Side:なのは


 「アクセルシューター、シューーートッ!!」
 『Accel Shooter.』


 「小賢しい!!」


 ――ガァァン!!


 く…闇の書さん、やっぱり強い!
 白夜を交えての誘導射撃もまるで通じない……さっきよりも魔力弾を増やして複雑に操作してるのに…!


 『Master?』

 「大丈夫だよレイジングハート。ルナは闇の書さんの中で頑張ってる。
  フェイトちゃん達も騎士さんの幻影相手に頑張ってるんだもん、私1人が負けるわけには行かないよ。
  それにダメなら通るまで何度だってやるだけ――絶対に諦めないんだから!!」

 『OK .I believe Master.』


 ありがとうレイジングハート。
 私も貴女を信じる……全力で行くよレイジングハート!!


 『All right.』


 さぁ、マダマダこれからなの!!










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福50
 『激闘〜Dog Fight〜』










 Side:ルナ


 「矢張り早々簡単には見つからないか…」

 まぁ、予想はしていたがな。
 闇の書の防衛プログラムと管制ユニットを切り離す事事態は主が意識を取り戻せば難しくない。

 だが、管制ユニットへの侵食も取り除くとなれば話は別だ。
 此処まで深刻な侵食を受けている状態では、一度切り離したとしても何れはナハトを再構成してしまう。
 だからこそ私は自身を消滅させるに至ったのだから……

 それをこの世界でもさせてしまっては本末転倒だ。
 この世界の私には、彼女達との幸せな生活を送って欲しい。
 そうするためにも頑張らないといけないな。


 如何に元夜天の魔導書の管制ユニットとは言え、主の意識を覚醒させるまでの権限は無い。
 だが、中枢にアクセスし管制ユニットの、『私』のバグを取り除くことは出来る!

 其れさえ出来れば、後はこの空間から現実に戻る際の衝撃で主は目を覚ます。


 だから中枢に向かってるんだが…中々辿り着けないな。
 尤もこの混沌とも言うべき空間でプログラムの中枢を探すのは果て無く困難なのは当然だが………ん?



 ――ズズ…するり……ギュル…



 「…どうやらゴールは近いらしいな。」

 やれやれ、黒蛇の塊のお出ましか。
 中枢に行かせまいとしているのか?……当然か。

 自動防衛システムにとって、夢に捕らわれずにいて尚内部に存在する私は異物――体内に入り込んだ病原菌か?
 だがナハトよ、お前こそが書にとっての異物なんだぞ?

 そう、元は無害だったものが外的要因で悪性に変わったもの――言うなれば癌のようなもの。
 癌は切除する以外に治す方法は無い。


 『――――――』

 「『駆除する』か……出来るならやってみろ異常な防衛プログラムよ。
  私はお前などには屈しない。寧ろ将とヴィータから貰ったこの『月影』の錆びにしてくれる。」

 そしてお前を倒して先に進む!
 余り時間をかけることもできないので速攻で行くぞ!


 『OK.Tran−S・A・M.』


 切り伏せる!!








 ――――――








 No Side


 現実世界での戦闘は熾烈そのもの。
 なのはと闇の書の意志は言うに及ばず、他の4人と幻影の守護騎士との戦いもだ。


 「…………」

 「クレッセント…セイバー!!」
 『Crescent Saber.』



 「うおりゃ〜〜!だぶるすら〜〜っしゅ!!」

 「…………」



 「意志無き幻影ですか?…憐れなものですね…」

 「………」

 「直ぐに眠らせて差し上げます。ディザスターヒーートッ!」



 「フン…全く持って腹立たしい。よもや貴様のような幻影如きで如何にかなると思われるとはな。
  舐めるでないわ塵芥未満の下郎が!我に、我等に盾突いた事を後悔しろ!沈め、インフェルノ!!」

 「…………」


 幻影の騎士達は何も語らない。
 ただ只管、闇の書の意志の命令通りに戦闘相手を滅するのみ。
 其処にはあの強い光を瞳に宿した騎士は居ない。

 虚ろな目で襲い掛かってくる偽りの騎士が居るのみ。
 守護騎士のコピーゆえにその戦闘能力は高い。
 相手にしているのがこの4人で無かったら、或いは総崩れだったかもしれない。

 だが、この4人は特別だ。
 なのはの守護騎士である星奈、冥沙、雷華。
 そして親友であるフェイト・テスタロッサ。

 誰もがなのはの影響で『不屈』をその身に宿している。
 だから落ちない。
 幻影とは言え途轍もない強さの騎士達を相手にしてもまるで引けを取らないどころか、押している。

 『諦めない心』が彼女達に本来以上の力を与えていた。


 「雑魚の分際でしつこい…闇の書の蓄積魔力がなくなるまでは動き放題か?
  まぁ良い、リインフォースの奴が戻ってくるまでの座興だ、精々我等を満足させてみるが良い――偽りの騎士よ!!」

 デバイスをヤマトフォームへと変形させ、影シャマルのクラールヴィントのワイヤーを切り裂きクロスレンジに持ち込む。
 星奈もまた、クロスレンジ用のスピアーモードで影ヴィータの誘導射撃を切り落として行く。

 雷華とフェイトも夫々影ザフィーラと影シグナムを相手取り、互角以上の戦いを展開。
 流石に手強いので、他の仲間の援護にこそ行けないが決して押されない。

 いずれにしてもこの4人が幻影の騎士に負けることは無いだろう。






 だが、なのはの方はそうは行かない。

 「く…!!」
 『Shot.』


 ――ドンドンドンドンドンッ!!



 「甘いな…」

 こっちは明らかになのはが押されていた。
 それでも誘導弾やフラッシュムーブを使って何とか落とされないように頑張っている。

 だが如何せん力が違いすぎる。
 なのはは既に一般的な魔導師を上回る力をつけている。

 闇の書の意志に『戦闘技術は最も未熟』と言われたが、其れはあくまで他の4人やルナと比べた場合の事。
 空間認識把握能力と超並列思考を駆使したなのはの戦闘力は侮れない。

 現実に押されていようとも、自分の持てる全てをぶつけ、背後を取ったりしているのだ。

 それでも敵わない。
 ただ純粋に力が強いのだ、闇の書の意志は。

 勿論戦闘技術も高いが、それ以上に揮われる純粋な『力』が余りにも強い。

 なのはがドレだけ鋭く切り込もうと、的確に撃ち込もうと全てその圧倒的な力の前に防がれてしまう。


 「沈め…!」

 「え?…!きゃぁぁぁぁぁ!!!」

 今もまた、背後を取っての射撃を防がれ逆に背後を取られ、空中から海面ヘと殴り落とされる。
 相当な威力を示すかの様に巨大な水柱が上がる。

 バリアジャケットを纏っていたとは言え此れは相当にダメージがあるだろう。

 「…………」

 水柱が納まってもなのはが水面から顔を出す様子はない。
 落ちたのだろうか?


 「はぁ、はぁ…」

 そうではない。
 とっさに白夜の魔導書から転移魔法を呼び出し、水中から闇の書の意志の死角になる岩陰に転移していたのだ。








 ――――――








 Side:なのは


 これ程だなんて…若しかしたらリミッターが壊れてる分ルナより上かもしれない。
 普通にやってたんじゃ、多分敵わないけど…

 「マガジン残り3つ、カートリッジ24発……行けるレイジングハート?」

 『No problem.Clear to go.』


 うん、良い返事。
 なら行こう、一切の出し惜しみ無しの思い切りの攻撃で!!


 『OK.Divine Buster.』


 ――ドォォォォン!!


 「!!何時の間に其処に…!!」


 残念…ギリギリで避けられちゃった…


 「諦めが悪いな。それだけ傷ついて、痛い思いをして……なのに何故抗う?抵抗しても苦しみが増すだけだぞ?」

 「貴女が…」

 「?」

 「貴女が泣いてるから。貴女の心は『助けて』て泣きながら叫んでるから!!」

 だから抗う!抵抗する!!
 貴女を助けたいから!!


 「何を馬鹿な……!」

 「口ではどんな事だって言える、けど心は偽れないよ!」

 拭っても拭っても溢れる涙は、苦しいからでしょ?本当はこんな事したくないからでしょ?
 でも、自分ではどうにもならないから貴女は……


 「だった如何だと言うんだ?何度も言うが闇の書の運命は始まった時が終わりだ…其れは変わらない、誰が主となろうとな…!」

 「この駄々っ子!!レイジングハート!!」
 『All right.Excellion Mode Drive ignition.』

 「!?」


 レイジングハートのフルドライブ『エクセリオンモード』。
 私が最も得意とする『砲撃』を徹底的に強化した形態!
 防御力と瞬間加速力も大幅に上がってるの。

 長時間戦闘は出来ないけど、此れなら貴女にも通じるはず。

 終焉にはまだ早い!
 ううん、終焉なんて来させないの!!

 「絶対に貴女を止める!それで助ける!!ハイペリオン…スマッシャー!!
 『Break.』


 ルナの帰還まで持ちこたえる!!








 ――――――








 Side:ルナ


 「終わりだ…散れ!」
 『Slash.』

 『?――??――――!!!!!』



 何をされたかも分らないか?
 もう、終わっている。


 ――キン…


 『――――!!―――――!!!』


 神速の抜刀術、壊れた防衛プログラム如きには見切れないだろう?
 まぁ、これも毎朝の美由希との鍛錬の成果だな。

 何度か『居合い』の型を見せてもらったが――成程此れは良いな。
 クイックムーブと併せれば防御も回避も不能な技か…凄まじい事だ。

 加えて、この月影も素晴らしい業物だ。
 此れは将とヴィータにはいくら感謝しても足りないな。


 『Master.』

 「あぁ、分っている。あんなモノが居ると言う事は此処が中枢なんだろう。」

 蛇の塊が現れたその奥にある鈍い光、これこそが夜天の魔導書の中枢。
 恐らくアイツは主の元にいるはず――なら此処に来る事は無い。
 最後の瞬間まで主の元に居ようとする筈だ、私がそうだった様に。

 だからこそ好都合。
 此れで邪魔が入らないで、アイツへの侵食を取り除ける。
 今の侵食は止められなくても、分離後に後遺症を起こさないようにするのは出来る。

 その為にマリーと忍から工学関係を色々教わったんだ。
 更に簡単なワクチンプログラムも作ってもらった――だいじょうぶだ、絶対に成功する。

 「さて、始めるとしようか……『夜天の魔導書』の治療を。」
 『All right.My Master.』


 待っていろ、今お前を助け出す。








 ――――――








 Side:はやて


 ……此処、何処や?
 なんや…凄く…眠い…


 「…………」


 あれ?貴女は…


 「再びお休みを、我が主。」

 「休み…」

 そか…寝てもいいんやった…

 けど、なんやろ?まだ寝てはダメなような…?
 何か…何か…とても、大切な……

 ……なんやったかなぁ………


 「……………眠ってください…」


 まぁ、えぇか――目が覚めたら思い出すやろ……うん、きっとそうやな…










  To Be Continued…