――何処かの管理外次元世界


 No Side



 一面砂漠の荒れ果てた大地。
 吹きつける風にすら砂粒が混ざり、其れが酷い不快感を誘う。

 その見た目とは裏腹に気温は低く、下手をすれば氷点下を下回っているかもしれない。


 「…蒐集。」
 『Sammlung.』

 そんな場所で、シグナムは葬った現地生物から魔力の蒐集を行っていた。
 一撃の下に葬れる程度の存在――蒐集できる量は決して多いとはいえない。
 それでも主の為に蒐集を行わない訳には行かなかった。

 「…案ずるな、あの優しい主をお前に喰らわせたりはせん――

 物言わぬ魔導書を手に、シグナムは呟く。
 少しだけ蘇った記憶が、友の悲しさと苦しさを思い出させていた。

 はやての身を護る事とは別に、その記憶がシグナムの蒐集活動を後押ししていた。


 だが彼女はまだ知らない――否、思い出していない
 蒐集こそが『彼女』を苦しめる最大の要因であると言う事を。
 書の完成が主と自分達騎士の終焉を意味するのだと言う事を…


 荒野には酷く冷めた風が吹き荒んでいた…










 魔法少女リリカルなのは〜白夜と月の祝福〜 祝福46
 『鳴り響く聖夜への鐘』










 Side:なのは


 「ほえ?『八神はやて』ちゃん?」

 「うん、前に図書館で会ったの…ちょっと身体の具合が悪くて入院しちゃったんだって。」


 すずかちゃんのお友達の『八神はやてちゃん』。
 入院か〜…大変そうだね?


 「うん…クリスマスも病院になりそうって――退屈すぎて別の病気になりそうとも言ってたかなぁ?」

 「にゃはは…確かに退屈すぎるとね…」

 う〜〜ん…でもクリスマスも病院って言うのは流石にあんまりだと思うなぁ。


 「なんだ、あの小鴉最近図書館でも見かけぬと思ったら入院なぞしおったのか?」

 「小鴉ちん入院したの?う〜ん…心配だなぁ…」


 へ?冥沙と雷華知ってるの?


 「む…言ってなかったか?ジュエルシード事件のあとに街を適当に散策中に会ったのだ。
  容姿は……まぁアレだ我と瓜二つ。違うのは髪留めと髪の色くらいのものよ。後は性格と喋り方だな。」

 「僕はぷれしあのおみまいに行った時に。自販機壊れてて、100円でジュースが3本も出てきたから1本あげた。」


 へ〜〜…って言うか冥沙と同じ容姿って、はやてちゃんが『闇の書』の主なんじゃないのかな!?
 前に言ってたよね、星奈は私、雷華はフェイトちゃん、冥沙は『闇の書の主』をベースにしてるって。
 どうして教えてくれなかったのかなぁ?かなぁ?…怒らないから言ってみようか?


 「ほ、本当に怒っていないのならそのどす黒い『魔王オーラ』を消し去って欲しいんだがのう…」

 「たたた、他意はないよ?あああ、あんまりじょーほーありすぎても良くないってクロハネも言ってたから黙ってただけだよ?」



 「滅茶苦茶必死ねあの2人…」

 「まぁ、ナノハが本気でブチ切れたら都市の1つや2つ軽くなくなりますからね。」

 「流石にそれは……あ、でも否定できないかも…」


 星奈とフェイトちゃん…人を人外魔王扱いしないでくれるかなぁ?
 大体私1人で都市破壊なんて出来ないよ!?私普通の小学3年生だよ!?


 「普通の小学3年生は、話を聞いてもらう為に相手に全力全壊の集束砲をぶっ放したりしないと思いますが?」

 「う゛…」

 そ、其れを言われた何も言えないの…


 「えっと…話を戻して良いかな?」

 「あ、ゴメンすずかちゃん。えっと…それで?」

 「うん。だからね、クリスマスの日にお見舞い兼ねて簡単なクリスマスのお祝いしようかなって思うの。
  騒いだりしなければ病院の個室でもできると思うし。」


 それ良いかもしれないよすずかちゃん!
 皆はどう?


 「良いのではないか?あの小鴉とて賑やかなのは嫌いではなかろうよ。」

 「折角ですからモモコに頼んでケーキを用意してもらうとしましょうか。」

 「皆でプレゼントとか用意しても良いかもしれないわね。」

 「いいね!きっと小鴉ちん喜ぶぞ〜〜♪」

 「それじゃあ、確り準備しないとね。」


 うん、やっぱりこういうのは考えるのも楽しいよね♪
 あ、一応ルナにも相談してみようかなぁ?








 ――――――








 Side:ルナ


 「クリスマスに八神はやての見舞いを兼ねてのクリスマスのお祝い?」

 良いんじゃないか?あの子も喜ぶと思うぞ?


 「そうなんだけど、はやてちゃんて『闇の書の主』なんだよね?その…騎士さん達が…」

 「いや、大丈夫だと思う。幾らなんでも主の前で一般人と一緒の相手を襲うような蛮行はしないさ。
  鉢合わせる可能性は大だが、少なくとも病室内では安全な筈だ。」

 そうでなかったら大変な事になるしな。


 「そっか…なら直ぐに何かって事はないね。それでルナは…」

 「あ〜〜…一緒に行きたいのは山々なんだが――クリスマスに桃子が私を放っておくと思うか?」

 「…思わない。」


 だろう?
 本日確りと通販で届いたよ『ミニスカサンタ』の衣装が……もう、抵抗するのも諦めた…


 「…ルナどんまい。」

 「まぁ、頑張るさ。
  一応桃子には、今関わってる魔法関連の事件がクリスマスの辺りで大きな山場を迎えそうだとは言ってある。
  いざとなったら事情を話して抜けさせてもらうようにする。」

 「うん、お願い。」


 任せておけ。
 お前達は楽しむと良い。

 ケーキも桃子に頼んだんだろう?


 「うん。お母さん凄く張り切ってた。」

 「だろうな。」

 桃子がなのはからのお願い…其れも友達の為にと言われて張り切らない筈が無いからな。





 いずれにしても決戦はクリスマスの夜だ。
 必ず全てを『最良』の状態で終わらせて見せる――必ずな。








 ――――――








 ――
12月25日・海鳴大学病院


 Side:はやて



 今日はクリスマス、なんやすずかちゃんがお友達と一緒に来てくれるそうや。
 病室で退屈なクリスマスを覚悟しとったから此れは正直に嬉しいなぁ♪

 すずかちゃんのお友達てドナイな子やろ?楽しみやで。


 ――コンコン


 「あ、どうぞ〜。」

 「こんにちわ、はやてちゃん。」

 「すずかちゃん〜。いらっしゃいや。」

 待ってたで♪
 と、一緒に居るんが……って王様も一緒なん!?


 「何を驚くか小鴉、我とすずかも友であるぞ?なれば我が来ない筈がなかろう?」

 「へ?王様とすずかちゃんがお友達言うのは今初めて聞いたんやけど?」

 「当然であろう、今初めて言ったのだからの。」


 うわお…流石は王様や。
 其処にシビレも憧れもせえへんけどね?


 「にゃはは…冥沙はこれが標準だから。うん、はじめまして高町なのはです。よろしくねはやてちゃん♪」

 「貴女がなのはちゃんか〜。王様のお姉さんやってね?八神はやてや、宜しくな?」

 「うん♪」


 ものごっつ優しそうな子やね。


 「高町星奈です。以後お見知りおきをヤガミ・ハヤテ。」


 星奈ちゃんか…なのはちゃんそっくりやな?
 雷華ちゃんも入れて、高町さんは4つ子みたいやけどなのはちゃんと星奈ちゃんは一卵性なんやろな。


 「そうなりますね。ですが順番的に、なのは、冥沙、私、雷華の順で生まれたので冥沙は姉というわけです。」

 「意外とややこしいな〜。雷華ちゃんとは前に会ってるな?」

 「うん!あれ、僕名前名乗ったっけか?」


 石田先生に教えてもろたんよ。
 私のこと『小鴉』言うてたから王様の関係者かなぁって思ってな?


 「そうなんだ。うん、改めて宜しく!」

 「こちらこそ♪」

 「えっと…フェイト・テスタロッサです。宜しく…」


 フェイトちゃん…雷華ちゃんそっくりやな?
 私と王様みたいに他人の空似?…てか殆ど双子やろ…


 「えっと…似てるだけだよ?」

 「せやろな。性格全然違うみたいやもん。」

 フェイトちゃんは大人しい感じやしね。
 ま、宜しくたのむで♪


 「最後はアタシね。アリサ・バニングスよ。とりあえずメリークリスマス、はやて♪」

 「え…これ、プレゼント?」

 「そうよ〜。皆で選んだの。受け取ってくれる?」

 「勿論や!ありがたく頂くわ〜〜…まさかプレゼントがあるとは思わなかったわ。」

 「それだけではないぞ小鴉?ナノハ…」

 「うん。ケーキもあるんだ。お母さんに頼んで作って貰ったの♪」


 ケーキまで!?
 しかもなのはちゃんのお母さんのケーキ言う事は、此れは噂に名高い『翠屋』の絶品ケーキ!
 なんや、皆で嬉しいサプライズ用意してくれるなぁ…退屈で終わりそうやったクリスマスが一気に色づいたで。

 ありがとうな?


 「友達だもん、当然だよ。」


 そか。
 それでも、やっぱりありがとうやで♪








 ――――――








 Side:なのは


 「それでね〜」

 「ホンマに?其れは凄いな〜〜♪」


 皆すっかりはやてちゃんと仲良くなった…良かった〜〜。



 其れとは別に闇の書はやっぱりあった…本当にはやてちゃんが持ち主なんだね。


 「失礼します。」


 ん?
 誰だろう?


 「あら、皆いらっしゃい………!!!」
 「!!!」


 「「「「「!!!!!」」」」」



 騎士さん!
 ヴィータちゃんも!!


 「ん!!!」


 ――バッ!!


 「ん〜〜〜〜…!!!」


 ヴィータちゃん!?
 …あ、はやてちゃんを護ろうとしてるんだ…


 「ちょ、待ちやヴィータ。お客様にどんな対応やねん?」

 「だ、だってはやて!!」


 えっと…はやてちゃんは事情を知らない訳だから…

 「はじめまして…だね?」

 「私達、何もしないよ?」


 フェイトちゃんナイスなの!


 「…ヤガミ・ハヤテ、彼女達は貴女のご家族でしょうか?」

 「まぁ、そやな。厳密には外国に住んでた親戚なんや。今は一緒に暮らしてるんやけどね。」


 星奈更にナイスなの。
 えっと…それで、そんなに睨まないでほしいんだけど…


 「睨んでねーです。元々こういう顔なんです。」

 「こらヴィータ…もう、しゃーないなぁ。」

 「にゃはは…」

 ほんと、しょうがないかなぁ…ヴィータちゃんにしてみれば蒐集の邪魔した『敵』が居るんだもんね。
 でもまぁ仕方ないかな…あの、お見舞いは続けてもいいですよね?


 「あぁ、構わん。シャマル、皆のコートを…」

 「えぇ。さ、こっちにかけて置くわね?」


 流石なの。
 はやてちゃんに気取られないようにしてる。


 「なぁ、赤毛〜。」

 「あ?あんだよ!」

 「ほい。」(ポイ)

 「え?」(パク)


 雷華?
 え〜と、何したの?


 「ケーキに乗ってたメレンゲのトナカイ放り込んでみた。どーだ?美味しい?」

 「ムグムグ…うわっ何だこれギガウメェ!!」

 「美味しかった?それじゃあドンドン食べよう!」

 「おう!!」


 雷華…最大級にGJなの!


 「ヴィータよ…」

 「大目に見てやれ剣騎士。桃子の料理の『味力』に抗えるものなどこの世に存在せぬわ。」

 「其れは又、凄い話だな。」


 にゃはは…取り敢えず、此れならアリサちゃんとすずかちゃんが帰るまでは大丈夫だね。





 その後は気が抜けないけど…



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・



 「じゃ〜ね!」

 「またね、皆。」


 うん、バイバイすずかちゃん、アリサちゃん。
 2人はアリサちゃんの迎えの車で先に帰ってった。




 …此処からが本番なの。




 2人を見送って皆で屋上に。
 此れは…結界が既に張られてるのかな?


 「通信阻害が主な理由だがな………さて、如何する?」

 「…闇の書の完成はどうしてもしなければならんですか?」

 騎士さん達は記憶の大部分を失ってるってルナは言ってた。
 だから自分達が最終的に蒐集される事になっても書の完成を目指すんだって。


 「主の命を救うためには書の完成が必須なのだ。」

 「だから、邪魔はさせない。どうしても邪魔をするって言うならはやてちゃんのお友達でも…!」

 「ち、違うんです!闇の書は完成させたら…貴女達は!」


 そうだよ、フェイトちゃんの言うように騎士さん達は!!


 「お前達が此れをどう罵ろうと構わん…だが、我等は退く事は出来ん!」

 「だからそうじゃなくて!!」

 「ふん…この石頭めが!自ら破滅を選ぶか虚けが!」

 「好きに言え……最早聞く耳もたん!」


 騎士さん…あれ?そう言えばヴィータちゃんは?


 「うらぁぁぁぁぁ!!!ぶっとべぇ!!」

 「!?」

 行き成り!?
 奇襲のタイミングを狙ってたんだ…!レイジングハート!


 『Protection.』


 防いだけど…凄い力!
 此処は自分から飛んだ方が…!!レイジングハート、バリアジャケットを!


 『All right.Barrier Jacket Set up.』


 「おらぁぁ!!」



 ――ガシャァァン!!!…ドォォン!!!



 「「「ナノハ!」」」
 「なのは!!」



 凄い力だなぁ…衝撃で爆発炎上。
 バリアジャケットが無かったら危なかったかも…


 「…邪魔すんなよ。もう少しで終わるんだから邪魔すんじゃねぇ!!」


 …ゴメン、其れはできないよ。
 全部、最高の状態で終わらせなきゃ駄目だから…


 「何と無傷か?相変わらず恐ろしい防御力よ…」

 「うん、大丈夫。」

 こんな事でやられてられないから。


 「…悪魔め…!」


 ヴィータちゃん……良いよ、悪魔でも。

 「話を聞いてくれるんなら悪魔だって良い!」

 「ほざくんじゃねぇ!コノヤロォォォォォォォ!!!!!」


 戦いは…もう避けられないね。
 …星奈は私と一緒にヴィータちゃんを!
 フェイトちゃんと雷華はシグナムさんをお願い!
 冥沙は広域魔法メインで双方を援護!


 「了解しました。」

 「分った…頑張ろう、雷華!」

 「うん!ナノハに任されたんだもん、絶対負けないモンね!」

 「ふ、任せておけナノハ。」


 皆お願い!








 ――――――








 Side:ルナ


 「!!」


 この感じは…!
 始まったか!
 すまないが桃子、此処で上がらせてもらう!


 「あら…うん、分ったわ。後は美由希に頑張ってもらいましょう。予備のサンタの衣装もあるしね♪」

 「…用意していたのか?」

 「勿論♪…けど気をつけてね?必ず戻ってきて。」


 当然だ。
 皆で戻ってくるさ――行ってくる!


 の前に…

 「其れでは店内の皆様、これよりサンタクロースの私は子供達にプレゼントを配る為に出発いたします。
  店内は新たなサンタに任せますので、この聖夜をごゆっくりお楽しみ下さい。」

 きちんと挨拶をしないとな。



 此れで良し!
 改めて行ってくる!


 「えぇ、行ってらっしゃい♪」


 裏口から出て即時に騎士服を展開――ブライトハート!


 『All right.Standby, ready.Set up.』


 よし、問題ないな。

 いよいよ最終決戦だ……ナハトの呪いも『リインフォース』の悲しみも全て私が、私達が砕いてみせる!
 行くぞ!!












  To Be Continued…