Side:なのは


 あの人が闇の書の完成融合騎――闇の書の意志…
 本当にルナと同じなんだ。
 違うのは顔と腕の紋様の有無と…今は服かな?
 でもルナが騎士服から戦闘装備に変えたら本当に区別がつかないくらいなの…


 「崩壊までの時間は少ない…せめて僅かな間でも我が主には安らぎの時を。
  そして終焉への道連れに――我等に仇成す者には、永遠の闇を!」


 !!アレって

 「空間攻撃!!」

 「皆、私の後ろに!」


 ルナ?


 「広域空間殲滅魔法は私の十八番だ。同様の魔法で相殺する。」

 「うん、お願い!」

 ルナなら大丈夫!
 皆下がって!!










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福48
 『闇の書の意志』










 「闇に…沈め!」
 『Diabolic Emission.』


 「塵すら残さず全てを無に帰せ。滅ぼせ…無界!



 ――ガァァァン!!



 す、凄い…!
 闇の書さんの空間攻撃を本当に同じ魔法で食い止めてる!

 2人とも凄い力――封鎖結界内じゃなかったら海鳴が攻撃の余波だけで壊滅してるはず。
 念には念を入れてバリア張っておいて正解だったね、レイジングハート。


 『I think so.』


 と、衝撃波が無くなった…終わったかな?


 「あぁ、一応な。やや押し負けたが、何とか相殺できた――お前達は大丈夫か?」

 「大丈夫。一応バリア張ってたから。」

 「私とナノハのバリアは堅いですから。冥沙達も問題ないでしょう。」


 冥沙、雷華、フェイトちゃん――3人は大丈夫?
 冥沙は兎も角、雷華とフェイトちゃんは物凄く装甲薄いから…


 「ん…大丈夫。」

 「クロハネとナノハと星奈んのおかげで全然ヘッチャラ♪」

 「我も問題ない。戦闘も余裕で行えるが………さて、あやつは如何したものか…」

 「うん…」

 お話が出来れば一番良いんだけど…


 「其れは望み薄だな。さっきも言ったが此方の話が通じる相手じゃない。だが…諦める気は無いだろう?」


 勿論!
 時間はまだ有る、やれる事は全部やる!
 それでも駄目なら、もっと頑張る!!
 とりあえず、




 「あの、闇の書さん!」

 話すだけ話してみよう。

 「あの、私達…「主は…」え?」

 な、なに?


 「我が主は、目の前で起きた辛い出来事が、全て悪い夢であって欲しいと願った。
  そして騎士達は、自分達の前に立ちふさがる者達全てを倒し、主を護りたいと願った。」



 ――ドォォン!!ドガァァ…ドドドドドドドド…!



 !!火柱!?
 其れも色んなところから!


 「早いな…もう崩壊が始まったか。」

 「崩壊…!」

 「おのれ…闇の書の闇はこれ程であったか…!我等の予想を遥かに超えておる…!」

 「もしも砕け得ぬ闇を復活させてしまって居たらと思うと背筋が寒くなりますね…」


 ……うん、本当に凄い魔力。
 ただ其処に居るだけなのに物凄い威圧感を感じるの…


 「お前達に咎が無い事、理解できなくもない――だが、お前達が居なければ主と騎士達は残り少ない時間を安らかに過ごせた。
  ………後僅かで私の自我は消え、ナハトヴァールは主と集められた魔力を使い破壊を行う。
  そうなってしまう前に、私はせめて主と騎士達の願いを叶えたい。」


 そんな…けど!

 「まだ何とかなる!諦めちゃ駄目だよ!!」

 「もう遅い。闇の書の運命は、始まった時が終わりだ……」


 そんなこと無い!
 ホンの少しでも時間があるなら何とかできる!!


 「くどいな…終わりだ。闇に消えろ!」
 『Blutiger Dolch.』


 「断る!縛鎖!
 『Lock.』


 え、ルナ!?


 「吠えよ!」
 『Break.』


 ――ガァァン!!


 「うあぁぁ!!」


 物量射撃魔法を放たれる前に炸裂式のバインドで先制…流石なの!
 物凄い吹き飛んだなぁ…


 「距離を離したに過ぎない、大したダメージは与えられていない筈だ――防衛プログラムは兎に角堅いからな。」

 「そうなんだ…」

 今のルナの一撃でも大したダメージじゃないってなると相当だね。
 気を引き締めなきゃ!


 「それなんだが…暫く私1人に任せてもらえないか?」


 へ?


 「何言ってるんだよクロハネ!」

 「アレは物凄く強い。ルナでも1人じゃ危ないよ。」

 「其れは百も承知だ。だが、私の『秘策』を使うには1対1の方が都合がいいんだ。」


 秘策!
 そうだね、ルナには防衛プログラムと書の本体を切り離す策があったんだ!


 「成程、其れをなす為には一騎打ちの状態が必要なのですね?」

 「あぁ。勿論、お前達にも後で戦ってもらう事にはなる。だが、今は私に任せて欲しい。」

 「まぁ、うぬならばあの力を使えばアレにも引けはとらぬだろうが…如何するナノハよ?」


 決まってるよ。

 「分った、任せるよルナ。私達は闇の書さんとの戦闘に備えて、少し休んでるね?」

 「そうしてくれ。あれは手強いからな。……来たか!」


 うん、吹き飛ばした闇の書さんがこっちに向かってきてる。
 ルナ……気をつけてね?


 「分っているさ。…行って来る!」

 「頑張って!」
 「お願い!」
 「やっちゃえクロハネ!」
 「少しばかりアイツの頭を冷やしてやれ。」
 「どうか御武運を…」

 「あぁ……行くぞ、覇ぁぁぁぁぁ!!!」


 ルナが変身した。
 此れならきっと大丈夫なの!








 ――――――








 Side:ルナ


 「覇ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」




 ――ガキィィィン…!!



 此れは、思った以上に力が強いな。
 力を解放した状態で略互角とは…尤も攻撃の太刀筋は既に承知しているがな!


 「お前は…私と同じ存在、魔導書の管制融合騎だろう?ならば分る筈だ…何故止める?」

 「分るからだ。お前は全てを終わらせようとしながらも救いを望んでいる。
  生憎と、本音を隠して暴れまわる駄々っ子を無視する事が出来ない性質でな…止めさせてもらう!」

 これもなのはの影響だろうな。
 しかし、対峙してみると分るものだな――中々如何して、酷い顔をしている。

 終わらせたくない、主の命を奪いたくは無いのに自分の力ではどうにも出来ない。
 ナハトが完全に暴走してしまうその時まで主の心を護る事で精一杯…

 何も出来ない自分が悔しくてたまらないのに其れにすら気付く事ができないでいる……

 成程、こんな顔にもなる訳だ。
 あの時は分らなかったが、今は分る――私は救いを望んでいたんだ。

 元の世界で呪いを断ち切ってもらい、この世界では新た仲間を貰い私は救われた!
 だから、私はお前を救う!永劫の呪いを、今度は私自身の手で粉々に砕いてみせる!


 「止める事など出来ん……ナハトの呪いが発動した以上、後には破壊の爪痕すら残らない!」

 「だから如何した?諦めない限り終わりは無い。私は仲間達からそう教わった。…撃ち抜け!」
 『Divine Buster.』


 「小賢しい!」
 『Divine Buster.』


 ディバインバスターだと!?
 いや、なのはのリンカーコアを蒐集してるんだから使えて当たり前か…此れは中々に厄介だな。
 だが退く気など無い。

 なのはと共に過ごしたこの半年の中で、私にも『不屈の心』が出来ている。
 この心は決して折れない!
 ブライトハート!


 『All right.My Master.Accel Shooter Buster Shot.』


 前後上下左右全方位からの誘導弾…お前でも此れは捌ききれないだろう?
 行け!


 「回避不能ならば防ぐまで…絶て!」
 『Panzerschild.』


 回避できないならば防ぐか?
 だが、其れこそが狙いだ!砕けろ…

 蒼嵐滅掌!
 
『Crush.』


 バリア破壊の一撃は流石に防げないだろう?
 だが此れで終わりではないぞ、パルマフィオキーナ!


 「ぐは…!馬鹿な…」


 …矢張り堅いな。
 思ったよりも効いている様だが、これでは削るのにも骨が折れるな…


 「大人しく…沈め!!」

 「!!」

 此れはチェーンバインド…!
 蒐集した魔導の全てを使えるというのは、相手にすると面倒極まりないな…


 「消えろ!」


 ――グイン!


 「!?」

 チェーンで拘束して振り回すって…効くな此れは!
 く…ブライトハート!


 『All right.Buster Rage.』


 魔力爆発で外さないと。
 く…あ〜〜〜目が回るな。
 前は使う側だったが、実際に喰らうと中々だな……


 「此れを外すか。」

 「まぁ、一度は見ている魔法だ。外し方ぐらいは思いつくさ。」

 しかし如何したものか……秘策を使う前にもう少し削りたいが時間はあまり無いな。



 …仕方ない、本当は最後までとっておきたかったが終わってしまっては元も子もない、使うか『フルドライブ』を。
 行けるか、ブライトハート?


 『No problem.Trance Strike Assault Mode Standby ready Set up.』


 聞くまでも無いか。
 見せてやろう『最強のパワーと究極のスピード』を!

 「覇ぁぁぁぁぁぁぁ…!」

 「!?…な、何だこの魔力の高まりは…!」


 感じるか?
 此れが私の全力だ…行くぞ!

 トランザム!!

 『All right.“Tran−S・A・M”Drive ignition.』


 ――キィィィン……シュン!



 「消えた!?」

 「何処を見ている!」


 ――ガァン!!


 「ガハ…馬鹿な、背後からだと。」

 「だから、何処を見ている?」

 「!!」


 目で追おうとしても無駄だ。
 フルバースト――トランザム発動状態では私の全ての能力は3倍になる。
 祝福の月光状態で使えば、通常状態の9倍にまで能力は上がる…止める事はできないぞ!


 「ぐ…こんな事が…!だが、此れだけの強化はお前とて無事ではすまない筈だ。」

 「確かにな。普通だったら強化に耐え切れずにスクラップだ。
  だが、私の身体はマリーが大幅に強化してくれた。此れくらいの倍化ではへこたれない!」

 さぁ如何する?
 この速度からの波状攻撃は避けきれないだろう?
 防御ばかりではお前の目的は果たせないはずだ。


 「く…絶て!!」


 …そのバリアじゃない!
 此れだけの厄介な相手にやる事といったら一つだろう…!


 「小賢しい…!」
 『Panzerschild.』


 あのバリアは……漸く気付いたか。
 そうだ、マトモな戦闘で倒せない相手ならそうするしかないな?

 「おぉぉぉぉ!」
 『Break.』


 「…捕らえた。お前も…永劫の闇に沈め…」
 『Absorption.』


 打ち込めば…来たか『吸収』。
 対象を取り込み永劫の夢に捉える捕縛魔法の一種。

 一度捕らわれたが最後、自力で抜け出すのは略不可能の魔法。
 だが…私は此れを待っていた!!



 「ルナ!!」



 なのは…ふ、心配するな。
 此れで秘策の第1段階は完了だ。
 続いて第2段階――その間はなのは達に戦闘を頼まないとな。

 白夜に詳細を送っておこう。
 しばし頼むぞ、皆!








 ――――――








 Side:なのは


 「ルナ!!」


 赤く輝くルナ。
 きっとフルドライブの『トランザム』を使ったんだ。
 目で追えない位の超高速攻撃で闇の書さんを圧倒してたけど、最後の一撃が防がれた瞬間…光の粒になって消えちゃった…!
 何で!?もしかして吸収されちゃったの!?


 『Don't worry Master.Look it.』


 レイジングハート?…白夜の魔導書を見ろって…



 !!此れって!


 「なのは?」

 「如何されました?」

 「…此れを見て!」

 白夜の魔導書を皆に見せる。
 ルナの秘策はもう始まってるんだ!


 「此れは…成程、考えおったわ!」

 「確かにクロハネなら此れもありだね♪」


 開いた白夜のページには簡単な一文があった。
 簡単だけど、ルナが秘策が成功した事を伝えてくれたの。


 “秘策第1段階成功。此れより第2段階に移行する。
  第2段階が終了し次第帰還する――其れまではアイツを抑えておいてくれ…頼む!Byリインフォース・ルナ”



 成功って事は、態と吸収されたんだ。
 なら、今度は私達が頑張る番!…行くよ皆!


 「とーぜん!クロハネが頑張って、僕等が頑張らない道理は無い!」

 「膨大な力を持つ闇の書の意志を我が前に跪かせるも、また一興よ…!」

 「我等が魔導の全てを懸けて抑えて見せましょう。」

 「此処は……絶対に退けない!」


 気合充分!
 ルナが戻ってくるまで、闇の書さんを抑える!
 行くよレイジングハート!


 『All right.My Master.』


 絶対に…退かないんだから!!











  To Be Continued…