Side:梓
さてと、今日も今日とて元気に鬼退治だ。
大和の命で、富嶽と那木と一緒に組んでいるんだが、近接戦闘型2人に、後方支援1人と言うのはバランス面で言っても間違いなく最高だな。
近付いていた鬼は私と富嶽が粉砕し、那木がサポートに回っているのも大きいだろうね。
さてと、小型の鬼の群れとは言え粗方片付けたので、残りはまとめてやっつけるか……覇ぁ!!
――ドスゥゥゥ!!!
「鬼が纏めて串刺しだと!?……流石に初めて見たぜ――那木、テメェは見た事あるかよ?」
「私も初めてでございます。
――これ程の事を簡単にやってのけるとは……梓様は、若しかしたら、ウタカタの守護神となるモノノフであるのかも知れませんね。」
あ、其れだけは無い。
私は、鬼と戦う力をもって居るだけの人間さ――守護神などは性に合わないしガラじゃない……何方かと言えば、破壊神の方が合っている。
まぁ、其の力も、鬼を討つ役に立っているとうのならば、悪い物ではないさ。
時に富嶽、ガキを纏めて貫いたせいで、刀に餓鬼が鈴生りなって居るんだが……如何しようか此れ?
「……纏めて串焼きにでもするか?喰えそうにはねぇがな。」
「では、そうするか……そう言う訳で覚悟を決めろガキ共――燃え尽きろぉぉォォォ!!……はいこんがりと、沢山上手に焼けました。」
「テメェ、今どっから炎出しやがった?」
「魂のタマフリを利用して、ボウっとな?」
「驚きでございます……」
私自身、出来るとは思っていなかったのだけれどね。
で、此のガキの丸焼きは、良い感じに焼けてはいたけれど、大凡食べる事は出来なさそうなのでちゃんと鬼払い浄化した。――さて、帰るか。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務7
『ある日のウタカタの日常風景』
ふぅ、矢張り任務を終えて里に帰って来るとホッとするな。
富嶽と那木と一緒のチームで目的を熟す事が出来たのだからな――まぁ、あの程度の相手では私1人でも楽に倒せたのかも知れないがね。
それでも、矢張りチームで戦った方が互いにフォローが出来る訳だから、戦闘そのものは非常に楽になるのは間違い無いか。何だかんだで、
私と富嶽は中々気が合うみたいだしね。
加えて言うのならば、新たなミタマも何体か宿す事も出来たからな。
「ただいまなはと。怪しい奴は来なかったか?」
『キュイ♪』
「そうかそうか、よく良い子で留守番が出来たな。
お土産に、よろず屋で団子を買って来たから食べると良い。好物だっただろう、団子――まぁ、好き嫌いなく何でも食べるんだがなお前は。」
『キュイ~~~♪』
ふふふ、可愛いな本当に。
しかし、今更ながら、何で私はなはとが何を言ってるのか理解できるのだろうか?普通に聞いたら『キュイ』と鳴いているようにしか聞こえない
のだが……この辺も、或は元々人でなかった事が関係しているのかも知れないね。
さてなはと、帰って来たばかりだが、何時招集が掛かるか分からないから、私はまた本部に行かなければならないんだ、なので留守番の方を
頼めるかな?
『キュキュ!』
「任せておけか。其れは頼もしいな。では、行ってきます。」
さて、如何言う訳か自宅の裏口が本部直通となっているのだが……如何考えても距離が合わないだろう此れは。宛ら、空間を切り取って貼り
付けた様な感じだ。裏口の戸を開けたら、其処がもう本部なのだからね。
まぁ、どうなってるのかなんて考えても答えは出そうにないから、考えるだけ徒労か――と、初穂も来てたのか。
「うん……ってアレ?……君、またミタマを宿したんだ。此れでいくつ目?」
「新たに、稲姫、鈴鹿御前、碓井貞光を宿したから、此れで合計6つ目だ――我ながら、よくもまぁ英雄の魂を得た物だと思うよ。」
「何かズルい。普通はそんなに宿せない筈なのに……何が違うのかしら?」
何が違うのだろうね?
と言うか、私はミタマを宿す事が出来るモノノフならば、全員が複数のミタマを宿せるものだと思っていたからね……この辺も、私と言う存在の
特異性が成せる業なのか……多分、そうなんだろうな。
「フ……才能の差だな。」
「む……大和のくせに偉そうに。
子供の頃は、まだ可愛げがあったのに……何時から、そんなに嫌味な人間になったのかしら?」
「……元からだ。」
偉そうにって、里のお頭なんだから実際に偉いんじゃないのか?其れに子供の頃って、大和が子供の頃は初穂は生まれていない筈だろう。
まさかとは思うが、初穂は見た目通りの年齢ではない――何て言う事は幾ら何でも有り得ないだろう。いや、でもあの小さき勇者の母親の事
を考えるとあり得ないと言い切る事も出来ないような気が……うん、あまり考えない様にしよう。
「フンだ、まぁ良いわ。数が重要って訳じゃないし。――君とは、倒した『鬼』の数で勝負よ。」
「分かり易い負け惜しみと言うか何と言うか……まぁ、元気があるのは良い事だと思うぞ初穂。
因みに、私はさっきの任務で目出度く鬼撃破数が100体を超えた。より正確に言うのならば、総撃破数は106体と言った所だな。」
「えぇ!?もう3桁って嘘でしょ!?わ、私だって漸く50体って言う所なのに~~~!!」
「やれやれ、お転婆娘にも困ったものだな……」
心中察するが、鬼と戦う者ならば、此れ位の気概がある方が寧ろ頼りになるさ。
確かにお転婆故に少し気張り過ぎる所もあるかも知れないが、共に戦場を駆ける相棒としては申し分ない――鎖鎌を使ったアクロバティックな
戦い方も見事だからね。
「ならば良いがな。
其れよりも梓、お前の様な者が稀に存在する。英雄の祝福を受けた存在がな。」
「英雄の祝福?」
「ミタマを宿すには、その英雄と呼び合う資質が必要であるが故に、普通はそう多く宿す事は出来ん。
オオマガドキ以来、数多くのミタマが『鬼』に捕らわれているが……『鬼』を討っても、『あちら側』の世界にミタマを持っていかれてしまってな、
取り戻すのも一苦労だ。
ミタマを『こちら側』の世界に繋ぎとめる存在が必要という訳だ。俺達モノノフのようにな。――その中でも、お前は特に優秀なようだ。
……この戦力不足の中、幸運と言うべきだな。――お前は、その才で、ミタマを『鬼』から取り戻せ。」
私はモノノフの中でも特異な存在という事か。
だが、複数のミタマを宿せるこの身体が役に立つというのならば嬉しい事だからね、言われた通り鬼に捕らわれたミタマを出来る限り取り戻し
て見せるよ大和。
「ふ、頼もしいな。――これからも、御役目を確りな。期待しているぞ、梓。」
「あぁ、任せておいてくれ。」
モノノフとて、私は己の任を果たすだけだからね。
さてと、折角だから新たな任務が下る前に、お賽銭でもして御利益を得ておくか……って、あの子は確か、なはとと一緒に居た子じゃないか?
如何したんだ、こんな所で何をしている?
「あ……貴女は。
こんにちは、あの時の天狐は元気ですか?」
「あ、あぁ、元気だよ。なはとと名付けて、家で元気にやっている。」
「良かった……ずっと気になっていたんです。――あの……お名前を窺っても良いですか?」
梓。リインフォース・梓だ、霊山から派遣されたモノノフだ。リインフォースと言うのは言い辛いだろうから、梓と呼んでおくれ。
「梓さん……私は橘花と言います。
私もここで働いているんです。立場は違いますが、一緒に頑張りましょう。」
「橘花か、良い名前だな。
君がどんな立場なのかは知らないが、此処で働いている以上は鬼との彼是に何らかの形で従事しているのだろう?共に頑張って行こう。」
「はい、梓さん。」
前に会った時も思ったが、何と言うか不思議な感じのする子だな。
神秘的と言うか何と言うか……髪と目の色からして、恐らくはアルビノなのだろうが、其れが神秘的な印象を与えているのかも知れないね。
そう言えば、髪と目の色は違うが、何処となく顔立ちが桜花に似ている部分もあるな……若しかして姉妹か?あとで桜花に聞いてみよう。
「よう新入り、何してんだ?」
「富嶽、其れに那木か。
何と言う事もないが、何時新たな任務が下るか分からないのでね、こうして本部で待機しているのさ。此処に居れば、直ぐに動けるだろう?」
「その心構えは立派であると存じ上げます梓様。」
「ったく、熱心なこったな。ま、悪かねぇが。
そういやテメェは、一体何処の出身なんだ?少なくとも、ウタカタの出身じゃねぇだろ。」
「霊山ではないのでしょうか?」
霊山から派遣されたが、私の(と言うか梓のだが)出身はあずまだよ。――しかし富嶽、ウタカタ以外にも里が存在しているのか?
「まぁ、大小あるが里は――「勿論、存在しております梓様!」……面倒なのに火が付いちまったな此れは。」
「富嶽?」
「コイツは、那木は説明魔なんだよ。
一度説明を始めると、テメェが満足するまで説明が終わる事はねぇ……下手すりゃ日が沈むまで説明が続くぜ――だから、俺はこの辺で退
散させてもらうぜ?」
何!?其れならそうと先に言ってくれ富嶽!!
「そもそもにして、里と言うのは鬼との戦いの重要拠点であり、このウタカタの他にも各地に大小様々な里が存在しております。
そして里には里を護るモノノフが存在し、日々鬼との戦いを行い、人々を鬼の脅威から護っているのでございます。更に、里には―――」
「って、聞いてもいない事まで話し始めた!?」
「其れが那木なんだよ……人身御供にしてワリィが、寝るなよ新入り。」
私は生贄か!?
だがしかし、特別な理由をつけない限り逃げる事は出来そうにないからな…仕方ない、覚悟を決めて那木の『説明』を聞くとしようじゃないか。
其れに、この説明から得られるモノはきっとある筈だからね?そう考えれば、長説明と言うのも決して悪い物じゃないと思うからな――あくまで
最大限好意的に解釈しての話ではあるけれどね。
「で、あるからして……つまり里は――そう言う訳でモノノフと里と霊山は……で、其れがそうで、アレがあれなのでございます。」
だが、其処から那木の説明は延々と続き、気が付けば日がとっぷりと沈んでしまっていたか――こうなってしまっては、今日はもう任務に駆り
出される事もないだろうな。夜は、鬼も寝静まるらしいのでね。
「と、いう訳でございます。お分かりになられましたか、梓様?」
「あぁ、嫌と言うほど良く分かったよ那木。」
「其れは僥倖でございます♪」
だが、もう二度と那木には説明を求めないようにしなくてはな……正直言って、延々と説明を聞かされると言うのは、鬼との戦い以上にハード
な事この上ない物だからね。
私だから耐えられたが、若しもこの場にヴィータが居たら、間違いなく耐えきれなくなって那木にグラーフ・アイゼンで一発かましてるだろうな。
何にしても疲れた、主に那木の長説明のせいでな。
今日はもう任務もないだろうから、一風呂浴びて休む事にしよう――しっかりと休養を取るのもまた、モノノフにとっては大事な事だからね。
「今日も一日ご苦労だった。明日に備えて、ゆっくり休め。」
「あぁ、そうさせて貰うよ大和。」
鬼との戦いはまだまだ続く――寧ろ本番は、此れからなのだろうからね。
折角だから、今日はなはとと共に風呂に入ってみるか。入りたそうにしていたのを見たのは1度や2度ではないし、天狐と入浴と言うのも楽し
そうだからな。
ともあれ、今日も一日お疲れ様だな。
――――――
Side:秋水
里に着任したモノノフである梓さんですが、まさか複数のミタマを宿すことが出来るとは、此れはある意味で嬉しい誤算と言えるでしょうね。
彼女ほどのモノノフであれば、複数のミタマを宿した上で、其の力を完全制御する事も出来るでしょう。
そしてそうなれば或いは……
救世主などと言うのは誇張かも知れませんが、貴方は僕にとっての救世主であるのかも知れません梓さん。――貴女ならば、僕の願望を叶
える事が出来るのかも知れませんからね。
此れから貴女が、どんな道を歩んでいくのか、見届けさせて貰いますよ――稀代のモノノフ、リインフォース・梓さん。
To Be Continued… 
おまけ
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