Side:なのは


 ――Pipipipipi…


 う…ん、もう朝?…ふあ〜〜〜良く寝た。


 「あふ…もう朝なん?…ん〜〜、おはよう、なのはちゃん♪」

 「おはよう、はやてちゃん♪」


 何の変哲もない朝。
 一緒に暮らしてる友達のはやてちゃんと一緒に迎える朝――何時もの風景。

 私にとっては当たり前の日常。


 「ちょお待ってな、今車椅子用意するさかい。」

 「あ、慌てなくて良いよはやてちゃん。私は着替えるのにも時間が掛かるから。」

 「やけど、早いにこした事はあらへんやろ?」


 にゃはは、そうだね。
 それじゃあ今日もお願いします♪


 「ん、了解や♪」


 私は小さい頃から下半身が動かなくて車椅子生活。
 少し不便だけど、でも大切な家族と友達のおかげでそんな事は気にしないで日々を生きてる。

 高町なのは――足は動かなくても、今日も元気です♪










 魔法少女リリカルなのは〜夜天のなのは〜  夜天1
 『始まりは何故突然?』










 よいしょと…着替え終わったよ?


 「お、又着替えのタイムが短くなったなぁ?
  なんやなのはちゃん、日々身体機能向上してるんと違う?」

 「如何かなぁ?あんまり皆の重荷にはなりたくないから、無意識に頑張ってるかも。」

 「そうなん?
  せやけど、誰も重荷なんて思ってへんよ?私もやけど、皆なのはちゃんが大切なんや。
  それに、私にとってはなのはちゃんはお姉ちゃんみたいなモンやからなぁ?誕生日はなのはちゃんの方が先やからね。


 にゃはは、なんか照れるなぁ。



 実ははやてちゃんにはお父さんとお母さんが居ない。
 数年前に事故で亡くなったって…

 その時に、はやてちゃんの両親と付き合いのあった私のお父さんとお母さんがはやてちゃんを引き取って、それで一緒に暮らしてる。

 最初の頃は少しギクシャクしてたけど、今はすっかりはやてちゃんも馴染んで私と一緒の部屋で過ごしてる。
 私にはお姉ちゃんもお兄ちゃんも居るけど、歳が離れてるから、同い年のはやてちゃんは居てくれると嬉しいなぁ。


 「ソレは私もやで?
  士郎さんと桃子さんが引き取ってくれた言うても、なのはちゃんが居らへんかったら、きっと打ち解けられなかったんと違うかなぁ?」

 「どうかな〜?意外と行けたんじゃないかな?」

 「いやいやいや。無理やから。
  なんぼ関西人でも、子供1人で大人の中に放り込まれたら借りてきた猫になってまうで?」


 そうなのかな?
 はやてちゃんは人当たり良いから割と誰とでも打ち解けられるイメージだけど?


 「そら人付き合いは得意やけど、やっぱり同い年くらいの方が緊張せぇへんよ?
  こんなに速く馴染めたんは、なのはちゃんが居てくれたからやで?」

 「そうなんだ…」

 改めて言われると、なんか恥ずかしいかな。
 ……それじゃあそろそろ行こうか?あ、本とってくれる?


 「あぁ、此れな?…ホンマけったいな本やなぁ?
  600ページは確実にあるやろこの分厚さは……けど読めへんよね此れ。」

 「うん、鎖でグルグル巻きで、鎖の継ぎ目も無いの。
  如何にかして読もうとしたら、鎖切るための金属鋏が壊れちゃったし…」

 「ドンだけ頑丈やねん…禁断の秘術でも記されてるんとちゃうよね?」


 どうかなぁ?
 博士に見せても『分らない』って言ってたし。


 「まぁ、少なくとも害有るモンやなさそやから良いけどね。ほな車椅子押すよ?」

 「は〜い、お願いしますなの♪」



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 朝ごはんを食べたら、着替えて学校。
 私とはやてちゃんは『私立海聖小学校』の4年生。


 「あ、おはようございますなのはさん、はやてさん、美由希さん!」

 「おっはよ〜〜、今日も元気そうねのKGSね♪」

 「あ、アミタさんにキリエさん、おはようございます!」

 「おはよう2人とも。キリエは相変わらずね。」

 「まぁ、キリエさんは此れくらいやないと調子狂いますけどね?」


 言えてるかも。
 アミタさんとキリエさんはお姉ちゃんと同じ『エルトリア・ガールズ・ハイスクール』に通う女子高生。
 お姉ちゃんとアミタさんは同い年の同級生でとっても仲が良いの。


 「なのは〜、はやて〜〜、おっはよーーー!」

 「美由希さん達もおはようございます。」

 「アリサちゃん、すずかちゃん♪」

 「おはようさん。」


 アリサちゃんとすずかちゃんは私とはやてちゃんのクラスメイトで大親友。
 学校までの道程は、途中までお姉ちゃん達も一緒だから、この7人で登校するのが日課になってる。

 皆でお喋りしながらの登校はとっても楽しいなぁ♪


 「そう言えば前々から思ってたんだけど、アタシ等の学校の制服にしろ美由希さんとこの制服にしろなんでこんなにスカート短いのかしら?」

 「そう言えばそうやなぁ…設立者の趣味やろか?」

 「どうかしらね〜〜ん?
  まぁ、私等は女子高だから問題ないけど、皆はいたずら盛りの男の子が危ないんじゃな〜い?」


 あ、ソレについては大丈夫です。
 そういう事しようとした子は先ずははやてちゃんとアリサちゃんが止めますから。


 「まぁ、その後はなのはちゃんとすずかちゃんによる最恐の笑顔でのお説教やけどね♪」

 「アタシとしてはフルボッコでも生温い気がするんだけどね〜…」

 「まぁまぁ、やりすぎは良くありません。」


 ですよね。
 あ、此処で別々にですね。

 じゃあ、お姉ちゃん気をつけてね?


 「なのは達もね、いってらっしゃい。」

 「「「「いってきま〜〜す♪」」」」


 …で、アリサちゃんとはやてちゃんは何をしてるのかな?かな?


 「お邪魔するねなのはちゃん♪」

 「あの、すずかちゃん?」

 「準備完了よはやて。」

 「OK…ほな行こか?」


 あの?なんなの?


 「ふっふっふ、ずずかちゃんも車椅子に乗っけて…」

 「学校までのフルドライブダッシュよ!!レッツゴー!!!」

 「へ?へ?えぇっぇぇぇぇぇ!?」

 にゃ〜〜〜、安全運転遵守でお願いなの〜〜〜〜〜〜!!!!!








 ――――――








 あっという間に1日が終って、只今放課後。
 今朝の事は学校についてからみっちりお説教したの。

 取り敢えず、全員お弁当のオカズ1品で許してあげたの。
 本当に危ないから、帰りはやらないでね?


 「「「は〜い。」」」

 「うん、良いお返事なの。ところで今日は如何しようか?お店に寄ってく?」

 「そりゃ寄るわよ。
  流石に毎日とは行かないけど、桃子さんのお菓子は1週間に3回は食べたいわよね。」

 「忍お姉ちゃんも翠屋のお菓子の大ファンだから、買って行きたいし。」

 「流石は桃子さん、大人気やなぁ。ヨーロッパまで修行に行ったのは伊達やないね。」


 だよね。
 お父さんのコーヒーと、お母さんのお菓子のタッグはきっと最強なの。
 なんだか自慢したくなっちゃうな♪


 「自慢して良いんじゃない?
  てか、なのはの所ってはやても含めてホント超人揃いよね?
  桃子さんはパティシエールとして最強だし、士郎さんは言うに及ばず…」

 「恭也さんと美由希さんも剣術凄いよね?…はやてちゃんも習ってるんでしょ?」

 「恭也さんと美由希さんに比べたらマダマダやけどね。
  けど、一番はなのはちゃんやろ?……何処の世界に車椅子生活しとるのに護身術で男子投げ飛ばす子がおんねん…」


 あはは…だって、護られてばっかりは嫌なんだもん♪
 上半身は動くんだから、自分に出来る事は出来るだけ身に付けたかったの。


 「凄い心がけだよね。なのはちゃん偉いよ。」

 「ホント、自分の身体の事を不幸だって嘆いて諦めてる奴に聞かせてやりたいわ。」


 うん…けど人にも色々事情はあるし一概には…


 ――ギュオォォォォォ…!!


 ほへ?…えぇぇぇぇえっぇぇぇ!?
 なにあのスポーツカー!?物凄いスピード…それになんか走り方が…!


 「ちょ、あれ居眠り運転やないの!?アカン、こっち来んで!?」

 「うそ!?に、逃げるわよ!!!」

 「だめ、逃げ切れない!!!」


 そんな…!!!



 ――キキィィィーーーッ!!





 …………あ、れ?何もない?
 はやてちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんは!?


 「だ、大丈夫…みたいやね…」

 「何がどうなったのよ…」

 「無事、みたいだけど…」


 うん……ってあれ?此処はどこなの?
 周りの建物が――無い?


 ソレにこのピンクの光は一体…


 「ちょ、何で空にいるわけ!?ソレにこのピンクの魔法陣は何!?」

 「空!?…ホントだ、下に街があるの!!」

 そんな、それじゃあ私達は空を飛んで車を回避したの!?
 此れじゃあまるで魔法……博士が知ったら喜びそうなの。

 じゃなくて…どうしてこんな…


 「な、なのはちゃん…アレ…」

 「すずかちゃん?……ほえ!?」

 此れは、何時もの本が浮いてる!?
 それになんかオーラを発して…


 ――ドクン、ドクン………バキィィィン!!


 鎖が砕けた!
 何をやっても切れなかった鎖が……


 『Ich entferne eine Versiegelung. …Anfang.』


 し、喋った!?
 もう、何がなにやら……


 「…闇の書の起動を確認しました。」

 「ほえ!?」

 こ、今度は何!?


 「我等、闇の書の蒐集を行い、主を護る守護騎士にございます。」

 「夜天の主に集いし雲…」

 「ヴォルケンリッター。」


 ポニーテールのお姉さんに、金髪のお姉さん?
 ソレに犬耳付いた男の人に、赤毛の女の子!?…い、一体誰なの〜〜〜!?


 「なのはちゃん!?ちょ、大丈夫か!?」


 はやてちゃん……もうだめ、脳味噌の処理が追いつかないの〜〜〜…あう。








 ――――――








 Side:はやて


 なのはちゃん!?……アカン、気ぃ失ってるわこれ。
 てかまぁ、車に轢かれそうになって、助かって空に居て、あのけったいな本が宙に浮いて鎖が砕けてなんか喋ったと思ったら今度は謎の4人組…

 そら脳味噌の処理限界も超えるやろな…アリサちゃんもオーバーヒート寸前やしね。

 「すずかちゃんは大丈夫みたやな?」

 「こ、此れでも驚いてるよ?……でも、ソレよりも…」


 せやな、この状況を何とかせなアカン。

 あの〜〜スイマセン。
 闇の書って、この本の事ですよね?

 やったら『主』言うのはなのはちゃんの事やと思うんですけど…

 「あんまりにもぶっ飛んだ状況が続いたせいで気絶してもうたんやけど…」

 「なに!?」

 「うそ!?」


 嘘やないって。
 見てみ?


 「ふにゃ〜〜〜〜…」(@_@)


 「あ〜〜、完全に目回してんなこれ…ま、大丈夫じゃねぇか?」

 「ヴィータ、お前何を悠長な…!」


 ん〜〜…このポニテの人がリーダー格みたいやな。

 その子の言う通り、只気絶しとるだけやから心配あらへんて。
 やけど、こないな所に居るよりベッドに横にさせたほうがえぇ。

 直ぐに家に戻って…と行きたい所やけど、皆そんなカッコじゃ街中歩けへんよなぁ?


 「む…ならば、シャマル。」

 「えぇ、転移魔法で。幸い主様の家は分るから。」


 本を通して見てた言う事やろか?
 なんにしても便利なモンやね。

 しっかしホンマにけったい所やない本やったな此れ。
 『闇の書』…か。


 ホンマに禁断の秘術でも記されてる様な名前やな。
 この人達が誰で何なのかはよう分らへんけど…


 「〜〜〜〜〜うにゃ…」


 全てはなのはちゃんが目を覚ましてからやな〜〜。













  To Be Continued…