Side:雪奈
夏休みも残り僅か。
宿題はとっくに済ませたから問題ねぇんだが、マユの奴はマッタク持って手付かずだったから、委員長を召喚して強制的に1日で終わらせたっ
てのもある意味では良い思い出かも知れねぇ……二度と体験したくはねぇがな。
んで、残り少なくなった夏休み、今日は何をしに来てるのかと言うと……
「マユお姉ちゃん!見てよ、この大きなクワガタ!!」
「おぉ、この大きさならば私達が生まれる前ならば1000万円の値が付いた事でしょうね。」
ザッツアウトドア!
しかもオートキャンプ場なんかじゃなくて、本当に自然の中でやる本格的な奴で、虫捕りやら魚釣りなんかもやりたい放題ってな!!
偶には、街の喧騒を離れて自然を謳歌するってのも悪くねぇもんだぜ――尤も、安心してアウトドアをする為に、全く手が付けられてなかった
マユの課題を、委員長を召喚して一気に終わらせたんだけどな。
「まさか夏休みが残り1週間の時点で全く手が付けられていないとは予想外でした。」
「あんにゃろう、去年もアタシが手伝ってギリギリだったってのに、マッタク持って懲りてねぇな……ぜってーアタシ等の事アテにしてただろ。」
「其れ、否定できませんね。」
まぁ、文句言いながらも手伝ってやるんだからアタシも委員長も大概お人好しなのかも知れねぇけどな。
ヤンキー少女とポンコツ少女とロリッ娘とEpisode18
『ヤンキーと夏休み、終~夏はアウトドア~』
今回のアウトドアに参加してんのはアタシとマユとメユ、メユのダチ公であるキヌとミサとイッカとイオリン、其れからマユの課題手伝ってくれた
として委員長。大人は無し。
要するに未成年だけでって訳だ。
つっても、直接参加してねぇだけで絶対に磯野崎組の黒服の方々がメユの護衛の名目でこっちからは見えない所に潜んでる気がするんだよ
なぁ……つーか、銀ちゃんは絶対居る筈だろうしな。
其れは兎も角、アウトドアのキャンプは2泊3日の予定で今日は2日目だ。
2泊3日のキャンプだと、2日目こそがメインだから思い切り遊びまくらねぇとだ!!――で、今は何をしてるかってーと虫捕り。
何でもメユ達の学年の課題で、『夏休みに何かしらの生き物を捕まえて、夏休み明けに発表する』ってのがあったらしくて、其れに虫を選んだ
らしいな。
「雪女さん、見て見てこれ!でっかいカブトムシ!!」
「おぉ、スゲェなキヌ!って、此れヘラクレスじゃねぇか!!
おいキヌ、そいつ今すぐこっちに寄越せ!そいつはこんな所に居て良い奴じゃねぇから!!」
ったく、ペットとして飼ってたのを飼いきれなくなって自然に放しやがったな誰か?
コイツ等は在来種よりも強いから、一気に繁殖して生態系荒らすだけじゃなく、在来種と交配して在来種の純度まで乱すからダメなんだよ!
ったく、コイツはアタシが責任をもって飼ってやるとするか。
「雪女のお姉ちゃん、如何したの?」
「あぁ、メユか……否、キヌが捕って来たのが外来種でな……そんなもんが居るのは大問題だから逃げねぇように水槽にぶっこんだんだ。」
「外来種?其れってこれも?」
なんだよ、お前も捕まえたのかメユ?って、コイツはコーカサスオオカブト!?めっちゃ外来種じゃねぇか!!
「雪女姉さん、此れは?」
「私も珍しいの捕まえた!」
「此れも外来種でしょうか?」
更に来るわ来るわ!
ニセハナマオウカマキリに、南米原産のでっかいカミキリムシに、身体がシルバーメタリックなクワガタムシ!全部外来種じゃねぇか!!
ドンだけ捨てられてんだよ此処は!!
「雪女さん、こんなモノを捕まえてしまいました。」
「オメーもかよマユ……って、なんだそりゃ?」
「形状的にトンボではないかと思うのですが……」
いや、確かにトンボなのかも知れねぇけど大きさがおかしいだろ其れ?
どんなに小さく見積もっても体長50cmはあるよな其れ?オニヤンマの4倍体にしたってデカすぎる……ってか、身体の構造こそトンボだけど
アタシ達の知るトンボとは根本的に違う様な……委員長、アレ何か分かるか?
「一般的なトンボと比べると太めの胴に、強靭な羽根、そして正面から見ると釣り目に見える複眼……これらの特徴を総合して考えると、太古
の昔に絶滅した原始昆虫の一種にして、トンボの祖である『メガニウラ』ではないかと。」
「そんなモンが生きてるって、どうなってんだ此処は!!」
数億年前から時が止まってんのかここは!!
あ~~……取り敢えずマユ、そいつは逃がしてやれ。古生物研究所にでも売りつけりゃ良い値で買い取ってくれっかもしれねぇが、古代から
今までひっそりと生きて来たってんなら、此処は静かに暮らさせてやるべきだろうからな。
「そうですね、そうしましょう。其れでは元気に生きていてください。」
「優しいんですね雪女さん――正直、なぜ貴女が不良をやってるのか分からなくなってきました。」
ハッハッハ、そいつは言っちゃいけねぇぜ委員長。
両親への反発からアウトローの世界に片足突っ込んで、其処からは転がり落ちるように不良道まっしぐらだ――でもって、今更止めようとも思
わねぇし、アタシは半端な気持ちで不良やってる訳じゃねぇからな。
「だからと言って、堂々とタバコ喫わないで下さい。あと、タバコのポイ捨ては駄目ですよ。」
「わーってるって。ちゃんと携帯灰皿持って来てっからよ。……委員長も喫ってみっか?」
「喫いません。少なくとも成人するまでは。」
まぁ、そう来るとは思ったけどよ。
取り敢えず虫捕りは、最終的にメユ達が発表するモンを捕まえる事は出来たんだが、どっちかってーと外来種捕獲作戦になっちまったな。
――魚釣り
渓流での魚釣りってのもアウトドアの醍醐味だよな。
こんだけの清流なら、アユにイワナに、ヤマメなんかも釣れるかもだぜ――釣った魚は晩飯のバーベキューの時に塩焼きだな。っと、アタリが
来た!
この引き……コイツは若しかして大物か!!くの……どぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!
よっしゃ、ゲット!!コイツはまたデカいな?見た目は鮭に似てるけど、鮭が遡上するにはまだ早いよな?
「此れは、若しかしたら物凄く珍しい『渓流で育ったサクラマス』かも知れません。
ヤマメとサクラマスは同じ種で、一度海に出て遡上するのがサクラマスで、一生を川で過ごすのがヤマメなのですが、極稀に川に残ったに
も関わらずサクラマス級に成長するヤマメが居ると聞きました。
あくまでも釣り人の間での伝説だと思ったのですが、まさか実在してたとは……」
委員長、マジか。
さっきのメガニウラと言い、此処はそういうレアな生物が集まってんのか?
となると、コイツは逃がしてやるべきなのかも知れねぇが、釣り針にかかった魚は餌も碌に取れなくなって長生き出来ねぇからリリースする方
が残酷ってモンだ。
だから、釣った責任としてちゃんと残さず食ってやるのが大切だな。釣った魚はリリースせずに食うべしだぜ。
でも、こんだけの大物を全部焼くのは勿体ないよな?
よし、半分はステーキにして、残り半分は刺身にしよう!新鮮な素材はレアか生が一番旨いからな――こんな事も有ろうかと、醤油を持って
来てて良かったぜ。
んで、アタシだけじゃなくて全員が釣果が良くて結構な魚が釣れたんだが、流石に全部は喰いきれねぇから何匹かは燻製にして持って帰る事
にしたぜ。
……時にマユの奴が格闘の末に逃がしたあの魚、水面から見えた頭から推測するに、最低でも2mはある巨大魚だよな?アレは一体なんだ
ったんだろうな。
「個人的に古代魚のダンクルオステウスではないかと……」
「ねぇよ!!」
「そうですか、残念です。」
大体にしてダンクルオステウスは海の魚だからな!!――まぁ、メガニウラの事を考えると、古代の淡水魚が居る可能性は否定出来ねぇけど
な。
――バーベキュー
キャンプと言えばバーベキューだ。
肉や野菜は携帯フリーザーボックスに入れて持って来たが、其れに加えて釣りでゲットした魚も網で焼くワイルドバーベキューだぜ!!
如何だ、美味いかガキンチョ共!!
「「「「「おいしー!!」」」」」
へへ、そいつは良かったぜ♪
こう言っちゃなんだが、街のハンバーガーよりも旨いだろ?
ハンバーガーも悪くねぇんだが、こう言うのに比べれば可成り劣っちまうってモンだ――厚切りのステーキに豪快にかぶり付く事が出来るって
のもアウトドアならではだしな。
「だからと言って、暑さ3.5cmのステーキにフォークを突き刺して噛みつくのは如何かと思いますよ雪女さん?」
「かてぇ事言うなよ委員長――てか、マユのアレよかいいだろ?」
「アレは対象外です!!」
あ、ヤッパリ?
まぁ、まさか原始肉があるとは思わなかったからな……つーか、何処から調達して来たのやらだな。そして、其れに豪快にかぶり付くマユのギ
ャップの凄さがまたな。
無表情で巨大な塊肉にかぶり付くんじゃねぇっての……まぁ、バーベキューを満喫してたみたいだから良いけどよ。
んで、その晩は何とか座の流星群が来てるって事で天体観測をして、降るような星空を堪能したぜ。
このアウトドアが夏休みのラストイベントになる訳だが、忘れられねぇ思い出になったのは間違いない――今年の夏休みは、今までで一番楽
しかったって言いきる事が出来るからな。
取り敢えず、夏休みは思い切り楽しんだから2学期も気合入れて行かねぇとだぜ!!
因みに、アタシが釣ったサクラマスで作った燻製は親父に好評で、良い酒の肴になったらしい――此れもキャンプのお土産かもだな。
To Be Continued… 
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