Side:アインス


今現在、力を注ぐ事が出来た祠は、合計3つ……聖域の泉に直接関係している祠は全部で6つとの事だったから、これで半分と言う所
だな?……残りも急いで制圧したい所だが……



「新たな英雄様から、文がと届きました。
 私達にお味方してくださるとの事です。」

「新たな英雄が現れたとなれば、其れを無視する事は出来ないよな……無視して、刹那や志貴の仲間になってしまったとか言うのは、
 幾ら何でも笑えないからね。」

「其れは、本気で笑い話にもならないぞアインス。」



だからこそ、慎重にならねばならないのだが……



「私に会ってお話ししたいと書いてありますが、どんな方なのでしょう?
 ふふ、お会いするのが楽しみです。」



既に環は会う気満々だな?
余りにもタイミングの良すぎる文だから、罠の可能性は充分にあるのだが……環が会うと言うのならば、其れに従うまでだ――まぁ、危
険が迫ったその時は、全力を持って環を逃がすけどね。
さて、新たな英雄からの文は、どんな賽の目を出すのやらだな。









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務96
『冷静なる錬金術師~プラフタ~』










と言う事でやって来たんだが……此れは、見渡す限りの砂漠だな?――まるで三国志の物語に出て来そうな場所だが、此の場所が
何処か分からないか元姫?



「此処の建物や植物、見覚えがある……何となく、元の世界に似ているのよね。」

「つまり、三国志の世界だと言う事だな。」

しかし、英雄が居るとの事だったが、オカシイな?何処にも其れらしき奴の姿が見えない……それどころか、人っ子一人見えんぞ?
まさか、此れは若しかして……



「も、申し上げます!
 敵軍が突如、背後に現れました!その数、我が軍の倍です!」

「そんな!……あの手紙は罠だったのですね……貴方は急ぎ、救援を呼びに行ってください!」

「承知しました!」



矢張り罠だったか。
戦力差2倍と言うのは些かきついな……勝てない相手ではないが、環の安全を考えるなら、此処は引くが上策か――ならば、桜花と
紅月で先陣を切って、ソフィーと時継とダリウスは其れに続け。
私と元姫が殿を務めつつ、環を護衛するからね。

先ずは敵の追撃を振り切り、仲間との合流を目指そう――まぁ、追撃だけでなく、前からも明らかに友好的では無さそうな連中が現れ
てくれた訳だがな。
刹那や志貴の軍とは違うようだし、何やら装備もまちまちな上に、あからさまにガラが悪いな?……コイツ等、若しかして山賊の類なの
か?……面倒な。



「山賊だと?……恨みは無いが押し通らせて貰う!」

「マホロバに現れた山賊であるなら、取り押さえて3時間ほど説教をする所ですが、此度は蹴散らさせて頂きます。」



まぁ、山賊如きは紅月と桜花が先陣を切ってる限り敵では無いな?時継の魂のタマフリとダリウスの魔術のサポートも見事だが……ソ
フィーよ、巨大なイガグリを敵の頭上から落下させるのは如何なんだ?
と言うか、アレも錬金術で作ったのか?……錬金術とは奥が深いな。

「さて、お前達は私達の敵ではないがまだやるか山賊ども?」

「ちぃ……今日はカモが多いと思ったのに、トンデモねぇ外れクジだったぜ……こんな事なら、さっき見つけた奴を引ん剝く方に参加すり
 ゃ良かったぜ。」



何やら聞き捨てならない事を言ってくれたなお前?
つまりアレだな?お前達は私達以外の誰かも襲っていると、そう言う事だな?……そいつは何処にいる?
大人しく吐いた方が身の為だぞ?……そうじゃないと、お前の頭が――


――バキィ!!


「こうなってしまうぞ?」

「ひぃ!!い、岩を素手で握り砕くなんて人間じゃねぇ!!そ、そいつはこの先に居る!だが、仲間が今頃は……」

「はい、素直で宜しい。其れじゃあ聞く事は聞いたから、お仕置きしてやってくれ元姫。」

「他人を襲って物を強奪するのはとても悪い事……お仕置きね。」

「ちょ、やめ……あーーーーーーーーー!!!」



うん、蹴り飛ばした所に鋲を投げつけて服を固定し、更に鋲を身体の輪郭線をなぞるように投げつけるとは……実際のダメージは蹴り
の分だけとは言っても可成りの恐怖だろうなぁアレは。……あ、完全に泡吹いて気絶してるな。

取り敢えず襲われてる者はこの先に居る様だな?



何やら人だかりが……あそこだな?
襲われているのは、ソフィーと同じ位の少女のようだが――取り敢えず退きくされい!六爪流裏技……三連双居合!!
六爪流で行う逆手居合の二連斬……目にも留まらぬ3つの剣閃の2連続を見切る事は出来ん――まぁ、命まで取る気は無いから服だ
けを切り刻ませて貰ったがな。

ほら、さっさとどっか行け。こっちにはソフィーの様な純情な乙女も居るんだ、貴様等がぶら下げてる粗末な物をあまり見せたくない。



「チキショー!覚えてろよ!!」

「嫌だ、忘れる。」

「アインス、お前とことん容赦ねぇな。」

「敵に容赦は必要ないだろ時継。」

「あはは……アインスさん、カッコイイです!
 ところで大丈夫ですか――ってプラフタ!よかったぁ、会いたかったよ~~!」

「ソフィー……私もです。
 ですが、再会を喜んでばかりも居られません。ヘクセ・アウリスを制御する腕輪を、敵に盗まれました。」

「えぇ!?其れは大変、直ぐに取り戻さなきゃ!」



襲われてたのはソフィーの知り合いだったか。
如何やら、何か大切な物を盗賊に奪われてしまったようだが、其れを取り戻すと言うのならば任せておけ……山賊共は何方にしても叩
きのめす心算だったからな――その中で更生の見込みがある奴は聖域に連れ帰って環軍に加えるけどね。



「ソフィー、彼女達は?」

「うん、この世界で会った人達で、今は私の仲間なんだよ~♪」

「そうですか……私はプラフタ、錬金術師です。
 とは言え、私は人形の身体。この身では錬金術は行えません。戦うには腕輪が必要なのです。」



此方こそ宜しくなプラフタ。
だが、そう言う事ならば、腕輪を取り戻さねばだ。
なら……此処からはフォーメーションチェンジだ。私とソフィーがトップで行く。ダリウスは再び時継と中衛を頼む。桜花と紅月と元姫は環
とプラフタの護衛で行くぞ!



「分かったよアインスさん!プラフタの大事な物を盗むなんて、許さないんだから~~~~!!!」


――ドッカンドッカンドッカン!

――ドッスーン!!

――ボエ~~~~~!



って、凄い攻撃だなソフィー!?
フラムの大量投擲に、巨大イガグリ落下、果ては魔法陣を展開してからあのプニプニした奴のでっかいのを召喚して敵に向かって突撃
させるとか……何だろう、見た目はコミカルなのにスッゴク強力だな。



「ソフィー、錬金術ってのは凄いな?
 お前を連れて帰ったら、さぞかし博士が喜ぶだろうぜ。」

「博士とは誰だ時継?」

「俺をこの身体にした張本人だ。ちょいとばかし変わってるし、偏屈な所もあるが、まぁ悪い奴じゃあねえな。」

「……成程、正義のマッドサイエンティストと言う所か……」

時継に紅月にその博士とやら……マホロバはウタカタに負けず劣らずの個性的な連中が居るのかも知れないな。
さてと、随分と盗賊を倒したが……



「居ました、あの男が腕輪泥棒です。」

「ちぃ、追い付いて来やがったか。」

「貴様か……遊びは終わりだ!泣け、叫べ、もがけ、苦しめ、そして……朽ち果てろぉぉぉぉぉ!!!」

はい、八稚女で一撃滅殺!
オイ、プラフタの腕輪を返せ……返さないのならば永遠の悪夢を見せる空間に貴様を閉じ込めるぞ?……それが嫌ならば、蘇生魔法
を重ね掛けした上でテンプテーション・スターライトブレイカーだがな。



「お、俺を倒しても意味は無いぜ?
 腕輪はとっくに仲間に渡した……今頃はお頭が持ってる筈さ……。」

「そうか、其れは良い事を教えてくれた……なら、大人しく寝てろ!!琴月 陰!!」



――バガァァァァァァァン!!



腕輪は山賊の頭領が持ってるとの事だったが……頭領が居るのはあの大きな建物の中と見た――三流の悪役ってのは、得てして大
きな建物でふんぞり返りたいものだからな。



「それは……確かに否定できないね。」

「馬鹿と煙は高い所が好きって言うが、三流悪役と目立ちたがりはデカい建物が好きって所かコイツは?」

「まぁ、あながち間違いではないだろうな……アインスが言った建物に近付くにつれて、山賊の数が増えているからな。」

「そして、いましたよ……貴方が山賊の頭領ですね?」

「テメェ等……俺の部下をやって来やがったって事か……よくも俺の部下を!
 纏めて袋叩きにしてやる!!」



そっちから襲ってきておいてその言い草は如何なものかと思うが……戦うと言うのならば、殺しはしないが手加減はせん。
喰らえ……超必殺、滅殺真空デアボリック覇王翔哮拳!!



――ドッゴーン!!



一撃必殺ってな。
と、何か落したな?若しかして、これが探していた腕輪か?



「はい、これです。腕輪を取り戻していただき、ありがとうございます。では、私の力をお見せしましょう。」



で、腕輪を装着したプラフタがハードカバーの本を開いたら……何やら巨大な機械染みた腕が現れたぞ?



「いきます。」



――ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!



そして、その腕を使っての連続パンチ攻撃!……此れは可成り痛そうだ。
この攻撃に技名を付けるとしたら、メガトンバルカンパンチて言う所か……アレを真面に喰らったら、私でも結構なダメージを喰らうのは
間違い無いだろうね。



「君がそう言うのなら、相当なんだろうな……」

「あぁ、アレは可成りな。
 だが、アレで終わりじゃないみたいだ。」

「ひいぃ!なんだありゃ、化け物か!?」

「に、逃げろー!!」



山賊達も驚いて逃げ出すが……こういう状況では逃げられないのが世の常だ……まぁ、精々山賊何て言うアコギな商売に就いてしま
った事を後悔するんだな。



「逃がしません。」



プラフタが、腕に巨大な剣を装備させて、そして其れをブーメランのように回転させて、山賊どもを鎧袖一触……ソフィーと比べると、プラ
フタの錬金術は、戦闘に特化して居るんだな。



「錬金術の力、思い知りましたか?」

「あぁ、しかと見せて貰ったぞプラフタ。」

「錬金術……其れを覚えれば、鬼の一族も繁栄できるかもしれないな。……一つご教授願おうかな?」

「あのプラフタって奴の武器、良い感じだぜ……博士もあぁ言うの作ってくれねぇかな?」



確かにあの武器は凄いな……さてと、これで腕輪も取り戻した訳なんだが……其れで終わりとは行かないだろうな。



「報告!敵の追手が……刹那様の軍が追い付きました!!」

「ちぃ……矢張り追い付かれたか。」

「……アナタ達は追手に追われているのですね?
 ならば、腕輪を取り戻してくれたお礼に力を貸しましょう……此処に来る前に兵器のような物を見つけました。其れを利用すれば戦力
 差を覆す事が出来るかも知れません。
 私は兵器を動かす術を探ります。アナタ方は少しの間、時間を稼いでおいてください。」



了解した。
刹那の軍勢が此れでもかと言う位に来たが……英雄なしの雑兵など、何万来た所で私達の敵ではない!!桜花、紅月、時継!!



「あぁ行くぞ!!」

「私達の力を一つに……」

「ブチかましてやるぜ!!!」

「喰らえ……四連鬼千切り!!!」



――ドッガーーン!!



大型の鬼の部位を一撃で吹き飛ばす鬼千切の四連ともなれば如何に軍属の人間と言えども耐えられるものでは無い……人ってあん
なに飛ぶものなんだな。
刹那軍の英雄が出て来なかったと言う事は、脱出口で待ってる可能性が高い――



「私はただ、食い止めるだけ。」

「者ども、攻めるは今ぞ!」

「さてと、倒させて貰おうかな。」



実際に現れたからな。
青い忍び装束のくノ一、かすみ。猫なのにやたらと威厳のある織田のぶニャが――そして、人非ざる力を持った剣士アーナスに刹那と
言う布陣か……可成り強力だが……退くのはお前達の方だ。



「此れの動かし方が分かりました……如何やらこれは、高温の炎を発射する兵器の様ですね……では、行きましょう。」

「目標捕捉……撃てぇぇぇぇぇ!!」



――ゴォォォォォォォォォォォ!!



プラフタが起動した兵器がお前達を襲うからな。
更に、私もブリーティガードルヒを展開して逃げ場がない位にぶっ放したからなぁ……此れはもう退くしかないだろうね――英雄からの
手紙を偽っての罠を張った罰だと思って甘んじて受けるんだな。



「プラフタ様のおかげで逃げ切れました。何とお礼を申してよいやら……」

「いえ、私こそお礼を言わなければなりません。大切な腕輪を取りもどしていただいたのですから。」



其れでも、この戦いの最大の功労者はお前だよプラフタ。
お前の錬金術と知識が無ければ、もっと苦戦していただろうからね……下手をすれば環を討たれていたかも知れなかったからな。



「アインス様の言う通りです。
 プラフタ様、この世界を救うため、これからもお力を貸していただけないでしょうか?」







――環説明中だ、そうだな……『ARENA』でも聞きながら待っていてくれ。







「なるほど……私はこの世界を救うために呼ばれたのですね?」

「巻き込んでしまい、申し訳ありません。
 ですが、英雄様のお力が無ければこの世界は……」

「分かりました。私も、アナタ方に付いて行きましょう――一度は共に戦った仲です。
 アナタ方や、この世界が滅びるのを、黙って見ている訳には行きませんから。」

「プラフタ様……ありがとうございます!此れから、宜しくお願いいたします。」

「やった!
 プラフタが居てくれれば心強いな。錬金術の事、またいーっぱい教えてね!」

「ふふ、ソフィー。
 異世界でも貴女が一緒だとは、嬉しいですね。改めて、宜しくお願いします。」



で、結果として新たな仲間をゲットしたと言う事だな。
ソフィーの仲間と言う事で、錬金術の腕前は相当に見事なモノだったが、冷静で頭も切れるみたいだから仲間であるならば頼もしい限
りだよプラフタ。

まぁ、これ以上此処に長居する事も有るまい――聖域に戻ろう。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



で、聖域に戻って来たんだが、戻って来て早々に環が兵から何かを聞いていたみたいだが……如何した環、何かあったか?



「アインス様。
 朗報でございます。新たな英雄様が見つかったとの報が入りました――名は、石田三成様。
 とても頭の切れるお方だとか……きっと私達を導いてくれるでしょう。お会いするのが楽しみですね。」

「此処で新たな英雄の情報……しかも石田三成か……」

「まさか、歴史上の人物まで居るとは……何でもアリだなこの世界は。」



マッタク持ってその通りだな桜花。
だが、本物の石田三成と会う機会など、先ず無いから、会うのが楽しみだと言うのは否めんな――知将石田三成、果たしてどんな人物
なのか、楽しみだな。









 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



石田三成に会う前に、先ずは風呂で汗を落とさねばだ……初対面で汗臭いと言うのは如何かと思うからな。
で……お前が先に入ってたか時継――今更だが、その身体で湯に浸って平気なのか?



「俺様の身体はバッチリ防水処理がされてるから問題ないぜ。」

「そうか、ならば安心した――此れでゆっくり温泉を楽しめるな時継。」

「ゆっくり楽しむか……アインス、俺は悟りを開いたぜ?
 お前の豊満な身体を見ても、お前の無自覚な色仕掛けに引っ掛かったりは……するわ!!」


「アレ、時継さんとアインスさん?」

「おや、先客がいましたが。」



プラフタとソフィー、お前達も来たのか。
ならば一緒に風呂を楽しもう。時継が居るが、コイツはこんな見た目だから気にする事も有るまい――見た目が絡繰人形だと、中の魂
が男であっても全然恥ずかしさを感じないしな?



「お前等、ちったぁ恥じらいってもんを持ちやがれ!!」



うん、だが敢えて言わせて貰おうぞ時継……だが断る!!―-と言うか、お前だから恥ずかしくないんだ。その辺を分かってくれ。

取り敢えず風呂を楽しみました。そして、ふろ上がりの牛乳はソフィーだけでなくプラフタも気に入ったみたいだな♪