Side:アインス
空港でシェラザードとオリビエを見送ったが、次の目的地に向かう前に、ボースでやらねばならない事があるから先ずは其れを消化しないと……最
初は空賊のアジトで見つけたこの指輪。
掲示板に依頼を出していた者に届けると、無くした指輪は、此れで当たりだったみたいだな。
それともう一つの黒いノートなのだが、ルグラン老人に相談したら『空賊事件と関係あるかもしれないから、軍に届けた方が良いかも知れん』と言わ
れたのでハーケン門に……追い返されるかとも思ったのだが、特に問題なく中に入る事が出来た。
結果だけ言うなら、この黒いノートは空賊事件とは関係が無かったが、全く別の事件の重要な証拠物だったらしく、其れを届けてた事に礼を言われ
てしまったよ……王国軍の兵士に礼を言われるとは、妙な気分だ。
さて、此れでもうボースでやり残した事はないし、出発するとしようか。
「其れじゃあルグラン爺さん、アタシ達そろそろ行くね?」
「色々とお世話になりました。」
「な~に、ワシの方こそ久々に活きの良い新人に会えて楽しかったわい。
正遊撃士を目指しての王国全土を回るお前さん達の旅路が良き物になる事を、エイドスに祈っておこう。……くれぐれも、気を付けての。」
「うん!」
「はい!」
ハハ、まるで孫を見送るお爺ちゃんだな。――ルグラン老人は、好々爺と言った感じだから余計にそう言う感じになってしまうのかも知れないがな。
私達の旅路が良き物になるように祈る、か……そう言えば、多くのゲームに『祈り』と言うアビリティが存在しているが、その効果は多種多様過ぎる
気がする。
ルグラン老人のエイドスへの祈りの効果は、旅路が良い物になる他にどんな効果を齎してくれるのか、楽しみだ。
夜天宿した太陽の娘 軌跡43
『ボースの次はルーアン目指して!!』
次の目的地なんだが……次の目的地を確認する為に、一々地図を広げなくてはならないと言うのが地味に面倒なのだが、此れもまたアナログな
旅の醍醐味かな?
主の居た世界ならば携帯電話やポータブルパソコン等を使って簡単に地図を見る事が出来て便利だが、少しばかり味気ない気もするしね。
「さてと、王国全土を回るなら、次の目的地はルーアン地方ね。如何言うルートで行けばいいのかな?」
「それなんだけど……本当に定期船は使わないのかい?歩いて行ったら、可成りの遠回りになると思うけど。」
「シェラ姉が言ってたじゃない?先ずは自分が守るべき場所を実際に歩いて確かめてみろって。あ、此れって父さんの言葉だっけ?」
「……まぁ、確かに時間はあるからのんびり行くのも悪くはないか。定期船の運賃も節約できるしね。」
そうすれば、浮いたミラで買い物も出来るからな……と思ってたら、エステルも同じ事を思っていたようで、ボースマーケットで買い物をしてから改め
て出発となった。
まぁ、長旅になるから薬とか食料品などは買っておく必要があるからね。
そう言う意味では所謂『大型ショッピングモール』の様なボースマーケットは有り難い店だよ、大抵の物は揃ってしまうからね……唯一つ突っ込みを
入れるとしたら、武器屋と思しき店で売られていた特価品の『物干し竿』と『肉切り包丁』だ――武器かそれは?前者は洗濯物を干す物、後者は其
の名の通り肉を切る物であって、武器じゃないだろ。武器として使えるかもしれないがな。
と言うか、其の肉切り包丁は既に包丁の大きさなじゃいだろうに……何だ、身の丈近い包丁って?牛を丸ごと解体するのに使うのか?……謎は尽
きないな。
取り敢えず買い物を終えた後は、西口から次の目的地のルーアンに向かって出発だ。……途中、クローネ峠と言う場所を越える必要があるが、峠
道の険しさにだけ注意すれば多分大丈夫だろう。
魔獣も出るだろうが、エステルとヨシュアのコンビネーションならば、相手がラスボス級の魔獣で無い限りはやられる事はないだろうし、仮に本気で
危なくなったその時は、私が出張ればなんとかなるだろうからね……まぁ、戦闘で私が表に出る事態になる前に、ヨシュアが状況を見極めて退くだ
ろうけどな。
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ボースを出発して数時間……夕方になって漸くクローネ峠の関所に到着だ。
道中は予想通り魔獣に襲われる事もあったが、パワーのエステルとスピードのヨシュアのコンビの前には本気で脅威ではなかったな……大分セピ
スも稼げたから、ルーアンに着いたら新たなクォーツを合成してみるか。
しかしまぁ、ヨシュアの戦闘センスは抜群だが、エステルの直感力も凄いな?『炎で相手を拘束する技とか出来ないかな?』って言われたので、適
当に火属性と時属性の導力を混ぜた炎をエステルの掌に宿してやったら、其処から放たれた火柱はヒットした相手の動きを十数秒完全に止めてし
まったからね……まさかの、裏百八式・八酒杯の開眼だったな。
「は~、やっと着いたみたい。アレが、関所の建物なのかな?」
「そうみたいだね。アレを越えたらルーアン地方だ。
でも、参ったな……もうすぐ日が暮れる。今日は、此処に泊めて貰った方が良いかも知れない。」
そうだな、其れが良いだろうさ。
峠を降りて、麓の宿に泊まると言う選択肢もあるが、夜の峠越えは視界も悪い上に足場も悪いから危険極まりないからな……その上、夜行性の魔
獣に襲われたら崖から転落の危険性もあるからね。
私が表に出てヨシュアを抱えて飛んでいくと言う選択肢もあるが、空を飛ぶ魔獣に襲われた場合、ヨシュアを抱えながら戦うのは困難だから、其れ
もなしだ。
「うぅ……アインスが言ってるのを聞くと、確かに今日は此処に泊った方が良いかも知れないわ――空飛ぶにしてもヨシュアを抱えてたら、空を飛ぶ
魔獣に襲われた時に何も出来なくなっちゃうからね。」
「……其れ以前に、僕を抱えるって言う考えがおかしくないかな?」
普通ならオカシイのだろうが、エステルとヨシュアに限ってはそうだとは断言できない部分があるんだよ残念ながら……周囲をグイグイ引っ張って
ガンガン行くエステルと、あくまでも冷静で慎重に物事を進めるヨシュアでは、エステル攻めのヨシュア受けと言う感じになってしまうからな。
こう言っては何だが、此の二人の場合は、女の方が男をお姫様抱っこしても違和感のない組み合わせの様な気がする。
取り敢えず関所の兵士に事情を説明した結果、旅人用の休憩室を使わせて貰える事になった……うん、関所の兵士は普通に良い人なんだよね。
遊撃士と名乗っても敵対心はなく、むしろ『その年で遊撃士ってのは珍しい』って褒めてくれた位だからね……要するにあの将軍の配下が色々とダ
メだと言う事なのだろうなきっと。
さらにその後、隊長と言う人に話をしたら、『遊撃士なら身元も確かだから』と言う事で、正式に休憩所を使わせてもらえる事になった……危険な夜
の峠越えをしなくて済んだからラッキーだな。
そんな訳で旅行者の休憩所にやって来たが、簡素ではあるが悪くない――ベッドもあるし暖炉もある、更にはイスとテーブルもあるからね。無人の
山小屋の様な部屋を想像してたのだが、どうやらそうではなかったみたいだな。
「此処が旅行者用の部屋ね?」
「そうだね、まずは暖炉を点けようか。」
だな。冬ではないが標高が高い峠の夜は冷えるからね。――取り敢えず手っ取り早く暖炉を点ける為に……燃えろぉ!!
――ボッ!!
「一瞬で火が付いた?……若しかしてアインス?」
「多分そうだと思うわ……『燃えろぉ』って言ってたし。
だけど、速攻で火が点いたんだから問題ないって……ハァ、暖かい。やっぱり薪を使った暖炉って落ち着く感じがする。」
「そうだね。導力ストーブも出回ってるけど、暖かさでは暖炉には敵わないかな。」
「ま、あれはあれでお手軽で良いんだけどね。」
此れは電気ストーブと薪ストーブの暖かさの違いと同じものがあるな……電気ストーブは電熱器が発する熱で温めるモノで、電源を入れれば暖かく
なるが、実際に火を燃やす薪ストーブの暖かさには敵わないからね。
そして、薪ストーブの場合、燃料に使った薪は木炭としてもう一度利用できると言うメリットがあるからな……案外、アナログな物の方が優れている
事と言うのは多いのかも知れないね。
取り敢えず此れで、峠の寒い夜も凌げると思っていたのだが、其処に副長さんから夕食の話が……『俺達の飯と同じで良ければ御馳走する』って
事だったので、有り難くご馳走になる事にした。
『軍隊の飯だから味には期待しないでくれよ。』と言っていたが、軍隊飯だからこそ機体が出来るってモノだ――軍隊飯が不味かったら、兵士の士
気も下がってしまうからね。
飛びぬけて美味しいと言うモノではないだろうが、少なくとも最大公約数な美味しさがあるのは間違いない――要するに、可もなく不可もなくってや
つだね。
「空賊団騒ぎでは王国軍と張り合ってたけど……一人一人の兵士さんは、やっぱり親切な人が多いよね。」
「確かにそうだね……まぁ、軍人が親切なのはリベール位だと思うけど。」
「え?」
「いや……とりあえず荷物を置こうか。」
此れはまた、何やら気になる事を言ってくれたなヨシュアよ……その物言いからすると、お前はリベール以外の軍人を知っていると言う事か?五年
前の事を考えると、その可能性は否定できないがな。
とは言え、今聞いた所で話してはくれないだろうから、ヨシュアが話してくれるまで待つしかないのだろうさ……話してくれる時が来るのかはマッタク
分からないのだがな。
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ふぅ、実に美味しかった。感覚を共有しているから私もお腹一杯だ……味に期待するなとは言ってたが、とても美味しかった――本日のメニューは
皆大好きカレーライスとチキンソテーだったのだが、カレーは我が主のカレーに匹敵する美味しさだった。
『軍隊のカレーは美味しい』と言われていて、主の世界でも自衛隊の『横浜海軍カレー』はレトルトになって売られる程のモノだからね……軍隊カレ
ーは冗談抜きで絶品だったよ。
エステルとヨシュアも満足していたみたいだからね。
「ちょっと失礼するぞ。」
「あ、副長さん!スッゴク美味しかったわよ!」
「ご馳走様でした。」
「お粗末様、口に合ったようで何よりだ。」
食後、部屋にやって来たのは副長さん……食事の礼は大事だな。
まぁ、食事の礼は確かに大事だが、何かあったのだろうか?何もなければ旅行者用の部屋に泊ってる者の所には来ないと思うのだが……何か問
題でも発生したのかな?
「ところで……もう一人客が来たんだが、相部屋でも構わないかい?」
こんな夜中に来客とは……随分と度胸があると言えばいいのか、其れとも命知らずのバカと言うべきか、或いはどこぞのバラエティ番組の企画っぽ
い無謀な挑戦なのか。
だがまぁ、エステルは『構わない』と言って、副長さんも『助かる』と言ってたが、私達の同業者と言うのが気になるな?遊撃士と言う事なのだろうけ
れど……
「フン……何処かで見たような顔だぜ。」
「「アンタ……(お前は……)」」
「『重剣のアガット』……」
「エステルっつったかお前?なんか声が重なって聞こえたぜ?」
「気にしないで。アインスとシンクロすると、アインスの声も一緒に出ちゃってるだけだから。」
「一つの体から二つの声が出るって、どんな構造してんだオメェの身体は……」
身体の構造自体は普通なんだが……言われてみれば声帯は一つしかないのに、シンクロすると私の声まで表に出るのは物理的に如何なってる
のか謎だな。……まぁ、人格交代すると髪の色が変わる時点で大分謎だからね。
取り敢えず、アガットは寝床を借りに来たようだな、『飯はさっき食った』と言っていたし。
「さてと、オッサンの子供達だったか……何だって、こんな所に泊ってやがる?シェラザードは如何したんだ?」
「シェラさんはロレント地方に帰りました。今は、僕達二人だけで旅をしています。」
「正遊撃士を目指して、王国各地を回ろうと思ってるの。修行を兼ねて、自分の足だけでね。」
「正遊撃士?歩いて王国一周だぁ?随分と呑気なガキ共だな。」
「あ、あんですって~~!?」
「お前等みたいなガキが、簡単に正遊撃士に成れる訳ねぇだろ?常識で考えろ常識で。」
「その常識とは一体なんだ?誰が決めた常識だ?
元より、簡単になれるとは思ってない、だからこそ修行を兼ねての旅なのだ……貴様に其れを否定する権利があるのか、アガット・クロスナー。」
「話し方が……銀髪だと?アインスっつったかオメェは。」
其の通りだ。瞬間的にエステルと入れ替わった事に気付かないとは注意力が足りないんじゃないのか?まぁ、この電撃的な人格交代はカシウスで
も少しばかり気付くのが難しいかもしれないから、お前では気付けないのも仕方ないかも知れないが。
「其れはそうと、お前はこんな時間に何故こんな所に居る?私達は夜の峠越えは危険だと判断して、此処で一晩明かす事にしたのだが、如何に正
遊撃士とは言え、夜の峠は危険だと思うのだがな。」
「鍛え方がちげぇんだよ、鍛え方が。
俺のは仕事でな……」
「仕事?遊撃士協会のですか?」
「あぁ……お前等の親父に強引に押し付けられた……」
「「え?」」
「父さんが押し付けた?」
「…………さてと、明日は早いしとっとと休ませてもらうぜ。お前等も喋ってないで寝ろや。」
《あぁ~~、誤魔化した!》
《あそこまで露骨だと、逆に気になるが……聞いた所で絶対に口は割らんだろうなあのタイプは。》
ヨシュアも同じような事を言ったら、逆切れっぽく『ガキが余計な事に首突っ込んだら火傷するぞ!』と言って来て、序に『ルーアンにでも行って掲示
板の仕事でもしてろ』と来たよ……何となく、カシウスが押し付けた仕事のせいで八つ当たりされている様な気がしなくもないな。
で、言う事だけ言って速攻で寝てしまったか。
直後にエステルと変わったら、ヨシュアが『エステル並みに寝つきが良い』と言い、『一緒にしないで』とエステルが怒っていたな。
エステルは相当にアガットの態度に腹が立ったみたいだが……私達が新米なのは確かだから、ならば絶対に正遊撃士になってコイツを驚かせて
やれば良いだけの事さ。
ヨシュアの提案でもう寝る事になったが、どうにもエステルはムシャクシャが治まらないらしい……今日は夢の中で『アガット叩きゲーム』でもやらせ
てやるか。それか、ターゲットがアガットの顔になってるパンチングマシーン。……怒りで凄い記録が出そうだな。
と思ったのだが……
「!!今、何か聞こえなかった?」
「何かあったみたいだね。」
「様子を見てくる。お前等はとっとと寝とけ。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「念のため、僕達も行った方がよさそうだね。」
如何やら何か起きたらしいな?……アレだけ速攻で寝ておきながら、何かあったら即目を覚ますとは、アガットの睡眠は一体如何なってるのやら。
取り敢えず後を追って外に出てみれば、其処には狼の群れと戦う軍人達の姿が。
……数は多いが、関所を守る軍人ならば魔獣との戦いにも慣れてるだろうから大丈夫だろう――副長さんも『此れは自分達の仕事だ』と言ってい
たからね。
だが、そうしてる最中に非常ベル……!
「ちぃ!」
「え、如何言う事?」
「エステル、反対側だ!ルーアン方面の出口でも、何かが起こったらしい。」
「あんですって~~!?」
反対側か!
関所の中を通って、反対側に出てみれば……先に行っていたアガットが狼の群れを相手に大立ち回りを演じていた――あの巨大な剣の一撃は相
当な破壊力だな。
当たれば一撃必殺だろうが、数の多い相手には向かないか……さて、如何する?
「其れはもちろん、加勢するわよ!」
「オイコラ、引っ込んでろ!」
「ふっふ~ン、アタシ達の勝手だもんね!」
「邪魔にならないように手伝わせてもらいますから。」
「ちっ……勝手にしやがれ!精々、俺の『重剣』に巻き込まれないように注意しとけよ!」
お前の方こそ、私とエステルのアーツクラフトに巻き込まれないようにな?エステルのクラフトに、私が適当にアーツの力を付与してるが、付与する
アーツの属性の組み合わせによってはトンデモない事が起きるからね。
其れでまぁ、戦闘なのだがマッタク全然余裕だった。
狼達の動きは素早かったが、ヨシュアがそれ以上の素早さで狼達を翻弄して群れの統率を乱した所にアガットの重い一撃が炸裂し、エステルも金
剛撃で一匹を昏倒させ……此れでトドメだ!
「食らいなさい!爆炎龍神旋風輪!」
――轟!!
最後は棒術具全体に火属性を宿した状態で放つ旋風輪でフィニッシュ。その技名は中々良いぞエステル。……とりあえず狼の丸焼きが『上手に焼
けました』って所なんだが……食べるかアガット?
「アインスが、食べるかだって。」
「誰が食うかってんだ!
其れよりも、思ったよりもやるみたいだな。ま、あのオッサンの手解きを受けていたんだったら当然か。」
「え?」
「勘違いするなよ。あくまで新米としてはだ。マダマダ正遊撃士には遠いぜ。」
ふ、言ってくれるじゃないか……だが、先程の頭ごなしな言い方よりは好感が持てる。――こう言う風に言われた方が、エステルは俄然やる気が
出てくるタイプだからね。
加えて、此処の隊長さんに『このガキ共がそこそこ働いてくれた』と言った辺り、私達の実力を目の当たりにして、認識を改めたのかも知れないな。
……恐らくは初めて目にするであろうアーツクラフトに驚いてくれのかも知れないけどね。
まぁ、アガットが遠回りに褒めてくれた事にエステルは困惑していたみたいだが……
「僕達の実力を少しは認めてくれたのかも知れないね……思ったよりも真っ直ぐな人なんじゃないかな?」
「うーん……とてもそうは思えないけど。でもまぁ、デカい口を叩くだけの実力だったのは確かね。」
デカい口を叩いたら、腫れて更にデカくなってしまったと言うのは、一体何のマンガのネタだったかな?――ではなくて、確かにアイツは『重剣のア
ガット』の異名を持つに相応しい実力ではあったな。
だが、豪快で破壊力のある剣なのは間違いないが……如何にもアイツの剣からは『迷い』の様な物を感じてしまったな?……そしてその『迷い』の
様なモノのせいで本来の実力の半分程度しか出せていない事も分かった。
アイツもまた、心に何らかの闇を抱えているのかも知れないね。……だからと言って、私達に出来る事はないがな。
突然のトラブルには驚いたが、大きな被害もなかったので良しとして、この日はもう寝る事にした……さすがのエステルも慣れない峠越えには少々
疲れたみたいだからね。
――――――
Side:アガット
あのオッサンのガキ共……思った以上に出来るじゃねぇか?
ヨシュアってガキはパワーは兎も角、スピードに関しちゃ多分俺が知る正遊撃士の誰よりも上だろうし、エステルってガキはスピードはソコソコでも
女とは思えねぇパワーがある上に、クラフトにアーツの力を上乗せするって離れ業までやって見せやがった……其れは、アインスって奴との二重人
格だから出来る事なんだろうけどよ。
アイツ等には『正遊撃士には遠い』とは言ったが、コイツは案外正遊撃士就任の最年少記録を更新するかも知れねぇな……今の所は、アネラスの
十七歳だが、さて、どうなるか。
しっかし何だな?如何にもアイツ等とは長い付き合いになる気がしてならないぜ……フン、次に会う時には、今日よりも強くなってろよ?そうじゃな
きゃ、面白くねぇからな。
To Be Continued… 
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