Side:アインス
学園の方はヨシュアに任せて、私とエステルはミックをルーアンに無事に連れて行く事が最優先事項な訳だが――お前は何か言いたい事があるみたいだなミック?
ルーアン迄の護衛が私達だけでは不安か?
「そう言う訳じゃねぇんだけど……学園の方は本当にヨシュア一人で大丈夫なのかよ?」
「あぁ、不安なのはそっちの方か。だがそっちはマッタク持って問題ないから大丈夫だ。」
「そーそー!ミック君にはお姫様な印象しかないかも知れないけど、ヨシュアはホントはとっても強い男の子なのよ?
悪い奴なんか一人でけちょんけちょんにのしちゃえる位、すっごい実力の持ち主なんだから!」
「そして何よりもそのスピードは驚異的だ……ヨシュアの本気のスピードは冗談抜きに目にも映らん。そして隠形の能力も高いと来ている……こう言ったら何だが、ヨシュアが本気を出したら窃盗も食い逃げもやり放題なのではなかろうか?」
「其れは……確かにちょ~~~~っと否定出来ないかも。ヨシュアは絶対やらないだろうけどね。」
「そ、そんなに凄い奴だったのかヨシュアって。」
「そうよ?……でも、アタシだってヨシュアにだけ任せてる訳じゃないわ。
こうやって危険から人を守ったり、起こった問題を報告したり、其れを解決するための準備をするのも遊撃士にとって大事な役割なんだし……そうよ、ヨシュア一人だけじゃないんだからね。」
そう、ヨシュア一人だけではないからな。
なので今は一刻も早くルーアンに戻ってジャンに此の事を報告して指示を仰がねばだ……援軍を得る事が出来れば御の字、援軍を得る事が出来なくともジャンならば現時点での最善策を打ち出してくれるだろうからね。
……そしてキリカならば、現時点での最善策ではなく解決策を打ち出してしまうのだろうなと考えてしまった私はきっと悪くない。あの未来予知とも言える先読みの力、きっと彼女は良いデュエリストになれるだろうね。
尚、ルーアンまでの道のりで襲い掛かって来た魔獣は一々真面に相手をするのも面倒なので、出てきた瞬間に極大の雷魔法を喰らわせて滅殺してやった……『サンダーボルト』は矢張り極悪魔法だな。
夜天宿した太陽の娘 軌跡130
『Jennis Royal School Liberation Operation』
Side:ヨシュア
旧校舎までは見る事が出来なかったけど、其れでも校舎と寮、講堂の状況を知る事は出来た。アインスが置いて行ってくれた『ミニ・アインス』が手伝ってくれた事もあって、予定よりも短時間で状況を把握出来たのは嬉しい誤算だったかな……ミニ・アインスは見つかっても其の時は、一切動きを止める事で『何だ、人形か』で済まされるのもある意味利点だったみたいだね。
今のところ怪我人は銃で撃たれた用務員の人だけで、其方も致命傷ではないみたいだから一安心だけれど……さて一体如何したモノかな?
敵は結社が使っている強化猟兵と装甲獣……陽動作戦が使えれば制圧は其処まで難しいミッションではなさそうだけど、この事態に短時間じゃ流石に援軍は望めないだろうな。
……無理をすれば、僕一人でも……
――ポンポン
「(フルフル)」(首を左右に振っている。)
「うん、分かってる。エステルとの約束を違えたりはしないから、其れは安心して。其れに、何か問題あったら君を通してアインスに連絡を入れる事になってるからね……大丈夫、無理はしないから。」
「(グッ!)」(サムズアップ)
とは言っても、此の状況は学園の生徒にとっては不安以外のナニモノでもないから、その不安を少しでも和らげておく事位はしても罰は当たらないと思う……だからこのメモを此処に――ジルとハンスならきっと気付いてくれる筈だ。
もう少しだけ待っていて、必ず助け出すから!
――――――
Side:アインス
ミックの事は事が終息するまでギルドで預かって貰う事になったのだが、まさか此れほどの援軍を得る事が出来るとは思わなかったな……此れはある意味で王国軍の応援以上の援軍とも言えるかも知れんな。
で、全速力で学園に戻るとヨシュアは学園外の木の下で待機してた……一人で無理はしなかったみたいだな。まぁ、今のヨシュアがエステルとの約束を違える事などあり得んか。ミニ・アインスからの連絡もなかったしな。
闇に生きて来た己に光を与えてくれた誰よりも愛する太陽の少女との約束は、ヨシュアにとっては絶対だろうからな……そしてエステルもまたヨシュアには絶対の信頼を寄せているからね――うん、エステルとヨシュアは間違いなく世界最強のカップルだと言って良いだろうな。
エステルが状況を聞くと、ヨシュアは『今の所は目立った動きはないよ』と前置きをした上で、学園の状況を教えてくれた。
学園の人達は各部屋に監禁されているが全員無事で、撃たれた用務員も致命傷ではなく命に別状はないか……此の状況で怪我人が一人だけと言うのは不幸中の幸いだな。
「ルーアンでギルドに報告はして来たわ。
ジャンさんが王国軍に連絡してくれたけど、直ぐには応援には来れないみたい。」
「だろうね……だから学園には……」
「人の話は最後まで聞けヨシュア。
確かに王国軍からの応援は無理だったが、ところがギッチョン、ある意味では其れ以上の援軍が来てくれたぞ?マジックカード発動、『凄腕遊撃士集結』!!ってね。」
「ヨシュア君、ひっさしぶり~~!!」
「よぉ、元気してたか!」
「って、聞くまでもない感じだけどね?」
「クーデター事件以来だが、あの時よりも良い顔になったなヨシュア君。」
王国軍の応援は望めなかったが、偶々ボースからルーアンにやって来ていたクルツ、カルナ、グラッツ、アネラスが援軍としてやって来てくれたからな。
アネラスは私達よりも先輩だが新米遊撃士であるが、其の実力はル=ロックルの訓練場で強化されているし、カルナとグラッツの実力は疑いようもないしクルツに至ってはA級遊撃士だから、ある意味では此れ以上の援軍はあるまい?
そして其処に私とエステル、そしてお前が加わるんだヨシュア、此れだけの戦力があれば学園を結社の手から解放する事など造作もあるまい?
「アタシもそう思うわ。これなら行けるわよねヨシュア?」
「……うん、これなら行ける。」
その後ヨシュアからの説明を受けてたのだが、結社の目的は分からないが現状では結社の兵士達が学園を占拠して生徒と職員を監禁していると来たか……そして兵士の数は其れなりに居て、此の状況でも使用出来る導力銃などを装備しているか。
となると、結社もラッセル博士が開発した『零力場発生装置』のようなモノを持っていると考えるべきか……導力停止現象下で導力が使えると言うのは大きなアドバンテージになるから、此れ位は当然か。
王都では、ゴスペルを使って導力停止現象を無効にする実験をしていたからな。
「学園に居るのは下位の兵士のみで結社の幹部は不在のようです。
彼等が次の行動に出る前に、此方から一気に打って出れば、この戦力で充分制圧可能です。」
「ならば我々が正面から攻め込んで兵士を誘いだすと言うのは如何だろう?
その隙に学園内部に詳しいエステル君、ヨシュア君、アインス君が裏手から突入して人質を解放して行くと言う形になるが。」
「其れで良いと思います。」
「……ふふ、なんだかエルベ離宮の人質解放作戦を思い出すね。
ヨシュア君も戻って来たし、あの時と一緒だよ。なんかもう、成功する気しか起きないよね!」
確かに、あの時の主力が集まっているな今も……確かにアネラスの言うように、成功する気しか起きないな。――幹部が、執行者のいない結社など所詮は『普通より少し強い兵士』が居るだけの集団に過ぎんしな。
取り敢えずミニ・アインスを回収して、さて作戦開始だ。
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数分後、轟音と共に作戦開始!
先ずはカルナが此の状況でも使える火薬式のアサルトライフルで正門前の兵士を攻撃して意識を其方に向けさせる。……結社の兵士の装備は防弾チョッキの様になっているだろうから弾丸が当たっても死にはしないだろうが、其れでも意識が吹っ飛ぶくらいの激痛は感じただろうね。
此の攻撃によって正門が開き、中から出て来た結社の兵士達とクルツ達が対峙している間に、私とエステルはヨシュアの案内で学園の裏手から校内へと侵入完了……誰にも気付かれない侵入ルートを見付けるとは、流石は隠形のエキスパートだな。
「アレだけ派手に正面突破をしてくれたなら、可成りの兵士が正門付近に引き寄せられている筈だ。
其れに乗じて僕達は、学園内の各施設に侵入し、校舎内に居る兵士の撃破と、拘束された職員と生徒全員の救出を行う。」
「うん、シンプルで分かり易いわね!」
「マッタクだ!」
そして校舎内の兵士の撃破と人質の救出は極めてスムーズに進んだ。
ヨシュアが道案内をしてくれた事で兵士達にはギリギリまで気付かれなかった事で完全な奇襲となった事、私とエステルとヨシュアの戦闘力が兵士達の戦闘力を大きく上回った事が要因だろうね。
そして今、学園長室前の兵士を倒して学園長の無事を確認だ。
「王立学園が結社に占拠されたと連絡を受けて、遊撃士協会が助けに来ました!」
「学園の皆は無事かね?」
「偵察時に全員の生存を確認してます。」
「彼等の救出を第一目標に据えて、現在学園内外にいる兵士の制圧を行っている所です。」
とエステルとヨシュアが状況説明しているのだが、状況説明をしながら意識を刈り取った兵士を縛り上げてるヨシュアが凄い。
そしてただ縛り上げるだけでなく、解こうともがけばもがくほどキツクなっていくと言うエグさ満点の縛り方だからな……冷静に見えて、ヨシュアも今回の事は怒ってるって事なのだろうな。
「そうか……実はな、兵士の首謀者はこの学園の出身者なのだよ。」
「えぇ!?」
「卒業生と言う事か……」
「彼にとっても此の学園は勝手知ったる場所だ……くれぐれも気を付けるように。」
地の利があるのは敵も同じと言う訳か……しかし結社の人間で、尚且つこの学園の卒業生でこんな事をする奴となるとたった一人しか思い浮かばんのだが、だとしたら阿呆過ぎるんだがな?お前もそう思うだろうエステル?
「結社の人間でそんな人いたっけか?」
「うむ、ついこの間会ったばかりだと言うのにもう存在を忘れているとは逆に驚きだ。まぁ、所詮はその程度の存在でしかない訳だが。」
ヨシュアも『誰?』って顔をしてるから、此れは完全に記憶から抹消されているな。
此処で教えてやっても良いんだが、此の短期間で忘れられてしまっている事を知った方が奴の反応が面白そうだから黙っておくか……自分で言うのも何だが、中々良い性格してるな私も。
その後も順調に兵士達を制圧して人質を次々と解放し、人文科教室も解放して中の生徒の、ジルとハンスの無事も確認だ――思った以上に気楽な様子だったが、如何やらヨシュアがメモで『遊撃士協会による学園解放作戦が行われる』と伝えていたみたいだったな。
其れだけなら良かったのだが、ジルに呼ばれたので近くに行ってみると、小声で『兵士が此処に王家の姫は居ないのか聞いて来た』と教えてくれた。
と言う事は、連中の狙いはクローゼか?連中はクローゼが王家の姫君だとは掴んで居なかったらしいので、ジルは適当にあしらったらしいが……今この場にクローゼが居なかったのは幸いだったな。
「ホントにその通りよ。もしもクローゼが居たら如何なっていたか……」
「いや、結社の連中がだ。此処にクローゼが居て、もしも結社の連中がクローゼに何かしようものなら私は間違いなくそいつ等を永遠の悪夢に閉じ込めて時間を掛けてじっくりと精神的に殺しただろうからな。
クローゼに手を出す輩には『死』あるのみ。」
「アインス、取り敢えずアンタだけは敵に回したくないって確信したわアタシ。」
「私は、存在がバグだからな。」
取り敢えず此処は解放したが、他ではまだ戦闘が続いているのでな安全になるまで此処で待っていてくれ。そうだな……後十分程で学園は安全になる筈だからな。
「十分?五分でしょ?」
「ハハ……楽勝だな。」
「な、なぁエステル、アインス……ケリが付いたら、必ず来てくれよ?」
ハンス……分かっているさ。ヨシュアの事もあるからな。
「うん、分かってるわハンス君!」
その後も順調に兵士達を制圧して行ったのだが、その過程で分かった事もある。
結社の兵士は導力停止現象下でも使える導力銃を使っていたが、其れには半実体化した私にダメージを与える機構は備わっていなかったと言う事。
半実体化した私にダメージを与える機構其の物が相当に複雑なモノなのだろうが、導力停止の影響を受けない機構と合わせるのは可成り難易度が高かったと見えるが……そうであるならば、私は無敵のスタンドモードなので一方的に殴らせて貰った。
そんな訳で敷地内の主な場所は制圧出来たな。
「其れは良いんだけど、何でアインスの攻撃は基本パンチのラッシュだったの?」
「主人公のスタンドは近距離パワー型でパンチのラッシュが必殺技と相場が決まっているからだ。後は最低一秒の時の停止が出来るようになれば完璧だな。」
まぁ、其れは其れとしてクルツ達の方も首尾よくやったらしく、寮の方を開放し、今はカルナとグラッツが残存兵の有無を確認してるか――で、クルツから救出した人物のリストを渡されて、私達が救出した人物と合わせて欠けがないがヨシュアが確認中だ。
「一人、女子生徒がまだ。」
だが、まだ一人女子生徒が救出されていないみたいだ……だが、校舎内は全て解放したし、寮の方も解放して、講堂にはそもそも居なかったので、そうなると残るは旧校舎になるのだが――
「いやーーーーー!!!」
今の声は、学園の裏手から!……矢張り旧校舎か!!
残る最後の一人も、無事に救出せねば任務達成とは言えんからな……今すぐ行くから待ってろ!王立学園解放作戦の、クライマックスだな!!
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