――異界迷宮:祝福の神殿


Side:璃音


鍵集めって事で、今度は海鳴マリンタワーのライブハウスでサーチした異界迷宮を攻略中なんだけど……ぶっちゃけアタシ達居なくても良かった
んじゃないの洸君!?
志緒先輩は言うに及ばずだけど、其れと同じ位になのはちゃんとフェイトちゃんが持ってってるよね此れ!?



「その意見には諸手を上げて賛同するけど、だからって俺達が参戦しない理由は無いだろ璃音?
 確かに志緒先輩となのはちゃん、そんでもってフェイトちゃんのトリオは最強にして無敵かも知れねぇが、あの3人以上の敵が現れないって言
 う保証はねぇんだ……そん時には、俺達の力も必要になるだろ?」

「その理屈は分かるけど、そんな事態って起きそうにないんだけど?」

「……まぁ、そんな事態は起きないなら起きないに越した事はねぇって事で。」

「最終的にはやっぱそこに落ち着くんだ……」


「まぁ、仕方ないわよ璃音さん。
 高幡先輩は勿論として、なのはちゃんとフェイトちゃんもハッキリ言って途轍もないレベル――其れこそ、ネメシスで直ぐにでも戦力になるかも
 知れない実力なんだから……」



其れってマジなの明日香?……だとしたらなのはちゃんとフェイトちゃんはマジでハンパ無いっての!!
此れは、若しかしなくても栞の時よりも鍵を集めるのは楽かも知れないわ。……尤も、鍵を集めた先の『試練』に関しては楽勝とは行かないかも
知れないけどさ。

とにかく今は、全力でイケイケどんどんだね!










リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE71
『兎に角鍵を集めるべし!!』










Side:志緒


海鳴マリンタワーのライブハウスに発生した異界……比較的高レベルのグリードがうろついてたが、10S級を倒した俺達の前では雑魚以外の
何者でもなかったな。
なのはの砲撃が殆どのグリードを蹴散らし、魔法無効の障壁を纏ってるグリードは俺とフェイトが物理的に打っ潰してやったから、最深部までは
苦労せずに辿り着けたって所だな。

尤も、最深部に現れたエルダーグリードすらも、ハッキリ言って敵じゃなかったがな。
学園を異界に変えた魔女に匹敵する力を持っていたが、その程度は俺達にとっては『過去の脅威』でしかねぇ……アレからレベルを上げていた
俺達と、魔女の亜種じゃ覆せねぇ差が有るってモンだ!――バッチリ撃退して、そんでもって新たなカギをゲットしてやったぜ!!



「これで、残るは2つやな……けど、1個は異界攻略で手に入る言うても、残りの1個はどうやって手に入れんねん?
 人と人との絆を紡いでって事やったけど、其れってめっちゃ漠然としとるやん?此れって言う正解がない上に、誰と誰の絆を紡げばいいのかも
 分からへん――ある意味で八方塞がりやないか此れ?」

「まぁ、そうなんだが……一概にそうと言う事は出来ねぇかもしれねぇぞ?――今し方、士郎さんからメールが届いたもんでな。」

「お父さんから?一体何のメールなんですか志緒さん。」



え~とだな……どうやら、今日は士郎さんの実家である不破家の方から不破家の現当主が来るらしいんだが、約束の時間になっても来ないか
ら、探してくれないかって事だ。
ご丁寧に不破家の当主様の顔写真付きでな……だが、そう言う事なら探す以外の手はねぇよな時坂?



「其れは……そうっすね志緒先輩。
 此れは、栞の時のアレとシチュエーションが似てないって言えなくもないっすからね。」

「そう言うこった。
 先ずは聞き込みと行こうぜ?件の人は、県外から電車で来るって事らしいから海鳴駅周辺で誰か姿を見て居るかも知れねぇからな?」

「ですね。
 其れに、海鳴って地域の繋がりが強い場所ですから、普段目にしない人が居たりしたら、ちょっと見ただけでも案外覚えている場合もあります
 から♪」

「よっしゃー!さっそくききこみかいしだーーーー!!」

「たはは……元気やなぁ、フェイトちゃんは。」



まぁ、元気がコイツの取り柄だからな。
寧ろ、フェイトが元気じゃなかったら一体何があったのかって、周囲が慌てちまうレベルだろ間違いなく。だから、コイツは此の位がちょうど良い
ってモンなんだ。

そんじゃまぁ、駅周辺で聞き込みだ。










――んで、駅に移動して聞き込み中だ。少し待ってな。









さてと、意外と目撃者が多かったが、如何やら件の人は海鳴マリンタワーに行ったみてぇだな?もしかすると、ライブハウスの異界を攻略した俺
達とすれ違いになった可能性があるかも知れねぇか。
なら、もう一度マリンタワーに行かないとだが……オイ、この空間の裂け目は一体なんだ?



「シャマルの旅の鏡やで志緒さん♪
 もう一回マリンタワーまで行くのもしんどいから、シャマルに連絡してタワーまでの最短距離を繋いでもろたんよ?此れなら速攻で目的に到着
 出来るやろ?」

「だとしても、見られたら色々やべぇだろ此れは?」

「心配ご無用!旅の鏡使う場合は、これまたシャマルが結界張ってるから私等の事誰も気付かへんのや。」

「ったく、抜け目ねぇなお前も。」

だが、其れなら問題ねぇ。時間の短縮にもなるからな――で、裂け目通り抜ければマリンタワーの展望台か……本当に便利だな旅の鏡は。
さてと、不破家の現当主様は……居た。
よし、ミッション開始だな?――先ずは時坂、お前のターンだ。



「了解っす志緒先輩。
 ――スンマセン。あの、不破家の当主の方っすよね?」

「む?確かにそうだが、君は?」

「俺、時坂洸って言います――高町士郎さんに頼まれて、貴方を探してたんすよ。士郎さん、待ってるみたいっすよ?行かなくて良いんすか。」

「良くは無いんだが、今更どうやって士郎君に顔を会わせたモノかと思ってね……彼の剣士としての道を潰したのは私だと言うのにな?」



ん?…コイツは如何やら何か事情があるみたいだが、アンタが士郎さんの剣士としての道を潰したってのは如何言う事か聞かせて貰えるか?



「お父さんの剣士としての道を潰したってどういう事ですか!場合によっては、私は貴方を許しません!!」

「……君は?」

「高町なのは――高町士郎と高町桃子の娘です!!!!」

「君が!……顔立ちは桃子さんにそっくりだが、その強い意志の籠った瞳は士郎君にそっくりだな――そうだな、娘の君には知る権利がある。
 士郎君はとても優秀な剣士でね。其れこそ不破家始まって以来とも言われる腕前で、不破流と御神流の双方を極めた上に、恭也君と言う息
 子が居た……死んでしまった前妻との間にだがね。
 前妻亡き後には、美由希君をも引き取って育てて剣士としての才能を開花させたのだが……此れからと言う所で、桃子君と結婚すると言い出
 してね……私は其れを認められなかった。認めたくなかったのだよ。
 こう言っては何だが、前妻と士郎君との結婚は家を存続させるためのモノで、其処に愛情は無かっただろう――だが、桃子君と結婚すると言
 った士郎君は、本当に彼女を愛しているのだと思わされた。
 だからこそ、私は反対した――この女性は士郎君の剣の腕を鈍らせてしまうのではないかとね。
 其処で、剣か彼女かを士郎君に天秤にかけさせたのだが……彼は迷うことなく彼女を選び、剣を捨てた――私は、私の勝手な思い込みで士
 郎君の剣士としての未来を潰してしまったのだよ……桃子君と共に歩みながら剣の道を進む道もあったというのにね。
 彼の未来を潰した私が、今更どの面下げて彼に会えようか――いっそ、このまま会わずに去ってしまった方が良いのかも知れないと思うよ。」



成程な、この人にはこの人の事情ってもんがあったって訳か。
だがな、だからこそアンタは士郎さんに会うべきなんじゃねぇのか?少なくとも、士郎さんはアンタの事を恨んでるなんて事はない筈だ――だっ
て、士郎さんは今の生活を心底楽しんでるみたいだからな。
其れに、今会わなかったら、アンタは後悔しちまうんじゃねぇのか?



「君は?」

「血は繋がってねぇにも拘らず、士郎さんに家族として迎えられてる果報モンすよ――士郎さんは、アンタを恨んでなんかいねぇよ絶対に。」

「……君が?――そうか、ならば私も覚悟を決めるべきなのだろうな。
 何よりも、士郎君と桃子君の間に、こんなに良い子が生まれていたというのならば、2人が一緒になったのは間違いではなかったのだから。」



まぁ、そう言うこったからな。
行こうぜ?士郎さんが待ってるぜ。



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・・・



んで、翠屋に連れて来た訳なんだが――



「先ずは謝らせてくれ士郎君……10年前の私は君の事などまるで考えていなかった――不破と御神の存続しか考えておらず、君と桃子君の
 事を認められずに、君に二者択一を迫り、結果として君の剣士としての道を潰す事に成ってしまった。
 今更謝って済むとは思わないが……すまなかった。」

「顔を上げて下さい――僕は、貴方を恨んでなんていませんから。
 逆に感謝しているんです。貴方があそこであぁ言ってくれなかったら、僕はきっと迷って桃子を傷つけてしまう結末を選んで居たかも知れない
 んですから。
 其れに、確かにあの時を境に僕の剣の道は途絶えましたけど、僕が途中で終わらせた道は、恭也と美由希が引き継いでくれています……だ
 から、此れで良かったんですよ。」

「そうか――ならば、一つだけ聞かせてくれ。士郎君、君は今幸せか?」

「幸せですよ、とても。
 これ以上の幸せを求めたら罰が当たると言う位に。」

「そうか。」



如何やら士郎さんと、不破家当主様の顔合わせは巧く行ったみたいだな?
不破家の当主様には、士郎さんの剣士としての未来を奪ったって事に対しての負い目があったみたいだが、士郎さんは其れに対しての遺恨み
たいな物は全くねぇ訳だからな――ある意味で毒気を抜かれちまったって所なんだろうな。



「士郎君と桃子君が元気にやっている様で安心したよ。
 やはり私は、此処に来るべきだったのだね――其れを、僅かな臆病心から避けようとしていたのだが、背中を押してくれた君達には感謝して
 もし切れない――ありがとう。」

「礼なんて……顔を上げてくれよ。俺達は、礼が欲しくてやった訳じゃないからな。」

「私達は、私達のやりたいようにやっただけですから♪」

「だが、其れでも礼をさせてくれ――とは言っても、君達は譲らないだろうから、此れを受け取ってくれるかな?
 此方に着いた時に駅で拾ったものなのだが、生憎と私には此れが何なのかは分からないからね。」



!!これは……夜天の鍵!
まさか、本当に此処で入手できるとは思わなかったぜ――入手できれば儲けモンと思ってたからなぁ?此れは嬉しい誤算だぜ、色々とな!!
これで、残るカギはあと一つだ――必ず揃えてやるぜ、アイツの為にもな!!

残るは海鳴温泉だ!!!
全ての鍵を揃えて、アイツをもう一度はやての傍に持って来る!!!――最後の鍵も、必ずゲットしてやんぜ!俺達なら出来る事だからな!!








――――――








Side:???


ヤレヤレ……まさか数百年ぶりに動く機会が訪れようとはマッタク持って予想外だ――此れも、或は『彼女』が願ったからこそなのかは分からな
いけれどね……

だが、此方には間違いなく途轍もない力を持った者達がやって来るだろう、全ての鍵を集め、この神域に乗り込んでくるだろう――ならば私は、
鍵を開いて此処に入って来た者達に対して試練を与えてやるとしよう。

お前達が『彼女』を取り戻すに相応しいか、見極めさせて貰うぞ――高幡志緒、高町なのは、我が力の一端を受け継いだ者達よ。











 To Be Continued…