Side:アインス


ふふ、嘗て私と互角に渡り合った、小さき勇者が成長した上で参戦してくれると言うのは、正直に言って有難い事この上ないよ。
子供の頃ですら、私と互角に渡り合った彼女なら、大人になった今は、私を越えているのかも知れないな。



「君を越えるって、其れはどれ程だ?」

「分かり易く言うなら、ゴウエンマ10体を纏めて撃滅できるレベルだと言えば分かり易いかな?」

「成程、良く分かったよ。」



其れが彼女の実力と言う事だ。
加えて言うなら、彼女は『単騎で戦う事の出来る砲撃魔導師』と言う常識外の戦い方を独学で身に付けてしまったある種の天才だよ。
防御を引き上げたせいで機動力にやや難があるが、そもそも攻撃に耐える事が出来るのならば避ける必要が無いと言う考え方だか
らまるで問題は無いしね。
時に環、この世界に異世界からの英雄は大体何人くらい呼ばれたか分かるか?



「正確な数は分かりませんが、神器の力を使って呼び出せる英雄様は神器の所有者を入れて30人になる数までしか呼び出す事が出
 来ません。
 私が閃鏡、刹那兄様が天剣、志貴兄様が月光玉を持っているので、最大数の英雄様が呼び出されていても27人かと……」

「ふむ、ならば全ての英雄が此れで出揃った訳だ。」

刹那の所に5人、志貴の所に5人、そして環の所に17人だからね。……明らかに環軍が過剰戦力でしかないがな。
と言う事は、これ以上の英雄の追加は無い……ならば、祠を巡る戦いの方に集中できそうが、大半の祠は私達が押さえている事を考
えると、刹那辺りが戦いを挑んできそうだな。










討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務105
『祠を巡る最終決戦――かもな』










取り敢えず、伝令から何か報告があるまでは聖域で待機なんだが……



「なんと、なのは殿は九つの頃から戦っておられたのか……そのような幼き頃より己を鍛え上げて来たと言うのならば、あの武の冴え
 わたりも頷ける。
 なのは殿の強さは、積み重ねてきた修練の証なのだな。」

「私なんてマダマダですよ。
 私の世界には私より強い人が居ますからね?……近距離戦闘に関して言うなら、シグナムさんって言う人が多分私の世界では最強
 だと思いますし。」

「そのシグナムさんと、タイマン張って互角だったママは色々凄すぎると思います。
 って言うか、砲撃型なのに、近接型のシグナムさんと互角って……圧倒的に距離を取ってるなら兎も角、クロスレンジでもソコソコや
 り合えたと言うのは伝説になってるって八神司令から聞いたよ?」

「其れはほら、お父さんとかお兄ちゃんとかお姉ちゃんとか、身内がクロスレンジ特化な上に全員が半分人間辞めてる様な人達を知っ
 てるから、動きを見切るくらいは出来るんだよ。」

「父君と御兄弟も武術を……ヴィヴィオ殿も拳法をやっているようだし、なのは殿の家は武術を嗜む家なのだな。」



高町親子と趙雲が、なんか良い感じだなぁ?
こう言ったら何だが、そのまま家族に見えなくもない……と言うか、よくよく会話を聞いてるとヴィヴィオがさりげなく趙雲になのはの凄
い所をアピールしてるし――まさかとは思うが、趙雲となのはをくっつける心算じゃないよな?
仮にくっつけた所で、全てが終われば全員が元の世界に戻るんだから趙雲とは一緒に居られないぞ……まぁ、消える筈だった私が異
世界に肉体を得て降り立った事を考えれば、何が起こるかは分からないけどね。



「報告!
 刹那様が、祠に兵を集めて戦の準備をしていると、偵察に出ていた伝令から!――如何なさいますか、環様?」

「刹那兄様が!……既に大半の祠を抑えているとは言え、泉を活性化させるには全ての祠に力を注がねばなりません――仕方ありま
 せん、祠を抑える為にも刹那兄様と戦わねば。」



っと、伝令からの報告か――矢張り刹那は動いたな。
だが、環ももう迷いは無い様だな……ならば、行くか!!

刹那の気配は……よし、見つけた!!毎度便利な瞬間移動だ!!



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と言う訳で、刹那が兵を集めていると言う場所まで到着――少し位置をずらして、刹那の目の前には出ないようにしたんだが、妙に静
かだな?
若しかして、何か罠でも仕掛けてあるのか?



「そうですね……ですが、私は行かなければ。
 泉を蘇らせ、この世界を救うために。」

「環……変わったな。――出会った頃とは違い、今のお前からは強い意志を感じるよ。」

「はい……私はもう、選びましたから。
 お兄様方と戦おうとも、大切な物を全て守り抜く道を……」

「そうか……環、一つだけ聞かせてくれ。
 お前は、王になって何をしたいんだ?」

「先ずは、英雄様方を元の世界にお帰しします。
 泉が力を取り戻せば、其れも可能になる筈ですから。
 そのあとは……皆が幸せに暮らせるよう、王として出来る事をしていきます――私は此れまで、ずっと王宮で暮らしてきました。
 恥ずかしながら、家族以外と話した事すら殆どなかったのです。
 ですが、自分の目で見た世界はとても眩しくて、其処で生きている皆は力強くて……。
 ……今はまだ、何をすべきかも分かりません。――其れでも、皆の為に出来る事を、一つずつ探して行こうと思います。」



今はまだ何も分からないが、其れを王として模索していくか……其れもまた、一つの王の在り方なのかも知れないな。――否、環の様
な、子供と言っても差し支えのない者が王となるなら、自然とそうなってしまうのかも知れないね。

この環の答えを聞いたお前は如何思う趙雲?



「環殿……貴女は、まこと王に相応しい方のようだ。その大志、私に支えさせてくれ。」

「お前ならばそう言うだろうな――だが、私も同じ気持ちだ。お前のその意思、私達が支えてやろう。」

「趙雲様、アインス様……ありがとうございます!
 どうか、この戦も頼りにさせて下さいませ。」



あぁ、任せておけ。
黎明の碑の探索もあるが、先ずは目の前の戦を片付けねば、碑の探索に力を入れる事は出来ん――悪いが、倒させて貰うぞ刹那。



っと、何か見えるぞ?――アレは、刹那軍の英雄か?



「刹那さんが、皆さんとお話ししたいそうです。マリーがご案内しますね。」



そう来たか。
あからさまな罠だが、此処で動かねば膠着状態が続くだけ……飛び込むしかないか。――まぁ、罠だったら罠だったで、私となのはが
全力を出せばぶち破れるから問題ないしね。

と言う事でマリーとやらを追って来た訳なんだが……



――ガシャン!!



うん、前後の門が閉じられてしまった――周囲を囲まれたかな此れは。



「ふふ……巧く行きました。のぶニャがさん、お願いします。」

「うむ、任せるにゃ。
 おぬしらは、袋の鼠よ。」



……出たな、世界一偉そうな猫が。
えぇい、お前に構ってる暇はない!!喰らえ、対織田のぶニャが用一撃必殺技……マタタビ酒毒霧!!(食紅入り真っ赤バージョン)



「此れはマタタビ!!……た、たまらのにゃ~~……」

「あ~~……完全にマタタビ酔っぱらってますね?
 見た目だけじゃなくて、生態も猫そのものなんだ……ちょっと、シュテルと会わせてみたいかも。」

「お前もそう思うか?」

「シュテルは猫に好かれますからね♪
 時にアインスさん、今の毒霧のせいで口元が赤く染まって吐血したみたいになってます。」



其れは気にするな。
っと……環は何処だ?――まさか、この僅かな時間で敵に奪われたと言うのか!?……敵の狙いは、私達の足止めではなく環を連
れ去る事だったのか!!



「不覚、まさか敵に奪われるとは……急ぎ追わねば!!」

「あぁ、行くぞ!!」

のぶニャがを行動不能にした今、私達を止めるモノは何もないからね。



「だ、誰かーー!化け物がーーー!!」



っと、環を覆うとした矢先に戦場に化け物が迷い込んだようだな?
流石に無視は出来んから退治するか――趙雲、お前は先に行っていてくれ、私は桜花達と化け物を退治してから向かう事にする。



「アインス殿、大丈夫なのか?」

「ふ、私達モノノフにとって化け物退治は日常茶飯事だ。
 何よりも、この地に集いしモノノフはいずれも最強クラスだから化け物如きに遅れは取らんさ――そうだろう、桜花?」

「当然だアインス!!」

「バケモノ退治はモノノフにお任せってな……腕が鳴るぜ!!」

「バケモノ退治ですか……ふふ、全力で行かせて貰うとしましょう。」



と、この様な状態だからね。
お前は環の事を追ってくれ趙雲!!



「了解した!」

「私も一緒に行きます、趙雲さん。」

「私も行きますよーー!!」

「なのは殿、ヴィヴィオ殿……頼む!!」



趙雲に加え、なのはとヴィヴィオが一緒ならば問題ないな――まぁ、環軍の戦力は相当な物が有るから、誰が一緒であってもまるで
問題は無いけどね。

其れは其れとして、先ずは化け物退治だ――久しぶりにモノノフの本分を果たすとしようじゃないか。


何が目的で現れたのかは知らんが、私達の前に現れてしまった事を、精々後悔するが良い――『鬼』を始めとした化け物を狩るのが、
我等モノノフの使命なのだからな!!










 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場