「オイ…なんだよ今の…」
不気味な静寂に包まれた会場で、遊哉は何とか其れを言う事が出来た。
「1ターン…Killよね。」
「んな事は分かってる!だがこんなの…!」
――デュエルじゃない!!
其れは恐らくこの場にいた全員が思った事だろう。
一体1回戦の第3試合で何が起きたのか?
時は数分前に遡る…
遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel16
『幻影の恐怖』〜アギトvs風間〜
デュエル・リングでは1回戦第3試合、アギト・アルツベインvs風間半蔵のデュエルが始まろうとしていた。
第1試合、第2試合と素晴らしいデュエルが続いたからだろう、観客の盛り上がりは衰えない。
「いよいよあいつのお出ましか…」
そんな中、アギトの正体を知る遊哉達だけが警戒を強めていた。
元ノー・バディのレアハンターである辰美レンも一緒だ。
「辰美、あいつは一体どんなデッキを使うんだ?」
遊星が問うが、
「ん〜分からないんだよね。」
「分からないって如何言う事だよ?」
レンからは意外な答えが。
勿論遊哉が突っ込む。
「分からないって言うか、ハッキリしないんだよね〜。アギトッちがデュエルするときって戦う相手の『アンチ・デッキ』ばっかり使うからね〜。
実際のところ、実力がどれ位で本当のデッキはどれかはノーバディのメンバーも知らないのさ。」
「うわ…」
「呆れた…」
「最低。」
「最悪。」
「極悪。」
霧恵とアキは呆れ、3人娘の評価は厳しい。
「だが、見る限り持ってるデッキは1つみたいだし…此れでハッキリするんじゃないのか?」
「そうだな。相手はラー・イエロー。一筋縄ではいかないはずだ。」
誰もがそう思っていたのだ、デュエルが始まるまでは…
「それでは1回戦第3試合、アギト=アルツベインvs風間半蔵、デュエル・スタート!!」
「「デュエル!!」」
アギト:LP4000
半蔵:LP4000
「先攻は僕から。ドロー。(おやおや…此れは又素晴らしい手札だね)
手札より魔法カード『幻影の魔術』を発動。ライフを半分払ってデッキから魔法カードを1枚手札に加える事が出来る。
僕はライフを半分払って、デッキから『幻痛−ヴィジョン・ペイン』を手札に加える。」
アギト:LP4000→2000
「更に魔法カード『幻想との戦い』。僕のデッキから『ヴィジョン』と名の付くモンスターを永続罠扱いで最大5体まで魔法・罠ゾーンに表側で出せる。
そして相手はその数と同じ数のモンスターをデッキから特殊召喚できる。
僕はデッキから『ヴィジョン・サイバー・エンド』『ヴィジョン・フレア・ナイト』『ヴィジョン・スカル・デーモン』『ヴィジョン・レッドアイズ』の4体を呼び出す。」
アギトの魔法・罠ゾーンに不気味な陽炎のようなモンスターが現れる。
恐らく永続罠扱いの所為で実態のつかめない陽炎のような状態となっているのだろうが…如何せん気味が悪い。
「ふ、ならば拙者はデッキより『神速の黒い忍者』『雲隠れの白い忍者』『くの一マスター・KASUMI』『忍者マスター・HANZO』を特殊召喚する!」
「黒い忍者、只今参上!」
神速の黒い忍者:ATK2000
「雲隠れの白い忍者、此処に…」
雲隠れの白い忍者:ATK1900
「お呼びですか、主様…」
くの一マスター・KASUMI:ATK2500
「いざ、主の勝利の為に!」
忍者マスター・HANZO:ATK3000
風間の方は一気に強力なモンスターを揃えてきた。
其れもアギトとは対照的な、何処か清々しい『忍者』を。
「おやおや、威勢の良い忍者さん達だ。でも残念。君達が戦うことは無いよ。」
「何故か?」
「風間半蔵、君にターンが回る事は無い。僕は幻影の魔術の効果で手札に加えた『幻痛−ヴィジョン・ペイン』を発動!
僕の魔法・罠ゾーンに永続罠扱いで存在する『ヴィジョン』と名の付くモンスターを全て墓地へ送り互いにその数×1000ポイントのダメージを受ける。」
「馬鹿な!お主の魔法・罠ゾーンのカードは4枚。発生するダメージは4000!共倒れする気でござるか!!」
「まさか。速効魔法『防御輪』。この効果で僕へのダメージは0…お前だけがダメージを受けるんだ。消えろ、クズが。」
――ドガァァァァァァァァァァン!!
「うぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
半蔵:LP4000→0
「…ウィ、Winner、アギト=アルツベイン!!」
余りの結末に誰も何も言えない中漸く勝ち名乗りが上がる。
其れを聞くまでもなくアギトはリングを既に降りていた。
此れが数分前に起きた出来事である。
「相手にターンを回さずバーンダメージで…こんなのデュエルじゃねぇ!」
「あぁ。此れでは一方的な虐殺だ。」
怒りの篭った視線をアギトが消えたゲートへと向ける遊哉と遊星。
いや、霧恵、アキ、レンも同様だ。
「あの野郎…絶対許さねぇ!」
遊哉達のデュエリストの誇りに、怒りの炎が灯る。
そして会場は、不気味な雰囲気をはらんだまま1回戦の最後の試合へと進むのであった…

To Be Continued… 