Side:アインス


悲報・白い影の正体は、只の変態だった――と言えたらドレだけ良かっただろうな?
白い影の正体は、結社に属するブルブランだった……其れだけならば未だしも、古代のアーティファクトと思われる鋼鉄製のケンタウロスを操ってくる
とは予想外だった。が、其れ以前に何で学園の旧校舎にあんなモノが存在して居るんだ?何か聞いてるかクローゼ?



「いえ、私は何も……多分、ジルやハンス君も知らないと思います。」

「グランセル城の地下もそうだったけど、地下遺跡には巨大でヤバいモンが存在してるって言う法則でもある訳!?」

「……私が元居た世界では、強ち否定出来ん法則だな。
 ポケモンでは地中の奥深くにグラードン、FFⅩではオメガ遺跡の最深部にアルテマ・ウェポン、遊戯王の記憶編では地下の石板にエクゾディアだっ
 たからな。」

「アインス、エクゾディア召喚してアレ倒せない?」

「エクゾディア召喚したら、アイツは倒せるが学園も灰燼に帰すぞ。」

「あ、ごめんやっぱ今の無し。」

「学園が無くなってしまったら困りますから。」



まぁ、アレの正体が何であるにせよ無力化せねばならないが、如何したモノか?
ジル達から私達が見回りをしている事を聞いたとしたら、オリビエとシュテルも来るだろうし、相手は鋼鉄でも棒術具をダイヤモンドのように硬く強化し
てやれば対抗出来るから戦力的には問題はないが、被害は出来るだけ少なくせねばだ。



「おーい!酷いじゃないかエステル君!こんなにも頼りになる僕を置いてっちゃうなんて~~!ジル君から、君達が見回りをしてると聞いて、探してし
 まったじゃないか!」

「実際に探したのは私ですが……私なりに昇華させたとは言え、高町なのはのサーチャーは性能が良いので助かりました。」

「オリビエ、シュテル!丁度良い所に来てくれたわ!
 この地下に今回の事件の犯人が居るの!アタシはそいつを捕まえたいんだけど、その前にでっかい怪物が現われ……」



――ズドォォォォォォォォン!!



予想通り、ジルから話を聞いたオリビエとシュテルが此方に来てくれたが、詳細を話す前にアレに追い付かれてしまったか……地下で戦ったら、最悪
の場合生き埋めになったかも知れないので外へと誘導した訳だが、本校舎に被害を出さないようにする為には、さて如何するのが良いと思う?



「そうね……本校舎から引き離すには、旧校舎の裏手に誘導して其処で倒す!!」

「百点満点の答えだ!クローゼ、シュテル、オリビエ……後ろは任せたぞ!」

「はい!」

「任せてくれたまえ!」

「お任せを。」



後に頼りになる仲間が居れば、前衛は其の力を充分に発揮出来る……私もエステルも近距離型なので、後方支援が三人も居ると言うのは有り難い
事この上ないな。
さて、それじゃあ此のデカブツを解体するとするか。









夜天宿した太陽の娘 軌跡91
『鋼鉄の人馬兵を全力でぶっ壊せ!』









さてエステル、どうやってアイツと戦う?
私達の戦い方は現状では三通りだ。一つ目は今の状態、お前と半実体化した私のコンビによる波状攻撃で戦う。二つ目は私が表に出て戦う。三つ
目はユニゾンして戦うだが、ドレにする?



「此処はユニゾンで行きましょ!ル・ロックルでの合宿の時、可能な限りユニゾン状態で居るって言う可成りの無茶をしてまで精度を高めたユニゾンの
 力、試してみたいのよ!」

「了解だ。ユニゾン、イン!!」

半実体化した私をエネルギー球にしてからエステルに融合させてユニゾン完了!と同時に、エステルの髪と目の色が変わり、膨れ上がった力が身体
の周囲にオーラとなって現れる……ル・ロックルでの合宿期間中、可能な限りユニゾン状態を維持する生活をして、最終的には寝てる時以外はユニ
ゾン状態を維持出来るようになったからこそのこの力だ。
だが、此れはユニゾン状態と言うよりもスーパーサイヤ人化に近いかも知れんな。

ユニゾン状態になれば、エステルの身体能力は凡そ二十倍に引き上げられるから、此のデカブツ相手でも後れを取る事はあるまい。
凄まじいスピードでデカブツの足元を駆け抜けると……



「何処見てんのよ!アタシはこっち!ほらほら、全力で逃げちゃうわよ!!」



自分の存在を思い切りアピールして校舎裏に誘導だ。
デカブツは其れを見て追いかけて来たが、エステルの意図を理解したクローゼはオリビエとシュテルを引き連れて反対側から校舎裏に回ってくれるよ
うだな?……此れで、理想的な前衛後衛の布陣が校舎裏では完成するからね。



「にしても、見た目に違わないパワーねアイツ……一撃で石畳みが敷き詰められた地面を抉るとか、流石に反則でしょ此れは……!
 こんな化け物復活させちゃうなんて、結社って、身喰らう蛇って、一体ドレだけの力を持って居るのよ……!!」



さてな……だが、並大抵の力の持ち主ではなかろうな。
あのリシャールですら手駒として扱い、そして己の目的を達成してしまう上に、ロランスの様な底知れぬ実力の持ち主まで居るのだ……正直な話とし
ては、一介の遊撃士の手には余る相手だが、生憎と私もエステルもその程度で引き下がる性分ではなくてな!!
行くぞ、エステル!



「モチのロンよ!この程度で引き下がると思ったら、大間違いなんだから!!」



強化系アーツを使って、棒術具はダイヤモンドと同じ硬さにしてあるから、鋼鉄が相手であってもその表面装甲をぶち破る事位は出来る筈だ。
元より馬鹿力は凄まじかったお前だが、ル・ロックルの合宿で其の馬鹿力は更に強化され、ユニゾン状態にある今なら冗談抜きで、素手で小石を砂
に変える事が出来るだろうからね。
棒術具には、既に空属性の力を宿しておいたから思い切り行け!!



「覇ぁぁぁぁぁ……空裂金剛撃!!」



――バゴォ!!!



渾身の一撃は、デカブツの肩の装甲をへこませはしたが決定打にはならずか……だが、此の一撃だけではない!金剛撃が炸裂すると同時に、エス
テルの拳には炎を宿しておいたんだ!



「喰らえぇぇぇぇ!!」



そしてエステルはその炎を思い切りデカブツに叩き付ける……とは言っても鋼鉄相手では効果がないか。一瞬全身が炎に包まれるも、あっと言う間
に炎は消えてしまったからな。
尤も、デカブツは良い感じ熱されているので、背中に油を塗れば目玉焼きが作れるかもしれん。
だが、無駄に炎でお前を熱した訳ではないぞ?



「此れで、如何ですか?」



熱々のホットプレートと化したデカブツに、クローゼが水属性のアーツを喰らわせてくれたからね。
其れを喰らったデカブツは一気に身体から蒸気が沸き上がるモノの特に堪えた様子はないのだが、其れはまだ一度だからだ――シュテル!!



「既に準備は出来ています。ブラスト……ファイヤー!!」



其処にシュテルの灼熱の直射砲を叩き込んで、再び高熱になった所に、今度はエステルが氷属性の金剛撃を叩き込んで急速に冷やした後で、炎を
喰らわせて高温にして、其処にクローゼの水属性アーツを喰らわせる。
其れを何度か繰り返すうちに……



――ピキ……バキィィィン!!



デカブツの表面を覆っていた鋼鉄の装甲は全て砕け散った――如何に鋼鉄を身に纏っているとは言え、その鋼鉄の鎧は無敵ではない。
短い時間に急速な温度変化が起きれば、温度差による急激な伸び縮みに物体は耐える事が出来なくなり、鋼鉄であっても砕け散ると言うモノさ!
此れでも充分なのだが、オリビエがデカブツの弱点を見つけてくれた事で更に有利になったと言えるな。
デカブツの弱点は頭!其処に強烈な一撃を叩き込めば其れで終いだからね……と言う訳で、右手に火属性、左手に風属性の魔力を集中して……と
クローゼも最大の一撃を放つ準備をしているみたいだな?なら、一緒に行くか!!








――――――








Side:クローゼ


学園の旧校舎の地下に、あれ程の存在が隠されていたと言う事には驚きですが、其れも私達の連携で全身の装甲は剥がされ、更にオリビエさんが
弱点を見抜いた事で勝機が見えました。
エステルさんが最大の一撃を放つのを見て、私も今私が使える一番強いアーツの準備を……



「フフフ……一心不乱に七耀の流れを読み解く。そんな佇まいまで美しい……麗しの我が姫君、矢張り私の審美眼に狂いは無かった様だ。」

「貴方は……!!」

していたら、変態仮面(アインスさん命名)こと怪盗紳士が私の背後に……音もなく現れるとは、不気味な事この上ないのですが、貴方は一体何がし
たいのですか?
ルーアンの人々を混乱に陥れて、あんな人馬兵まで復活させて……貴方は一体何が目的で、このリベールに災いを齎そうとするのです?



「ふふ、理由は只一つ……クローディア姫、貴女とこうして相まみえてみたかったからだ。」

「え?」

まさかの予想外の答えでしたが、どうやら彼は先のダルモア市長の事件を見ていたらしく、平たく言えば私に惹かれてしまったとの事……何と言うか
呆れてしまいますね?
其れだけの為に、こんな物騒な事をするだなんて。
何よりも、本当にそんな事が理由なのだとしら、貴方の行いはマッタクの無意味です。
私は貴方のモノにはなりません……私の全ては、既にアインスさんのモノなのですから!

「行きます!!」

アーツの準備が整ったので人馬兵の方を見てみれば、エステルさんが全身に炎を纏って突撃し、シュテルちゃんが炎の砲撃で人馬兵を燃やしてると
ころだった……充分に熱されているところに、最大級の水のアーツを喰らわせれば……!!



――バッシャァァァァァァァ!!!


――ビキ……

――ガラガラガラ




外装甲を失って、内部が剥き出しになった人馬兵は一溜りもなかったようですね。
此れで人馬兵は倒せたのですが、問題は彼……怪盗紳士です――私の直ぐ傍に怪盗紳士が居る事に気付いたエステルさんが突撃してくれました
が、怪盗紳士は其れを身軽に躱すと、指を鳴らして外灯に明かりを点け、そして小さなナイフを!!
そのナイフは私とエステルさんに当たらず、私達の影に刺さったのですが……その瞬間、指一本動かせなくなってしまいました――此れは、ダルモア
市長が使ったアーティファクトと、同じ効果……!!
身動きが取れないのでは、余りにも状況が悪過ぎます……!



「ふ……この程度で、アタシ達の動きを封じた心算になって貰ったら困るのよね?アインス!!」

「ユニゾンアウト!!オラァ!!」



と思っていたら、エステルさんの姿が元に戻って、半実体化したアインスさんが現れて、怪盗紳士に殴り掛かりました!此れは一体……?



「ブルブラン、お前のこの技、対象の影に短刀を刺す事で動きを封じるモノなのだろうが……流石に影が出来ない存在には効果がないようだな?
 其れと、お前は私に触れる事は出来ないが、私はお前に触れる事が出来る……要するに、一方的に攻撃する事が可能な訳だが、如何する?」

「ほう、この様な方法で我が術から逃れるとは……だが、君自身は本体であるその栗毛の少女からあまり大きく離れる事は出来ないと見た!
 有効射程は君の手足のリーチを加えても最大で280~290アージュと言った所ではないかな?
 ならば、その射程の外から本体を攻撃すれば問題はないと言う事だろう!」



――ズドォォォォン!!!



「ち、外したか。
 確かに私はエステルから200アージュを越えて離れる事は出来ん――やろうと思えば出来なくはないが、エステルに掛かる負担が極端に大きくな
 ってしまうからな。
 だが、其れはあくまでも近接戦闘に限ればの事。私には遠距離攻撃もあるから事実上の射程距離は無限に近いさ。」



半実体化したアインスさんの特性故でしたか……確かに、影にナイフを刺して動きを止めると言うのならば、影が出来ない半実体化のアインスさんを
縛る事は不可能ですね。
ですが、怪盗紳士も半実体化したアインスさんはエステルさんからそう離れて動く事は出来ないと予想しましたが、其れに応えるかのようにアインス
さんは凄い砲撃を放って、射程限界はないと来ましたか……



「ふ……よもや、此れほどとは――剣帝から話は聞いていたが、如何やら私の予想以上である様だな?」

「剣帝とはロランスの事か?だとしたら、その情報はもう古いから当てにしない方が良い。
 私もエステルも日々進化しているのでね……そして、お前は自分の力に自信がある様だが、上には上が居ると言う事を忘れるな?お前が執行者
 を名乗るのならば、私は破壊神を名乗らせて貰うぞ?」

「破壊神……?」

「自分では如何にも出来なかったとは言え、私はエステルと一つになるまでに両手の指では足りない程の世界を滅ぼし、数多の命を奪って来たから
 な……何かを壊す事に関しては、私の右に出るモノは居ないと自負しているよ。」

「アインス、流石に自虐ネタ過ぎない其れ?」

「自虐ネタではない!事実だ!私こそが破壊神!二体の生贄を捧げれば、攻撃力∞になって全てを消し飛ばすぞ!!」

「其れはアインスの世界に居た別の破壊神よね!?てか、そろそろナイフ抜いて動けるようにして欲しいんだけど?」

「ナイフを抜いてる間に、ブルブランが逃げるかもしれない事を考えると中々それも難しい……怪盗紳士を名乗ってるのならば、一瞬で此の場から消
 える事位は出来そうだしな。
 同じ理由で明かりを消すのも難しい……200アージュ以上離れているから魔法で照明を破壊するしかないからな。報酬から天引きは流石にな。」

「う……確かに学園の設備壊すのは拙いわよね……」



なにやらアインスさんとエステルさんの漫才が始まってしまいましたが、こんな状況でも決して焦らずに、お互いに偽らない遣り取りが出来るアインス
さんとエステルさんだからこそ、頼もしいと言えるでしょう。
そして、だからこそ私も言えます……例え身体の自由は奪われようとも、心だけは決して縛られない……私が私である限り、絶対に!!












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