Side:なのは
救急車を待つのももどかしいから、文字通り空を飛んで聖王病院に突入して、(半ば強引に)あの子を搬送した訳なんだけど、大丈夫かなシグナム?手遅れだったなん
て言う事は無いよね?きっと大丈夫だよね?
「確約は出来ませんが、恐らく大丈夫でしょう。
可成り痩せてはいましたが、外傷は素足で歩きまわった事による擦り傷や裂傷のみで、身体生命に影響のあるモノではありませんし、痩せているというのも病気等
ではなく、単純な栄養不良によるものでしょうから、点滴で何とかなるでしょうから。」
「そ、其れなら良かったの~~……」
あんなに小さい子を助ける事が出来なかったなんて言うのは、幾ら何でも夢見が悪くなりそうだからね。
まぁ、アレだけ酷い状態だったから、無事でよかったとは言い難いけど、それでも点滴が利いてるなら、2~3日もすれば体力が戻って目を覚ますかもしれないからね。
でも、どうしてあんな子があんな状態で居たんだろう?
「……此れは、あくまで私の予想に過ぎないのですが、あの子は若しかしたら稀有な魔法技能を備えていたのではないでしょうか?
そして、其れを目的に最高評議会に捕らえられ、そして非人道的な扱いを受け……だが、最高評議会が望んでいた物は得られなかったが故に捨てられてしまった。
ですが、直接手を下したとなれば問題が残る故に、あの子が野垂れ死にするように準備をした上で野に放った……極論ではありますが、可能性はゼロではない。」
「其れは……確かにあり得ないとは言い切れないかもね。」
9年前の時だって、ヴォクシーと同様に、私を亡き者にして夜天の魔導書の力を狙ってたって言う事だからね。(この間クロノ君から聞いた事だけど。)
本気でトンでもないけど、だからこそ、最高評議会が本当に何を考えてるのが分からないって言うのも現実だよ。
「連中が何を考えていても、其れは如何でも良い事です。
我等に牙をむき、そして平和に暮らす人々に仇なすと言うのならば、問答無用で撃滅するだけの事――そうでしょう、なのは?」
「……そうだね。そうだったね、シグナム。」
私達は、その為に存在してるとも言えるんだもんね。
でも、其れよりも今は、あの子が目を覚まして、そして元気になってくれる事を願うだけなの――
魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ 夜天116
『その頃の地球では何が有った?』
――なのは達の休暇と同時刻:地球・海鳴市
Side:市
平和ですね~~。滅茶苦茶平和です。其れこそ平和ボケしてしてしまいそうな程に平和です。
翠屋が連日繁盛してるので、仕事そのものは物凄く忙しいんですけど、でもそれ以上に翠屋でのウェイトレス業はとても楽しくてやりがいもありますから、全然平気です。
シグナムさんやなのはさんには、マダマダ及ばないけれど、其れなりに出来るように成って来たから、御二人が戻ってくるまでは頑張らないと罰が当たりますから。
「あらあら、そんなに気張らなくてもいいのよお市さん?
今や、貴女も翠屋にはなくてはならないスタッフの一員なのだから、軽い感じでやってくれていいのよ?堅苦しいのは苦手でしょう?」
「其れはそうなんですけれど、やるとなった事には徹底してやらないと気が済まないんです!兄様もそうでしたけれど。
生きていた時代の事も有るのかもしれませんが、物事は徹底してやらねば足元を掬われ、そして其れが敗北に繋がってしまうのは珍しくありませんから、やるとなっ
た以上は、最高の結果を残したいんです!!」
「其れだけの熱意をもってやってくれてるとは、嬉しい限りですね士郎さん?」
「そうだね。僕としても嬉しい限りだよ――万が一にもなのはとシグナム達が戻ってこれなかったその時は、君に全てを任せてしまうのも良いかもしれないね。」
か、過剰評価ですよ。
それに、なのはさんとシグナムさん達は絶対に戻ってきますから、そんな事を言ったら怒られちゃいますって。
「ハハハ、確かにそうだね。」
「笑い事じゃないですってば……」
こんな事が言えるのは、なのはさん達を信頼していて、必ず戻ってくるという確信があるからこそなのでしょうね?兄様も『信頼しているからこそ言える事が有る』って言
ってた事が有りましたし。
でも……だからこそ、出来るだけなのはさん達には早く戻ってきてほしいものです。
まぁ、不定期に入る連絡から察するに、向こうでも息災のようなので安心していますけれど……と言うか、なのはさんとシグナムさん達が如何にかなってしまうと言う事が
そもそも想像出来ませんよ。
向こうでは戦う事も多いのでしょうけれど、果たしてなのはさんとシグナムさんのタッグに勝てる存在があるのかと問われると、其れは絶対に否と即答出来ますからね。
もしも時を超える事が出来るのならば、なのはさん達と戦国時代に戻って、兄様と同盟結んでもらいたいくらいです。そしたら、絶対に天下統一できましたから。
さてと、今は仕事に集中ですね。このメニューは6番テーブルに――
――キィィィィィィィン……!
「!?」
い、今の気配は一体何!?物凄く嫌な予感がしますけれど……まさか!!
『市君!!』
「グランツ博士!!」
どうかしましたか?いえ、大体予想は出来ますけど……此れは若しかして!!
『海鳴の上空に転移反応を確認したんだ。
そしてその反応のあった場所から、ガジェットと魔導師が現れたのを此方の観測モニターで確認した。アミタとキリエは既に出撃したのだけれど、君も行ってほしい。』
言われるまでも有りません!なのはさん達に留守を任された以上、此方を護るのは私達の使命ですから!
其れよりも、博士は海鳴全体に『隔離結界フィールド』を展開してください!アレを展開しておけば、現実世界の海鳴の街や人達には一切の被害が無くなりますので!
『勿論、即展開するさ。
既にアリサ君とすずか君、フェイト君とアリシア君にも連絡は入れておいたから戦力的には充分だろう?……危険な役目を任せてしまって悪いけれど、頼むよ?』
勿論です!!
では、そう言う事なので桃子さん、士郎さん!!
「えぇ、気を付けてね?」
「くれぐれも油断だけはしない様に……勝って来てくれ。」
「はい!!」
兄様が『第六天魔王』なら、その妹である私は『阿修羅』に等しい存在です。故に、戦での敗北は有り得ません!!――織田市、行きます!!
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・・・・・・・・・
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・・・
と言う訳で現場到着です。
アミタさんとキリエさん、アリサさんとすずかさん、アリシアさんとフェイトさんも既に到着して居ましたか……その迅速な行動は素晴らしいと思います。
戦場では迅速な行動が勝負を分ける場合も有りますからね。
「なのは達が居ないのを良い事に、襲撃掛けて来るとは良い度胸じゃない?
確かにアタシ達は、なのはとシグナムには全然及ばないかもだけど、だからってアンタ達みたいな真正の三下にやられてやるほど柔じゃない心算よ?」
『俺の錆になりてぇ奴は、かかってこいや!!』
「氷の彫像になりたいと言うならどうぞ?………お望み通りにしてあげます!」
『全てを凍てつかせる、極寒の吸血姫の力、その身をもって知って頂きましょうか?』
「私とフェイト、蒼銀と黄金の雷神は、彼方達なんかには負けないよ!」
「悪いけれど、即刻お引き取り願おうかな?行くよ、バルディッシュ!」
『Yes sir.』
「気合と根性!そして熱血で、彼方達を倒します!!なのはさん流に言うのならば、手加減なしの全力全壊です!!全部纏めて叩きのめします!!」
「それでも勝てると思ってるなら掛かってきなさ~い?
私達に挑むのは愚の骨頂、WIGでしかないわ……SSK、精々襲撃かました事を後悔すると良いわ。ま、キリエ・ビューティフル・ビクトリーだけは、既に決まってるけど。」
そしてやる気は充分!
さて、如何しますか?私達にとってガジェットは只のくず鉄でしかありませんし、彼方達もなのはさんと比べれば塵芥にもならない存在なので、全然負ける気がしません!
其れでもやると言うのならば、相手にはなりますよ?海鳴を破壊されてしまっては堪りませんからね。
「たった7人で粋がりやがって……我等とガジェットの力を甘く見るなよ!?
貴様等は、地球は、我等時空管理局によって管理されるべき世界なのだ!!其れを拒むと言うのならば、力尽くでも従わせるだけだ!!」
……呆れて物が言えませんね。
一体何時誰がこの世界を、管理局によって管理されるべき世界であると言ったのでしょうか?其れ以前に、管理世界になる事を拒むのならば力で従わせるとは、一体ど
んな了見ですか?其れでは只の横暴に過ぎませんよ?
其れこそ、兄様が聞いたら余りの内容に、怒りを通り越して呆れ三昧になるのは目に見えています……彼方達は、地球を舐めてるんですか?(怒)
と言うか、其れ以前にこんな襲撃をしてくる組織と手を取る心算は毛頭ありませんから……丁重にお引き取り願います!!寧ろ、ミッドチルダに強制送還してあげます!
戦国一の姫武将の力、精々味わって貰いますよ!!
――――――
No Side
そうして始まった戦闘だが、其れはもう『圧倒的』としか言いようのないモノだった。
数で勝る襲撃者達が圧倒的だったのではなく、其れを迎え撃った市達が、其れこそ文字通りに、筆舌に尽くし違い程に圧倒的だった。圧倒的に強過ぎたのである。
アリサとすずかのコンビは、一見すると炎と氷の組み合わせ故に、あまり相性は良くない様に見えるが、紅蓮の炎を手足の如く扱うアリサと、溶岩ですら凍結させる程の
力を宿すすずかのコンビは、言うなれば『双極の奇跡』とも言うべき物だった。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ……燃えろぉ!!」
「そして、燃えた後に凍てつけ!!」
一度燃やした上で凍結というトンでもコンボで、既にガジェットと魔導師を合計4体を撃破して見せたのだ。
同時にフローリアン姉妹もまた、完全無欠の余裕であった。
アミタとキリエは何方もバランス型ではあるが、アミタは軽快なラッシュを好み、反対にキリエは一撃の重さを重視する――姉妹であっても戦い方は異なるのだろう。
「バルカンレイド、ファイヤー!」
「ファイネストカノン!!」
だが、力と速さのコンビネーションは凄まじく、アミタとキリエも着実に敵を撃破していく。
更にテスタロッサ姉妹は、この戦場で誰よりも速く、その動きを捉える事は出来ない。
「プラズマスマッシャー!」
「プラズマランサー!」
金の雷砲と蒼の雷弾、雷神姉妹の放つ攻撃を避ける事など、ガジェットや並の魔導師では不可能だった。
そんな中で特に異彩を放っているのは市だ。
「斬!裂!滅!砕!!この程度ですか?こんな物では、準備運動にすらなりませんよ?
戦力の温存と言う事ならば兎も角、此れだけの力を持った者達に対して、手加減など愚の骨頂……精々黄泉にて己の罪と愚考を悔いると良いわ!!」
紅い刀と漆黒の小太刀の二刀流で相手を攻めたて、隙あらば巨大な銃での砲撃を行い、完全に戦場の支配者と化していた……完全に周囲を圧倒していた。
其れは其れこそ、市に睨まれた若い隊員がその場から逃げ出してしまう位だったのだろう。
加えて――
「グアァァ!腕が、腕がぁぁぁ!!」
「腕一本で喚かないで下さい、耳障りですから。」
ガジェットを破壊するのは当然として、市は魔導師もまた容赦なく斬り捨てた。
流石に命を奪う事はしなかったが、腕を切り落とすくらいの事は平然とやってのけたのだ……だが、生きるか死ぬかの戦国を生きた市に言わせれば、腕一本で命が助
かったと言う事は『御の字』なのだ。
寧ろ『腕一本で済んで良かった』と思ってほしい位なのである――命までは奪って居ないのだから。
だが如何に最高評議会の手下とは言え、非殺傷の魔法に慣れてしまった魔導師からしたら、躊躇なく腕を切り落としに来るような相手は恐怖の対象でしかない。
更にその恐怖の血に濡れた刀を携えて此方を睨みつけているとしたら如何するだろうか?
「退け!退けーーーー!!!」
答えは簡単、撤退一択だ。ある意味での戦略的撤退だ……此処で無駄に戦力を食い潰す事など出来ないのだから。
破壊されたガジェットや、重傷の隊員を回収する事は困難であるかも知れないが、此処で逃げ果せれば、その先の未来で逆転も可能と思ったのだろう――だが!!
「逃がさない!!!」
すかさず市が、ヴァルキリーズ・デュエルを展開して炸裂徹甲魔力弾を撃ちこみ、その撤退経路を完全にシャットアウト!!
とは言え、此れで終わった訳ではなく……
「話を聞かせて貰えますよね?」
「!!!」
間髪入れずに市の声が犯人グループに突き刺さる。其れだけで、犯人は自らの名を吐くに至ったのだ……
――――――
Side:市
ふぅ、何とかなりました……と言うか余裕でしたね?
此方は僅か7人なので、最悪の場合には兄様に増援を願おうかとも思って居ましたが、全然全必要ありませんでした。――私達が強かったのか、相手が弱かったのか。
うぅん、恐らく両方でしょうね。
其れに奪おうとする側と、奪われまいと護る側では気持ちにも差が出るモノですから。だから、この結果がなのでしょうからね。
取り敢えず、なのはさんには通信を入れた方が良いわね……此方で、地球で何が起こったのかという事を、知っておいた方が良い筈ですからね。
何よりも、此の襲撃が偶発的な物である可能性は低い……其れを考えると、なのはさん達の方でも何かあったと言わざるを得ないのかもしれません。
如何やら事態は、私達が思っていたよりも、トンでもない状況になってるのかも知れません……でも、どんな状況にあっても、勝ってしまうのがなのはさんですからね。
頑張って下さいなのはさん、シグナムさん!そして皆さん!!
地球は私達が護りますので、何が何でも最高評議会を倒してください!!!それが、私達に与えられた、最高にして最強の絶対の任務であるのですからね……!!
To Be Continued… 
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