Side:アインス
新たな英雄――恐らくは彼女が居ると思われる場所まで焼て来た訳なんだが、如何やら状況は私が思っていた以上に逼迫している
みたいだね?
「環様、英雄様!お待ちしておりました。
敵の猛攻を受け、拠点は陥落寸前……如何か、味方をお救い下さい。」
「其れは勿論だが、件の英雄は如何した?」
「あ、あのお方は賊を徹底的に懲らしめると言って更に奥に――とても強いお方ですが、此れだけの数を相手にしては多勢に無勢かと
思います!!」
確かに敵の数は多数……単騎で真正面から遣り合うなど、只の自殺行為だろうが、もしも英雄が私の考えている『彼女』であるのなら
ば、その限りではない。
あの子の力の前では、数の差などは大した問題ではないからね……そうだろう、ヴィヴィオ?
「ですね……ママってば、『武装隊100人を単騎で撃滅した』って言う、謎の武勇伝の持ち主ですから。」
「闇の書の意思に、単騎で挑んだ其の力は未だ健在と言う事か――まぁ、あの子なら其れ位は当然かもしれないけどね。」
何せ、子供だった時に私と互角に遣り合ったんだ――成長した姿であるなら、私をも圧倒する力を身に付けていても何ら不思議はない
……其れだけの力があったからね。
件の英雄がお前なのだとしたら、お前としては10年以上ぶりの再会と言う事か――抱きしめて、キスでもしてやった方が良いかもな。
討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務104
『新たな英雄は、管理局の白い悪魔』
と言う訳でやって来たのは、中世の雰囲気を残す、石造りの城――今の面子を考える限り、此処はウィリアムの記憶が再現された世
界と言った所か……無駄に精度が高いな。
「It is totally……What is going on?(マッタクだ……一体どうなってるんだろうな?)」
まぁ、最大の謎はお前と私達が普通にコミュニケーションを取れている事だけどな。
お前の場合は日本語が話せなくても意味は分かるって事で良いかも知れないが、桜花や紅月は英語なんて分からないのに何で、コ
ミュニケーションが可能なのか……私には英語で聞こえているから自動翻訳では――
「いや、私には普通に日本語で聞こえるんだが……」
「日本語、だよな?」
「その筈です時継。」
何故に!?
いや、よくよく考えれば趙雲達だって本来は中国語な筈なのに、私達には普通に日本語に聞こえている――そして私は、英語は分か
るが中国語は分からない=分からない言語は分かる言語に自動変換って事か!……何だ、その無駄に便利な機能は。
まぁ、其れは今は良い。
彼女は奥へと進んだとの事だが、賊とて馬鹿ではないようだな――環の部下達が既に作っていた本陣を攻めつつ城の方はガッチリと
守りを固めて侵入者を拒む。
彼女を孤立させて、と言う所だろうが、さてそれが通じるか……何にしても、本陣を守りつつ城の護りをこじ開けねばなるまい。
「部隊を2つに分ける。
環、ダリウス、三成、ほのか、プラフタ、クリストフォロス、周倉、元姫、ソフィー、プラフタ、リオは本陣の防衛を頼む。
私と桜花、紅月、時継、趙雲、ヴィヴィオ、そしてウィリアムは城の守りを蹴散らして場内に進入し、英雄に加勢する――何か、問題が
あるなら言ってくれ。」
「いや、見事な部隊運用だアインス。
如何やらお前は武だけでなく、知にも長けた者のようだ――まぁ、此れ位の事をして貰わねば困るがな。」
「お褒めに預かり光栄だ三成。」
其れじゃあ行くとしようか!
まずはモノノフ勢で、奇襲をかける――敵がパニックになった所で、趙雲とヴィヴィオとウィリアムが仕掛けてくれ。
「OKです!!」
「あぁ、任せておいてくれアインス殿。」
「Wu……I will do it for a moment.(ふ……精々やらせて貰うさ。)」
「そんじゃまぁ、派手にかましてやろうぜアインス!」
「君となら、誰が相手でも負ける気がしないな。」
「賊には、少しキツイお仕置きが必要ですね……ふふふ、焔にやったのの3倍くらいのお仕置きをして上げましょう。」
……紅月が若干怖い。
そして、この紅月にお仕置きされた焔とやらにちょっと同情してしまうな……っと、気を取り直して――御機嫌よう賊の諸君?
何やら集まってお楽しみのようだが、もしも良ければ私達も混ぜて貰えないかな?
「な、テメェ等は!!!」
「象牙色の髪に琥珀色の目をした6本の刀を装備した女に、身の丈以上の大太刀を携えた黒髪赤目の女と、栗毛赤目で薙刀を持った
女に、巨大な銃を持った謎のカラクリ人形――ヤバい、他の山賊達を叩きのめしたモノノフだーーー!!!」
……そう言えば、刹那や志貴と戦う傍ら、村を襲っている山賊なんかをモノノフ御一行様で叩きのめしたりして居たなそう言えば?
中には叩きのめされた挙げ句に紅月の説教に延々と付き合わされた連中も居たし、そんなこんなが噂となって広がって、其れに尾鰭
背鰭だけでなく、胸鰭や腹鰭その他色んな物がくっ付いて、必要以上に恐れられているのかも知れないな。
だが、恐れてくれるのならば都合がいい――私達の姿を見ただけで勝手にパニックになってくれると言う事だからね。
「ディバイーン……バスター!!」
「いざ、参る!!」
「Sorry, let me sleep for a while.(悪いな、少し眠って貰うぜ。)」
で、パニックに陥った所を趙雲、ヴィヴィオ、ウィリアムが強襲して城門前の守備隊は完全に機能を失ったな――特にヴィヴィオのディ
バインバスターのインパクトが大きかった様だね?
彼女の代名詞とも言える直射砲をマスターしているとは、流石は娘と言った所か。
まぁ、機能を失った守備隊など、木に登れなくなったサルに等しいから、其処からは楽勝だったな。
混乱して逃げ惑う賊を、片端から意識を刈り取って行くだけだったからね……得物のリーチに物を言わせて、5~6人纏めて沈めた桜
花と紅月がちょっと凄かったけどね。
で、城内に押し入った訳だが、所詮は山賊――数は多くても、ハッキリ言って雑魚ばかりだったね。
一般の人間よりは強いのかも知れんが、英雄と言われている私達と比べれば大した事は無い――賊の戦闘力はそれだけ高く見積も
っても1500程度だろう。
其れに比べて此方は桜花が95000、紅月が11万、時継が10万5千、ヴィヴィオが54000、趙雲が12万、ウィリアムが11万だ。ハ
ッキリ言って、話にならんよ。
「ふむ、そうなるとアインス、君の戦闘力は幾つになるんだ?」
「私の戦闘力は……この状態で53万、本気を出した銀髪で1億5000万と言った所かな。」
「……如何足掻いても、君には勝てない気がするぞ……」
まぁ、私は存在その物が色々と反則だからね。
さてと、大分奥まで進んで来たが彼女は……
「全くもう、ホントに懲りないんだから!
少しこれで、頭を冷やそうか!!」
――ドッガァァァァァァァァァァッァァァァァァン!!!
と思ったら、城壁を撃ち抜いて桜色の砲撃が目の前を通過して行っただと!?……そして、その射線上に居た賊は、哀れ白目を剥い
てKO!……相手が悪かったな流石に。
だが、此の砲撃は間違いない!!
「さぁ、次に頭を冷やされたいのは誰かな?
まぁ、名乗り出なくてもこっちから勝手に行かせて貰うけどね――人の迷惑も考えずに好き勝手する山賊……じっくりO・HA・NA・SHI
しないといけないみたいだからね。」
あぁ、矢張りお前だったか高町なのは!
栗毛の髪をサイドテールに纏め、白を基調としたバリアジャケットに、黄金の魔導師の杖――レイジングハートを携えたその姿は、超一
流の魔導師と言っても過言ではないな。
「クソが……死ね、このアマ!!」
「!!」
そんな彼女を、背後から賊が襲い掛かる――まぁ、その程度ではやられないだろうが……
「せい!!」
――バガアァァァァァァン!!
「背後から襲い掛かるとは、幾ら何でも見過ごす事は出来ぬ狼藉!――悪いが、手を出させて貰った!!」
其れは趙雲が見事にインターセプト!
しかもただ止めるだけじゃなく、槍の柄でのカウンターを叩き込んで賊を吹き飛ばしてしまうとは……三国志の英雄の実力は流石と言
った所か。
「えっと、貴方は?」
「私は趙子龍――貴女は、ヴィヴィオ殿の母君と見受けたが……」
「ヴィヴィオを知ってるんですか?」
「ママーー!」
「ヴィヴィオ!其れに、貴女は……!!」
ふふ、久しいな小さき勇者よ――否、今はもう小さき勇者とは言えないか?
私にとっては半年ほどだが、お前からしたら10年以上経っての再会と言った所かな――大きくなったね、高町なのは。
「リインフォースさん……!」
「其れは、二代目に譲った名だ。今の私は、アインスだよ。」
マテリアル達との戦いが終わり、私は自然消滅した筈だったんだが、どうにも往生際が悪くて、別の世界に転移して新たな肉体を得て
生きているんだ――今の私は闇の書の意思ではなく、鬼討つ鬼たるモノノフと言う存在だ。
「モノノフ……ですか?……兎に角、此処はミッドチルダじゃ無いのは良く分かりました。
と言うか、今助けてくれた人――趙子龍って、若しかしなくても三国志屈指の英雄である趙雲子龍だよね!?……三国志を題材にし
たアニメや漫画、ゲームでは主人公になる事が多くて、イケメンさんとして描かれる事が多いけど、本物は想像以上だったよ!!
ヴィヴィオは何で趙雲さんと知り合いなの?」
「こっちに飛ばされた時に、偶然一緒の場所に居て、其れで仲良くなったんだよママ。
色々お世話になったし、私にとっては趙雲さんはパパみたいな存在かなぁ?……ねぇママ、趙雲さんにパパになって欲しい。」
「ヴィヴィオ、其れは駄目だよ。
趙雲さんは確かにユーノ君やクロノ君なんか目じゃない位にイケメンさんだし、私好みでもあるけど、行き成り結婚だなんてそんなの
は、アレだからね?」
「テヘ、少し焦っちゃった♪」
「ヴィヴィオ殿、一体何の話だろうか?」
……取り敢えず色々突っ込み所が満載だが、趙雲を旦那にしようとか思うなよ?
事が済めば、私達は元の世界に戻るんだ――住む世界が違う趙雲を旦那にするなど到底無理な事だからな?
「そんな物は気合で!!」
「其れは何処の三つ編み赤毛の理論だ!!」
マッタク、良い感じに全力全壊だなお前は?
まぁ、良い――私とお前が揃ったのならば賊如きが100万人来た所で相手ではない……闇の書の時は思い切りやり合ったが、今度
は力を合わせて戦おうじゃないか?
「ですね……其れじゃあ、全力全壊で行きましょうアインスさん!!」
「ふ、合わせろよ高町なのは!!」
――なのはと一緒に賊を殲滅中だから少し待っていてくれ。……賊が可哀想だと思った奴は、不動明王の真言でも唱えていてくれ。
さぁて、此れで終わりにしようか!!
「咎人達に滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。」
『Starlight Breaker.』
「全力全壊!スターライト……」
「貫け極光!スターライト……」
「「ブレイカーーーーー!」」
――ドッガァァァァァァッァァァァァッァアッァァァァァァン!!
なのはとのダブルスターライトブレイカーで、賊を纏めて粉砕!玉砕!!大喝采!!!
いやはや、あの時よりも強くなってるとは思ったが、私の予想以上に強くなったみたいだな高町なのはよ?――今のお前と本気で戦っ
たら、私でも勝てるかどうか分からんぞ?
「いっぱいいっぱい頑張りましたから♪
アインスさんの方こそ、あのころと変わらぬ強さで驚きました。」
「そうか?……まぁ、私は存在その物が色々と反則極まりないからね。」
モノノフであった梓と融合した事で肉体の強さは相当な物が有るし、魔法だけでなく六爪流の剣技も使える上に、体術だって可成り強
いからね――まぁ、私は存在が規格外だからな……この身の強さは今更だ。
其れは兎も角、なのは……お前はこの世界に英雄として招かれたんだ――世界の滅びを食い止める為にな。
「え?其れって、どういう事?」
「其れは彼女から聞いてくれ――説明は任せたぞ環。」
「はい……其れではご説明いたします。」
――環説明中。暇だったら、作業用の100分『クリティウスの牙』でも聞いていてくれ。
「……成程ね……そう言う事なら力を貸すよ環ちゃん。
私が英雄かどうかは分からないけど、世界が滅びに向かってるなんて言うのを黙って見ている事なんて出来ないからね!!」
「本当ですか?ありがとうございます英雄様。」
「Is the new heroes confluence……this is a good feeling.(新たな英雄が合流か……此れは良い感じだぜ。)」
ふ、此れはまた頼もしい奴が仲間になってくれたな。
嘗て私と互角戦った、1000年の呪いを砕いた勇者よ、お前の力、期待しているぞ?
「勿論、期待には応えるよアインスさん――全力全壊でね!!」
「其れを聞いて安心したぞ高町なのは。」
お前が居れば百人力――否、私と合わせて10000人力か?
ともあれ頼もしい味方が追加されたな――此れで、近い内に起きるであろう刹那との戦いでも後れを取る事は無いだろうね?……世
界を滅ぼす力と、星を砕く力で其れを何とかしないとだね。
だが、私は信じている――最終的には、全てが良い結果になると言う事をね。
To Be Continued… 
おまけ:本日の浴場
戦いの後は温泉で疲れをいやすのが基本だ――お前もそう思うだろう高町なのは?
「そうですね……動いた後の温泉は格別ですよアインスさん。」
「矢張り、分かっていたようだなお前は。」
そう言えば、あれから10年以上経ってるんだから、お前はもう飲める歳になっているよな?
「へ?飲めますけど……」
「なら、少し付き合え。
温泉につかりながらの紅葉酒などなかなか味わえるものではないからな――少し、堪能しても罰は当たらんぞ?」
「ですね……其れじゃあ遠慮なく頂きます。」
その後はなのはと露天の紅葉酒を楽しんだのだが、なのはの奴はマッタク酔ってなかったな――如何やら彼女は、私とは別の意味で
最強なのかも知れないと、しみじみと実感したよ。
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