Side:アインス


新たな仲間として、三国志屈指の英雄である趙雲と、あの小さき勇者の娘が加入するとは予想外だったが、これは頼もしい事この上な
い事だよ。
かの趙子龍の武は、後世まで伝えられているし、あの小さき勇者は1000年の間で、唯一私に決定的な一撃を喰らわせた相手だから
ね。



「えぇ!?アインスさんは、リインさんのお姉さんって事ですか!?」

「後継機の姉……確かにそう言えるかも知れんな。」

どう接したモノかとも思ったが、小さき勇者の娘――ヴィヴィオとはすっかり仲良しだ。
私としては、私が消滅した後の世界が気になっていたんだが、ヴィヴィオの話を聞く限りでは、如何やら平和なようだね――我が主も
今や、時空管理局の重役と言うのには驚いたがな。

「私の後継機――ツヴァイは元気にやって居るだろうか?」

「はい、問題なしです!!リインさんは、八神司令の片腕として頑張ってます。」



そうか、其れを聞いて安心したよ。
もう二度と見る事は叶わぬ光景だろうが、私の後継機が主の役に立っていると言う事を知る事が出来てよかったよ――教えてくれて
ありがとうなヴィヴィオ。



「この程度は朝飯前ですよアインスさん。」

「ふむ、そう言われると何も言えんな。」

何にしても、戦力は増強出来た――後は、残りの祠をどうやって制圧するかだな。











討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務99
『天下最速の怪力従者~周倉~』










そんなこんなで、彼是作戦を考えてるんだが――浮かない顔をしているが何かあったのか環?



「奇妙な噂がございます。
 とても足の速い英雄様が現れたとの事です。
 その方に話しかけようにも、中々捕まえられないとか……一体どれだけ足が速いのでしょう。」



異常な俊足の英雄だと?
私の脳裏に真っ先に浮かぶのは、雷光の少女なのだが、違うよな?ましてや彼女を模したマテリアルと言う事も無いだろうし、砕け得
ぬ闇事件の時に現れた、赤毛とピンクの姉妹でも無かろうな――と言うか、此れだけハッキリした特徴を覚えておきながら、なんで顔
も名前も思い出せないのか……ちょっとミステリーだな。



「環殿。
 その英雄は、何処にいるのだろうか?会いに行ってみたいのだが。実は、俊足の将に一人心当たりがある。
 私の世界に居た知り合いなのだが……もし彼がその英雄なら、止めるのは至難の業だろう。」

「そんなに速い方なのですね……分かりました、場所をお教えいたします。」



趙雲の知り合いと言う事は三国志の人物と言う事になる訳だが、三国志に俊足の将など登場しただろうか?……否、単純に私が覚え
ていないだけか?
うん、余程影が薄い登場人物だったんだな。



「アインス、流石に其れは失礼だと思うぞ?――君なら分かるんじゃないかヴィヴィオ?」

「一人だけ該当する人が居ますけど、まだ趙雲さんの知り合いって決まった訳じゃないですから、其れは実際会ってからじゃないと分か
 りませんよ桜花さん。」

「其れは、ヴィヴィオちゃんの言う通りかもしれませんね。」

「む、其れもそうだな……では、実際に会いに行くとしようか捕まえるのも困難な俊足の英雄とやらにな。」



そうするとしようか桜花、皆もな。

「因みに参考までに、仮に趙雲の知り合いだった場合、ドレくらいの俊足なんだ?」

「そうだな……泉の周囲を、8つ数える間に1周してしまう程だ。」



泉の周囲は凡そ100m。其れを8秒って、確実にウサイン・ボルト超えてるじゃないか!
いやいや、そんなの普通の人間が捕まえられる筈がないぞ!?……此れは、迅の韋駄天を重ね掛けしないと少しキツイかも知れない
な……あと、韋駄天強化・俊足も可能な限り装備しておくか。



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環に案内されて到着したのは、趙雲とヴィヴィオと出会った場所――なのだが、環によると全く同じ場所ではなく、偶々同じ環境が再現
されているだけの別物なんだそうだ……ややこしいな。
何にしても、この広大なエリアから1人の英雄を見つけるのは至難の業だろうけどね。



「誰も捕らえられぬ俊足の将……赤兎馬並みの速さを持つ彼しか考えられない。
 如何やら他の勢力も来ているようだ。我等より先に、彼を勧誘する心算だろう――もたもたしてはいられない。
 一刻も早く彼に接触し、仲間になるよう説得せねば!」

「だな。英雄の力が他の勢力に流れてしまっては面倒だからね。」

しかし、現れたのはまた刹那軍か……積極的に動いていないように見える志貴軍が些か不気味だが――今は刹那軍よりも先に、ゴー
ルドメダリストをも上回る俊足を持つ英雄を仲間にせねばだな。

其れでは英雄を仲間にする為のパーティを始めようか、刹那軍の諸君!!このイカレタパーティを生き残れるかな!!



「で、出たー!六刀流の化け物だー!!」

「こ、こんな奴に勝てるはずがねぇ!逃げろー!!」

「こら、逃げるな!
 コイツ等をのぶニャが様の元へと行かせるな!全力で門を死守しろ!」



「……人をバケモノ呼ばわりしないでくれるか?」

「いや、君の場合は仕方ないんじゃないかアインス?」

「私は化け物ではなく、悪魔だ!」

「オイオイ、更に悪くなってねぇか!?」

「今のセリフ、ママの故郷のアニメで……そうだ、伝説の超サイヤ人だ。」



ハハハ、ヴィヴィオには分かってしまうか――取り敢えず、門番は必至に呼びかけるモノの、刹那軍の兵士は私を見て逃げ出してしま
ったようだな?
まぁ、自軍の英雄達を悉く瞬殺する様を見てれば恐怖も覚えるだろうからね……して、お前が相手になるか門番君?



「すみません、逃げるなとか俺が無茶振りでした。」

「分かれば宜しい。」

と言うわけで開門!六爪流で細切れにすると言う物理的な方法でな!
……この間の門はびくともしなかったのに、今回は豆腐を切るようにあっさりと……意味が分からんな。

で、門の先には息切れを起こしてる刹那軍の兵士が……あ~~、其の何だ、大丈夫か?



「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……ぜ、全然追い付けない。」

「あの男、なんであんなに速いんだ?」

「件の英雄を追いかけて潰れてしまったと言う所か……しかし、兵だって鍛えているのだから体力は相当な物の筈だが、其れがバテて
 しまうとは、如何やら相手はただ速いだけでなくスタミナも相当なようだな?」

「一日千里を駆ける赤兎馬……其れに匹敵する程の速い人の話を聞いた事がある。
 確か、軍神・関羽の従者だった筈――でも……まさか、ね……」



かの有名な関羽の従者の可能性もあるのか……ならば、尚の事味方として引き入れねばなるまい。
そういう訳だからな、道を開けろ織田のぶニャが!!



「出来ぬ!
 あの男は立派な髭の男を『親分』と慕っているとの事……そして、立派な髭を持っているのはこのワシ。我こそが、あやつの主として
 相応しいと言う事よ。」

「いや、其れだけは違うと思う。」

「ネコさんが主ではないと思いますよ?」

「ヴィヴィオちゃん――今は大人の姿だからさんかな?に同意です。」



うん、お前が主と言うのは絶対に違うと思うから……此れでも喰らえ!!



「む、爆弾か!」

「いや、只の爆弾ではないぞ?」



――ボウン!



「にゃにゃ!此れは……ま、マタタビ!此れは堪らんのにゃ……うにゃーん。」

「フッフッフ、対織田のぶニャが用にソフィーに作って貰った『マタタビ爆弾』だ。効果は絶大だな?」

「効果が出るように、錬金術でマタタビを通常の10倍に濃縮してありますからネコさんには効果抜群ですよアインスさん♪」



だな。
其れじゃあこのまま突っ切るぞ!


って、進む先にはへばったり倒されたりした兵が此れでもかと言う位に……件の英雄に倒されたか、追い付けずに潰された者達だろう
な……オイ、俊足の英雄は何処に行った?



「も、門を閉めて先に……」

「門を閉めてか……」

「足が速いだけでなく、追手を遮断する……中々に知恵もあるみたいだけれど、門を閉めた程度では俺達は止められないよ?
 アインス、桜花、紅月に時継、君達の鬼千切りとやらでこの門は破壊できるんじゃないのかな?」



普通の門なら可能だろうが、この門は多分無理だと思うぞダリウス。
私の本能が告げている……この門は、趙雲達と出会った時の壊せない門と同じだと言う事が……その証拠に、どう見ても木製である
にもかかわらず、マッタク刀が刺さりません!



「おやおや、其れは困ったね……回り道するしかないみたいだが、如何やらそれもストレートには行かないようだ。」





「ヤレヤレ、また会ったね?
 邪妖じゃない敵って言うのは、やっぱりやり難いな。」

「時は満ちた……後はもう、堕ちるだけよ。」



刹那軍の英雄、アーナスとレグリナか。
人の姿をしているが人非ざる力を持ったこの2人を突破するのは簡単な事ではないが……



「レグリナ殿は私が引き受ける。アインス殿は皆と共に彼を追ってくれ!」

「ならば、アーナスは私が引き受けよう――三成を仲間にした時の戦いの決着をつけたいしな。」

「へぇ……気が合うね桜花さん。私も貴女との決着をつけたいと思ってた所だよ。」



ならば、任せたぞ趙雲、桜花!
私も、速攻で英雄を確保しよう……全迅ミタマ開放の韋駄天発動!!韋駄天強化・俊足を限界まで搭載してる今の私は、冗談抜きで
音速を越えるぞ!!



「おい待て!そんな事したら、誰も追いつけねぇだろが!」

「では、私が共に追いかけるととしますよ時継。」

「紅月!お前も一緒に行くんじゃねぇ。」

「私も行きまーす!!」



ヴィヴィオと、紅月も付いて来たか……紅月は韋駄天があるから兎も角として、ヴィヴィオはどうやってついて来てるのか?
恐らくは身体強化の魔法と言う所だろうね。



「おやおや、ヴィヴィオも行ってしまいましたね?」

「仕方ない、私達は私達の最速で行くとしようか。」

「其れが良いね……と言うか普通に考えれば、空間限定の俺の瞬間移動を使えば追いかける必要もなかったかな?」

「お前、そんな術があるのならば最初から言え。」



遥か後方で何か聞こえたが、まぁ気にしないでおこう。
兎に角、この俊足で走れば、件の英雄に追い付く事は可能――見つけたぞ!
明らかにこの世界の者ではない奴を!!



「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



うん、確かに物凄い速さだな。あまりに速すぎて、走る足が何本もあるように見えるしね。
だが、今の私はお前よりも速い!はい、通せんぼだ!!



「うおっと、あぶねぇ!!
 こりゃまた偉い美人さんが3人も現れてくれたが……邪魔する気かい?けど……俺の走り、誰にも止めさせねぇぜ!」

「ならば、私が止めてやろう!――紅月とヴィヴィオは、コイツの退路を塞いでいてくれ。」

「了解ですアインスさん!」

「お任せ下さい、アインス。」

「3人で現れたが、勝負はサシってか?お前達に恨みはねぇが、こっちにも事情ってモンがあるんだぜ。」



うん、正論だな。
だが、お前にどんな事情が有るにせよ、前提条件として此処はお前が居た世界ではない……お前の事情とやらも、この世界に限って
は何の意味もないぞ?



「何を訳の分からねぇ事を……ってか、俺に付いて来るとはアンタ相当だな?」

「こう見えて、足には自信があるのでね。」

だが、お前は俊足だけでなく怪力も相当だな?
まさか私と互角に鍔迫り合いの出来る相手が居るとは思わなかった……まぁ、私も未だ本気を出してはいないけれどね――だが、この
ままでは埒が明かないので、80%まで力を出す!!



「んな!なんだこの力……俺が、押し切られるだって!?」

「此れが私の力だ!!喰らえ……真・昇龍拳!!」


――ドン!ガス!!バッガァァァァァァァァァン!!



ボディアッパー→ショートアッパー→昇龍拳の連続技……ショートアッパーと昇龍拳は完璧に顎にヒットさせたから、脳が揺れて暫く動く
事は出来んぞ?



「くそ……足が動かねぇ……俺の負けか。」

「……周倉殿、矢張り貴方だったか!」

「え!?ち、趙雲殿!」



そして動きを止めた所で趙雲到着。
魔人の娘とやらも、最高最強の三国志の英雄には敵わなかった様だな……そして、コイツは趙雲の知り合いだったか。



「こ、これは趙雲殿……元気そうで何より……」

「久しぶりだな、周倉殿。
 俊足の英雄と言うのは、矢張り貴方だったか――会えて嬉しいぞ。」

「そ、そりゃどうも……」



どうやら彼は周倉と言うらしいが、なんかぎこちないな?――若しかして趙雲の事が苦手なのか?



「しかし……一体どうなってるんだい?
 親分の後を追いかけてたら、何故か行き成りこんな所に……」

「私も周倉殿と同じく、この世界に突然招かれた。
 最初は戸惑ったが、今は元の世界に帰るため、仲間達と力を合わせて戦っている――周倉殿、よければ共に来ないか?
 貴女の俊足と武勇があれば心強いのだが。」

「こんなに爽やかな笑顔だってのに、有無を言わせぬ迫力……此れだよ、これ!此れが苦手なんだよ……」

「ん……?何か言ったか、周倉殿?」

「い、いや、何でもねぇ……これから世話になるぜ、趙雲殿。」



完全に趙雲が苦手みたいだが……周倉ってどういうキャラなんだヴィヴィオ?



「簡単に説明すると元は盗賊で、関羽さんと出会って従者となって、其の後趙雲さんにフルボッコにされた人です。」

「成程、其れなら苦手でも仕方ないな。」

とは言え、あの俊足と怪力は頼りになるから此れから宜しく頼むぞ周倉!

しかし、趙雲と元姫と周倉……三国志の英雄が3人か――三成や幸村も此方の世界に召喚されていると言う事は、他にも歴史上の人
物が英雄として召喚されてる可能性は高いな?

出来れば、それらの英雄は全て仲間にしたい所だね。











 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



と言うわけで風呂なんだが……あ~~、そうじろじろ見ないでもらえるかヴィヴィオ?



「すみませんアインスさん……でも、アインスさん凄いから。
 なのはママとフェイトママも相当だったけど、アインスさんと比べたら全然ですよ……シグナムさんをも越えるって、幾ら何でも凄すぎ
 だと思います。」

「まぁ、ヴィータに言わせると私は乳魔人らしいからね。」

と言うか、あの小さき勇者も大人になると相当なダイナマイトボディになると言うのか……因みにだが、我が主――八神はやては如何
なのだろうか?



「八神司令は、背は低いですけどプロポーションはすっごいですよ?
 本人は『チビで貧乳や~~!』って言ってますけど、八神司令が貧乳なら、世の女性は全てが無乳になってしまいます。」

「成程、良く分かった。」

如何やら立派に成長している様ですね我が主……其れを聞けて、私は満足です。



「序に言うと、なのはママにかなりの頻度でセクハラしてます。」



其れは聞きたくなかった!
大人になっても、女性の胸を揉みしだく癖は直っていなかったのですね、我が主……少しは自重してください。否、冗談抜きにマジで。