Side:リインフォース


我が主達がこの場に来るかもしれないとの事だが、私は如何すれば良いのだ神とやら?
この球体状の何かに覆われている以上は私自身が何かできるとは思わないが……幾ら何でも窮屈なので、出来ればもう少し身動きが出来る
様にしてほしいのだが……



「其れは無理だ。
 だが、奴等が力を示したのならばお前を解放すると約束しよう――安心しろ、我等の様な存在は嘘を吐く事が許されていない故、土壇場で約
 束を保護にしたりはしない。」

「俄かには信じがたいが、お前が嘘を言っているとも思えないからな……信じてみる事にするよ。」

「そうしてくれると助かる。
 だが、お前には少しばかり眠って居て貰うとしよう――お前が起きていたのでは、奴らの力を見定める事は難しいだろうからね。
 だから、暫しの間眠りにつけ、誰よりも優しく気高き魂よ。」



え?……此れは、強烈な、抗う事も出来ない睡魔?……私が屈するとは、如何やら神とやらは相当な力の持ち主なのは間違いないだろうね。
でも、それでもきっと我が主ならば、其れを超える事が出来る筈だ。

主だけならば辛いかも知れないが、騎士達に小さな勇者とその仲間達が集えば、其の力は神をも凌駕する筈だ……だから、信じていますよ我
が主。

願わくば、もう一度貴女に仕える事が出来るよう――










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE72
『Lady to Darksilver』










Side:志緒


さてと、鍵をフルコンプリートして、はやての自宅前に戻って来たんだが、虹色のゲートは相変わらずみてぇだな?通常の異界ゲートとは違って
飛び込む事が出来ねぇのも相変わらずか。

だったら、鍵を開けて入るしかねぇよな?



「せやな。鍵はすべて集めたで!通らせてくれるんやろ!!」


――ガシャン


と、はやてが5個の鍵をゲートに捧げた瞬間に、鍵が外れる音がしやがった――って事は、此れでゲートを通過する事が出来るようになったっ
て訳だ!
なら行くしかねぇだろ?覚悟は良いな、お前等!!



「全力全壊!準備ばっちりです!」

「僕もおっけーだよ!なにがまっていようとも、立ちふさがるやつはぶっとばす!」

「覚悟なんざ、とっくに決めてるっすよ志雄先輩!!」

「そうそう!一度決めたなら後は突っ走るだけでしょ?カーテンコールまでがステージだから、最後までばっちり行かないとね♪」

「我等騎士達も何時でも行けるぞ高幡。」



怯む奴はいねぇか……マッタク持って頼りになる連中だぜ――尤も、だからこそ俺もこいつ等と一緒に居る事を心地良いって感じてるんだけど
な……そんじゃあ一丁行くぜ!!



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・・・・・・・・・・・・・・・

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・・・



んで、飛び込んだゲートの向こうには、何とも言えない神々しい世界が広がってたもんだ。
迷宮になってないってのは、倉敷を取り戻した時の異界と同じだが、あの時の異界が東洋的な聖域だとしたら、こっちは西洋的な聖域って所だ
な?……微妙に玖我山の時の神殿の最深部に似てる気がしなくもねぇ感じだ。

此処までの状況が倉敷の時と略同じって事を考えると、この空間内の何処かにアイツが居る筈なんだが……



「ん?な~~~~んかみえるぞ?……あ~~~~!はやて、アレ見てアレ!」

「フェイトちゃん?……アレは!まさか……リインフォース!!」

「アハハ……本当にあの子だ。本当に、此処に居たんだ。」



居たか……カプセル状の封印の中で膝を抱えて眠るアイツ――リインフォースが。夜空の彼方に消えちまったかと思ったら、こんな所で眠って
いやがったとはな。
2、3発引っ叩いて目ぇ覚まさせてやりてぇところだが、恐らくそんなモンじゃ起きねぇだろうし、そうは問屋が卸してくれねぇんだろうぜ。







「参ったか。」







「……やっぱり現れるよな。栞の時と同じなら、此処の守護者が居るだろうって予想はしてたけどよ。」

「杜宮では九尾の白獣が現れましたけど、海鳴では一体どんな存在が現れるんでしょうか?……既に、凄い力を感じますけれど……」

「さぁ?青眼の究極竜でも出て来るんじゃないの?」

「いやいや、祐騎さん、そないなモン出て来たら幾ら何でもヤバいんとちゃう?
 攻撃力4500が出て来たら流石に――って、なのはちゃんとフェイトちゃんと志雄さんが居れば何とかなるか?シグナムも志雄さんと組むとメ
 ッチャ強くなるからなぁ?」



……俺となのはとフェイトはトコトン人間扱いされてねぇなオイ?
これでも人間の心算なんだが……まぁ、其れは今は黙っておくか。――さて、さっさと姿を現せよ、聖域の守護者さんよ?居るんだろ、此処に。



「ふふふ、良くぞここまで辿り着いたものだ――この聖域に人間が足を踏み入れるなど、一体何百年ぶりだろうか?
 或は、既に1000年以上経っているのやも知れぬ。」

「へ?」

「白髪に蒼眼の女性?」

「こいつは、流石に予想外の奴が出て来やがったな……お前が、此処の守護者か?」

「如何にもその通りだ。
 私は、この海鳴の地を、海鳴と言う名が付く前から守護していた聖域の番人……悠久の時を生きる存在――そして、時にこの地に生きる者
 達に力を貸して来た……人々は其れを『奇跡』と言っていたか。」

「奇跡を起こせる存在――つまり、貴女は神様なんですか?」

「そう呼ばれた事もあった……既に、本当の名を思い出す事など出来んがな。」



矢張り神格の存在か。――だが、此奴から感じる力は、九尾の白獣すら上回ってるのは間違いねぇ。
まぁ、どうせ此奴とは戦う事に成るんだろうが……其れにしたって、何だって夜空に消えた筈のリインフォースが此処に居る?アイツは完全に
消えた筈だぜ?



「そうだったのだが、彼女の魂は余りにも純真にして無垢だった――幾多もの世界を終わらせてきたとは思えないほどに。
 私はずっと探していたのだ、悠久の時を私と共に生きる存在を。彼女の魂は、その相手に相応しい……此処まで無垢な魂を私は知らない。
 だが、そう思っていた所で、あの小さき存在が私に待てと言ってきてな……お前達が此処に来るのを待っていた。
 一体どんな奴等が来るのかと思っていたが、待っていた甲斐が有ったと言う物だ……私の力の一端を受け継ぐ者が居たのだから――高幡
 志雄、そして高町なのはよ。」

「え?」

「なんだと?」

リインフォースが此処に居る理由は倉敷の時と殆ど同じだから良いとして、俺となのはがお前の力の一端を受け継いでいるってのは一体如何
言うこった?
其れに、なのはは兎も角、俺は別次元の人間だぞ?其れがお前の力を継いでいるって……



「私は、嘗て神と称された存在であり、この場所は次元の狭間……つまり、ありとあらゆる次元に干渉できる場所でもある。
 悠久の時を生きる中で、私は私の中に堪り過ぎてしまった力を消化する為に、この身に収まり切らない力を人に譲渡して来た――その譲渡
 先が、今回は次元を超えて高幡志雄と高町なのはの2人になっただけの事。
 高町なのはの途轍もなく巨大な魔力と、高幡志雄の頑丈な身体と圧倒的な腕力は私の力を受け継いだ影響だ……尤も、此処までの物にな
 ったのは、お前達の不断の研鑽が有ればこそだけれどな。」

「あ~~……僕はすっごくなっとくした!
 ぜんぜんしろーとだったなのはが1ヶ月ちょいで僕に勝てるようになるのはおかしーし、なによりもあのしゅーそくほーのいりょくはありえないっ
 てかんじだったもん。」

「俺も納得だな。
 志雄先輩の強さは本気で同じ人間かって思った事があるし、其れ以前に生身でエルダーグリードとやり合うとかマジあり得ねぇって感じだぜ。
 今の今まで言わなかったけど、志雄先輩、インチキ能力も大概にしろぉ!!」



時坂、安定の中の人ネタだな……って、何言ってんだ俺は?
しかしまぁ、俺となのはがお前の力を継いでるとはな……しかも、次元を超越してる存在だから、其の力が多次元に振り撒かれても不思議はね
ぇと来たか……なら、俺はアンタに感謝しないとだな?
俺はこの力があったから、一馬と共にBLAZEを結成する事が出来たんだからな。



「私も感謝します。この力が無かったら、私はジュエルシード事件の時に何も出来なかっただろうし、フェイトちゃんとお友達になれなかったと
 思うから。」

「その心もまた強かったか……私の力を譲渡して正解だった。
 ふふふ、其れでは見せて貰おうか汝達の力を――先の催事を乗り越えた力を見せて貰うぞ。力を示す事が出来たのならば、彼女の魂はお
 前達に返してやろう。魂の器と一緒にな。」



だが、其れは其れとして、戦う事は避けられねぇみたいだな?
尤も、最初からそうなる事は予想してたし、はやてだってこの期に及んで怯むなんて言う事は全く無いみたいだからな……俺達の全力をテメェ
に叩き込んでやんぜ!

女相手とはいえ、悪いが本気で行かせて貰うからな?



「本気で来い。そうでなくては私を倒す事は出来ん。
 ふふふ、真の姿を解放するなど、一体どれ程ぶりか……精々、私を失望させてくれるなよ、私の力を受け継ぎし者達と、その仲間達よ!!」


――轟!!


此れは……此奴、姿が変わりかがった――其れが本当の姿って事かよ!!



「三つ首の青い目の白龍……青眼の究極竜とは姿形が違うけど、パワーは其れに匹敵するかそれ以上なんじゃない?
 て言うか志雄先輩となのはの力の根幹に居る存在なんだから、そのパワーってすさまじいの一言でしょ?それ以外にはあり得ないって!!」

「だよなぁ……まともにやりあったら可成りヤバいんだけど――でも、退く気は無いんだろはやてちゃん?」

「勿論やで洸さん!
 消えたと思ってたリインフォースを取り戻す機会を得たんや、誰がそのチャンスをふいにするかい!何が何でも、守護者に力を示してリインフ
 ォースを取り戻したるわぁ!!」



そう来なくちゃな!
アイツが揃ってこそ、真のエンディングってもんなんだからな!――アイツを取り戻して、最高のハッピーエンドを得るためにも、一丁やってやろ
うじゃねぇか?

テメェが俺となのはに譲渡した力が、テメェに牙を剥くぜ?

「ぶっ倒す!!」

「叩きのめします!!」

「ぶっころーす!かくごしろー!!」



悪いが、手加減なんて器用な事は出来そうにねぇんでな……精々覚悟しておきやがれ!
俺達はテメェを打っ倒して、あそこにいるリインフォースを取り戻してやる!!必ずな!!!











 To Be Continued…