Side:アインス
外道教授は《環》の力を自らに取り込み、そして巨大化して異形と化したか……強大化したと言う事は其れだけ被弾面積が増えたと言う事だと言えるので、一方的に殴る事が可能となるのだが……
「この……コイツ、攻撃が効いてない?」
「僕達の攻撃がレジストされている、そう言う事なのか?」
異形と化した外道教授には此方の攻撃はマッタクもって通用しなくなっていた――私の力を棒術具に付与した攻撃ですらノーダメージとは、《環》の力は私達が思っていた以上のモノであるのかもしれないな。
この場にシュテルが居たら遊戯王のカードを使って攻撃が通るようにしてくれたかもしれないが、果てさて如何したモノか?
「《環》の力は理の外の力……故に此方の攻撃は通らないと言う訳か。
だが、そうであるのならば此方も同等の力をもって対抗するだけの事――俺の剣、ケルンバイターも理の外の概念で作られたモノだから、此れならば奴の絶対防御を貫く事が出来るかも知れん。」
「でも、其れは教授も分かってる事なんじゃないの?」
『ククク……其れは勿論分かっている……故に、君達の動きは此処で止めさせて貰うとしようか。』
――グン!
ぐ……これは、私達を拘束する魔眼か!
しかもその拘束力は相当に強い……其れこそリバースユニゾン状態の私であっても強引に拘束をブチ破るのは難しいかも知れん――完全に動きを封じられたとなれば敗北は確実だが、私にはまだ切り札が残されているのでね。その切り札を切らせて貰うとするか。
貴様では私達に勝つ事は出来んと言う事を、思い知らせてやる!
夜天宿した太陽の娘 軌跡150
『外道な天使に太陽の裁きを下せ!』
外道教授の魔眼によって一切の動きを封じられてしまったが、だからと言って何も出来ないかと言われればそれは否だ――確かに指一本動かす事は出来ないが魔法を使う事は出来るからな。
そして此れが私の切り札、ミニアインス無限召喚!!
『主、主、我が主~~♪』
『深き闇に沈め。沈め。沈み切れ♪』
『ナハトが、ナハトがぶっ飛んでます!』
等々、その他沢山。
「アインス、一体何をする心算なの?」
「レーヴェの剣ならばあの絶対防御を貫通出来ると言うのなら、無限のミニアインスに剣を持たせて特攻させる!如何に魔眼が強力でも無数にミニアインス全てを拘束する事は出来んだろうし、ミニアインスを迎撃しようとしても、攻撃に触れた瞬間にミニアインスは機雷化して誘爆するから、剣を持ったミニアインスには攻撃が届かない!これぞ最強の陣!」
「いや、クリボーかーい!!」
其れは否定せんがな。
と言う訳で、剣を借りるぞレーヴェ?
「何処までも予想の斜め上を行く奴だ……だが、こうなった以上は其れ以外に状況を打開する術はないからな……此の剣、お前に預けるぞ。」
「うむ、暫し預からせて貰った……と言う訳で、ミニアインス軍団突撃ぃ!!」
『『『『『『『『『『逝ってきまーす!!』』』』』』』』』』
若干字がオカシイ気がするが、ケルンバイターを持ったミニアインス達を守る形で無数のミニアインスが突撃し、外道教授は其れを阻止しようと攻撃するも、攻撃が触れた瞬間にミニアインスは誘爆してしまい、ケルンバイターを持つミニアインスまでは攻撃が届かない。
加えてミニアインスは幾らでも召喚出来るからドレだけ迎撃されてもマッタクもって無問題だ。
『『『『『『『『『『よいしょぉ!!』』』』』』』』』』
そして遂に剣を持ったミニアインス達が外道教授の絶対防御障壁に剣を突き立て、其のまま押し込んで行く――当然外道教授はミニアインスを攻撃するが、攻撃を喰らって消滅した先から新たなミニアインスが剣を押し込みに来るのだから対処が間に合わんだろう。
其処から大体百体くらいのミニアインスが爆散した所で遂に剣が外道教授の絶対防御障壁を砕いたか……同時に魔眼による拘束も解け、そしてヨシュアは動けるようになったと同時に飛び出してレーヴェの剣を回収し、そしてレーヴェに剣を投げ渡したか。
ともあれ、此れで対等な状況となったな外道教授?
『やってくれたな。
まぁ良い……絶対障壁など《環》の力のホンの一端だ……全ての力を解放して、貴様等に絶望を味わわせてやる。』
「其れはこっちのセリフや!」
「遊撃士として、リベールの市民として……そして何よりも人として!」
「リベールの次期女王として……白き翼の誓いを果たす為に……!」
「ワイスマン、貴方を倒す!」
「年貢の納め時と言う奴だ……貴様は些かやり過ぎた。その代償を払う時だ。」
だな。
ならば此方も切り札を切るとしようじゃないか……やるぞエステル、私達の最強最大の切り札を見せてやろうじゃないか!
「オッケー!行くわよアインス!」
「これが私達の切り札……完全人格融合だ!」
王城の地下でトロイメライと戦った時以来のお目見えだ……次に見れるのは何時かは分からないのでな、其の姿を目に焼き付けるが良い!
――――――
No Side
切り札である完全人格融合を行ったアインスとエステルは、クーデター事件の際に王城の地下でトロイメライと戦った時と同じ様な姿になっていた。
だが、其の時とは異なる部分も多い――容姿はアインスのモノなのだが、クーデター事件の時とは違い髪は銀と栗色を混ぜた様な色になり、瞳は蒼く染まり、背中の六枚の黒い翼は健在だが、纏う戦闘装備は黒から白へと変化し、腕や顔に浮き上がった赤い紋様は消え去っている――ル・ロックルでの訓練と正遊撃士として《結社》が起こした事件と関わった事でエステルもアインスもレベルアップし、その結果『完全人格融合』を任意に行えるようになり、其の力も大きく向上したのだ。
「エステルちゃん?いや、アインスちゃん?……まさか、二人が完全に一つになったんか?……どんなカラクリやねん其れ!?」
「……まぁ、アインスさんは何でもありですので。」
「身も蓋もないなぁそれぇ!?」
初めてこれを見るケビンが若干突っ込み魂が炸裂していたが、此の土壇場での切り札と言うのは悪くない選択だろう。
「「エステルとアインスが完全融合してエインスと言ったところかな?まぁ、名前など如何でも良いか……私は貴様を倒す者だ。覚悟するんだな。」」
自らを『エインス』と名乗り、先ずは挨拶代わりにブラッディダガーの全方位発射を繰り出すが、ブラッディダガーの魔力刃は其れまでの血のような赤黒いモノではなく、エステルの瞳を思わせる朝焼けのような赤色へと変化していた――ブラッディダガー改め『トワイライトダガー』と言ったところだろう。
無数の魔力刃は異形と化したワイスマン(以下アンヘル・ワイスマンと表記)へと向かうが、アンヘル・ワイスマンは其れを難なく叩き落して見せた。
『おやおや、此の程度なのかねぇ?』
「「今のは見せ技に過ぎん……本命を確実に決める為のな。」」
「はぁぁぁ……遅い!」
しかし次の瞬間、アンヘル・ワイスマンに対してヨシュアの絶影が炸裂した!
其れも通常の絶影とは異なり、縦横無尽に何度も連続で超高速で回避不能の斬撃を喰らわせて行く――そのあまりのスピードに残像が現れては消えて行く状態であり、更に攻撃の度にスピードが上がっているので、『スピードこそがパワー』となっているヨシュアにとっては正に己の得意分野を生かし切った攻撃と言えるだろう。
『くぬ……小癪な!』
「巨大化は動きが鈍くなるか……そんなスローではヨシュアは勿論、スピードではヨシュアに劣る俺すら捉える事は出来んぞ?」
『!!』
其処にレーヴェが頭上から斬りかかり、落下速度と己の体重を乗せた一撃を喰らわせ、着地と同時に今度はジャンプしながら斬り上げた後に、空中で袈裟斬り→払い斬り→逆袈裟二連斬→回転上昇斬り→兜割りの連続技を叩き込んでアンヘル・ワイスマンにダメージを与える。
勿論そこで攻撃の手が緩まる筈もなく、クローゼが幻属性の最上級アーツ『アヴァロンゲート』を叩き込み、ケビンがボウガンで無数の矢を喰らわせる。
「「何処を見ている?」」
『何時の間に!』
更にエインスが強襲し、目に見えない連撃を喰らわせると一瞬でアンヘル・ワイスマンの背後に回り、膝蹴り→延髄斬り→サマーソルトキックの連続技を喰らわせ、そして掌に虹色のエネルギー球を作り出すと其れを一気に投げ付けてダメージを与える。
『此処まで粘るとは……だが、所詮無駄な足掻きと言うモノだ。
無限の力を秘めた《環》の前では――……な、なんだ?《環》が……私の中の《環》が……!』
だが此処でアンヘル・ワイスマンは更なる変異を遂げて来た。
何処からともなく現れた蛇のように長い物体が身体に装着され、背には十枚の翼が現れ、先程までは折り畳まれていた部分が展開して腕となり、展開された部分には巨大な目玉が蠢いている――其の姿は異形だが圧倒的であり、正に神域の存在であると言っても過言ではなかった。
「こ、此れは……なんて霊圧や……!」
「天使……!」
「いや、此れは堕天使だ……《環》の力が、暴走してるんだ!」
「《環》の力に喰われたか……哀れなモノだな――尤も、謀略を巡らせ続けた貴様には相応しい末路かも知れん。」
「「正真正銘、これが最後の悪足搔きと言う奴か……さっさと終わらせるぞ。」」
しかし其れで怯むエインス達ではなく、更に力を増したアンヘル・ワイスマンに対しても果敢に攻撃を喰らわせてダメージを与えて行く。
無論アンヘル・ワイスマンも一撃必殺級の攻撃を放って来るが、其れはケビンのグラールスフィアと、超速で展開されるクローゼのアースウォールでシャットアウトするだけでなく、レーヴェが弾き飛ばし、エインスが吸収して決定的な一発を貰う事は無かった。
『ぐぬぅぅぅ……行け、我が僕達よ!』
「「今更雑魚の召喚が効くと思っているのか?遠き地にて太陽の業火に焼かれろ……アペイロン・エミッション!!」」
アンヘル・ワイスマンは何とか状況を打開しようと魔導生物を生み出すも、其れはエインスがデアボリック・エミッション改め、アペイロン・エミッションを放って鎧袖一触!――しただけでなく、チェーンバインドも発動してアンヘル・ワイスマンを拘束する。
「これは好機やね……ほな、全力で気張ろうやないか!!」
「此処が、攻める時ですね……!」
「一気に決めるぞ!」
「うん、一気に行こう!……其れで、僕達は何秒稼げばいい、エインス?」
「「十秒あれば、充分だ。」」
「其れなら余裕だね!」
其れを皮切りに、ヨシュア、レーヴェ、クローゼ、ケビンがアンヘル・ワイスマンに猛攻を加え、エインスは最強最大の一撃を放つ準備に掛かる――溜めに十秒も掛かるのでは戦闘では中々使えるモノではないが、時間を稼いでくれる仲間が居るのならばその限りではなく、エインスの前には巨大な魔力球が形成されて行ったのだ。
「ジャスト十秒だよ、エインス!」
「何や、随分とド派手なモン作ってたやないか……其れ、一気にブチかましたれぇ!!」
「其れで決めて下さい、エインスさん!」
「エステル・ブライト、アインス・ブライト……その一撃で終わらせろ!」
「「咎人達に滅びの光を。陽光よ集え。闇を引き裂く光と変われ!貫け閃光!サンライト……ブレイカァァァァァァァ!!」」
そして放たれた一撃!
嘗て闇の書の闇を葬った『スターライトブレイカー』をも上回る最強最大の集束殲滅砲撃『サンライトブレイカー』。
その圧倒的な攻撃は最上級アーツですら足元に及ばない威力であり、『太陽ですら砕く』と言っても過言ではない破壊力で、アンヘル・ワイスマンは何とか両手で防御しようとするも、その両腕はあっと言う間に集束砲に呑み込まれそしてアンヘル・ワイスマンの本体をも呑み込んだ!
そして次の瞬間、アンヘル・ワイスマンの身体から《環》が排出され、そして霧散したのだった……
To Be Continuity 
キャラクター設定
|