Side:梓


いよいよ最終決戦……オオマガドキを喰止める為の大事な一戦だ。――その一戦を前にして、誰の目にも迷いは見て取れない
から、此れならば、巧く行くかもしれないな。



「私達ならやれるさ。
 だが、最終決戦前に隊長から一言貰えないか?――私達は君の事を信頼しているし信じている。そんな君から、戦闘前に何か
 言って貰えれば励みになると思うんだ。」

「お前……意外と無茶ぶるな桜花よ。」

だが、お前の言う事は否定も出来ん。
隊員から信頼を得ている隊長の命令と言うのは士気を上げ、其れが結果的に戦果に繋がる事も少ないない――其れを考えると
此処はやらねばだ。

「ウタカタのモノノフ達よ、私は君達に会えて良かったと思っている。
 君達と出会う事がなければ、私は『破壊者』として世界を転々として居ただろう――だが、モノノフとしてウタカタに来た事で君達
 と出会う事が出来た――だから、私は里を守りたい。
 オオマガドキを引き起こす終焉の鬼の力は計り知れないが、私達が団結すれば倒せる筈だ――だから、力を貸してくれ皆!」

「ハッ、水臭い事言ってんじゃねぇ!
 俺等の命は、既にテメェに預けてあるんだから好きなように使いな!――ま、下らねぇ命令で死んじまった場合には、毎晩夢枕
 に立ってやるけどな。」



其れはやめてくれ富嶽、普通に怖いから。
だが、おかげで緊張も解れた……其れでは行こうか。最終決戦の地に!人の世を守るためのする為に!――全力で行くぞ!!


「「「「「おーーー!!!」」」」」


終焉の鬼……必ず倒さねばだが、私達ならば其れが出来る――さぁ、オオマガドキを喰い止めに行くぞ!いざ『戦』の領域に!!












討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務39
『終焉の鬼~First Contact~』











と言う訳で、目標が居ると思わしき『戦』の領域の最深部(餓鬼共が塔を組み立てて居た場所)までやって来たのだが、結界が消
えたにも拘らず、凄まじいプレッシャーを感じる――其れこそ、近寄っただけで身を切り刻まれるのではと思う位だ。

だが、だからと言って止まる理由は何処にもない――この世界での私の使命、其れは人の世を脅かす『鬼』を討つ事故、今更此
処で退く気はない。
さぁ、出てこい!オオマガドキを引き起こす終焉の『鬼』よ!
我等ウタカタのモノノフ全員で出迎えてやる!こんな大歓迎は、ゴウエンマとの戦闘以来だからな……精々、覚悟を決めろ!!


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「此れは……塔が、空の穴に吸い込まれて行く……?」

「成程な……オオマガドキの門が開いたって事か。
 って事は、あそこから敵の親玉が出て来るって訳だ……制限時間付きの大将戦と行きますかね。」

「っしゃー!腕が鳴るぜ!!」



あぁ、あの穴の向こうから凄まじい力を感じる――この力は、暴走したユーリにも匹敵するかもしれない程だな?……逢魔が時を
オオマガドキとする『鬼』だと言うだけの事はあるな。
……来るぞ!!!


――ドォォォォォン!!


『ゴォォォォォォォォォォォォォ!!!』

「!!……此れが、敵の親玉……!」

「なんて力……此れまで戦って来た『鬼』とは、格が違うわね…!」

「此れがオオマガドキを齎す、終焉の『鬼』……」

「……トコヨノオウ――!」



四つ足の獣の下半身に、強靭な体躯の上半身に太く強そうな腕……更に左腕は肘から下が刀と化している……成程、確かに此
れは、相当な戦闘力を持っているのも頷ける。
攻撃能力は当然として、四つ足の獣の下半身ならば安定感も良いし機動力も高いからな?

「ふふ、お初お目にかかる『鬼』の首領殿。そして、此れが最後だ。私達の前にお前が現れるのは、此れが最初で最後となる。
 現れたばかりで悪いとは思うが、お前には此処で退場して貰う!我が六爪流の錆となるが良い!」


――ジャキン!!


「夜明けは、必ず来る!」

「此れまでも、どんな奴だって倒して来た!こいつも倒せない道理はねぇ!」

「……止めて見せる。」

「この一戦に、中つ国の命運がかかっているのです……負ける訳には行かないのです……!」

「この……化け物!!」

「さぁて、覚悟しやがれデカブツ野郎!!」


『フゥ……ハッハッハァ!』



手招き……掛かって来いと言う挑発の心算か?
己の力ならば、矮小な人間が何人集まった所で敵ではないと、そう言いたそうだなトコヨノオウよ?……『鬼』の首領ならば、モノ
ノフの力を少しは理解しているかと思っていたが、所詮は貴様も『力』と『頑丈さ』で劣る人間を見下している訳か。

ふぅ……










人間を舐めるなよ?










――轟!!!



「銀髪赤眼……君が、そうなった以上、この戦い、私達の勝利は絶対だな?」

「ふ、其の通りだ桜花。私がこの姿になった以上、貴様の死は絶対だトコヨノオウ――矮小と侮っていた人間の手で、貴様を地獄
 に送り返してやる!!」

此れから始まるのは、勇猛な獅子達による、巨象を相手にした狩りだ。
体躯と力で勝る巨象であっても、鋭い爪牙を持つ獅子の波状攻撃を受け続ければ遠からず倒れる――其れを、再現してやる!



「俺等が獅子なら、アンタは差し詰め龍だな隊長。」

「地上から獅子が、空から龍がってか?なら、負ける要素は何処にもねぇ……行くぜ!!」



私が龍か……ならば、龍と呼ばれるに相応しい活躍をしなくてはな!
貴様を倒す為に残された時間は少ないが、だがこの面子なら出来ない事もない。……破壊神の力、その身をもって知るが良い!








――――――








No Side


人の世の命運をかけた戦いは、当然だが最初からウタカタのモノノフ達が持てる力を全開にして挑んでいた。
桜花が堅甲で味方の防御力を上げれば、富嶽は渾身で攻撃力を強化し、初穂が韋駄天で機動力を強化し、結果としてウタカタの
モノノフ達は、攻守速全てが底上げされた状態で戦闘に臨んで居た。

此れだけの強化が成されたら、並のモノノフであっても相当に強くなるが、少数ながらも精鋭が揃っているウタカタのモノノフなら
ば、その底上げは更に威力を増す。
中でも其れが凄まじいのは、矢張り梓だ。

元々が反則級の強さである梓が、其の力を解放し、更に仲間のタマフリの効果で攻守速が強化されたとなったら、其れこそチート
やバグ級の強さになるのは火を見るよりも明らかだ。


「せい!!てやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


実際に梓は、壊のタマフリ『鎧割』を発動した上でトコヨノオウを斬り付け、更に飛び上がって顔面を蹴り飛ばす!
其れも一発ではなく、飛び回し蹴りから後ろ回し蹴りを繰り出し、更にハイキックから踵落としをブチかまし、旋風脚を叩き込む!!
この一連の連続攻撃でトコヨノオウの角が消し飛び、その衝撃でトコヨノオウは一時的に気絶状態に。


「今だ!一気呵成に攻める!!」

「そらよ、逝っちまいな!!」

「ハッ!隙だらけだぜぇ!」

「行くわよぉ!覚悟なさい!!」

「参ります!天の破魔矢!!」

「これぞ好機なり……」


其の機を逃さずに、桜花は斬心を発動した状態で斬りに斬りつけて斬心を解放し、息吹は最大まで力を溜めた連昇で大ダメージ
を与え、富嶽は必殺の百裂拳で殴りまくって、初穂は飛びかかり攻撃からの連続コンボ。
そして那木は、専心を発動して数多の矢をトコヨノオウに放ち、速鳥は空中攻撃からの回転、そして飛燕へと繋ぐ連続攻撃でトコ
ヨノオウにダメージを与えて行く。

並の『鬼』ならば、この波状攻撃を受けた時点で討伐されていただろう。
だが、相手はオオマガドキを齎す終焉の『鬼』――そう簡単に行かないのは、道理と言える。


『ガァァァァァァァァァァァァ!!!』


気絶状態から復帰したトコヨノオウはマガツヒ状態となり、反撃に転じる。
巨体を生かした突進攻撃に、落雷攻撃、そして左腕の巨大な刀の振り下ろし攻撃……何れの攻撃も、真面に喰らったら間違いな
く一撃で命が散らされてしまうだろう。

だが、其処は流石のウタカタのモノノフ達。
突進攻撃はギリギリまで引き付けてから回避し、落雷攻撃は動き回る事で回避し、振り下ろし攻撃は――


――ガシィィィィィィィィィィ!!


「……貴様の力は此の程度か?……だとしたら期待外れだな。」

『!?』


梓が素手で掴んで攻撃を止めていた。
トコヨノオウの全体重が乗せられていた攻撃は相当に強烈だった筈だが、其れによって梓がダメージを負った形跡すらない。
其れはつまり、トコヨノオウの振り下ろし攻撃を完全に無効にした事の表れだ。

そして言うが早いか、梓は白羽取りしたトコヨノオウの左腕を強引に引き寄せ、力任せに投げ飛ばす!
更にそれだけではなく――


「此れで終いだ……泣け!叫べ!!そして死ねぇ!!!


追撃とばかりにトコヨノオウを追い、合計8回の六爪流の攻撃を叩き込み、仕上げに六爪流状態でトコヨノオウをネックハンキング
状態にして、一気に喉元を6本の刀で切り裂く!!
恐らくは、ゴウエンマレベルの『鬼』であっても、この攻撃を真面に喰らったら即死は免れないだろう。

しかし相手は終焉を齎す『鬼』だけに油断はできない。



――ギュイィィィィン!!



『グオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』



此処で一気にマガツヒの状態からタマハミ状態に!!
『鬼』本来の凶暴性は、タマハミ状態では100%発揮される――その解放された凶暴性が、牙を剥こうとしていたのである。

しかし、其れを見てもウタカタのモノノフ達は動じない。――否、動じる事も出来なかったと言うのが正しいのかも知れない。


何故ならば、タマハミ状態となったトコヨノオウは、背に生えていた翼が巨大化し、更に左腕の刃もタマハミ前よりも巨大になって
居たのだから。
タマハミによって、終焉の『鬼』の力が解放されたのは、間違いないだろう。








――――――








Side:梓



「此れは……タマハミか!?」



まず間違いなくそうだろうな。
翼が肥大化したと言う事は、空を飛ぶ能力を得たと言う事なのだろうが、その程度で私達を倒す事が出来ると思ったら大間違い
も甚だしいぞトコヨノオウよ。

貴様が幾ら凶暴化して、『鬼』の力を解放した所で私達に勝つ事は出来ん。
我等が居る限り、オオマガドキは決して訪れない――其れをその身に刻み込んでやる!そして地獄で後悔しろ!マヌケにも、私
達の前に現れてしまった事をな!

世界を壊す存在が、世界を護ると言うのもおかしな話かもしれないが、私は破壊神であると同時にこの世界の守護神だ。
だから守って見せる、この世界を!!――だから、貴様は此処で討ち倒すぞトコヨノオウ!!

破壊と守護の力を持った祝福の風の力、その身をもって知るが良い!!オオマガドキは、起こる前に収束させる――絶対にな!













 To Be Continued… 



おまけ:本日の禊場