Side:アインス


石田三成が居ると言う事を聞いたので、目撃情報があった場所に来たのだが……如何やら先客がいた様だな?アレは、刹那の軍勢
か?
三成を包囲しているように見えるが……刹那も三成を仲間にしようとしているのか?高台からだとよく見えるな。



「まさかお兄様も、あの方を……?」

「驚く事でもないだろう環?
 英雄はこの世界に於いては絶対的な存在故に、その存在を欲するのは当然の事、刹那が三成を仲間にしようと動いたとしても不思
 議ではない。」

「確かにアインスの言う通りだな。
 其れを考えると、この場に志貴の軍勢が居ない事の方が不自然と言う訳か……」



そう言う事だよ桜花。
だが、だからと言って石田三成程の人物を刹那軍にみすみす渡してやる理由も無ければ義理もない……急いで三成の元へ行くとしよ
うか?



「賛成だアインス……だけど、歴史上の人物と出会う事が出来るとはね……この世界は本当に退屈させてくれないモノだね?」

「確かに退屈だけはしねぇな。」



ふ、私が居る時点で退屈などと言うモノは有り得んよダリウス、時継。――寧ろ退屈など、宇宙の彼方のブラックホールに蹴り飛ばして
やるからね♪









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務97
『冷徹なる知将~石田三成~』










そんな訳で出撃したんだが……居るわ居るわ刹那の軍勢が……まさかとは思うが、刹那は軍勢に物を言わせて、力ずくで三成を引き
入れる心算なのか?
この状況を考えると、1秒でも早く三成と接触した方が良さそうだな……



「お兄様の配下は、三成様を力尽くでも動かそうと?……三成様のお気持ちも考えてさし上げねば……」

「マッタクだな環。お前の言う事は正しいよ。」

如何に仲間が必要とは言え、無理矢理に力尽くでと言うのは悪手以外の何物でもないし、そんな事をして引き入れた所で、其れは真
の仲間とは言えないからな。



「流石、お前さんは良く分かってるぜアインス。
 無理矢理引き込んだってのは仲間とは言わねぇ。仲間ってのは自分の背中を安心して任せられるだけの信頼関係ってモンがねぇと
 成り立たねぇもんだからな。」

「勇者の言葉は説得力があるな時継。」

「時継は、何時も言葉で人を引っ張っていきますからね。
 其れでアインス、刹那の軍勢は可成りの数のようですがどう攻めましょうか?」



其れなんだが、私達が居るのは陸地だが、刹那の軍勢は川の浅瀬を移動してるよな?
そして川は水が流れているモノであり、水は電気をとってもよく通すので……ダリウス、刹那軍の皆さんに電気マッサージをして差し上
げてくれ。



「電気マッサージ……にしては少し強過ぎるかも知れないけど了解だ。」



――ビシャーン!バリバリバリバリバリバリバリバリ!!



「「「「「「「「「「「「「「「「「「みぎゃーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


「はい、こんな所で如何かな?」

「落雷一発、浅瀬を移動してた部隊は全滅……流石、サンダーボルトは強力だな。」

「アインス殿は時々とても容赦がないわね……まぁ、味方だと頼りになるから良いけれど。」

「敵に情け容赦は必要ないだろう元姫?
 兎に角、これで邪魔な連中は居なくなったから、三成の元へ急ぐとしよう。」

浅瀬も、電気を流しはしたが、もう大丈夫だろうしね。
空を飛んで行っても良いんだが、其れで三成に警戒されてしまっては元も子もないから、今回は地上を移動するのがベターだからな。



「そうかも知れませんけど、如何やらそう簡単には行かないみたいですよアインスさん!」

「如何やら、敵方の英雄が我々の進行を妨げに来たようですね。」



「此処から先へは行かせない。」

「またお前か、かすみ。」

刹那の仲間だと言う事だから仕方ないのかも知れないが、これまで散々私に負けたくせに懲りない奴だな?……否、私だけじゃなく
て紅月にも負けたよなお前?
其れに、たった1人で英雄8人を相手にする心算か?



「「「「「「「「1人ではないわ。」」」」」」」」

「んな、コイツは!?」

「彼女が8人?……成程、分身の術と言う奴かな?」



分身の術……そう言えばお前はくノ一だったな?
確かに分身すれば此方と数を同等に出来るだろうが……分身出来るのがお前だけだと思うなよ!
所有全迅ミタマ、能力開放!超分身、30体!!此れで此方は私の分身を含めて、英雄合計38人!お前の分身のおよそ4倍だ!!
だから頑張れよ?我が分身達よ、後は任せた。



「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「任されたぞ、本体。」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「そんな、こんな事って……」」」」」」」」



まぁ、分身の術で何とかなるかと思ったら、更にその上の分身を出されたとなればそう言う反応にもなるだろうな。
しかしまぁ、自分自身とは言え、同じ顔が30個も並ぶとなんか不気味だな……取り敢えず、かすみの事は分身達に任せておこう。



「君の容赦のなさは素晴らしいね?鬼からの賛辞など、不本意かもしれないが。」

「いや、元の世界では鬼から賛辞される事などないからとっても新鮮だ。」

高台から見た場所から大きく移動していなければそろそろだが……




「三成殿、是非我々と共に来ていただきたい!」

「お誘いは痛み入るが、得体の知れぬ連中と共に行く気はないのでな、お引き取り願おう。」

「な、何と言う傲慢な物言い……だが、何としてでも共に来ていただく!!」




如何やら、到着したようだな?……ふむ、仲間にしようとしているようだが交渉は難航していると言った所かな此れは?



「断る。何故どこの馬の骨とも知れぬ奴に、ほいほい付いて行かねばならぬのだ?」

「英雄殿とは言え……その言い草、許せぬ!」

「ふぅ……鬱陶しいのだよ!気に入らなければ力尽く……其れがこの世界の流儀か。恐れ入る。」



で、三成の物言いにキレた連中が襲い掛かるも、手にした鉄扇をブーメランのように投げて逆に撃退か……一匹残ったようだが、邪魔
だからお前も寝てろ。



――メキャ



「グヘ。」

「む……1人仕留め損ねていたか――貴様等は?」

「三成様……強引なお誘い、お困りでしょう。私が、安全な場所までお連れ致します。」

「ふん、余計なお世話だ。……貴様もさっきの奴等と同じ類だろう?」

「信じて下さい。私はただ、貴方様を助けたいだけなのです。」



うん、刹那軍の強引な勧誘のせいで、完全に警戒されてしまっているな此れは……まぁ、状況が状況だけに仕方ないのかも知れない
が、環の言って居る事は本当だぞ?
お前に仲間になって貰いたいと言う気持ちがない訳では無いが、奴等のように強引に勧誘したい訳じゃないからな。



「……俺を助けたいと言うのならば、策に協力しろ。この辺りの拠点を奪還してほしい。
 余計な事はするな。ただ拠点を取れば良い。大将首を取ろうとするなど、もっての外だ。」



策に協力か……良いだろう、其れでお前の信頼が得られるなら安いものだ。
先ずは拠点の制圧……この近くだと2カ所だな?――ただ拠点を取れば良いとの事だったから、此処は頼むぞソフィー、プラフタ。



「任せて下さい!とりゃ~~~~!!」

「私の力、お見せしましょう。」



――ドンドンドンドンドッカーン!!

――ボニャーン!




「ば、爆弾がー!!」

「空からデカい魚が降って来た~~!?」



……ソフィーが目標拠点の1つに大量のフラムを投げ入れたのは良いとして、もう1つの拠点の上空からやたらとカラフルな魚を落とす
って、どんな攻撃方法だプラフタ?
と言うか、ソフィーにしろプラフタにしろ、異世界の錬金術師は巨大な何かを敵の頭上から落とすのがデフォなのか!?
まぁ、大規模爆発と巨大魚プレスで無事に(?)拠点を制圧できたから良いが、何だこれ……



「面妖な戦い方ではあるが、中々やるではないか?ならば、俺の秘策を見せてやろう!」



「く……三成さんの考えが読めないな――皆、一旦彼から離れるんだ。」



刹那……近くまで来ていたのか。
だが、三成の考えが読めないと見て此処は一時退いたか……まぁ、指揮官としては悪くない判断ではあるな。



「今の内に逃げるぞ。暫くは追って来ない筈だ。」

「鮮やかに敵の包囲を突破しましたね。
 そう言えば、秘策とおっしゃっていましたが……」

「秘策などない。……ただハッタリをかまして、敵を脅かしただけだ。」



ハッタリか!……否、只のハッタリでも迫真の演技で行えば其れは敵を怯ませるには充分と言う事か?
だが三成、刹那軍の本隊は退いたようだが、この先は別動隊が待っているみたいだ……この先に陣を構えてる連中がチラッと見えた
からな。



「……俺には見えないが?」

「私は目が良くてな。大阪城の天守から、大阪の城下町の端っこに居る人が何をしているか分かると言えば想像出来るか?」

「一概に信じる事は出来んが、この場で嘘もあるまい……二の矢が有ったと言う訳か。
 となれば、この先は守りが固い――其処で次の手だ。敵の装備を奪い、工作兵に着せて欲しい。
 騒ぎを起こさせ、その間に脱出する……気付かれぬように秘密裏に頼む。」



了解だ。
秘密裏にと言う事なので、瞬間移動で単独で要る刹那軍兵士の後に移動し、そして首元に手刀一発!……うん、我ながら見事な一
撃だな今のは。
元姫も一緒に瞬間移動したが、其方は如何だ?



「問題ないわアインス殿。痺れ薬を塗布した鋲で一撃。」

「お見事。其れじゃあ装備をひん剥いてと……此れで良いか三成?」

「行き成り消えたと思ったら、敵の装備を奪って現れるとは……貴様、鬼や天狗の類ではあるまいな?
 まぁ、今は其れも如何でも良い事か――此れで準備は出来た。さっさと逃げるぞ。時が経てば、敵も流石に感づくだろう。」

「中々鮮やかなお手並みだね?
 石田三成って、戦は得意じゃなかったって聞いてたけど、如何やらそんな事も無いみたいだ。」

「もう少しで策が成る……変装した兵を敵にぶつけろ。」

「……この人の能力は大したモノね。
 言い方で損をしている様だけど。」



其れはマッタク持ってその通りだな元姫。
まぁ、アレだ、三成は頭が切れる故に少々斜に構えていて、思った事を歯に衣を着せずに口にしてしまう性質なんだろうさ――少々捻
くれている様に感じるが、変に自分を偽ってペコペコされるよりはいっそ清々しいよ。

しかしまぁ、刹那軍は大慌てだろうな?
何か仕掛けがあると思ったら何もなく、別の場所では変装した工作兵が騒ぎを起こして同士討ちが発生しているのだからね。



「この世界の連中は、馬鹿ばかりだと思ったが、お前達は幾分マシなようだな。」

「三成様は凄いのですね。
 こうも簡単に同士討ちを成功させるなんて……」

「敵が間抜けだっただけだ。こんな戦果、誇るに値せんな。」



……しかし、素直でもないなコイツは。
折角の賛辞なのだから、素直に受け取っておけばいいと思うのだな……まぁ、確かにお前のハッタリに踊らされた刹那達が間抜けだ
ったと言うのは否定できない事ではあるけどな?

だが、未だこれで終わりと言う訳では無い様だぞ?



「邪妖じゃない敵か……やり辛いな。」

「魔人の娘が裁いてやる。」



ゴールを目前にして、刹那軍の英雄が現れたか――アイツ等はレグリナとアーナスだったか?
魔人の娘と半妖の騎士……刹那軍の実質的な2トップか――ならば、此方は環軍の2トップで相手になってやるだけだ。行くぞ桜花!



「了解だアインス。半妖の騎士は引き受けた!」

「ならば私は魔人の娘だな!」

「フフフ……裁きの時は来た。あとはもう、堕ちるだけよ。」

「そうか。じゃあお前が落ちてくれ。――落とし穴に。」

「なに?……え?地面が消えて……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



ドッカーン!トラップ発動、落とし穴ってな!
お前に気付かれないように、地下に誘導魔力弾を発生させて、お前の足元まで其れで掘り進んだんだよ……厚さ1cmの地面の上に
立てば、崩れて当然ってな。
取り敢えず、穴の深さは10m位あるから、頑張って脱出しろよ?土壁だから登って登れない事は無いと思うから。



「次は、必ず堕としてあげるわ……!」

「頑張れよ~~。」

さて、桜花の方は如何かな?
ふむ、太刀と巨大な剣での剣戟が行われているみたいだな?……あのアーナスと言う女、桜花と互角の実力とは相当だな。



「強いんだね、腕は確かだ。」

「君もな……仲間であったら、ドレだけ頼もしかった事か。」

「其れは私も思ったよ。
 だけど、今日はここまでにしておこうか?レグリナさんは倒されちゃったみたいだし、私1人じゃ幾ら何でもきついし、何よりも穴に落と
 されたレグリナさんを助けないといけないからね。」



っと、此処でアーナスが退いたか……悪くない判断だな。
旗色が悪いと判断したその時は、被害が大きくなる前に退くのもまた兵法だからね――と言う訳で、無事にゴールに到着出来ました。



「此処まで来れば、一安心か……お前達も其れなりに役に立ったぞ。」

「役に立てたのならば光栄だよ三成。」

「ふぅ……三成様、御無事でようございました。
 この辺りは未だ、化け物も多うございます。気をつけてお帰り下さい。では……」

「……待て。
 環、と言ったな?お前達は、俺を引き入れに来たのではないのか?」

「勿論、三成様の助力は頂きたいです。
 ですが、貴方様が其れを望まないのであれば、私は――何よりも、三成様の心を裏切りたくないのです。」

「ほう……義、だな。
 この世界に其れを解する者が居ようとは……しかも、お前達は言葉だけでなく、戦でも己の義を示した……。
 だから、まぁ……一緒に行ってやらん事も無い。」

「ほ、本当ですか!ありがとうございます、三成様!」

「目をキラキラさせるな、馬鹿。
 正直、此処で放り出されても困るのだよ――元の世界に戻る方法も教えてもらわねばならぬしな。」

「はい!混乱を収めた暁には、必ず元の世界にお帰しします!」


「言葉と態度は分かりにくいけど……悪い人では無さそうね。
 才もあるみたいだし、心強い味方になりそう。」

「ふふ……あの石田三成に会えるとはね。――この異世界、面白い事ばかり起るものだ。」



マッタク持ってな。
しかしまぁ、石田三成は所謂一つのツンデレだったのか……此れは新しい発見だ。――惜しむらくは、この発見を世間に知らしめる場
がない事だけれどね。









――――――








Side:ヴィヴィオ


まったく知らない場所に放り出されて、其処で三国志の英雄の趙雲さんと出会って、こうして各地を旅してる訳なんだけど、趙雲さんと
の2人旅は、結構楽しいかも♪



「何と、ヴィヴィオ殿の母君は、100の敵を相手にしても負けないと。――そしてその友であるヴィータ殿もまた一騎当千の猛者とは。
 若しも機会があれば、一度手合わせ願いたいものだな。」

「ママとヴィータさんはめっちゃ強いですから、きっと趙雲さんでも満足できると思います♪」

まぁ、個人的にはシグナムさんの方が趙雲さんは気が合うと思うけどね。
にしても、本当に何もありませんねこの世界は?此れまで立ち寄った村もぽつんと点在してるのが多かったし、村民も少なかったです
し……この世界、結構ヤバい状態に有ったりするのかな?



「少なくとも、民が平穏無事に暮らせる世界ではないようだ……何が原因でそうなってるのかは分からぬが、民が苦しんでいると言う
 のならば見過ごす事は出来ぬ。
 この世界の民を救うために、私が呼ばれたと言うのならば、その務めは果たさねばな。」

「ですよね。」

「時にヴィヴィオ殿、随分と歩いたが疲れていないだろうか?
 若しも疲れている様だったら、遠慮せずに言ってくれ。無理をして倒れられてしまったら、其方の方が困るからな。」

「あ、はい、大丈夫です。」

で、趙雲さんの此のイケメンぶりが凄いです。
義に厚い武人だって言う事は、三国志の物語を読んで知ってたけど、まさか此処までのイケメンだとは思っていませんでした!!

はぁ……本気で趙雲さんにパパになって欲しくなって来たよ。









 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



Side:アインス


三成を仲間にした、本日の露天風呂は、私の他には、桜花、紅月、元姫と言う大人の女子会状態だな。
湯船に浮かせた盆の上に酒……ふぅ、気持ちの良い温泉に、気心の知れた仲間と浸かりながら美味い酒を飲むと言うのは、この上な
い贅沢だな。



「そうね、確かに此れは最高の贅沢かも知れないわ。」

「えぇ、最高の贅沢でしょう。」

「ふふ、此れもまた異世界に来たゆえの贅沢かも知れないな?」



かもな。
気持ちの良い温泉に浸かりながら、紅葉を楽しみ、仲間と酒を酌み交わすと言うのはこの世界だからこその贅沢かも知れないからね。



尚、風呂上りはフルーツ牛乳にしようと思ってたのだが、最後の一本はソフィーが持って行ってしまっていたのか……仕方ない、今日
はコーヒー牛乳で我慢するとしよう。