Side:志緒


8年前になのはが落とされたってのは聞いたし、その時に瀕死の重傷を負ったって事も聞いたが、どうやって生き延びたかまでは聞いてね
ぇから、その辺の事を聞かせて貰うぜスカリエッティ?
なのはにメンテナンスが必要だってのも、気になるからな。



「うむ、勿論全てを話させて貰おう。此れから仲間となる相手に対して、隠し事をしていると言うのは、不義理極まりないからね。」

「ほう?マッドかと思ったら、義理は理解してるってのか?驚きだぜ。」

「ふふふふふ、私を甘く見て貰っては困るよ志雄君!
 確かに私は、自他共に認めるマッドサイエンティストだが、しかし理性は失っていない――善たるモノではないが、最高評議会と比べたら
 充分に理性的さ。」

「みてぇだな。」

だからと言って、テメェがマッドなのは変わらなぇがな。
――まぁ、無関係な輩に要らんちょっかいを出す事は無さそうだから、其処は安心しても良いのかも知れねぇけどよ……


取り敢えず聞かせて貰うぜスカリエッティ?
テメェが一体どんな方法でなのはを助けたのか――そんで、なんでなのはがメンテナンスをしなきゃならない体になっちまったのか、全て
を洗いざらい吐いて貰うぜ?
事と次第によっちゃ、テメェをブッ飛ばす事になるかも知れねぇけどな!!













リリカルなのは×東亰ザナドゥ  不屈の心と魂の焔 BLAZE120
『なのはの秘密と動き出す世界』











Side:スカリエッティ


……其れは何ともお断り願いたいねぇ志緒君。――君の拳を真正面から真面に喰らったら、流石の私でもモザイク判定になるのは避けら
れないからね?
尤も、君達には話す心算で居たから問題ないのだが……此れから話す事は他言無用で頼むよ?――この事実が表沙汰になったら、間
違いなく世界は混乱に陥り、要らない争いが起こるだろうからね。

約束してくれるかい?



「当たり前だ。約束しねぇ理由がないしな。」

「ふむ、助かるよ。」

なのは君を助けた方法だが――否、その前になんで私がなのは君を助けたのかを話した方が良いだろうね?こう言っては何だが、君達
も、私がなのは君を助けた理由が分からないだろう?



「全然分かんない。」

「アンタが悪の組織のドクターだったら、手駒にする為に改造手術ってのもあるけど……」

「流石にそうではないと思いますから。」



改造手術か……言い得て妙だが、私がなのは君を助けたのは、純粋に最高評議会に対抗するための戦力が欲しかったからさ。
私は、今のなのは君と同じ歳の頃から科学者をやっていて、興味本位で管理局のサーバーにアクセスしてみたら、最高評議会と言う存在
を知ってね――いやはや、ハッキングしといて言うのもなんだが、呆れた連中だったよ。
自らの保身と富しか考えていないトップと、其処から甘い汁を吸おうと言う浅ましい連中の集まり――こんな連中が居たのでは、管理局が
腐敗するのは目に見えていたから、其れを如何にかしようと思ってね。
幸いな事に、娘達が可成り高い力を持った者に成長してくれたが、其れでも最高評議会とやり合うには足りなくてね?……如何しようかと
思っていた矢先に、ジュエルシード事件と、闇の書事件を解決した魔導師の事を知ったのさ。
本当ならば直ぐにでもスカウトしたかったのだが、余り表立って行動してしまうと最高評議会に目をつけられてしまうから、機を伺っていた
のだよ……そんな矢先に、あの事件だ。
こう言っては何だが、あの事故は私にとっては有り難い事だった。辺境の地で起きた事ゆえに最高評議会にバレる事無くなのは君に接触
する事が出来たし、結果的には最強クラスの戦力を手に入れる事が出来たのだからね。

では、本題のなのは君の事と行こうか?
なのは君を助けた方法だが、恐らく予想はしてるだろうが、単純に外科的な手術をして治したと言う訳じゃあない。と言うか、アレだけの重
傷を負った上に、極寒の地で傷口が凍傷にも罹っていたから普通の手術では助けられなかっただろう。
では何をしたのかと言うと……攻撃を受けて致命的なダメージを負った内臓器官を、全て『生体CPU』と入れ替えたのさ。



「「「「「「「生体CPU?」」」」」」」

「機械を直接身体に入れるのは拒否反応が出る可能性があると言う事で、表面を培養した生体組織で覆った人工臓器の事さ。」

将来的にはドナーに頼らない臓器移植の方法として研究されていたものだが、其れをなのは君に使ったのだよ。
なのは君の場合は、左の肺と右の腎臓と膵臓、そして右の眼が生体CPUに入れ替わっている――其れだけではなく、皮膚も全体の10%
は、彼女の皮膚組織から培養した人工皮膚と入れ替えてあるからね。
ただ、人工皮膚は兎も角として、生体CPUはまだ研究段階の代物でね……日常生活を送る上では問題ないが、戦闘行為を行うとなると話
は別だ。
特になのは君の様な凄まじい魔力を有している魔導師は、戦闘の際に身体にかかる負担が大きく、その負担が生体CPUに与える影響は
決して小さなモノではない――下手をしたら、その負担で生体CPUが壊れてしまう危険性だってある。

無論、そうならない様に安全対策は講じてあるが、それでも戦闘可能な時間は15分だし、戦闘行為を行った後は、専用のポッドで生体CP
Uのメンテナンスが必要になるのだよ。



「生体CPU……其れがなのはの制限時間と、メンテナンスの理由か……」

「だが、悪い事ばかりではない。
 生体CPUを組み込んだ影響か、なのは君の魔力は15分の制限時間と引き換えに60%アップした。此れは予想外の結果だったよ。」

「さっすがなのはちゃん、転んでもタダでは起きないよね。
 でもさドクターさん、なのはちゃんの出力が60%も上がったら、負担は更に増えたんじゃないの?」



うむ、その通りだよ璃音君。
だからこそ私は、彼女のデバイスであるレイジングハートを修復する際に、使用者の負担を軽減する機構を追加し、なのは君の負担を減ら
す為の道具も開発したのだよ。
バイザー型のアイマスクもその1つさ。
アレは単に素顔を隠すだけのじゃなく、裏には光学モニターが搭載されていて、なのは君の視覚を補助していると同時に、魔法使用時の
負担を80%軽減する機能を持っている訳だ!!

まぁ、それ等には次々と手を加えて、性能を向上させているから、なのは君の制限時間はもっと長くなるだろうし、メンテナンスの度に生体
CPUも外部操作で機能を向上させているから何時かは制限時間も無くなる筈さ。

以上がなのは君を助けた方法と、メンテナンスが必要な理由だ……納得して頂けたかな諸君?



「あぁ、納得したぜ。
 ったく、可也無茶な事をしたみてぇだが、そうでもしなきゃなのはは助からなかったんだから、ある意味でファインプレーだぜアンタは。
 其れに、生体CPUとやらが埋め込まれていようとも、なのははなのはだ――其れは変わらねぇからな。」

「あぁ、そうだな、その通りだ。」

なのは君から話は聞いていたけれど、実際に会ってみると、なのは君が君達の事を高く評価をしていたのがよく分かるよ――彼等にとって
は、仲間は仲間であって、其れがどんな存在であるか等微々たるモノなのだろうね。
だからこそ、頼もしいと言えるかな?――此れからは共に戦う仲間なのだから。



「ハッ!其れはこっちのセリフだぜ?
 マッドサイエンティストってのは、敵に回すと面倒で厄介だが、味方に居れば頼もしいからな?……なのはを殺そうとした最高評議会の
 クソッタレをブッ飛ばすってんなら、力を貸してやらぁ!寧ろ、こっちからお願いしたいくらいだぜ!!」

「志緒先輩の言う通り!そんな奴等は生かしちゃおけないぜ!!」

「ってか、自分達の保身の為になのはちゃんを殺そうとするなんて、絶対に許せない!熾天使の力を全開にしてブッ飛ばしてやるわ!」

「ま、ニューゲームを楽しませて貰おうかな?
 尤も、こっちは最初っからレベル80以上だから、ボスキャラ相手でも楽勝だろうけどね。」

「志緒先輩はレベル99な気がするよ祐騎君……」

「何にしても最高評議会と言う管理局の闇……捨て置けませんね。」

「私達が此処に居るのは、きっとその最高評議会と戦う為……だから力を貸します、Dr.ジェイル・スカリエッティ。――最高評議会と言うモノ
 は、早急に何とかしないといけないようですから。」



ふふふ、君達ならばそう言ってくれると思っていたよ!!
待っていたまえ最高評議会の諸君!
最強無敵の反逆の焔となった『BLAZE』が、そう遠くなく君達を焼き尽くす為に降臨しよう!!――ふっふっふ……ふあっはっはは!はぁ~
っはっはっはっは!!



「マッドな高笑いしてんじゃねぇ!打ん殴んぞテメェ!!」

「だから、殴ってから殴ると言うのは如何なのだねヴィータ君!?」

まぁ、夜天の守護騎士の一撃を喰らって、無事でいる私も大概普通では無いのだろうね。――取り敢えず、反逆の準備は整ったから、後
は何時仕掛けるかだ。
まぁ、反逆の狼煙に相応しい舞台を選んでおくとしよう。








――――――








Side:志雄


ったく、まさかなのはが純粋な人間じゃなくなってたとはな……時坂の言った『改造手術』ってのは、あながち的外れでもなかったって訳だ
な……まぁ、どんな存在になってもなのははなのはだがな。
だが、本気で救えねぇな最高評議会ってのは?
なのはを殺そうとしたこともそうだが、なのはの事の後でスカリエッティから聞いた話だと、俺達がぶっ倒した機械蜘蛛は最高評議会が操っ
て居たらしいからな。
テメェ等が操ってる機械蜘蛛で街を攻撃し、其れを最高評議会に属する魔導師が撃破する事で、テメェ等の求心力を高めようって魂胆なん
だろうが……マッタク持って行かれた出来レースだな。



「……志緒さん?」

「なのはか……」

メンテナンスとやらは終わったみてぇだな?……身体に不具合はないか?



「全然大丈夫です!――其れよりも、ドクターから聞いたんですよね?」

「あぁ……全部な。」

正直な事を言うと驚いたが、だからと言ってお前が別の誰かになる訳でもねぇだろ?――お前は『高町なのは』以外の何者でもない。
違うか?



「違わないですね……私は私です!!」

「その通りだ!」

何にしても、此れからは仲間だ。俺達の力で最高評議会とやらをブッ飛ばしてやんぜ!!――精々、覚悟しておきやがれ!!








――――――








Side:???


ドクター・ジェイルからの秘匿回線で受けたメールによれば、10年前の事件で活躍してくれた『彼等』が再びこの世界にやって来たみたい。
此れは予想外だったけど、逆に好都合だわ。
あつらえた様に、貨物列車の護衛任務が出てるからね……そろそろ此方から攻めるとしましょうかリンディ?



『えぇ、そうしましょうレティ。
 貴女の子飼いの子達も、そろそろ暴れたい所でしょうしね?』


「ふふ、血気盛んなのは若い証とは言うけど、あの子達を見てると其れを実感させられるわ。」

私の直属部隊である『N2R』……陸のナカジマ夫妻の娘である『ナカジマ六姉妹』で構成された、超少数精鋭部隊――其れが、遂に初陣
の時が来た訳だもの。
期待してるわ、6人とも。



「「「「「「お任せ下さい!!」」」」」」



機は熟した……長年のツケを、そろそろ払って貰うわよ最高評議会。
そして、なのはさんを殺そうとした報いを一身に受けるが良いわ!――肉体を失った脳味噌では、一身に受ける事は出来ないかもしれな
いけれどね。









 To Be Continued…