特定しての移動ができないということでお願いします」

 遊星「苦しいところだな…また本編ではモンスターの襲撃が止まったかわからないのにもかかわらず、モンスターの襲撃が止まったことなども捏造部分ではあるな」

 Y「あと今回どうしてこんな話を書いたのかと言うと、マナはキュアハートでしょ?それでハートつながりでハート・アース・ドラゴンを思い浮かべてしまったわけで、マナにハート・アース・ドラゴンを使わせようとしてこうなったわけなのです」

 遊馬「お、おう…でもさ、肝心のハート・アース・ドラゴンは噛ませ役になってたよな?ZEXAL本編でオレたちがDr.フェイカーとデュエルした時に出てきた奴は厄介な相手だったけど、味方として扱うのには扱いにくい能力だってことか?」

 Y「うん、特に除外効果はエンドフェイズに発動するタイプのものですからね。敵に回してみると厄介極まりない能力だけど、これは攻めるものというよりは制圧するタイプのものだから味方としては噛ませ役になりやすいのよね」

 遊馬「だよなぁ…ところでなんでオレが出てるんだ?」

 Y「ああ!それだけど実は前回投稿した短編にも登場させてたから折角なので出してみた」

 なのは「わたしがデュエルした話で遊星さんがダイガスタ・フェニクスを出す際の『いけー!かっとビングだ!!』と言っていた方がそうだね。ちなみにわたしの父さんの店の常連で割とわたしと仲が良いという裏設定もあります」

 マナ「使用カードは希望皇ホープ系統とゼアル・ウェポンが主体みたいだね…ここではいわゆるゼアルウラにならなくても使えるということでいいんだよね?」

 Y「そういうことになります」

 マナ「それであたしが遊馬に渡したカードが何かだけど…」

 Y「いずれわかるさ…いずれな」

 遊星「それは置いておいてだ、マナが『Sin』モンスターを使ったのが気になるな。あれは俺たちが倒したパラドックスの専用カードのはずだと思うが?」

 Y「それは裏設定として『過去にマナは遊星たちが相手したものとは別の次元のパラドックスに襲われたけど返り討ちにして、その時の戦利品として手に入れたもの』というのがあったり…どちらかといえばOCGに近い仕様になっているのも元々の持ち主以外の手に渡った事でカードが変質してしまったと捉えていただければ幸いです」

 なのは「それとマナさんの対戦相手がイビリチュア・プシュケローネだったのはどういった風の吹きまわしなのでしょうか?」

 Y「今回の話は遊戯王NeG本編の71話の掃滅戦の時期の話でそれなら相手もデュエルモンスターズのモンスターにしようということと、デュエルターミナルのマスターガイドが発売された記念としてプシュケローネが対戦相手となりましたが、劇中で今までのモンスターよりもっとも厄介な相手扱いだったのは、カードのスペックと実際の強さにはギャップが生じているという事です。マスターガイドのソンブレスとケルキオンもそんな感じです」

 遊馬「それじゃ、マナはどうして六花を連れて行かなかったんだ?」

 Y「それは第三者の立場から見ると、デュエリストではないのとマナに依存しているのではないかという疑惑があり、マナからするとバリアンの力を見られるのはよくないと考えたのでしょうね」

 遊星「あとは最初の方で出てきた『シェルアーマー・ドラゴン』の使い手『水城』は何者なんだ?」

 Y「ごめん、それ完全にオリキャラ。マナの同級生で任意の範囲でのモンスターの実体化のサイコパワーを持っていて、プリキュアが現実世界にいなくなった際のジコチューの掃滅に一役買ったという裏設定があるキャラ。ちなみにマナに対して叱咤した際は、大貝第一中学校の他の生徒曰く体調不良で逆に興奮しまう癖があるみたいで傍から見ると慌てふためいたような感じでかわいかったとのこと。ちなみに黒髪ボブの男装少女という裏設定があったり」

 マナ「なるほど、そうだったんだ」

 Y「後は六花さんの扱い悪くね?とか冒頭のアレはデスガイド?とか他にも色々あるかと思いますが、長くなりすぎたのでこの辺で締めたいと思います」

 マナ「こんな話ですがどうも見てくださり、ありがとうございました!」