Side:アインス


小夜が伝説の魔物である夜見だったとはな……奴が復活してしまったのには私にも責任の一端があるだろうな――小夜が闇の力を
宿していると知っておきながら放置していたのだからね。
『夜見の事が分かった』と言ったあの時に、敢えて付いて行っていれば、復活前に夜見を倒せたかもしれないしね。



「たらればの話をしても仕方ないだろうアインス?
 起きてしまった事を幾ら悔いても仕方のない事だ……今は、どうやって夜見を倒すかを考えよう。」

「桜花……」

そうだな、起きてしまった事を悔んでも仕方ないな。
確かに夜見が復活して、状況は決して良くないが……だからと言って悲観する事でもない――寧ろ倒すべき相手がハッキリしたとも
言える訳だからね。



「そう言う事だアインス殿。
 夜見は母上と共に何処かへと消えたが、夜見が泉の力を吸い取っているのだとしたら、泉の恩恵が少ない場所には逃げない筈だ。
 ――であるにも拘らず、此処から離脱したのは、此の聖域の波動が夜見の持つ瘴気と相反するモノだったからだろう。」

「光と闇……表裏の力による反発作用か。
 だが、此処ではない場所で泉の力を得るとなると……」

「――俺が環と奪い合った祠か!」

「祠……其れが有ったか!」

泉の力を取り戻す為の祠は、逆に言うなら泉が力を取り戻せば今度は泉の力を各地に運ぶジェネレーターとなる訳だから、聖域の泉
以外では最も泉の力が強い場所だからな。
とは言え、私の攻撃ですら防いだ夜見の捜索を、一般兵に行わせるのは危険すぎるから、英雄達の中から偵察を出すとするか。
幸いな事に、集いし英雄達の中には忍者に該当する奴が3人も居るからね。









討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務109
『蘇りし魔物~小夜と夜見~』










そう言う訳で、かすみ、あやね、ハヤブサの3人に祠の偵察に行って貰った訳なんだがどうだった?



「私の方は外れだったわアインスさん。
 祠があった場所には、少数の魔物はいたけれど、夜見の様な強力な気配は全く無かったから。」

「こっちも外れね。
 山賊共が商品運搬中の商人を襲ってたから蹴散らしてやったけど、夜見は見つからなかったわ。」

「かすみとあやねの方は外れか――お前は如何だったハヤブサ。」

「うむ、夜見が居るかどうかは分からんが、強大な邪悪なる力を感じる祠があった。
 兵士と思われる連中がうろついていたが、全員目が虚ろでとても正気とは思えん……操られているのかもしれないな。」



邪悪な力に操られているらしい兵士か……怪しいな。
如何やらハヤブサが当たりを引いたみたいだね――先程の攻防では夜見の気配を覚える事は出来なかったが、ハヤブサが強大と言
うだけの邪悪な力ならば探る事は出来るだろう。

……強大な邪悪な力、此れか。――ヤレヤレ、ナハトヴァール以上の闇の波動を感じるとはね。
取り敢えずは此処からだな?仮に夜見がいなかったとしても、此れだけの邪悪な力を放置しておく理由は何処にもないからな。
其れでは毎度お馴染み……

「しゅ~んか~んい~ど~う~~。」

「なぜお経風なんだ?」

「何となくだ桜花。」



――バシュン!!



と言う訳で到着したのは……竹林と木道と多数の門がある場所――此処は桶狭間が再現された場所だったな。
ハヤブサ、お前が邪悪な力を感じたのは此処で間違いないか?



「あぁ、此処で間違いない――先程よりも、更に力が強くなっているようだな。」

「あれは……操られた兵士か?
 俺達の道を塞いでいるみたいだな……やっぱり、すんなりと通しては貰えないか。」

「彼らに混じって、お母様の気配を感じます……矢張り、戦いは避けられないのでしょうか……」

「そうだ、環。
 あれは母上であって、母上ではない――あの身体を操っているのは夜見なのだから。
 情に流されれば、その隙を突かれる……注意して戦え。」



環は小夜の気配を感じ取ったのか……私でも分からなかったが、実の娘だからこそ分かったのかもしれないな。
実の母と戦うのは、志貴や刹那と戦うの以上に辛い事かもしれないが、夜見を何とかしない限りは小夜は夜見の化身として存在する
しかない――辛いだろうが、小夜と戦うのも小夜を夜見の呪縛から解き放つ為と割り切ってくれ環。



「はい……」

「環ちゃん……私達も力を貸すわ。
 だから、辛い時は何時でも頼って。」

「この世界に呼ばれた時は、魔物と戦う事になるとは思わなかったが……世界が滅びるのを、みすみす放ってはおけない。」

「俺達全員が力を合わせれば、夜見であろうと敵ではない。皆で必ず世界を救おう。」



かすみ、趙雲、有馬……良い事を言うな。
確かに私の攻撃すら防いだ夜見だが、有馬の言うように私達が力を合わせれば何とかなるだろう――力の合わせ方によっては、加
算ではなく乗算になるからな。



「英雄様……ありがとうございます!」

「俺達も、貴女達を元の世界に帰せるように全力を尽くす。」

「英雄達よ……如何か、共に戦ってくれ。」

「勿論だ。」

取り敢えず先手必勝だ――斬り込むぞ、桜花、紅月!!



「応!」

「参ります!!」



操られた兵士軍団に、先ずは私の疾走居合、桜花の翻身斬、紅月の黄昏で奇襲攻撃――だけでなく、アーナスも血剣を長刀状態に
して斬り込み、趙雲と幸村も槍術で突撃して来たか。



「「バスター!!」」



そして高町親子に関しては何も言うまい……なのはは勿論だが、ヴィヴィオは本当に10歳なのかと言う位に強いからね?……まぁ、
なのはが9歳の頃にあの強さだから、血が繋がってないとは言え若干納得だけどな。
だが、此の攻撃で兵士共の意識は刈り取ったが、今度は化け物が出て来たみたいだな?
マフウにガキ、碑文の欠片を持ってた鬼に蛇人間にアーナスの従魔を悪くしたような奴に、プニっとしたのに、挙げ句の果てには機械
人形までか……



「アレはガジェット……少し前の時間軸から敵を呼んじゃったみたいだねこの世界は。」

「化け物を操るとは……母上、貴女は本当に……」

「夜見、可成りの強敵と見受けますが、我等はこの世界を救う為に進むのみ!」

「事態は急変してしまったか……環殿達が、一体となれたことは良かった。――だが、小夜殿は本当に倒して良いのだろうか?」



趙雲……其れは確かにそうかも知れないが、今は戦うしかなさそうだ。……私達自身が現れたみたいだしね。
如何やら小夜は、化け物を操るだけでなく、私達の幻影まで作り出せるみたいだからな……マッタク、自分自身と戦うと言うのは妙な
気分だ。
尤も、所詮は幻影だから本物には遠く及ばないけれどね。と言うか、私の幻影が私と同じ力を持って大量に現れるとか悪夢でしかな
いからね。



「お母様……本当に……」

「今は余計な事を考えるな環。
 母上の力は予想以上に強い……気を抜けばやられるぞ。」

「叔母上の事はきつかったが……お前達とは、こうしてまた一緒に居られることが、俺は嬉しいな。」

「其れは私も同じ気持ちだ刹那。
 此れまで、傷つけてすまなかった。」

「オイオイ、止めてくれよ。
 お前は俺達を守ろうとしてくれたんじゃないか。」



だが、此の状況が、逆に環達の結束を深めたと言うのならば、不幸中の幸いと言う奴なのかも知れないな?環と刹那と志貴が協力し
たら、其れは凄い戦力になるからね。
或いは夜見もまた、其れを脅威に感じたからこそ3人がバラバラになるように仕向けたのかも知れんな。

さてと、次から次へと幻影やら化け物が現れてきていい加減面倒だな?――なのは、ここは一つ派手に吹き飛ばしてしまうのが良い
と思うのだが、お前は如何思う?



「あは、奇遇ですねアインスさん?私もそう思ってた所です。」

「ならば一発ブチかますとしよう。」

「了解です!レイジングハート!」

『All right.Starlight Breaker.』

「全力全壊!!」

「咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを貫く光となれ。貫け極光!」

「「スターライトブレイカーーー!!」」



――キュイィィィィィン……ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!




はい、一撃掃滅!!
闇の書の闇すら砕いた、星を破壊する集束砲の前では、如何なる魔物だろうが英雄の幻影であろうが無力でしかない……チャージ
時間の長さが若干の問題点だが、此れだけの戦力があるのならば時間は稼げるから其れはさして弱点ではないからね。

だが、小夜が無事である限り化け物と幻影は幾らでも現れるだろうから、先ずは小夜を倒す!!








――雑魚掃討中。私となのはが絶賛無双中だから少し待ってろ。……暇があるならデッキ構築でもしてればいいさ








で、雑魚共を撃滅、抹殺、完全塵殺して辿り着いた先には、闇の瘴気を纏った小夜の姿が……如何やらお前は、完全に夜見の化身
になってしまったようだな。



「此処まで来るなんて凄いわ。
 さぁ、彼方達の力をもっと見せて?」

「母上は、何時から夜見に操られていたのですか?」

「彼方達のお父様が死ぬ少し前かしら?
 あの人には、とってもお世話になったわ。」



と言う事は、環と志貴の父親を殺したのはお前か……真実に至った者の口を封じるのは常套手段だが、お前は少しやり過ぎたな?
如何に夜見に操られていたとは言え、夫殺しと、子供達から父を奪った罪は重い……その罪、私が断罪してやる!!

むぅぅぅぅん!愚かな……暗黒の宿命、此の宿業よ――瞬獄殺!!



――カキィィィィン!!                       



瞬獄殺は素晴らしい……が、如何にも手応えが無いな?
この小夜もまた幻影だと言うのか?……だとしたら夜見とは何処までも性格の悪い奴だとしか言えんな――貴様、最初から私達を試
す心算だったな?



「ふふ、随分と楽しめたし時間も稼げたから、此処までね……ふふ、またね。」

「待て!……っく、逃げられたか。
 時間を稼げた、とは……?」



さてな。
だが、化け物や兵士を操るだけじゃなく、幻影まで出してくるとは……如何やら夜見の力は私達が思っている以上のようだな。
加えて、時間が稼げたと言っていたのも気になる……如何言う意味なのか――どうにも嫌な予感がするな。



「……」

「環……。
 辛いなら、君は聖域で待っていてくれ。私達だけでも、きっと何とかして見せる。」

「ありがとうございます、桜花様。
 ですが……私も戦います。世界を救うのは、私の務めですから。」

「マッタク、無理しちゃって……本当にキツイと思ったらちゃんと言いなさい。いいわね?」

「はい、あやね様。
 優しいお言葉……ありがとうございます。」



あやね……分かり易いツンデレさんだなお前は。



「其れはそうと……此れから如何する心算にゃ?
 夜見の戦術は、思いのほか厄介よ。此のまま進んで、勝算は有るのか?」

「確かに、のぶニャが様の仰る通り……
 このまま進むのは危険ですね。一度戻って、此れからの事を話し合いましょう。」



其れがベターだな。
そもそもにして私達は夜見の事を知らなすぎる――先ずは、歴史文献でもなんでも手当たり次第に読み漁って、夜見がドレだけの能
力を持っているのかを把握しなくてはだからな。










 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場



で、聖域に戻って来たのならば温泉は外せないよな。と言うか外しちゃダメだ絶対に。
だけど今回に限っては、ちょ~~と空気が読めなかったかな?



「アインス殿、貴女も来られたのか?」

「アインスさんも来たんだ?」

「アインスさんも一緒だね♪」



趙雲となのはとヴィヴィオが絶賛入浴中だったからな。
タオルを巻いているとは言え大胆だななのはよ……まぁ、趙雲があまり気にしてないから然程問題では無いのかも知れんが……馬
に蹴られたくはないので私は時間を改めるとしよう。
だがなのは、此れだけは言っておく……お前の気持ちが本物なら、常識とかなんとかは全部ブラックホールの彼方に蹴り飛ばして趙
雲をお前の世界に連れ帰れ。良いな?



「勿論ですよアインスさん♪」



お前ならばそれが出来るだろうからね。
取り敢えず、なのは達が出てくるまで、マッサージチェアで凝り固まった筋肉を解すとするかな。