Side:雪奈


正月気分もすっかり抜けて、3学期も一月を過ぎた今日は、そう言えば節分だったな――だが敢えて問おうマユ、節分って何だったっけ?



「節分です。」

「のっけから、『読者舐めとんのかおんどりゃああ!!』と言われかねない答えをどうも。」

でもまぁ、マユの答えも間違いではねぇんだよなな――実際問題として、アタシだって節分が何であるかって聞かれた時に、正しい答えを返
す自信はマッタク持ってないからな。
だけどよぉ、取り敢えず節分ってのは豆撒いて鬼を追い払うモノだってのは間違いねぇ訳で……



「雪女……ここで会ったが100年目!この間、ボコられた恨みを晴らしに来たぜ!!」

「偶然にもコイツ等と一緒になっちまったが、此れだけの数が居ればテメェだって流石にやべぇだろ?……此の頬の傷の恨み、晴らさせても
 らうぜ!!」

「「「「「「「「「グヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ……」」」」」」」」」



取り敢えず、登校途中に仕掛けて来た馬鹿共って言う名の鬼を退治しますかね?
アタシにリベンジするのは構わねぇが、時と場合を考えろってんだよ……ったく、テメェ等のせいで遅刻確定じゃねぇか!!――まぁ、テメェ等
みたいなのがこの辺をうろついてるんじゃ、ガキ共が安心して公園で遊ぶ事も出来なくなっちまうからキッチリ成敗してやるよ……節分に因
んだ方法でな!!
本日の凶器は……鬼討ち豆だ!!いくぜぇ……鬼は、外ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!



――ドドドドドドドドドドドドドドド!!!



「大凡豆の威力ではありませんね。
 もしも投げているのがパチンコ玉だったら、あの方達は全身ハチの巣になってお陀仏だったでしょう……ナンマンダ~~~。」

「マッタク持って、有難みも何もねぇお経だなオイ。」

其れは兎も角、アタシにリベンジしようってんならもうちっと強くなってからにしろや?鬼は外でKOされてるようじゃ、如何足掻いたってアタシ
に勝つ事なんざ出来ねぇだろうからな。









ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode33
『不良とナンプラーとゴマ油(エスニック風)』










「で、その不良共を鬼退治した結果遅刻したと言う訳ですか?」

「おうよ、アイツ等が邪魔しなかったら余裕で間に合ってたぜ?
 事情が事情だから、何とかならねぇかな委員長?……学食の大人気メニュー、スタミナ肉うどんにエビ天のトッピングでどうよ?」

「ナチュラルに裏金工作的な事をしないで下さい!
 本来ならば如何しようもありませんが、今日の1限目は英語だったので山寺先生に事情を話せば何とかなると思います――山寺先生は貴
 女の事を何かと気に掛けていますからね。」



そんな訳でバリバリ遅刻しちまった訳なんだが、1限目が山ちゃん先生の英語なら確かに何とかなっかもな――山ちゃん先生の授業をサボ
る事はねぇし、アタシと山ちゃん先生は幼馴染って事で、色々と優遇してくれっからな?
……教師としては大問題かもしれねぇけどさ。



「私に言わせれば、堂々と教室でタバコを吸う貴女の方が問題だわ。」

「んだよ、ちゃんと煙が中に入らないように、ハンディ扇風機で煙は外に飛ばしてるぜ?」

「そう言う問題ではありません!」

「なら、何が問題よ?」

「平たく言えば、未成年者が喫煙すんな!此れに尽きます!!」

「知ってるか委員長、未成年の喫煙禁止が法律で制定されてから、実はまだ70年ちょっとしか経ってないんだぜ?――戦前は、ガキンチョ
 が普通にタバコ吸ってたんだぜ?」

「知りません。其れとこれとは話が別です。」

「日本は未成年の喫煙を容認してた時代があるんだが、今更禁止されてもねぇ?」

「論点がぶっ飛んでます!!」

「根性焼きで火を消したら容認してくれる?」

「しません!」



いやぁ、アンタ結構ノリ良いよな委員長。
そう言えばよ、今日は節分って事で、学食にも限定メニューが出るって聞いたんだけど本当か?……まぁ、多分恵方巻なんじゃないかって
思うけどよ。



「強引に話題を変えましたね雪女さん。
 まぁ、其の予想で間違ってはいませんよ?――ただし、限定メニューは100食限定の『超豪華海鮮恵方巻』のようですが……」

「超豪華と言う時点でそそられるのですが、何が巻いてあるのでしょうか委員長さん?」

「のわぁ!行き成り現れないで下さい西行寺さん!!
 そうですね……七福神に習うのは通常の恵方巻と同じで、7つの具材を巻くとか――確か、マグロ、サーモン、イクラ、エビ、豆苗、水菜、卵
 焼きだったと記憶しています。」



ウワォ、如何考えても学食で出すメニューじゃねぇな其れ。
マグロとサーモンとイクラの時点で予算がハンパねぇっての――エビは、雑魚エビ使えば安く上がるとは言えよ。……このメニュー、絶対に
学園長の親父が道楽で考えただろ?



「その可能性は否定できないけれど、生徒の為に考えてくれたのならば悪くは言えないわ。」

「なので、取り敢えず先程3本予約しておきました。」

「……マユ、無駄な行動力の良さを発揮してくれてどうも。」

「感謝します西行寺さん。
 其れにしても雪女さん、炒り豆で不良を倒すとか、一体どれだけの戦闘力なんですか貴女は?本当に人間ですか?」



失礼な事言うなよ委員長、アタシは紛れもなく人間だっての。
まぁ、ティラノサウルスと喧嘩しても勝つ自信はあるけどよ――もしかしたら、霊長類最強女子かも知れないってのは否定する心算はねぇけ
どな。



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そんなこんなで昼休みだ。
学食で、マユが予約してくれた恵方巻を受け取ったんだが、其れじゃあ全然マッタク足りないんで、此れに大盛りチャーハンを追加して、それ
が飯で、オカズに唐揚げとサバの味噌煮と麻婆豆腐と回鍋肉。
牛乳は1リットルのパックで宜しく。



「相変わらず凄い量ですねぇ?」

「朝っぱらから喧嘩して腹減ってんだ。
 其れだけじゃなくて、この身体は燃費が悪くて、最低でもチャーハンとラーメンのフルサイズセットを食わないと持たねぇんだよ。」

ま、其れもガキの頃の稽古事の影響で、全身の筋肉がエネルギーを燃やす筋肉が占めちまったせいなんだけどな――おかげで、燃費が悪
い代わりに、凄まじい力を発揮する身体になったけどよ。

さーせん、ラーメン替え玉宜しく!!



「ま、まだ行くのですか?」

「底なしですね雪女さん……時に、最初の一口で具材が咬み切れずに、恵方巻の中身が出てきてしまったのですが如何しましょうか?」

「「喰え。」」

「ですよね。モグモグ、ゴックン……美味でした。」



そうかい、そりゃよかったよ。
こんな所でもポンコツをかますマユは、ある意味で大したモンだぜ――見習おうとは思わねぇけどよ。
取り敢えず、恵方巻は喰ったから、家に帰ったら豆まきをしてだな。



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んでもって放課後。
メユの所ではどんな節分をやってんだろうと思って寄ったんだが……アンタが鬼かよ源一郎さん!ヤクザの親分自らが鬼になるってのは如
何なのよ?
此れじゃあ、組員達だって思い切り豆まき出来ないぜ?



「いやぁ、節分の時だけは親分も子分もなく、鬼を倒せと言ってあるから問題はないよ――特に愛雪は鬼に対して一切の加減とかない子だ
 からね。
 毎年毎年、節分の後は全身に細かい痣が出来て困るよ。」

「だったら、其の蓑の下に防弾チョッキでも着込めって。」

「あぁ、其れはナイスアイディアだね!今度使わせて貰うよ。」



な~~~んて、事を話してる間に磯野崎組の豆撒き開始!!――なんだが、豆は手で撒こうぜ?改造エアガンや電動銃で入り大豆を射出
するとか色々間違ってるからな?
尤も、此れがヤクザ風だと言われたら其れまでだけどよ。



「雪女のお姉ちゃんと、マユ姉ちゃんも鬼退治を手伝って!!」



でもって、メユに手伝ってと言われたら無視は出来ねぇ……お前も御使命だから、行くぜマユ。



「良いでしょう、私の力の真髄をお見せします。」

「いや、見せなくて良いからな――要らん事が起きるかも知れねぇからな。」

「そうですか、残念です。」



そんな訳で、アタシ達が飛び入りしたい磯野崎組の節分イベントは大成功だったみたいだな――尤も、其の後でアタシとマユが呼ばれた宴
会は絢爛豪華そのもだったけどさ。
ったく、大トロ、ウニ、イクラを巻いた恵方巻ってのは何だっての……まぁ美味かったけどさ。
まぁ、そんなこんなで大いに楽しむ事が出来たぜ――帰宅したアタシは、親父とお袋の為に特製の恵方巻を作る事になったんだが、其れも
また良い思い出なのかも知れねぇな。

だけどさぁ、此れだけは言っても良いか?
歳の数だけの炒り豆に恵方巻……節分ってのは、こんなに腹の膨れるイベントじゃなかったよな、絶対に!!









 To Be Continued… 



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