Side:アインス


外道のメッセージに対して宣戦布告の一撃を放ってから、引き続き浮遊都市の探索をしているのだが、此れはまさかの事態に遭遇したな?――と言うか、お前達が此処に居ると言う事自体が驚くべき事なのだがな。



「クソ、何なんだよコイツ等!」

「く、近付くな!此れ以上山猫号を傷付けたら許さないんだから!!」

「オイオイオイ、何だかでっけぇのが出て来やがったぞ!?」





「アイツ等、例の空賊共じゃねぇのか?こんな所でなにやってやがる?つーかそもそも何でこんな所にいやがんだ?」

「其れはアレやろ?導力停止現象が発生する前に、此処にお宝かなんかあるんやないかと思って乗り込もうとしたんやけど、その途中で導力停止現象が発生して飛空艇が止まってもうて、幸か不幸か此処に不時着したって言うことと違うん?」

「数日間は飛行船の備蓄食料で食料は確保出来ていても飛空艇の修理材料の調達となると如何しても外に出ざるを得ない……此れまでは何とか巧くやり過ごして来たが、遂に見つかっちまってゴスペルを入手する前の俺達の様に外敵認定されたと言う訳か……」

「だとしたら自業自得っちゃ自業自得な訳だけど、だからと言ってこの状況を見過ごす事は出来ないわよね?
 困った時はお互い様!一応、曲がりなりにも知らない仲じゃないし、クーデター事件の時にはお城まで運んで貰った恩もあるし、何よりも遊撃士として困ってる人を見捨てられますかっての!」

「良く言ったわエステル!それでこそ真の遊撃士よ!」

「其れでは参りましょう!」

「他は兎も角、あの大きいのは別格みたいだから油断しないようにだね。」

「機械兵ばかりですか……システムダウンのカードも持って来るべきでしたね。」



シュテル、遊戯王のカードで攻撃するのはそろそろやめた方が良いと思うぞ……いやまぁ、確かに便利ではあるのだがな?――取り敢えず、カプア一家の救出が先だな。
一体だけ巨大な奴は少々厄介そうだが、此のメンバーならば先ず負ける事は無いけれどね。









夜天宿した太陽の娘 軌跡141
『カプア一家との再会。そして辿り着いたラストステージ』









と言う訳で戦闘に割って入ったのだが、私達が現れた途端に小さな機械兵達は攻撃をピタリと止めてしまった……ゴスペルを持ってるクローゼも一緒に割って入った事で、カプア一家の事もこのリベル・アークの住人が外より招いた客人であると認識したのかもしれないな。
そして客人に対する無礼を詫びるかのように薬やら食材やらを落として行ったんだが、デカい奴だけは去る気は無いみたいだな?



「コイツ、やる気みたいね?」

「……此れは此処に元々いた機械兵じゃない。結社の重人形兵器《レオールガンイージ》だ。普通は拠点防衛用に使われる事が多いんだけど……」

「どの道、話が通じる相手では無さそうです……殲滅するしかないでしょう。」



「あ、アンタ達如何して此処に!?」

「そりゃこっちのセリフだ!ったく、面倒事増やしやがって……コイツをぶっ倒したらキッチリ説明して貰うからな!逃げようとか思うなよ!!」



デカいのは結社の重人形兵器か……成程、リベル・アークに元々居た機械兵に紛れ込ませる事で、もしも私達がゴスペルを手に入れていたとしても妨害が出来るようにしていたと言う訳か。
流石は腐れ外道、見事なまでに性格の悪さが分かるやり方だな……大方ゴスペルを手に入れて安心しきった私達の裏を掻いてあわよくばと言ったところだろうが、生憎とお前は私達の力を少しばかり過小評価しているようだな?
拠点防衛用の重人形兵器だろうと、私達の敵ではないんだよ。
拠点防衛用の重人形兵器と言う事は、防御力は高いが機動性には劣ると言う事でもあり、そんな鈍い奴ではヨシュアの動きに付いて行く事は出来ないし、分厚い装甲もジンとアガットの攻撃を完全に防ぐ事は不可能な上、灼熱の魔法を使うシュテルと、水属性のアーツを得意とするクローゼの連携攻撃で装甲はいとも簡単に砕け散るからね。
そして装甲が砕けてしまえば後は簡単だ。
シェラザードの鞭打、ケビンのボウガン、オリビエの導力銃が重人形兵の内部を貫き、トドメは……今回は『幻属性』と私の『闇属性』を棒術具に宿してみるか。ブチかませエステル!!



「此れで終わりよ!超魔導金剛撃!!」



――ドッガァァァァァァン!!



うむ、略行動不能になっていた重機械兵は此の一撃で完全にスクラップになったか……よもや闇属性と幻属性の融合が此処までの破壊力を生み出すとは予想外だったが、もしも闇属性と極めて近い属性である『時属性』と融合させたら一体どれだけの破壊力を生み出すのか分かったモノではないな。



「これで良しっと!そんで、アンタ達怪我はない?」

「お前、ノーテンキ女なのか?あれ、でも髪も目も色が違う……アインスと交代したって訳でもなさそうだし……え、マジでノーテンキ女?」

「だから、誰がノーテンキ女よ。此れは半実体化したアインスと融合してるからこうなってるのよ!
 如何やら大きな怪我はしてないみたいだけど、アンタ達なんだってこんな所に居るのよ?」

「いやぁ、其れに関しちゃ実に恥ずかしい話なんだがな、ドルン兄の発案で『此処にはお宝がある筈だ!』って事で、此処に乗り込もうとしたんだが、その直前で山猫号の導力エンジンが停止しちまってな……そんでもって此処に不時着したって訳だ。
 まぁ、此処に乗り込むって目的は達成出来た訳だけどな。」



なんとまぁ、ケビンの予想は的中ピシャリだった訳だ。



「ケビンさん、星杯騎士って未来予知も出来るのかしら?」

「星杯騎士だけに星占いで未来を見通せます~~って、そんな訳ないやろ!今回の事は偶々やで?俺かて自分の予想が的中した事に驚いとるんやでエステルちゃん?」



うむ、実に関西弁キャラらしい見事なノリ突っ込みだったなケビンよ。……で、お前達はこれからどうする心算なんだ?



「その前にさ、お前の肩に乗っかってるのってアインスだよね?何で今日はそんなにちっこいのさ?」

「其れはユニゾン状態だからだ。
 ユニゾン状態は私とエステルの魂が融合した状態だから、普段のようにフルモードでの半実体化が出来なくて、この大きさでしか半実体化出来ないんだよ……因みにこの状態でも通信用のミニアインスは幾らでも作り出せるがな。」

「ソイツは何ともスゲェ事なんだろうが……其れは其れとして俺達は山猫号の修理を最優先でやる心算だ。
 幸い材料は調達してあるから何とかなるとは思うんだが……」

「機体の方は兎も角、問題は例の『導力停止現象』だ。
 要するに、無理して飛んだとしても、都市から離れた途端に墜落するんだろ?」

「零力場発生装置の大型版が無いと、十中八九そうなるだろう。」

「アルセイユのラッセル博士に応援を要請しようか?」

「ま、都市の中なら導力通信も使えるみたいだから必要なら此方から連絡するさ。其れよりも、お前達は此のまま《輝く環》を探すのかよ?」

「うん、その心算だよ。」

「其れが、この浮遊都市に来たアタシ達の本当の目的だし。」

「……だったらジョゼット、お前このままヨシュア達と一緒に行動したらどうだ?」



っと、此処でキールがまさかの提案をして来たな?
此れにはジョゼットも驚いたが、ドルンが『山猫号の修理は俺達だけでも充分だから、お前には情報収集をして貰いたい』と言われると、『成程』と納得したみたいだし、ヨシュアも『アルセイユと山猫号の間の連絡係も必要になるかも知れないし……良いかも知れないね』と前向きな姿勢だった。



「うん、アタシも同感!アンタも其れで良いわよねジョゼット?」

「ふん、まぁ兄貴達とヨシュアがそう言うなら仕方ないからアンタ達に協力してやるよ。助けられっぱなしってのは、カプア一家の名折れだからね。」

「素直じゃないわねマッタク。」

「生憎、何処かのお人好しみたいに単純には出来てないんでね。」

「あ、あんですって~~?」

「……ふぅ、マッタクもう……何が原因かは知らないけど、少しは仲良く出来ないのかな?」



その原因はお前だからなヨシュア?
エステルは当然だが、ジョゼットもお前に思いを寄せているんだよ……正妻の座はエステルで間違いないが、だからと言ってジョゼットが諦めるとは思えんからあわよくばと虎視眈々と機会を窺っている、そんな所なんだろうな。
タイプは違うが天真爛漫の超絶美少女二人から好意を向けられるとは、被リア充からは『爆発しろこの野郎!』と言われても仕方あるまいな。



「あのねぇヨシュア……」

「アンタが其れを言う?」

「え……?」



そして、ヨシュアは盛大にやらかした訳だ……ヨシュアの欠点を上げるとしたら其れは、『女心を分かってない』、此れに尽きるな。



「アカン、盛大に踏んでしもうたか……」

「ハッハッハ、怖いもの知らずだね。」

「……鈍感。」



そして何気にクローゼが容赦ないな。



「ねぇ、ジョゼット……此処は一時休戦にしない?」

「……そうだね。如何やら当面の敵はお互いじゃなさそうだし。」

「えっと、その……打ち解けられた事は良いんだけど、何か拙い事を言ったかな?」

「ううん、ちっとも。」

「気のせいじゃないの~~?」

「そ、そう……(目が笑ってないんですけど。)」



まぁ、ヨシュアも何かを感じ取っただろうが、此処での戦力増加は正直ありがたい事ではある――此れから先、執行者と遣り合う事を考えると、味方は一人でも多いに越した事はないからな。
そう言う意味では、ジョゼットは後方支援として優秀な人材と言えるから一緒に来てくれるのならば心強くはあるさ。

と言う事で新たにジョゼットを加えてリベル・アークの探索を行う事に。
探索中、色々な所に都市のマップが存在していたので中枢塔の場所を調べてみると、『中枢塔』の名が示す通り、都市の中心部に位置しているらしい。
中枢塔の正式な名称は『アクシスピラー』か……中枢塔と言うだけあってとても重要な場所らしく、都市の地上部からのアクセスは不可能で、迷宮の様な地下部からのみ中枢塔のあるエリアにアクセス出来るようになっているらしく、現在地下迷宮を攻略中。
全員で同じ場所を動いても効率が悪いので、ツーマンセルで五つのチームに分かれ、それぞれに通信用のミニアインスを同行させて、先に進めるルートを見付けたら連絡する、と言う形で進んでいる訳だ。
そうして進んで行けば行くほど結社の人形兵器が増えて来た訳だが、其れは逆に言えば中枢塔に確実に近付いている証でもある――となれば当然戦闘も増えて行くのだが、此の程度の相手ならば特段苦戦する事もないし、戦闘を行うたびにエステルとの融合率も上昇しているから私としては嬉しい限りだ……現在の融合率は97%と言ったところだろう。融合率が99%になったその時に、私の目的は完遂されるな。

そんな感じで地下迷宮を攻略して、いよいよ地上部にだな。



「ま、まぶし……」

「照明があったとは言え、薄暗い地下から地上に出れば其れは眩しいさ……さて、此処は目的地か?」

「……!皆、アレ!!」



周囲を見渡していたヨシュアが何かを見つけたらしく、私達も其方に視線を向けると、其処には一本の巨大な柱……いや、柱などではない、其れこそ空に浮遊している都市にあって更に空を貫く程に高く聳え立つ超巨大な塔だった。



「アレが《アクシスピラー》……」

「墜落して以来、ずっとあの塔を見て来たけど……此処まで大きな塔だったなんて……」

「……ねぇ、ヨシュア。あそこに、レーヴェや教授達が居るのかな?」

「……可能性は高いと思う。《中枢塔》の中が示すように、如何やら都市の中枢を司る場所みたいだ。
 《輝く環》の手掛かりだって、あるかも知れないからね。」

「都市の中枢を司る……となれば、此処を壊滅状態にしてしまえば都市そのものが機能しなくなり、導力停止現象も治まる、その可能性はあると言う事でしょうか?」

「まぁ、可能性としては充分あるやろうけど……やからって此処を滅茶苦茶にぶっ壊すっちゅうのは無しやでシュテルちゃん?そないな事したら、俺達も天の女神様の元に許に召されてまうからな。」

「そうですか、残念です。」

「つまりやる気だった訳ねこの子は……」

「このガキンチョ、思考が些かバイオレンス過ぎねぇか?」

「いやぁ、僕としてはこのミステリアスさとバイオレンスさの見事な融合がシュテル君の魅力であると思っているのだけれどねぇ。」

「お褒めに預かり光栄です。」

「ま、少なくとも度胸は大したモンだ。
 其れと、シュテルがやらなくとも都市に影響がないレベルで一部は壊れてるみたいだぞ?北側の方向……アインスと融合してるエステルの放った一撃で壊れたんだろうな。」

「あ~~……此処まで届いてたんだ。10倍かめはめ波ハンパないわねぇ。」

「世界的ヒーローの最強形態の最大必殺技だからな。」

にしても、アレがアクシスピラー……そして、其処には間違いなく執行者と、そしてあの外道教授が居るのだろう。
となれば決して楽な戦いではないだろう――恐らくだが塔の内部には此れまでとは比べ物にならないレベルの結社の人形兵器が配置されている筈だし、要所要所で執行者が待ち構えているのだろう。
強敵と戦いながら塔を攻略していくとか、まるでブルース・リーの『死亡遊戯』の如くだが、強敵との戦いは寧ろ望む所だ――相手が強ければ強いほど私とエステルの融合率も上がるからね。
私達を苦しめる心算だったのが、逆に私達を強くしてしまったと知ったその時、貴様は一体どんな顔を見せてくれるか……楽しみにしているぞ、此の世界に存在している事自体が間違いだと言う以外にない外道教授よ……!











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