Side:雪奈


季節は夏。
衣替えも終わって、いよいよ夏本番って所だな――そんな最中、恒例となったお泊り会で、今回はメユの家に泊まる事になった訳なんだが、流石
にこの家のデカさには圧倒されたぜ。

まぁ寝具は最高レベルの一級品が揃えられてたから寝心地は最高だったけどな。……布団は三つ敷いた筈なのに、朝起きたらマユとメユが腕に
しがみ付いてたのはもう突っ込む気にもならなかったぜ。

んで、顔洗って朝飯なんだが、いやはやまさか座敷でお膳てのには驚いた。
昨日の晩飯は、源一郎さんが寿司屋に連れてってくれたから外食だったんだが、普段は座敷とはな……こんな朝飯は、旅館とかじゃないと有り得
ねぇって思ってたぞ。



「そうですね。
 まぁ、純和風のお屋敷なのでもしかしてとは思いましたが……其れでも、お膳に使われている物が、箸に至るまですべて極上の漆塗りとは驚き
 です。」

「……分かんのか?」

「勘です。」

「勘かよ!!」

「マユお姉ちゃんは相変わらずだね♪」



ホントにマッタク持ってコイツはよぉ。
しかもボケとか受け狙いじゃなくて完全に素なんだよなコイツの場合……しかも、今回に限って言えばその勘は結果的に大当たりだった。
汐さんが言うには、1セット10万円の高級品って事だったからな――アタシんちも割と裕福な方だけど、メユの家は何て言うか格が違うぜ格が。
流石、関東指定暴力団は伊達じゃねぇな。









ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode7
『今日の不良はワサビ醤油味』










さてと、お泊り会は日曜だったから、今日は普通に学校がある訳で、朝飯食ったら登校だ。
一学期はこれ以上サボると、二学期と三学期は全くサボれなくなっちまうから、夏休みまでは真面目に登校しねぇとな――つーか、そろそろ期末
考査が近いからサボると委員長がうるせぇし。

しかし、メユの奴が今回のお泊り会はスクーター使わないで来てくれって言ってたが何でだろうな?



「其れは、あれが理由ではないでしょうか雪女さん?」

「……は?」

「あ、来た来た♪」



アタシ達の前に現れたのは、黒塗りのロールスロイス。如何にも『ヤクザ』って感じの車だが、コイツは一体何!?
まさかと思うがメユ……



「うん、今日は此れで学校に行こうかなーって♪
 いっつも雪女のお姉ちゃんにスクーターで送って貰ってるから、偶には私がと思ったの。」

「そいつは心遣いありがとよ……しかし、ロールスロイスとは驚かされたぜ。」

「もしかしたら、真っ黒なベンツやフェラーリまであったりするかもしれませんね。」

「あるよ?」

「あるのかオイ!!」

何つーか、昨日のお泊り会から驚かされてばっかだなメユんちには。
昨日の寿司屋は、磯野崎組の系列って事だったし、風呂は檜造りでめっちゃ広いし、寝具から家具、食器に至るまで超高級品で、極め付けに高
級外車を複数所持してると来たからな。

まぁ、いいか。
こんな高級車に乗る機会は滅多にないから満喫させて貰うぜ。



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んで、無事に登校した訳だが、黒塗りのロールスロイスで登校した事からめっちゃ注目されちまったなうん。
そのせいで『雪女はヤクザの知り合いがいる』って噂が流れてるみてぇだが、全く持って嘘じゃねぇから否定する事も出来ねぇな――磯野崎組の
幹部の何人からは『雪女の姐さん』って呼ばれてるし。



「雪女さん、ヤクザに知り合いがいると言うのは本当ですか?」

「おー、本当だぜ委員長。
 つーか、もっと言うなら前にオメーがアタシがカツアゲしたって勘違いしたガキンチョがヤクザの娘でな、そいつとは現在とっても仲が良いから其
 の流れでヤクザとも知り合いだ。」

「序に言うと私もですね。」

「や、ヤクザの娘さんと知り合いだったのですか貴女は!?
 コホン……アレは私の早とちりでしたので今更何も言いませんが――そのヤクザと言うのは、その大丈夫なんでしょうか?世間的には、あまり
 良いイメージがあるモノではありませんが……」



ん~~、大丈夫だろ?
メユの親父さんは本物の任侠モンって感じで、実際の堅気の人間には一切手を出さねぇし、それどころか麻薬の密売とかやってる暴力団を率先し
て叩き潰してる、言わば『正義のヤクザ』って感じだからな。



「正義のヤクザ……なんか、矛盾を感じてしまいますね?」

「だろうな、アタシも言っててそう思った。」

まぁ、ヤクザだからって悪人じゃねぇって事だ。
アタシだって不良やってるけど『悪』ではねぇからな?――まぁ、未成年の分際で飲酒喫煙上等な時点で大分アウトだとは思うけどよ。



「大幅にアウトですよ雪女さん!
 と言うか普通に教室でタバコ吸わないでいただけます!?」

「あ~、悪い悪い、分煙は基本だったな。」

「そう言う事ではありません!!」

「一本吸ってみっか?」

「吸いません!!」

「今日も今日とて、見事なやり取りですね雪女さんと委員長は。」



まぁ、何時もの事だろマユ?
アタシと委員長は立場的に絶対に馴れ合う事はねぇが、だからと言って口も利かねぇほど仲が悪いって訳でもねぇからな――まぁ、アレだ典型的
な不良と委員長の関係ってやつだ。



「普段は反目しつつも、意見が合ったその時は強靭、無敵、最強と言うやつですね、分かります。
 と言う事は、委員長さんは実は雪女さんと仲良くしたいのに、委員長と言う立場から素直になれなくてキツク当たってしまうツンデレさんと言う事
 でしょうか?」

「なんだ、そうだったのか委員長?」

「違います!!
 と言うか、誰がツンデレですか誰が!!雪女さんのような不良と仲良くなんて、おぞましい事を言わないで下さい西行寺さん!!」

「そうですか、これはまた見事なツンデレですね。」

「ですから違うと言っているでしょう!!」



アタシ以上にマユと委員長のやり取りは見てて面白れぇな?
だけど、2人ともそろそろ席に戻った方が良いんじゃねぇか?今日の一限目は生活指導の田辺が担当してる社会だからな――田辺が入って来た
時に席についてなかったら拳骨喰らっちまうぞ?



「体罰反対。」

「言うだけ無駄ですよ西行寺さん。
 田辺先生は、昔気質の熱血先生ですので、生徒指導の一環として拳骨位は普通ですから――それでも、体罰問題が起きないのは偏に田辺先
 生の人柄かも知れませんがね。」



アイツは、熱いと言うより暑苦しいけどな。
そんじゃまぁ、真面目に授業を受けるとしますか!



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んでもって、今日も一日無事に過ごして放課後――今日は家庭科も体育も科学の授業もなかったから結構楽だったぜ……マユのフォローをする
のは結構大変だからな。



「はぁ、何時もお世話になってます。」

「本気でそう思ってるなら、少しはアタシのフォローが無くても良いようになってくれや……正直、お前のフォローばっかりしてたらアタシの身が持た
 ねぇからな。」

「善処します。」



そうしてくれ、期待はしてねぇけどよ。
それはさておき、今日は何して帰るかな?
メユを迎えに行ってそのままゲーセンもアリだしカラオケもアリだ――商店街のコロッケ買って公園で満喫するのも悪くねぇ。ホント放課後の過ごし
方ってのは色々有るな。



――ブオォォォン!バリバリバリィ!!



と思った矢先に物凄い爆音がして、バイクが十台ほど入って来たな?
其れだけなら未だしも、バイクに乗って来た連中はどう見たって普通の奴じゃねぇ――ドレッドヘアーで両腕に入れ墨をしてる奴が普通な筈がねぇ
からな。
コイツ等、何モンだ?



「俺を退学にし腐ったクソ教頭出てこいや!!
 退学にしてくれた礼をしに来たぜオイ!!」



コイツ等、お礼参りに来たのかよ!!今時お礼参りなんて流行らねぇぞオイ!!
なんて事を言って聞く輩じゃねぇよな此れは……放課後を満喫しようと思ってた矢先に、全く持って面倒な事が起きてくれたもんだぜ――!!












 To Be Continued… 



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