Side:アインス
環は覚悟を決めた……ならば、私達はその覚悟に応えるだけだ!
自己犠牲を褒める心算は毛頭無いが、環の決意と覚悟は自己犠牲ではなく、自己犠牲をも越えた純粋なる思いだ――だから、貴様
等の好きにはさせん!!
「趙雲、かすみの方は任せる――アーナスの方は私が引き受ける!」
「アインス殿……だが、敵は可成りの使い手……油断なさるな。」
「あぁ、分かっている――慢心はストレートに『死』に直結するものだからな。」
だが、余裕と慢心もまた別物だ。
こう言っては何だが、お前達如きは私の敵ではない――個人的な恨みがある訳では無いが。お前達は邪魔だ……排除させて貰う。
「其れでもやると言うのなら、相手にはなってやるさ。」
環は、この世界の為に命を捨てるのではなく、世界の為に命を使う覚悟を決めたが、私達は絶対に彼女を死なせたりはしない!!
「何か、彼女を死なせない方法があるんだね?」
「さてな?
だがしかし、諦めてしまったら其処で終わりだろう。違うか?」
「いや、違わないね……ヤレヤレ、貴女とはもう少し違う形で会いたかったよアインスさん。」
「奇遇だな、私もそう思っていた。」
そして次の瞬間、私の六本の刀と、アーナスの鮮血のような赤い長剣が交錯した――刹那軍との戦いは、この戦いを持ってして終焉
とさせて貰うぞ。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務107
『明かされる真実~碑の欠片~』
私がアーナスと、趙雲がかすみと戦い、高町親子は何をしてるのかと言うと、ヴィヴィオは環を護りながら刹那と戦い、なのはの方は
必殺のバスターで刹那軍の兵を速攻滅殺!死んでないけどな。
単騎で戦える砲撃魔導師とは言うが、アレは最早『歩く1200mm砲』だな……微妙に敵が可哀想になって来たよ。
「マッタク、無茶苦茶な戦い方するんだねあの人は?この辺一帯を更地にする気なのかな?」
「其れは無いと思うが、結果的にそうなってしまう可能性は否定出来ん。
まぁ、向こうは向こうに任せるとして、中々に強いなアーナス?まだフルパワーでないとは言え、こうして私と打ち合えるとはな?」
其れに、その剣も不思議だ。
赤い長剣かと思えば、青黒いミドルソードになり、また双剣としても機能するとは、可変型の武器か?
「此れは血剣って言ってね、私の血から生成されているんだ。
まぁ、半妖の特権的な武器だと思ってくれれば良いよ――序に言うと、武器の形状は使用者のイメージに左右されるから、理論上
はどんな武器であっても血剣なら再現できるって事さ。」
「其れは銃や棍のような物であってもか?」
「まぁ、そうなるかな?」
「……其れなのに、血『剣』であるとは如何なものかと。」
「……半妖が自らの血で作り出す武器の総称だと思ってくれる?」
「……了解した。」
さてと、お互いそろそろ本気でやらないか?準備運動は充分だろう?
と言うか、私が本気のお前と戦ってみたいんだ……真の力を解放したお前は、本気の私に匹敵するだろうからね。
――轟!!
「銀髪赤目に不思議な模様……なら私も本気で応えないとだね。
はぁぁぁぁぁ……!!――ヨルドの力、格の違いを教えてやろう。」
アーナスの姿が変わったな?
髪が銀色になり、肌はやや灰色がかった白、目は白目の部分が黒くなった赤と青のオッドアイ、背には巨大な翼が生え、手には鋭い
爪が――まるで悪魔だなその姿は。
「行くぞ!!」
「っ!速い――!」
一瞬で間合いを詰めてくるとは……否、それ以前に、今のは雷光の少女よりも速かったんじゃないのか!?正直、反応が僅かでも
遅れていたら、確実にこの爪の餌食になっていただろうな。
「ほう?良く防いだな?」
「ギリギリだったがな。
しかし、オヤッさんが魂込めて鍛えた刀で受けたと言うのに、全く無事とは、その爪も恐ろしい強度だな?ダイヤモンドで出来てるん
じゃないか?」
「此れこそが『夜の力』だ。
夜の王の血を浴びても邪妖とならず、半妖として邪妖を狩り、その蒼き血をヨルドの祭壇に捧げ続けた者だけが到達できる究極の
姿、『ナイトメアフォーム』。
今の私は夜の王其の物の力を有している……貴様に勝ち目はない。」
「ナイトメア……悪夢と来たか。」
確かに、今のお前に勝つのは可成り難しいだろうね。
だが、確かに勝ち目はないだろうが、負ける事も無いぞ?――恐らくだが、頑丈さは略互角で、パワーなら私の方が僅かに上で、ス
ピードに関してはお前の方が僅かに上だから、総じて戦えば五分だからね。
「私とお前が五分だと?……面白い事を言ってくれるな。」
「事実だからな――って言うか、お前キャラ変わってないか?」
「此れもまた変身の影響だから仕方ない。
デモンフォームは荒々しくなり、ラピッドフォームは天真爛漫、ファントムフォームは冷静沈着、アーマーフォームは剛健質実と言った
具合にな。
そしてこのナイトメアフォームは、少々傲慢で高圧的な性格になるようだ。」
変身すると性格が豹変する……まるで初期のスーパーサイヤ人だな。
しかし、勝てずとも負けない相手と言うのは初めてだ……少し楽しむとしようか!!
――――――
No Side
アインスとナイトメアアーナスの戦いは、文字通り人知を超えたモノとなっていた。
超高速で移動しながら戦って居る事で、その姿を一般の兵士達が捉える事は出来ない――否、英雄レベルであっても捉える事は困
難だろう。
その超バトルの内容と言えば、アインスの六爪流とアーナスの爪が交錯したかと思えば、互いに相手が繰り出した蹴りをガードし、攻
防一体の戦いが繰り広げられているのである。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
互いに咆哮を上げ、目の前の敵を倒す事だけを目的として戦いを続ける――恐らく、今のアインスとアーナスには、環と刹那の事も、
この世界の事も頭にはないだろう。
あるのは只一つ、眼前の敵を喰らい尽くせと言う闘争本能だけだ。
「悪夢を名乗るだけの事は有る……数多の世界を滅ぼして来た私と、本気で互角に戦うとはな!」
「貴様も大概だぞアインス……聖女と相討ちになった夜の君と、こうして互角に戦えるのだからな!」
何度目かの打ち合いを行った二人は、間合いを離し……
「はぁぁぁぁ……受けてみろ、サンダー・ゴウ・シャワー!!」
「その程度、如何と言う事は無い!」
アインスが上空から無数の魔力弾を放てば、アーナスも其れを魔力波で相殺する。
その戦いはアインスが言ったように全くの互角であり、此のままでは千日組み手になるのは間違いないだろう。
「く……此処までか――だが、環、俺は諦めない!!
絶対に、お前を止めて見せる。」
だが、その戦いは唐突な終わりを見せる。
趙雲と戦っていたかすみが、切り札として放った気功波を、趙雲の前に躍り出たなのはが、必殺のディバインバスターで押し返し(相
殺じゃなくて押し返したんですよ此の魔王は。)、刹那と戦っていたヴィヴィオは、持ち前のフットワークの軽さで刹那の攻撃を躱し、剣
を持つ右手に手刀を叩き込むと、其処からアクセルスマッシュをアッパーカットで三連発!
咄嗟に後ろに飛んで刹那はダメージを逃がしたが、かすみの方はバスターを喰らって戦闘不能――都合、戦う事が出来るのがアー
ナスだけではキツイと感じ、この場は退く事にしたようだ。
「……如何やら、此処までのようだな。」
「そうみたいだね……決着は、この次かな。」
「多分な……だが、次は私が勝つ。」
「いいや、勝つのは私だよ。」
其れを見たアインスとアーナスは変身を解き、元の姿に戻る。
互いに全力を出して戦ったからか、アインスとアーナスの間には陣営を越えた友情(?)が芽生えたらしい――ともあれ、この場では
環軍が勝利をおさめ、祠を抑えるに至ったのだった。
――――――
Side:アインス
アーナスの奴め、まさかあんな切り札を隠し持っていたとはな……隠し玉があるとは思ってたが、本気の私と互角だとは、正直驚いて
しまったよ。
だが、こうして祠を抑える事が出来たのだから、其れで良しだ。
「皆様、ありがとうございます。おかげで、祠を制圧する事が出来ました。
あと一つ祠を取れば、泉を蘇らせるのに十分な力が得られるでしょう――其れまで、お付き合いいただけないでしょうか?」
「勿論、其れは構わないが……環殿……本当に其れで良いのだろうか?
王になれば、貴女は……」
「趙雲様……私は今、とても嬉しいのです。
刹那兄様は、やはり私の為に戦っていて下さった……私は憎まれてなどいなかった……そして、このまま行けば、私はお兄様方も
世界も救う事が出来る――こんなに望ましい結末があるでしょうか?」
自己犠牲と言ってしまえばそれまでだが、環は真にこの世界を愛しているが故に、其れを選択する事が出来るのだろうな。
お前を犠牲にする心算は無いが、其れがお前の覚悟だと言うのならば、最後までそれに付き合ってやるのもまた英雄の役目だ。
時に環、化け物を倒した時にこんな物を拾ったんだが……
「此れは……石碑の欠片、でしょうか?
何か書いてありますね……『偉大なる王、泉を創り大地を祝福せし時、悪しき魔物・夜見、闇より出で大地を喰らう』。
此れは一体……?何故か分かりませんが……嫌な予感がします……
志貴兄様に手紙を送り、尋ねてみましょう。
答えて頂けるか分かりませんが……お兄様なら、何かご存知かもしれません。」
その可能性は高いだろうね。
此れが若しかしたら、志貴の探していた『黎明の碑』の欠片である可能性は否定できないからな……取り敢えず、志貴を訪ねてみる
のがベターか。
何か、分かるかも知れないからね。
To Be Continued… 
おまけ:本日の浴場
取り敢えず、刹那軍との戦いが終わったので、志貴の元を訪れる前に聖域の露天風呂で一息だ――あ~~、ヤッパリ温泉は最高だ
な?……そうは思わないか紅月?
「えぇ、温泉は最高です。
正直な事を言わせて貰うのならば、この温泉をそのままマホロバに持ち帰りたいくらいです。」
「其れは流石に……でも、紅月さんがそう思うのも無理ないよ。此処の温泉はとっても気持ちいいもん!」
「ふふ、貴女は分かるのですねソフィー。」
「す、少しだけですよ?」
で、何故かソフィーと紅月が漫才状態となったが、女性陣だけの露天は概ね平和だったな――只一つ、ほのかが間違って酒を飲ん
でしまったこと以外は、な。
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