「「「決勝で!!!」」」
遊哉、遊星、霧恵の3人が其々にばらけて移動し始めるのを見ている1人の少女。
どうやら、アカデミアの生徒のようだ。
「不動遊星と緋渡遊哉…ふふ、此の大会、面白くなりそうね。」
少女は2人と顔見知りらしい。
さて、大会で何が起こるのか…
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel5
『始まりのデュエル』〜黒薔薇の魔女VS謎の刺客〜
遊哉達を見ていた少女――十六夜アキ。
アカデミアの生徒であり、最上級クラス『オベリスクブルー』に所属する2年生である。
当然、彼女も大会に参加しており、これから最初の相手を決めるわけなのだが…
「誰と闘おう…」
アカデミア屈指の実力者である彼女と進んで闘おうと言う者はそうそう居ない。
故に、彼女がその場から移動しようとしたときだった、
「十六夜アキだな?」
黒いフードを身に纏った男が声をかけてきたのは。
「…誰?」
「デュエリストさ…分かるだろ?」
「…私と闘うつもり?」
「如何にも。だからこそ、こうして声をかけたのだが?」
「…(この男一体…)いいわ、相手になってあげる。」
「ありがたい…」
思いがけず対戦相手を得たアキ。
正面玄関前には、まだ参加者が多数散開せずに残っている。
結果、このデュエルを観戦しようと周囲にはあっという間に人だかりが出来てしまった。
まぁ、アカデミア屈指の実力を持つ彼女のデュエルとあれば当然だろう。
「あの黒いフードの奴が、十六夜とやるらしいぞ。」
「相当腕に自信が有るのか?十六夜はアカデミア最強とまで言われてるんだぞ?」
「見応えのあるデュエルに成りそうだね♪」
「アキ様、頑張って〜。」
ギャラリーの殆どはアカデミアの生徒。
アキの応援が多いのも頷ける。
「同姓からのファンも多いようだな…」
「それは、あまり言わないで。」
「羨ましい限りで…だからこそ倒しがいがある…行くぞ!」
「「デュエル!!」」
こうして大会最初のデュエルが幕を開けた。
――――――
少し場面を変えてこちらは遊星&氷雨組
「…どこかでデュエルが始まったらしいな。」
「そうみたい。なんか『十六夜アキ』とか聞こえたけど…」
「アキ…そうか、彼女もアカデミアの生徒だったんだな。」
「知り合い?」
「まぁな。」
遊星も十六夜アキとは知り合いらしい。
「(緋渡、この大会…面白くなりそうだ。)」
遊星もまた楽しみを胸に込め、相手を探すことを再開した。
そして、此処とほぼ同じことが遊哉、霧恵も行っていたのは言うまでもない。
――――――
場面は戻ってアキvsフードの男
「私の先攻。ドロー…黒薔薇の精霊を攻撃表示で召喚。」
黒薔薇の精霊:ATK1500
「黒薔薇の精霊の効果、このカードの召喚に成功したとき、デッキからレベル4以下の植物族モンスター1体を手札に加えることができる。
私はデッキよりロード・ポイズンを手札に加える。カードを2枚伏せターンエンド。」
モンスター1体と伏せカード2枚。
先攻としては、先ず先ずの体制だろう。
「俺のターン。…機動砦のギアゴーレムを守備表示で召喚。」
機動砦のギア・ゴーレム:DEF2200
「カードを2枚セットしてターンエンド。」
こちらは守備を固めてきた。
守備力2200で直接攻撃能力を持つモンスター。
2枚のカードは相手の攻撃を封じるカードだろうか?
「(伏せカード2枚…)私のターン、ドロー。(…あの伏せカードは気になるけど…此処は一気に攻める。)
手札より魔法カード『苗木の剪定』を発動。自分フィールド上の植物族モンスター1体を墓地へ送りデッキから新たに2枚ドローする。」
「ほう…」
「そしてチューナー・モンスター『夜薔薇の騎士』を召喚!」
夜薔薇の騎士:ATK1000
「夜薔薇の騎士の効果発動。召喚時自分の手札からレベル4以下の植物族モンスターを特殊召喚出来る。
手札から『ロード・ポイズン』を特殊召喚!」
ロード・ポイズン:ATK1500
「おい、アレって…」
「合計レベル7。来るのか?十六夜のエース!」
どうやら、彼女のエースモンスターはアカデミアにおいて畏怖の対象らしい。
「レベル4のロード・ポイズンにレベル3の夜薔薇の騎士をチューニング。
冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の華よ、開け。シンクロ召喚!現れよ『ブラック・ローズ・ドラゴン』!」
「ショァァァァァァァ!」
ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400
「出たー!ブラック・ローズ・ドラゴン!!」
「十六夜の奴、速攻で決めるつもりか!?」
「トラップ発動、『シンクロ・ストライク』。発動ターンのみシンクロモンスターの攻撃力はシンクロ召喚に使用した素材モンスター×500ポイントアップする。
よってブラック・ローズ・ドラゴンの攻撃力は1000ポイントアップする。」
ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400→3400
「もう1枚の伏せカードも発動。『シンクロ・バスター』、発動ターンのみ自分の場のシンクロモンスター1体の攻撃力を800ポイントアップさせる。」
ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK3400→4200
「攻撃力4200…!」
「1ターンで決める気だぜ、十六夜は!」
ギャラリーの声に呼応するわけでは無いだろうが、アキのコンボは続く。
「更に、ブラック・ローズ・ドラゴンの効果発動。自分の墓地の植物族モンスター1体をゲームから除外することで
相手の守備モンスター1体を攻撃表示にし、攻撃力を0にする。『ローズ・リストリクション』!」
「ん…む…」
機動砦のギア・ゴーレム:守備→攻撃、ATK800→0
「ブラック・ローズ・ドラゴンの攻撃!『ブラック・ローズ・フレア』!」
攻撃力4200で、相手の攻撃力は0。
直接攻撃と同等の、此の攻撃が通れば文字通りの1ターンKILL…
「ふ…流石は黒薔薇の魔女…其の名に恥じない激しい攻めだ。だが残念だったな!」
「?」
「手札より『テツボー』の効果を発動。此のカードを手札から墓地へ送ることで此のターン、俺に発生する戦闘ダメージは全て半分になる。」
フードの男:LP4000→1900
「更にトラップ発動!『カース・オブ・サイバー』。自分フィールド上の機械族モンスターが戦闘によって破壊されたとき手札を1枚墓地に送ることで
相手の攻撃モンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力の半分のダメージを与える!」
「何ですって!?」
アキ:LP4000→2800
「(まさか、こんなカウンターを仕掛けていたなんて…)カードを2枚伏せ、ターンエンド。」
一気に劣勢、と言うわけではないだろうがアキの勢いが止められたのは間違いない。
フードの男の読み勝ちといったところだろう。
「俺のターン、ドロー。『サイバネティック・ガンナー』を攻撃表示で召喚!」
サイバネティック・ガンナー:ATK0
「こいつは攻撃表示で存在する限り、相手ターンのスタンバイフェイズ毎に、相手に500ポイントのダメージを与える!
更に伏せカードオープン!『ギブ&テイク』此の効果で俺の墓地のモンスターをお前のフィールド上に特殊召喚する。
お前のフィールドに召喚されるのはカース・オブ・サイバーの効果で墓地に送った『超魔神イド』だ!」
「自分の墓地のモンスターを相手フィールドに特殊召喚!?」
超魔神イド:ATK2200
「これで俺はターンエンドだ。」
「私のターン、ドロー!」
「此の瞬間、サイバネティック・ガンナーの効果発動!『バーストレーザー』!」
アキ:LP2800→2300
「く…永続トラップ『ドッペル・ゲイナー』発動。私に対して発生した効果ダメージを相手にも与える。」
「ほう…」
フードの男:LP1900→1400
「(超魔神イドが居る限り、私はモンスターを召喚できない…でも、サイバネティック・ガンナーは攻撃表示、此処は攻める!)
超魔神イドで、サイバネティック・ガンナーに攻撃!」
「やはり攻撃してきたか!永続トラップ『グラヴィティ・バインド超重力の網』!これでレベル4以上のモンスターは攻撃できない。」
「(やっぱり…そうなると次に召喚してくるモンスターは恐らく…)ターンエンド。」
「フン…そうするしかあるまい。ドロー、『サイバネティック・リフレクター』を召喚!」
サイバネティック・リフレクター:ATK0
「こいつは攻撃表示で存在するとき、1ターンに1度効果ダメージを0にする。これでドッペル・ゲイナーの効果は無効化された!ターンエンド。」
「これじゃ、十六夜だけが一方的にダメージを受けることになるぞ。」
「しかも、攻撃も召喚もできないなんて。」
「こりゃ、やばいぜ…」
「私のターン、ドロー。(…来た)」
「サイバネティック・ガンナーの効果『バーストレーザー』!」
アキ:LP2300→1800
「ドッペル・ゲイナーの効果発動。」
「はっ、サイバネティック・リフレクターの効果で其の効果は無効だ!」
――バシュゥゥゥ…
「どうだ?これで何もできねぇだろ。諦めた方がいいんじゃないかな?」
「其れは如何かしら?貴方はこれで持ちうる効果全てを使った。つまりこれ以上の対抗策は無いということ。」
「あん?此のロック状態で何が出来る!」
確かに、状況はアキの圧倒的不利。
此の状況を打開するのは容易ではないはずだが…
「手札より魔法カード『所有者の刻印』発動。此の効果で全てのモンスターのコントロールは元々のコントローラーへと戻る。」
「は…何だと!?」
超魔神イド:アキ→フードの男
「此れでイドの呪いは消えた。トラップ発動!『ロスト・スター・ディセント』此の効果で墓地のブラック・ローズ・ドラゴンを召喚!
ただし此の効果で特殊召喚されたシンクロモンスターは守備力が0となる。」
ブラックローズ・ドラゴン:DEF0
「はん、其の効果で召喚されたシンクロモンスターは攻撃できないはず如何しようというのだ!」
「魔法カード『シンクロ・キャンセル』。ブラック・ローズ・ドラゴンをエクストラデッキに戻し墓地の素材モンスターを特殊召喚する。
私は墓地から夜薔薇の騎士とロード・ポイズンを召喚!」
夜薔薇の騎士:ATK1000 ロード・ポイズン:ATK1500
「ま、まさか…!」
「レベル4のロード・ポイズンにレベル3の夜薔薇の騎士をチューニング。
冷たい炎が世界の全てを包み込む…漆黒の華よ、開け。シンクロ召喚!現れよ『ブラック・ローズ・ドラゴン』!」
「ショォォォォォォォ!!!」
ブラックローズ・ドラゴン:ATK2400
再び現れし、黒薔薇の龍。
恐らくは其の真髄が発揮されることだろう。
「ブラック・ローズ・ドラゴンの効果発動。此のカードのシンクロ召喚に成功したときフィールド上の全てのカードを破壊する。
全てを吹き飛ばせ…『ブラック・ローズ・ガイル』!」
――ゴォォォォォォォォ!!!
「クソ…俺のイドロックが…」
「まだ終わらないわ。魔法カード『死者蘇生』。」
「何だとぉ!?」
「黒薔薇の龍は決して朽ちることは無い。四度現れよ『ブラック・ローズ・ドラゴン』!!」
「キョォォォォォォォ!!!」
ブラックローズ・ドラゴン:ATK2400
フィールドには、アキのブラックローズ・ドラゴンのみ。
ゲームセット。
「氷よりも冷たく無慈悲な炎を受けなさい…『ブラック・ローズ・フレア』!!」
「ぐおわぁぁぁぁぁぁ!!!」
フードの男:LP1400→0
「やった〜!アキ様が勝った〜♪」
「流石は黒薔薇の魔女!」
「アカデミア最強の名は伊達じゃないぜ!」
アキの見事な戦術による勝利に周囲の生徒も盛り上がる。
ロック戦術を見破ってのコンボ…流石というしかない。
「…俺の戦術を読んでいたのか?」
「貴方が私のフィールドに『超魔神イド』を召喚し、なおかつ『グラヴィティ・バインド』を発動したとき全ての戦術が読めた。
ロック戦術は私には通じない。フィールドの全てを破壊するのは、私の得意技なのだから。」
「フン…流石は黒薔薇の…(負けたね…)…こ、此の声は…!」
「?如何したの。」
「(敗北者に用は無いよ…)ひ…お許しを…アギ…ト…さ…ま…」
「???」
頭を抱え込んで座り込んだ男は、ゆらりと…まるで操り人形のように立ち上がった。
其の目には生気が感じられない。
「…本気で大丈夫?」
アキが心配して声をかけた瞬間だった。
其の男が別人になったのは…
「やってくれるじゃないか、黒薔薇の魔女・十六夜アキ。」
「え?何…声が…」
「クックック…驚かせてしまったかな。今話してるのは、さっきまで君とデュエルしていた男ではない。
こいつの精神は今、僕が乗っ取っているからね…」
「精神を乗っ取る…?貴方は一体?」
「失礼。僕の名はアギト…決闘者さ。本当は彼には緋渡遊哉か、不動遊星と闘って欲しかったんだが…
まったく、此の男のナンパ癖には困ったものさ。」
「………」
「いずれ君たちの前に現れよう。…ふふふ闘うのを楽しみにしているよ。」
それだけ言うと、男はその場に倒れこんでしまった。
完全に意識を失っている。
「誰か、鮎川先生を呼んできて。それから担架を!」
アキの指示によってその場に居た生徒が動き出す。
的確な指示によって、男は医務室へと運ばれることとなった。
「(他人の精神を乗っ取る…あのバトル・シティの裏で暗躍していたグールズのリーダーが同じ事を出来たと言うけど…まさか!)
…どうやら、此の大会、唯面白いだけでは終わりそうにないわね…」
アキは1人呟くとその場を後にした。
時同じ頃――
「…嫌な予感て当るもんなんだな。」
「何の事っかな〜。」
「否…こっちの話。始めようか…カード強奪集団『ノー・バディ』のレア・ハンターさん!?」
「やっぱばれてたか。因みにアタシの名前はレンだから。そこんとこ宜しく♪」
「…果てしなく如何でもいい。行くぞ!!」
「OK!!」
「「デュエル!!」」
遊哉も最初の相手とのデュエルを開始した。
To Be Continued… 