Side:雪奈


人生何が起きるか分からねぇってのはよく言う事だが、幾らなんでもコイツは予想外ってか、普通に生きてて何度も遭遇する事じゃねぇ。
まさか、空から人が降って来るとは思わなかったぜ!!
ギリギリキャッチできたから良かったような物の、あと1秒遅かったら途轍もなくグロい物を見る羽目になっちまった……しかも、この制服は、アタ
シが通ってた中学のモンだ。
中防が偶然ビルから落ちるなんて事は有り得ねぇから、自殺か。アタシがキャッチしたから未遂で済んだけどよ。



「何で……」

「あ?」

「何で助けたんですか!如何して死なせてくれなかったんですか!!」

「其れは彼女が正義の不良だからです。」



マユ、其れ説明にも何もなってねぇ上に意味が分からねぇって。何だ正義の不良って。
しかしまぁ、自殺しようとするなんてのは余程思い詰めてたんだろうが、命を粗末にするのは頂けねぇから、勝手ながら助けさせて貰ったぜ。
ってか、何が有ったかは知らねぇが自殺なんざしちゃいけねぇ。お前の親父さんとお袋さん悲しむぞ?
良かったら、何が有ったか話してみろよ、先輩として話聞いてやんぞ?



「先輩……?」

「おぉ。アタシはオメーの通ってる中学の卒業生だ。
 先公共から聞いた事ねぇかな……自校、他校、年上、高校生構わずに不良共を軒並み叩きのめした最強の不良生徒の話。」

「え?……まさか、貴女が?」



おうよ、最強の不良『雪女』ってのはアタシの事だ。











ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode21
『ヤンキーとオタフクソース(辛口)』










取り敢えず近くのハンバーガーショップに入って話を聞く事にしたんだが……マユ、オメーは一体何を頼んでやがるんだ?
何時ぞやの真っ黒なハンバーガーセットも驚いたが、今回は驚くほどに全部緑だな!?何つー目に優しい色合いのメニューだよ其れ!!



「ほうれん草を練り込んだバンズに、そのパンを挽いて作ったパン粉を付けて揚げた海老カツとレタスを挟み、ポテトは上げる前にアボカドペー
 ストに付けてから揚げてあり、トドメに飲み物は果汁なんて殆ど入ってない鮮やかな緑のメロンソーダです。」

「頼むからよ、まじめな話をする場なんだから、もうちっと普通のメニュー頼もうぜ?」

「此の緑に地球の緑減少に歯止めをかける可能性を感じてしまいましてつい。」

「微塵も可能性は感じねぇよ!」

っと、脱線しちまったな。
さてと、話を聞く前に名前を教えてくれ。



「……山崎玲緒奈です。東間三中の3年です。」

「レオナな。
 アタシはまぁ、雪女で良い。そっちの方が呼ばれ慣れてるしな。んで、こっちのぱっと見美人だが、残念な位にポンコツなのが西行寺真雪。
 アタシはマユって呼んでるぜ。」

「どうぞよろしく。」



って、言いながら食い始めてんじゃねぇこの馬鹿!
……まぁ、マユには突っ込むだけ無駄か……んで、レオナ、お前なんだって自殺だなんて馬鹿な事しようとしやがった?よっぽど学校で嫌な事
でもあったのか?――陰湿なイジメとか。



「イジメ……そうですね、イジメって言うのかもしれません。
 でも、只のイジメだったら耐えられました……悪口を言われたりする位だったら我慢できたんです……」

「それ以上の事をされたって事だな?」

「はい。
 教科書をずたずたにされたり、体操着を破かれたり……校舎裏に連れて行かれて暴力振るわれたり……今日は、無理矢理制服脱がされ
 て写真を撮られて……『ばら撒かれたくなかったら50万持って来い』って……!」



……待てコラ、何処のドイツだそんな外道な事し腐る奴は?
やる事なす事、全部が全部人の道外れまくってるじゃねぇか!いや、不良のアタシが言う事じゃねぇかもしれねぇけどよ!!
――話を聞く限りじゃ相手は複数だよな?そうじゃなきゃ、無理矢理制服を脱がすなんて事が出来るもんじゃねぇからな。……誰だ、相手は?



「派手な格好をした、ギャル風の5人組です。
 同じクラスになったのが運の尽きで、自分で言うのも何ですが、大人しそうな雰囲気からターゲットにされてしまったみたいなんです……親や
 先生に言ったら、男子に輪姦させるって脅されて……!」

「成程、そりゃ自殺したくもなるぜ。」

だが、ギャル風の5人組ってーと、アタシが3年の時に入学して来たアイツ等だな?
無謀にもアタシに喧嘩売って来たから纏めて返り討ちにしてやったんだが、アタシが居なくなって幅を利かせてるって感じか……ガチの不良や
る覚悟もねぇハンパモンが図に乗りやがって。

おいレオナ、何時までに何処に来いって事は言われてんだよな?……其処にアタシも連れて行け。
逆上せ上がった馬鹿共に、天誅ブチかまして、二度とふざけた事が出来ねぇようにしてやる……何よりも、アイツ等はアタシが最も嫌いな弱い
者イジメを複数人で行いやがった。
キッチリ〆てやらなきゃ気が済まねぇよ。



「だ、ダメですよ先輩!
 あの人達は、不良グループ御用達のライブハウスを指定して来たんです……中には仲間の不良が居る筈ですから、危険すぎます!」

「ハッ、雑魚が何匹群れた所でアタシの敵じゃねぇって。
 数の差なんてモンは、金属バット装備で埋める事が出来っからな。」

「まぁ、雪女さんなら誰が相手でも負けないでしょうが、流石にこの人数で乗り込むと言うのは、レオナさんの不安が大きいと思いますので、此
 処は最強の助っ人を呼んでは如何でしょうか?」

「最強の助っ人?」

「メユさんの所の強面の方々を……」



そう来たか。
だが確かにアリかもなぁ?中途半端なヤンキー連中が本物の任侠モンの迫力に勝てるはずがねぇ――特に銀ちゃんは、スキンヘッドのスカー
フェイスにサングラスって言う『顔面凶器』だからな。

マユ、お前は本当に偶にだが実に見事な事を言ってくれるじゃねぇの?ご褒美として、明日の昼飯奢ってやる。



「わーい。」

「だから、喜ぶ時くらいテンション上げろっての。」

まぁ、そう言う訳だから安心しろレオナ……アタシだけじゃなくて、本物のヤクザが一緒に行ってくれっから。其れなら安心だろ?



「えっと、ヤクザ屋さんですか?」

「磯野崎組って言う、関東一派のヤクザ組織の頂点に君臨する組織で、そんじょそこ等の暴力団とは違う本物の任侠一家だ――メユが言う
 には、警察組織と裏で繋がってるらしいからな。」

「な、なんでそんな人達と知り合いなんですか先輩!?」

「親分さんの娘と、ダチ公だからだな。
 まだ小学生のガキンチョなんだが、此れがまた可愛いんだ。」

「……何処から、突っ込めばいいのか分からなくなってきました。」



なら、突っ込む事を放棄するのも一つの手だぜレオナ。



「その話、私も乗らせて頂けますか雪女さん?」

「委員長!?」

アンタ、なんでこんな所に居るんだよ?ってか、クラス委員会があるんじゃなかったけか今日って?



「議題があまりにも如何でも良い事だったので、さっさと切り上げたのよ。
 そしたら下校中に、中学生と一緒にこの店に入っていく雪女さん達を見かけて、後を追って入ってみれば、何やら深刻な話をしてる様子。
 聞けば、腹立たしい所業の数々……此れは人として許してはいけない事でしょう?」

「その通りです委員長さん。
 彼女に『死』を選ばせるような事をしでかした方々には、キッチリと因果を応報して二度とそんな事をする気が起きないようにしなくてはならな
 いと思います私は。
 分かりにくいかも知れませんが、私は此れでも怒ってるんです。ぷんぷん。」



……良い事を言ったのに、最後ので台無しだ馬鹿野郎!
だけどよ委員長、今回の事は間違い無く乱闘になる……アンタ、そんな場所に行って大丈夫なのか?



「心配は無用よ雪女さん。
 こう見えて、私は合気道3段で剣道2段です。其れなりに、役に立つとは思いますよ?」

「合気道と剣道の有段者か……頼りになるぜ。」

「実を言うと、私は柔道3段だったりします。」



は?其れはマジかマユ?



「はい。
 体を鍛える意味で柔道をやっていたのですが、昇段試験を受けてみたらビックリで、開始直後につまずいて相手に突撃して倒したら其れが
 一本判定になりまして、其れが連続で起きた上に、型の試験でもつまずいたり滑ったりしたのが逆に技をきれいに見せたみたいで昇段出来
 たんですよ。」

「ポンコツ性能がプラスに働いて昇段するとか、お前今すぐ全国の柔道家に謝れ。」

「どうもすみませんでした。」



其処で本当に謝るのかオイ!!
マッタク持ってオメェって奴はよぉ……だが、マユはポンコツ性能がプラスに働くかどうかが分からねぇから戦力外だが、委員長は実力が確りと
裏打ちされてっから問題ねぇ。
其処に銀ちゃん達が加われば敵はねぇな。

アタシが卒業した事で幅を利かせた馬鹿共が……逆上せ上がったツケをキッチリ払わせるから覚悟しやがれ。
何よりもテメェ等は人として一番やっちゃいけねぇ事をしやがった……レオナに、一生消える事のない心の傷を負わせやがった!――判決は
『極刑』以外には有り得ねぇ!!
中途半端に悪ぶったクズ共が……本物のアウトローの恐ろしさってモノをその身に刻んでやんぜ――序に、本物の正義の味方の怖さってモ
ンもな!!

雪女の絶対零度の恐怖を、其の身に刻み込んでやるから覚悟しやがれだぜ!!











 To Be Continued… 



キャラクター設定



山崎玲緒奈
・雪奈が通っていた中学校の3年生。
 ギャル系不良グループから様々なイジメを受け、其れを苦にしてビルからの投身自殺を図るが、雪奈にキャッチされ一命を取り留める。
 自分の話を聞いてくれた雪奈の事は『少し怖いけど良い人』との認識。