Side:アインス


期せずして、志貴を取り戻す事が出来たが、仲間の奪還と言う意味ではまだ序の口に過ぎない――他の英雄達の力は志貴を上回
るしね。
だが、志貴が戻って来たのは大きい――神器が二つあれば、仲間の浄化と碑の欠片の探索の両方を同時に行う事が出来る訳だ
からな。



「確かに其の通りだなアインス殿。
 ならば碑の欠片の方は私が担当しよう。私の神器『月光玉』は神器の中でも特に探索の能力に長けているし、長く碑文を探して
 いた事で、碑の欠片にも反応しやすくなっている筈だからな。」

「なら、俺が仲間の奪還だな。
 俺の天剣は、神器の中でも邪悪なモノや不浄なモノを断ち切る力が強い――其の力を使えば、操られてしまった英雄さん達を夜
 見の支配から解放する事も出来るしな。」

「確かに、得意分野が異なるなら、得意な方で行くのが良いだろうね。
 そうなるとチームを2つに分けないとだけど……やっぱり此処は刹那さんのチームも志貴さんのチームも7人ずつにした方が良い
 かな?」

「戦力的な事を言えばそうなるだろうね。」

碑の欠片がある場所には夜見が化け物を放って居る事は前回の事で分かっているからな。
となると……奪還チームは私、桜花、ソフィー、プラフタ、アーナス、ダリウス、ウィリアムが、探索チームは残りのメンバーで行くとし
よう。
敵に『鬼』が居る以上、モノノフ達は2つに分けた方が良いだろうしね。
其れじゃあ、早速行動開始としようか?仲間を取り戻して世界を救うためにな!









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務114
『浄化~優しき光~』










刹那の神器の反応で、操られた仲間達が要るであろう場所へとやって来たんだが……よりにもよってカジノか!何だろう、高確率
でリオが戻ってくる予感がする。
本当に此処で間違いないんだな刹那?



「あぁ、間違いない。此処には、操られた英雄さんが沢山いる。一気に浄化すれば、皆を取り戻せるだろう。
 こんな好機は滅多にない。
 悪いんだが……確実に儀式を成功させるため、俺を守ってくれれば助かる。」

「無論だ、任せておけ刹那。」

「君が儀式を成功させられるよう、私達も力を尽くそう。」



私と桜花が組むだけでも充分に強いんだが、其処に私とガチで遣り合えるアーナスに、色々と錬金術で凄い事が出来るソフィーと
プラフタ、鬼の首領であるダリウスに、精霊を宿したウィリアムが居るのだから恐れる事は無いさ。
如何に英雄が相手になるとは言え、本来の英雄ならば兎も角、夜見に操られているのならば本来の力を真の意味で発揮する事は
難しいだろうしね。



「そうかも知れないが、何にしても英雄さん達が居れば100人力だ。
 さてと……浄化に適した場所は、この建物の一番奥か――其処に辿り着くまで守って欲しい。」

「護衛すれば良いんだね?
 分かった、君には指一本触れさせない。」

「Let's leave it Setuna.We will protect.(任せな刹那。俺達が守ってやるよ。)」

「何時も頼ってばかりでスマナイ。
 けど、その姿を見ると、凄く安心するんだ。」



何、私達はこの世界を救う英雄として召喚されたんだから、どんどん頼ってくれていいんだぞ?
そもそも、この世界に現れるモンスターなど、大型の『鬼』に比べたら温い事この上ないからな――コイツ等が相手ならば六爪流ど
ころかオヤッさんの業物を抜く必要もないさ。



――ピン!


――ドッゴーーーーン!!!



「と、この様に、やろうと思えばデコピン一発で倒せるしな?」

「そんなのアインスさんだけだと思うけど……っと、敵の数が増えたみたいだ。
 敵も馬鹿じゃないって事か……待ち伏せされたみたいだね――此処は、突破して先に進むしかないね!」

「どうしても仲間を元に戻したいんだ。
 だから……邪魔しないでくれるかな?」

「えっと……邪魔しないで下さーい!!」



此処で玩具の兵隊――アーナスが言うには『トイ・トループ』と言う邪妖らしいが、その邪妖と、巨大なプニが待ち伏せていたみたい
だが、その程度で私達を止められると思うなよ?
ダリウスが落雷を発生させたところに、ソフィーが大量のフラムを投げ込んで、其れが誘爆してモンスター共を一網打尽だからな。
特にトイ・トループは元が木の玩具だから余計に良く燃えたみたいだね。
この程度ならば問題なさそうだが……流石にそう簡単には行かないようだな?

「趙雲……」

「く……元の仲間から妨害を受けるとはな……だが、ここは突っ切るしかない!!」



ある程度予想はしていたが、実際にと言うのは結構キツイな。
しかも趙雲だけでなくヴィヴィオもか……此れは、他の英雄も妨害してくる可能性もあるな――とは言え、あまり時間を掛ける事は
出来ないので、速攻で終わらせてやる!!
趙雲の槍捌きと、ヴィヴィオの格闘は凄い物が有るが、其れが十全に発揮されるのはあくまで本人の意識があればこその事。夜見
に操られている今は、其れは驚異になり得ん!



「あぁ、その通りだな……趙雲、悪いが今は眠って居てくれ!!」

「ヴィヴィオ、今は大人しくしていてくれ。」

趙雲は桜花が交差法での峰内を叩き込む事で、ヴィヴィオは私がカウンターのドラゴンスクリューで投げた後で、立ち上がろうとし
た所にシャイニングウィザードを叩き込んでKOだ。
ヴィヴィオは兎も角、趙雲が桜花に何も出来ずに倒されてしまうとは、矢張り操られている状態では真の力は発揮できないみたい
だね――何時もの趙雲だったら、桜花を相手に寧ろ有利な戦いをするだろうしな。



「スマナイ、直ぐに助けるから、少し寝ててくれ。」

「今は眠っていてくれ……次に目が覚めたその時は、悪夢は終わっている筈だからな。」

で、その後も幸村、三成、周倉と戦う事になったんだが、矢張り操られている状態では私達の敵ではなかったな……そんな訳で
そろそろゴールなんだが、矢張りすんなりとゴールまでは行かせてくれんか。
此の土壇場で幻影が現れるとは……マッタク持って夜見は良い性格をしているらしい――私達が仲間を取り戻しに来ると承知で、
此処に幻影を配置したのだろうからな。
しかも幻影は、元姫にダリウスにのぶニャが、そして私の幻影か……トリッキーな技が多くて戦い辛い相手だ。








本物ならばな。







劣化コピー以下の幻影で私達を倒せると思っているのか?
特に私の幻影――紋様やベルトがあるのを見ると、暴走状態の私なのだろうが、お前程度では今の私の半分にも満たないよ。
破壊神としての力を持ちつつ、仲間と言う絆を手に入れた私は、夜天の魔導書の管制人格だった頃を遥かに上回る力を持っている
のだからね?

「とは言え、自分自身と仲間達を幻影とは言え何度も攻撃するのは気が引けるから、一撃で終わりにしてやろう――破壊神たる私
 の最上級能力でな!!
 ガキ2匹を生贄にし、私の最上級能力を発動!ソウルエナジーMAX!!」



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!



2体のモンスターのソウルエナジーを吸収した事で、私の攻撃力は∞となった!
この一撃で吹き飛ぶが良い……オベリスク・ゴッドハンド・インパクトォ!!


――ドッガァァァァァァァン!!!


「はい、滅殺完了。」

「ヤレヤレ、君の前では夜見の幻影も形無しだねアインス。」



まぁ、幻影ならば私の相手ではないからな。
でだ、そのままゴールにたどり着いたんだが……最後の最後でマフウか!!――通常よりも倍以上大きな個体だから可成り強い
のかも知れないが、私と桜花と言うオーバーSランクのモノノフの前では雑魚でしかないんだよなぁ……時間を掛けるのも面倒だ、
一気に決めるぞ桜花!



「あぁ!魂を込める……花と散れ!橘花繚乱!!

「深き闇に沈み、奈落へと落ちるが良い……百花斉放!!



――ドッガァァァン!!



はい、終了。
刹那!



「よし、準備は整った!今から英雄さん達を浄化するぞ!」

「浄化、ね。
 一種の魔術みたいなものなのかな?まぁ、味方が元通りになるなら其れで良いけど。」



ま、確かに其の通りだなダリウスよ。
んで、刹那の剣から眩い光が溢れ出した次の瞬間、夜見の瘴気と思われる重苦しい物は霧散したか……此れは、儀式が成功した
と言う事で良いのか?



「あぁ、お陰で浄化は無事に成功した。
 今は、皆、疲れて眠っているが……目覚めた時には、元の英雄さん達に戻っているだろう――助けられて本当に良かった。」

「あぁ、そうだな。」

今回の戦いで、趙雲、周倉、幸村、三成、ヴィヴィオを取り戻す事が出来たか――趙雲と幸村を取り戻す事が出来たのは可成り大
きいな。
三国の英雄と、戦国の英雄が戻って来てくれれば100人力だからね。


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で、聖域に帰還だ。
此方は5人の英雄を取り戻す事が出来たが、其方の首尾は如何だ志貴?



「抜かりない。此方も新たな碑の欠片を見つける事が出来た。
 新たな欠片にはこうある……『夜見、祝福を受けし兵らの剣によって打ち破られ――』……矢張りこれだけでは足りぬが、別の欠
 片と照らし合わせて行く事で意味が読み解けるのかもしれないな。」

「まぁ、欠片が充分でない以上はそうして行くしかないだろうね。」

だが、碑の欠片は順調に集められているし、仲間達の奪還にも成功したのだから、これは少しずつ流れが此方に向いて来ている
証かも知れないね。

とは言え、マダマダ情報は不足しているから、残りの欠片も可及的速やかに探し出さないとだな。









 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



さて、一仕事終えた後は温泉だな。
今日はお前が一緒かアーナス――お前、相当に温泉が気に入ったな?



「其れは当然だよ。
 私の世界では、こうやってお湯に浸かるって言う習慣はなかったからね……ユニットバスじゃなくて、ゆったりと浸かれるお風呂っ
 て言うモノを広めたい位だ。」

「其れは是非とも広めてくれ。」

「うん、頑張るよ。
 そう言えば、アインスさんの世界には『禊』て言うのがあるんだよね?其れって、お風呂とは違うの?」



あぁ、根本的に異なるな。
禊はこの身にたまった穢れを浄化するのが目的で、白い薄衣を纏って水の中で行うんだ。



「其れは、冬場はきつそうだね?
 其れにしても、なんでそう言うのって薄着で行うんだろうね?私にも『血の契約』って言うのがあるんだけど、其れも物凄い薄着で
 行うから少し恥ずかしいんだよね。」

「薄着でか……具体的には?」

「下はパンツ1枚、上は布切れ1枚。」



そ、其れは薄着と言うのか?
何やら理由があってその格好なのだろうが、其れは流石に引くわ……血の契約とは一体如何なる儀式なのか、少し不思議に思っ
た私は悪くないな。