Side:アインス


浮遊都市に到着する寸前で剣帝の襲撃を受け、アルセイユは浮遊都市に不時着する事になり、ラッセル博士達は中破したアルセイユの修理に取り掛かり、私とエステルとヨシュア、クローゼ、シュテル、シェラザード、アガット、オリビエ、ジン、ケビンの十人……いや、私はエステルとユニゾン中だから人数的には九人は浮遊都市の内部に入って行った。
浮遊都市の内部はSF映画に出て来る機械要塞の内部の様な印象だったが、其れだけでなくSF映画に出てくるような機械兵も現れて攻撃して来た。



《何なのよコイツ等!》

《恐らくだがコイツ等は外界から侵入して来た者達を自動的に攻撃するよう設定されている、浮遊都市の防衛機能の一つだろうな……私達を外界からの侵入者であると何を持って判断してるかは知らんがな。》

《だったらなんで結社の連中は普通に此処に入れた訳!?……って、若しかしてゴスペルのおかげだったりするのかしら?》

《有り得るかも知れん……ゴスペルは、此処で暮らして居た人達にとっては、この場所の住人である事を示す住民票の様な役割も持っていたのかも知れないな。》

《だとしたら、ラッセル博士にゴスペル持って来て貰うんだった~~!》

《まぁ、無いもの強請りをしても仕方ないさ……此処は、本番前のウォーミングアップと割り切って行くしかないだろう。》

《上等よ!》



とは言え、決して少なくない数だから一筋縄では行かないだろうがな……もしもこの場にレヴィがいたならば、この機械兵は一撃で撃滅出来たのだがな?アイツなら一撃でショートさせられるだろうからね。



「精密機械は過度の電気に弱い……ならば、偶然ポケットに入っていた『サンダーボルト』のカードを発動します。ノーコストで相手モンスターを全滅出来る効果は素晴らしい。」

「……一瞬で機械兵が全滅しましたね?」

「お嬢ちゃん、そないな便利なモノ持っとるんやったら最初から使ってや……」



シュテル、偶然ポケットに入っていたって、何をどうやったら元極悪禁止カードが偶然ポケットに入るのか説明をして欲しいモノなのだが……其のお陰で機械兵を一掃出来たのだから問題は無いか。
さて、この階段を上れば外に出れそうだな。









夜天宿した太陽の娘 軌跡140
『浮遊都市はリベールの御先祖様の住まい?』









階段を上って外に出てみると、此れはまた何とも見事な大都市が広がっていた。
機械文明が発達しているだけでなく、循環型と思われる池と滝、草花や樹木もそこかしこに存在し、この浮遊都市が自然との調和を目指していた事もうかがえるな?



「こんな所に、災厄の元凶があるの……?」

「あると言うか、居るの方が正しいかな?災厄の元凶はこの浮遊都市と言うよりは、此れを今の世に蘇らせた結社だからね。」

「ヨシュアさん……確かにその通りかも知れませんが、結社は一体何を企んでいるのでしょうか?」

「其れは、僕にも分からない。
 執行者は幹部級の存在ではあるけど、執行者でも結社の真の目的を知っている者は殆ど居ないんだ……恐らくだけど、レーヴェですら結社の真の思惑は知らないんじゃないかな?
 でも、結社の存在其のモノは完全な『悪』とは言い切れない部分もあるんだ――自分達の目的の為に使えるからって理由ではあるけど、僕やレンみたいな存在を受け入れてくれた訳だからね。
 まぁ、だからと言ってあの教授の事を好きになれるかと言われたら其れはまた別問題なんだけど。」

「大っ嫌い!アイツを好きになる人とかこの世に存在すんの!?」

「しないと思うわよエステル。」

「外道バスターの紅林二郎か、外道処刑人の拷問ソムリエ伊集院茂夫を召喚したい所ですね。」

「……奴さん、今頃盛大にクシャミしとるかも知れへんなぁ……」



確かにな……だがシュテル、紅林と伊集院はヤバいから止めとけ。
其れから都市の散策を行い、なにやら台の上に策で囲まれた円形のモノがあったので、乗ってみたらなんと無線式のエレベーターだったらしく都市の上の方まで運んでくれた。
無線式のエレベーターなんてモノは、我が主の世界でも存在していなかったモノだが、一体どんな機構になっているのか実に気になるところだ……恐らく導力を利用しているのだろうが、リベールで使われているオーブメントには此れだけの事が出来る機能はなかったから、この浮遊都市の文明は矢張り現在のリベールよりも発展していたのだろうな。



「此処って、若しかして街なのかな?」

「そやね。
 大崩壊前まで古代人が暮らしていた古代ゼムリア文明の大都市……やったんやろな。」

「もう、人は住んでないの?」

「多分ね。
 《輝く環》と共に封印された時に住民の殆んどは退去したらしい……如何やら、この浮遊都市の名前は『リベル・アーク』と言うみたいだ。」

「リベル……なんだか響きが似てるな?」

「はい……若しかして、『リベール』の語源なのでしょうか?」



その可能性は大いにあるかも知れん。



「だとしたらここはリベール王国のルーツ……アタシ達の御先祖様が住んでた街だったんだ……」



まぁ、そう言う事になるのだろうな。
そして、リベールの民が信仰している『空の女神』と言うのも、若しかしたらこの浮遊都市で暮らしていた先祖の事を指しているのかもしれないな……此れは案外的外れな説ではないと思うよ。
その後も都市部の探索を続けてみると、透明なレールのモノレールが『非常運行モード』で運用出来たので其れを使って他の区画に移動だ。
そして着いた先は古代人達が暮らしていたであろう居住区画と思われる場所で住居類は今でも生活出来るであろう状態を保っており、大きめの建物では何かの装置がクローゼに反応して、如何やらそれはこの場所で生きて行くのに必要になる身分証明を兼ねた携帯端末の再発行機のようだった。
何故クローゼに反応したのかは分からないが、如何やら認証は簡単らしく、入力すべきは名前だけなのだがクローゼの名前を入れても当然弾かれてしまうのがオチだろう……だが、クローゼに反応したと言う事は少なくともこの浮遊都市にはクローゼの御先祖様と言うべき人間が住んでいたと考える事が出来る訳で……ふ~む?



「クローゼ、一番古い御先祖様の名前とか分からない?」

「一応アウスレーゼの系図にて最も古い御先祖様の名は分かっていますが……果たしてそれが正解であるかどうかまでは……」

「え、多分それが正解だと思うけど?
 私達の御先祖様って此処で暮らしてて、でも此処から地上に移っちゃったんでしょ?だとしたら、記録に残ってるクローゼの御先祖様の一番古い人って此処から地上に降りて最初のリベールの王様になった人って事になる訳だから、其れで行けるって……って、なんで皆揃って狐に抓まれたような顔してんの?」

「失礼を承知で言うけど、君が其処までちゃんと考えて発言した事に驚いてるんだよ、僕も皆も。」

「考え無しで、考えるよりも先に身体が動いて突っ走ってた子がまさかこんな事を言えるようになるだなんて、先輩としては感慨深いものがあるわぁ。」

「単純にアインスと合体して脳ミソが一時的に活性化してるだけなんじゃねぇか?或は、直観力が鋭くなってんのかもな。」

「アインス君と合体して髪と目の色も変わっているから、偽物だと言われたら信じてしまいそうだねぇ~~?」

「もしや、エステル・ブライトを模した第四のマテリアル……太陽のマテリアルだったりするのでしょうか?」

「鋭い直観力と前向きな行動力、其処に洞察力が加わったらもう敵なしだな!お前さん、冗談抜きで将来的にはカシウスの旦那を超えるかもな?」

「ジンさん以外が割と容赦ないなぁ……ファイトやで、エステルちゃん。」

「なんか皆酷くない!?」



ハハハ……確かに言いたい放題だが、スマン私もちょっと驚いた。
お前がまさかそこまで考えていたとは思わなかったからね……正遊撃士になって、ヨシュアがいなくなって、いなくなったヨシュアを探す中で幾度となく結社と遣り合って、一度は結社に捕らわれてと様々な経験をしたことでエステルも相当成長したのは間違いないが、まさかこんな事を言えるようになってるとは思わなかったからな。

で、エステルの意見は大正解で、『セレスト・D・アウスレーゼ』と入力したらなんとゴスペルが手に入りましたとさ――そして、ゴスペルを手に入れたら機械兵達が襲って来る事も無くなったか。
ゴスペルを持ってるのはクローゼだけだが、私達はゴスペルの持ち主に招待された客人と言う扱いになり、機械兵も攻撃して来なくなったのかも知れないな……奇しくも、『結社はゴスペルを持ってるから外敵認定されなかった』と言うエステルの仮説は当たっていた訳だ。

その後も探索を続け、ある住居ではカプセル型のベッドに入ったら僅か一分程度で体力が全回復し、別の場所では謎の料理レシピが手に入ったりと此の場所では嘗て人が暮らしていたのだと言う事を実感させてくれるものと数多く出会った……正直なところ、文明レベルで言えばこの浮遊都市は現在のリベール王国、引いてはゼムリア大陸全体の文明レベルを超えていると言えるだろうね。



《私もそう思う。
 でも、だったら如何して、こんなに綺麗で立派な街なのに……如何して昔の人はこの街を捨てちゃったんだろう?》

《其れは分からないが……『大崩壊』とやらで此処に住み続ける事が出来なくなったからではないだろうか?だからこそ、古代人達は仕方なくこの浮遊都市を捨てて地上で暮らす事を選んだ。
 そして、地上で暮らすにはこの浮遊都市は不要と判断して封印したのだろうな……どうやって封印したかは分からないが。》

《……結社はこの都市を蘇らせてどうする心算なんだろう?》

《さてな……だが、少なくともあの外道教授が関わっている限り碌な事でないのは間違いないだろうさ……あの腐れ外道は、己の目的を達成する為ならばドレだけの命が散ろうとも、其れは必要経費として処理出来るだろうからね。》

《マッジで腐れ外道ね?脳天カチ割ってやりたくなって来たわ!!》

《そう遠くなく奴と対峙する時は来るだろうから、其の時が来たら思い切りやってしまえ。》

《モチのロンよ!》



そう言えばヨシュアがカプセル型のベッドに入っている間にケビンが何かやってたみたいだが、アレは一体何をやっていたのだろうな?ヨシュアに何かをしていたみたいだが……まぁ、悪い事ではないだろうな多分。
さて、もう少し探索を続けて――



『ようこそ、遊撃士諸君。』



と思ったところで聞こえて来たのはあの腐れ外道の声!



『諸君が来る事を想定して、此処にメッセージを残させて貰った。
 『福音計画』は最終局面に移行し、《輝く環》が真に目覚めるのも近い……中枢塔の頂上まで辿り着く事が出来れば、諸君に《環》の復活を見せてあげよう。楽しみに待っているよ。』




安い挑発……とは言えんな。
奴は確かに腐れ外道だが、その根幹には悪魔のような狡猾な頭脳によって計算し尽くされたモノがある訳だからな……其れを踏まえると、私達が中枢塔の頂上まで辿り着く事は可能だと考えつつ、其れでも私達を最終的には御す事が出来ると思っている訳か。
だとしたら些か私達を舐め過ぎだ。
ヨシュア、お前ならば方位磁石くらい持っているだろう?その方位磁石で現在地は何処が北を示している?



「えぇっと……僕から見て左手側だね。」

「となると、まったく反対側の南側方面の真ん中に中枢塔がある、そう言う事になるわね?」

「あぁ、そうなる……だからエステル、その方面に向けて一発かますぞ!」

「オウよ、やってやるわ!覇ぁぁぁぁぁ……ユニゾン限定超必殺技!10倍かめはめ波ぁぁぁぁぁぁ!!」



――ドッガァァァァァァン!!



中枢塔に届いたかどうかは分からが、それでも射線上にあったモノは幾つか吹っ飛んだのは間違いないだろう――そして、此れは私達からの宣戦布告だ。
浮遊都市に到着する前に剣帝からの洗礼を受けたが、今度は此方から宣戦布告をかましてやるさ……覚悟しろよこの腐れ外道!貴様の命は、あと五ターンだだからな?
私達がお前の元に辿り着くその時までに、精々辞世の句を考えておくが良い……尤も、貴様は魂の欠片も残らない程に滅殺する心算だから辞世の句を考えたところで無駄になるのかもしれんがな!











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